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召喚されたおおまか聖女は、ハッピー・エンドを希求する  作者: ココアの丘
第3章 予言の街

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42/50

42 ぼくにもやらせて

 魔物の出現に、ジークたちの反応は速かった。


 ジークはすぐに剣を抜き、兵士を突き殺して雄叫びを上げていたオークに走り寄って、白く輝く剣で一刀両断にした。トライデンもジークから少し遅れてそこへ駆けつけ、続けて広場に入ってきたオークの剣に盾をあわせた。相手のオークは大きく弾き飛ばされ、その後ろにいたオークも、見えない一撃を食らったように、仰向けに転がった。

 たぶん、シールドバッシュを使ったんだろう。トライデンはその後、広場への入り口のあたりに陣取って、襲ってくるオークたちを次々にはじき返していた。


「重騎士ってのは守りが神髄って言うとったけど、ほんまやね。トライデンがあそこにいて、漏れた魔物はジークに相手をしてもらえば、とりあえずの時間稼ぎはできそうやな。そのうちに、この街の冒険者とか騎士さんとかも、集まってくれるやろうし。

 念のため、エイブラムも魔法の準備はしといてや」

「わかっております。それにしても、この街の騎士や兵士は、いったい何をしてるんですかね?」

「魔物なんてもんはいなくなるってなって、だから今日は仕事しなくていいって言われて、その上にタダ酒をふるまわれたんや。もう大喜びで、酒浸りになってたんやろ。

 ま、うちもこの騒ぎはさすがに予想外やったから、人のことは言えんけど」

「街を守るのが仕事である騎士たちと、通りすがりの聖女様では、責任の重さが違いますよ」


 口をとがらしながら、エイブラムは強い語調で言った。ちょっと、怒っているみたい。長年、サウロイールの街の外に住みながら、街の人たちを守ってきた彼からすれば、騎士たちの行動は無責任に過ぎると感じられたんだろう。

 そのうちに、遅まきながら兵士や騎士、数は少ないけど冒険者らしい人たちも広場に集まってきた。こうなると、トライデンのシールドバッシュはかえって邪魔かもしれないので、エイブラムにお願いして、ジークたちには後ろに下がるよう伝えてもらった。エイブラムの言うとおり、後はここの責任者たちに任せることにしよう。


 幸い、侵入してきたのはオーク単独の群れで、それ以外の魔物はいないらしい。オーク程度なら、この街の戦力でも、数さえそろえば対応できそう。実際、最初は広場の中で戦っていた騎士たちは、次第に魔物を押し返していき、今では北門へ続く通りの中で戦っていた。

 このまま北門まで押し戻して門を閉め、街の中に残った魔物を退治してしまえば、とりあえずはこの騒ぎも収まるかな……と思っていると、またもや北門のほうから、大きな音がした。


「ウボォォォ──!」


 今度聞こえたのは、低い雄叫びのような声だった。ほぼ同時に、人の悲鳴みたいな声も上がっていた。やがて、数人の兵士や騎士が広場に走り出てきた。彼らの装備は

血にまみれていて、走ってきたと言うより、逃げてきたという感じ。それに続いて現れたのは、一匹の魔物だった。

 顔形は間違いなくブタ顔のオークなんだけど、身長は3m近くもある。手にしている、少し歪んでいる大剣が、まるでただの小剣のように見えた。

 オークという魔物は、倒したヒト族から奪った武器や防具を装備していることが多いんだけど、さすがにこの体型だと、ヒト族の防具はサイズが合わないんだろう。身につけているのは魔物の皮から作ったらしい、不格好な甲冑もどきだけだった。けれど、その隙間からのぞいている皮膚は、黒ずみ、ごつごつと盛り上がっていて、まるで天然の甲冑のようだ。

 オークの魔物は、自分の前に進んできた騎士を目がけて、手にした剣を振るった。騎士は盾で防ごうとしたけど、なにしろ体格が違う。あわせた盾ごと吹っ飛ばされて、広場にあった木製のベンチにぶつかり、ベンチを粉々に粉砕した。

 ジークが言った。


「オークキングか」

「オークキング、って確かオークの特別なやつ、やったっけ?」

「そうだ。オークの群れから稀に現れる特異種と呼ばれる個体で、たいていの場合は周囲のオークを支配、使役して、オークの王のような地位につく。大きさはオーガと同じくらいだが、魔力や物理攻撃に特化した個体が多く、討伐の難易度はオーガを上回るらしい。

 見たところ、あいつは物理的な攻撃力と防御力に特化しているようだな。この街の者たちでは、少々力不足か」


 そして剣を抜き、再び前に出ようとした。けど、それを押しとどめたのはエイブラムだった。


「ジークさん、待ってください。あいつはぼくにやらせてもらえませんか? 今日はぼく、あんまり活躍できていないので」

「君で対応できるのか?」

「ええ。あの手のやつは、以前マーサ様と一緒に退治したことがあります。ただ、街の中で火魔法を使うのは、あんまり良くないかも知れませんね。なら──」


 エイブラムが呪文の詠唱を始めた。


「<アレンジメントを時空的座標の外へ逃し

  退行的な平滑化を可能とする>」


 すると彼の前の空中に、土でできた棒が出現した。詠唱が進むと共に、その棒は次第に圧縮され、研ぎ澄まされていく。やがてそれは、宙に浮かぶ鋭い石の槍となっていった。


「<一つの機械状のアレンジメントが

  線上でない不可逆性の閾から

  自らの一貫性を奪取する>


 ……<アースランス>!」


 魔法名の宣言と共に、石の槍がさまじい速度で発出された。そして、反応する暇も与えずにその心臓部を貫き、それと同時に、その体の中で爆発した。


 爆発が収まった後、そこに立っていたのは、上半身を爆散させたオークキングの下半身だけだった。

 近くにいた兵士の一人がそこに近づいていき、気味悪そうに、持っていた剣の先で軽くつついた。魔物の下半身が、ゆっくりと後ろに倒れて、ドン、と低い音が響いた。




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