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召喚されたおおまか聖女は、ハッピー・エンドを希求する  作者: ココアの丘
第3章 予言の街

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39 一つだけ、やってほしいこと

「私の隠密を見破られるとは、さすがは聖女様です。私はあなたに、この身も心も捧げ、永遠の──」

「あー、それでやな。さっそくなんやけど、この街の騒ぎについて、そっちでは調べがついとるんか?」


 ハイラインの言葉をさえぎって、私はこう尋ねた。見破るも何も、同じことを何回も繰り返されていたら、だいたいわかってくるよね。ハイラインは頭を上げて、


「はい。私ども魔族の目からみますと、ヒト族というものはどうにも理解できない、愚かしい振る舞いをすることが多いものです。ですが、これほどの愚かさを見たのは初めてですな。

 そもそもの始まりは、聖教会マイカウンド支部の支部長であるマリアーノ大司教が、おかしな夢を見たことだったようです。

 それはこんな夢でした。

 ヒト族や魔族たちの度重なる背信の行いを見て、神はお怒りになった。そしてとうとう、彼らに神罰を与えることを決めた。この大地に無数の彗星の雨を降らせ、ヒト族や魔族を含む、すべての生物を滅ぼす。その後で、生命を改めて作り直し、この星の歴史を一からやり直す、と。

 夢の中で、神はマリアーノに告げました。これは既に決定されたことであり、覆すことはできない。ただし、敬虔な信徒であるマリアーノにだけは、予めこのことを伝えておくことにする。最後の日々を、神へ純粋なる信仰を捧げながら、おだやかに過ごすが良い……。

 夢の内容に驚愕した彼は、このことを支部の副支部長だったバージル司教に話しました。バージルは驚きあわてて、定例のミサの席で、信者に向けて話したのです。信者たちもまた、驚いて自分のまわりの人たちに伝えましたから、世界滅亡の噂は一気に街中に広まりました」

「ちょい待ち。生物を全滅させて、最初っからやり直すん? 聞いてた話と、少し違うんやけど」


 首をかしげる私に、ハイラインはうなずいた。


「その通りです。最初は単純に世界が滅びる、という内容だったのですが、これはごく一部に熱狂的な信者を生んだものの、一般にはあまり信じられませんでした。ところがそのうちに、話の中身が変化していったのです。

 全世界が滅びるのではなく、マイカウンドだけは助かることになり、それから最初は滅亡の日付も決まっていなかったのが、後から付け足されました。これは、教会の側で変更を加えたのか、それとも噂の方が勝手に変わっていったのか、そのあたりはよくわかりません。まあ、『マイカウンドが助かるのは、敬虔な信徒であるマリアーノ大司教がおり、彼の教会があるからである』という理由付けの部分は、教会の手によるもののようですが。

 そして、噂がこの形に変わった頃、特に滅亡の期限が区切られるようになってから、教会は信者たちに、盛んに喜捨を求めるようになりました。噂が広まってからと言うもの、信者からの喜捨は急増していましたが、教会の側からも、積極的に動くようになったのです」

「喜捨、って寄付のことやったっけ。要するにお金?」

「はい。アルマン司教という、もう一人の副支部長がおりましてね。彼の主導によるものです。彼は、救うべき人を神が見分けるためには、目印が無ければならない。教会の十字架こそが、その目印になるのだ、という筋書きを、噂に付け加えました。そうして、十字架を高値で売って回ったのです。

 まあ、形式的には寄付に対する返礼として信者に渡したのですが、実質上は売りつけですね」


 ああ、なるほどね。だからこの街では、あんなにたくさんの十字架が家に飾られていたのか。


「アルマンとしては、この機会にできるだけ金をかき集めておこう、と考えたのでしょう。司教にしては、なかなか現実的な考え方です。もしかしたら彼は、滅亡の予言など信じていないのかも知れません。

 領主代行は、最初のうちこそ事態を静観していたのですが、教会の金集めが露骨になっていったあたりで、口を出し始めました。これに対応したのも、アルマンでした。アルマンは自分の警護役をしていた冒険者に命じて、前の代行を捕縛、監禁させ、代行が失踪したと発表しました。そして、バージル副支部長を緊急の代行役に就かせたんです。

 もちろん、正式の領主の承諾を得てはいないのですが、緊急事態だからと押し切ったようです。どうせ世界は滅亡するのだから、今の領主の承諾など意味はない、ということでしょうか」

「なるほどなあ。あれ? 教会にお金をしぼられてるわりには、この街の人たち、えらい景気よさそうやったけど」

「ああ、あれはですね。今日だけは『お祝い』として、領主代行が酒や食料を、領民や兵士に向けてふるまったのですよ」

「あ、そういうことか」


 私はうなずいた。けれど心の中では、既にかなりうんざりしていた。


 こういう「世界滅亡の予言」って、もう飽きてるんだよね。


 昔、大ブームになったらしい「ノストラダムスの大予言」っていうのは、私は直接には経験してない。けど、それが大外れだったのは、誰に教えてもらわなくてもわかる。世界滅亡を信じて、自分のお金を使いまくった人がいるとかいないとか聞いたけど、その人は今、どうしてるんだろう。

 最近でも、日本で大地震が起きる、なんて予言騒ぎもあったなあ。で、外国からの観光客が激減したりしてた。その本だかマンガだかを書いた人なんて、さんざん話題になってさんざん本が売れたあとで、予言日の直前に「私はそんなことは書いていない」なんて言い出してた。それをマスコミは、なぜか好意的に報道してたりして。


「それにしても、どうしてこんなズボズボの予言なんてものを、簡単に信じてしまうんかねえ。しかも、大切な自分のお金まで寄付してもうて……」

「信者の側からすれば、自分たちが滅亡から逃れるのは、教会のおかげであるとともにそれを信仰している自分たちのおかげです。ですから、予言を信じることで、自分たちは神によって認められた、と感じることができるのでしょうね。

 さらには、滅亡の日の後は、自分たちが世界の主役になるというのですから、その面でも、実に『おいしい』予言に思えるのでしょう。だからこそ、それに飛びついて、信じてしまうのです。

 また、このマリアーノという大司教は、光魔法が使えるようです。ヒト族の間では、光魔法の使い手というものは、妙にもてはやされるようですからね。そんな彼の予言ということも、信(ぴょう)性を高めた一因かも知れません」

「へー。そんな人がいるんや。だったらここでこんなことしとらんで、普通に教会で出世できるんと違うのかなあ。あ、それより、うちの代わりに戦争に行って、魔王さんと戦ってくればええのに」

「光魔法の素養のある司教も、いないこともないのですよ。ただし、聖女様ほど強力なものではありませんから、戦闘に使えるかどうかはわかりませんな。

 それに、光魔法の使い手が珍重されるのは主に民間での話で、教会内では、そこまでの評価はされません。教会にも、信者への対応や布教の実績といった、教会なりの実務がありますからね。そういった面での評価から、出世できずに僻地の支部に飛ばされてしまったのでしょう。

 とは言え、そうした措置が不満な者もいるでしょう。マリアーノがあんな夢を見たのも、光魔法の使い手である自分がこんな僻地に追いやられているという、現実への不満があったためなのかもしれませんな」


 ハイラインは皮肉な笑みを浮かべた。


「現状については以上のとおりです。聖女様、どうされますか? 予言に対する信仰は熱狂的で、予言の期日は、もう明日に迫っているのですが」


 私は答えた。


「そうやなあ。そうなると、一つだけやってほしいことがあるんや。悪いけど、頼まれてくれる?」




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