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召喚されたおおまか聖女は、ハッピー・エンドを希求する  作者: ココアの丘
第2章 死霊の街

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34 閑話:王都の会議室にて

 カーペンタリア王国の王都モレーン。その王城内にある一つの会議室で、ある重要な会議が開催されていた。


 出席者は、そうそうたる面々だった。会議室の最奥で上座に座っているのは、セリーナ・エルズミーア王妃の長男である、ロイド・エルズミーア第二王子。その隣には、ロイドの妹、フロリーナ・エルズミーア第一王女の姿もあった。

 さらには、宰相トルマン・アベニウス、軍務卿ヴァイセル・ボガード、財務卿エルマー・リックマンといった政府の要職にある面々に加え、オルティナ聖教会からも、バーナビー枢機卿が参加していた。セリーナ王妃も、会議に参加こそしていないが、会議の主催者に名を連ねている。彼ら以外にも、各省庁の筆頭事務官やその代理が列席していた。


 会議の議題は、魔王国との戦争の現況、及びこれからの方針だった。


「──結果、我が軍はドニエスル要塞に駐留していた魔王国軍守備部隊を撃破し、同要塞を制圧することに成功いたしました。現在、我が軍は同丘陵にて、敵軍から接収した要塞の整備及び兵糧など物資の整理点検を行い、さらなる進軍の準備を整えているところであります。

 以上のとおり、国軍としては、アンタイル魔王国との戦闘はきわめて順調に推移している、そう判断しています」


 報告を終えて、ヴァイセル軍務卿の副官が席に座った。会議参加者たちは、それぞれに満足そうな表情を浮かべながらその説明に聞き入っていたが、報告が終わると口々に評価やら感想やらを話し出した。


「おおむね、こちらの想定通りだな。いや、想定以上に順調に進んでいる、と言ってもいいか」

「ドニエスル丘陵の要塞を落としたのは、かなり大きいでしょう。ドニエスルは、ブルッヘ平原北部における戦略上の要衝です。あそこに敵がいると、こちらから進軍しようとしても、丘の上からバリスタや魔法攻撃で狙い撃ちにされて、大きな損害が出てしまいます。

 逆に言えば、あそこをとってしまいさえすれば、ブルッヘの街は裸も同然というわけです。ブルッヘを落とすのも時間の問題ですね」

「我が軍が優勢なのは、当然と言えば当然だ。魔族に魔王が生まれたといっても、すぐさま精強な軍を作れるはずがない。そもそもの国力からして違うのだ。先手を打って攻めれば、現在の戦況は必然と言える」

「その上、こちらは神託が出される以前から、侵攻の準備をしていたわけですからねえ」

「念のため申し上げておきますが、我々は神託を捏造したわけではありませんよ」


 神託についての話題が上がったところで、バーナビー枢機卿が口を開いた。


「『魔王が復活するであろう』との神託は、実際になされたものです。人の手で作り上げたものなどでは、決してありません」

「いや、べつに私は、聖教会が今回の宣戦布告のために神託を作り上げた、などと言っているのではなくてですね──」

「だいたいですね。魔王は、現実に出現したではありませんか。神託は現実となったのです」

「とはいえ、神託は魔王がいつ復活するか、までは明示しておりませんでしたからなあ。まあ、神託というのはそういうものでしょう。時期を区切らずに言っておけば、いつかはそれが、当たることがあるかもしれませんからな」


 バーナビーの反論に、エルマー財務卿が皮肉な調子で、横から口を出した。エルマーはさらに続けて、


「いずれにしろ、我が軍にはこのまま進軍を進めて、できるだけ早期に魔王国の王都を落としていただきたいですな。そして、戦争を終結していただきたいところです。戦争とは戦費がかかるものであって、戦費の負担は、結局は我が国の貴族、そして国民にのしかかるものだからです。

 我が国は大国ではありますが、経済及び財務の状況は、野放図な行動ができるほど明るいものではありません。会議にご出席の皆さんには、そのことを改めて認識していただきたい」

「軍としては、戦争の終結を早めるためだけに、無理に進軍することは考えておらん」


 これに対して、ヴァイセル軍務卿が異を唱えた。


「無理に戦を進めれば、それだけ人的な被害が生じる可能性が高くなる。精強な騎士、兵士、優秀な魔導師の命が失われる危険が生じるのだ。その損害は、金額などに換算できるものではない。経済だの財務だのと言われるが、財産とは金だけではなく、人もまた財産であることを、わかってもらいたいものだ。

 それにだ。そもそもの話、兵力をいかに配置し、いかに戦いを進めるかは、軍の専権事項である。それを、(いくさ)(ことわり)も知らぬ財務省の者ごときが、あれこれと口をはさむべきではない」

「まあまあ。エルマー卿も、そういった意味で話されたのではないでしょう」


 双方をとりなすように、トルマン宰相が口をはさんだ。そして、場の雰囲気を変えようとしたのか、まったく別の話題を口にした。


「そういえば、聖女様はすでに、王都を出発されたらしいですね」

「少々、古い情報だな。それはもう10日以上前の話だろう」

「それは致し方ありません。別段、至急で知らなければならない情報ではありませんからね。この状況であれば、聖女様の動向にはそれほどの意味はありません」

「そもそも、意味を持たれては困るからな」


 トルマンの言葉に、ロイド王子が反応した。今の二人の会話の中に、今回の聖女召喚にまつわる事情が垣間見えていた。


 聖女の出立の儀に国王が出席していなかったことからもわかるとおり、現国王エドウィン・エルズミーアは、重い病を患っていた。かなりの高齢と言うこともあり、おそれくはそれほど長く持たないだろうと思われている。

 彼の後継候補は二人。第一王子のジークベルト・エルズミーアと、第二王子のロイド・エルズミーアである。通常であれば、年長の第一王子が次の王となるところなのだが、今回は少々事情が違った。

 第一王子の母リース・エルズミーアは正妃ではなく側妃であり、しかも男爵家の出身と、地位が低かったからである。現在まで、ジークベルトが王太子になっていなかったのは、このことが原因だった。王太子の座を巡り、王国内部で第一王子派と第二王子派が争っていたのだ。


 セリーナが公爵家出身と言うこともあって、この争いは第二王子派が優勢だった。そうした中で、今回の「魔王復活」の神託がもたらされた。


 第二王子派は、これを機に魔族に宣戦を布告し、第二王子に武功を積ませることで、王太子の座を決定的なものにしようとした。魔王国への侵攻は以前から計画されていたことだったのだが、この神託が絶好の機会となったため、時期を早めて実行に移されることになったのである。

 対する第一王子派も、対抗する措置を講じた。リースの最大の後援者であり、親友でもあるグレース枢機卿の主導によって、聖女召喚を行ったのだ。聖女を召喚し、第一王子と共に魔王を打ち倒させることで、現在の不利な状況を覆そうとしたのである。


 だが、この行動が決定的な結果をもたらすことになった。


 聖女の召喚は成功した。が、召喚を行ったグレース枢機卿が、倒れてしまったのだ。召喚に要した魔力消費が、想定以上の負担になったためと思われる。彼女は今も意識が戻っていない状態で、最大の後援者を失った第一王子派は、急速に勢力を失うこととなった。


「それにしても、今の聖女様もかわいそうな方ではあるな。召喚など必要がなかったのなら、すぐに送還してあげればよいものを」

「まったくです。そもそも我が国には、次の聖女となるべきお方が、既におられたのですから」


 トルマンの言葉を聞いたフロリーナ第一王女は、軽い笑みを浮かべて応えた。

 フロリーナ王女は、生まれながらにして光魔法の素養を持っていた。そのため、彼女は有力な聖女候補とされており、フロリーナ自身、聖女になることにやぶさかではなかった。ところが、降って湧いた召喚騒ぎにより、先を越される形になってしまったのだ。そのため、フロリーナは今の聖女に対して、良い感情を持ってはいなかった。


「まあ、神の使いとして召喚した、教会のメンツもあるからな。そういうわけにもいかんのだろう」

「そうですな。それに、まったくの用済みというわけでもありません。聖女は今、ジークベルト殿下のお連れとして、役に立ってくれてはいます」


 優位に立った第二王子派は、さらなる手を打った。

 この国では聖女は神聖な存在とされており、一種の信仰の対象ともなっている。そんな人物を王都や王宮内に留まらせておいては、第一王子派の復権につながる可能性もあるだろう。そこで第二王子派は、聖女を戦線に送り出すことにしたのだ。

 ただし、戦闘で大きな手柄を立てるようなことがあっては、それもまた困ったことになる。そこで、戦線に送り、なおかつ手柄を上げることのない、山岳地帯経由での魔王国侵入を命じたのである。しかも、同行者を、第一王子だけに限って。

 聖女と第一王子が同行するのは元々の予定だったとは言え、二人だけでの行軍は、まさしく異例の事態である。それほどまでに、第一王子派は力を失っていたのだ。


「ただ、少々気になる点もありましてね。私の指示で聖女につけておいた隠密が、現在は連絡が取れなくなっているらしい。最後の連絡は、聖女がサウロイールに向かった、という報告だったのですが……」

「サウロイールでは、アンデッドが大量発生する騒ぎがあったらしいからな。それに巻き込まれたのではないか? まあ、いずれにしろ大きな問題ではあるまい。隠密がいなくなったのなら、またつければよいではないか。

 少々脱線しすぎたかな。そろそろ、本来の議題に戻そう」

「かしこまりました。とはいえ、だいたいの議論は出尽くしたように思えますな。

 それでは最後に、本日の会議の決定事項を、ロイド殿下より改めてご教示願います」


 トルマンの言葉に、ロイド王子は「うむ」とうなずいて、


「戦況はわが方の優勢である。我が軍は引き続き、完全なる勝利のために万全の準備を整えていく。そして準備が整い次第、魔王国に向けてさらなる進軍を行うものとする」



 これにて、第2章は終了となります。旅の仲間が1人(2人?)増え、マリーの一行もパーティーとしての形が整ってきました。一方、魔王軍の動きも本格的になってきたようです。次の3章では、マリーたちはトライデンの故郷に立ち寄るのですが、久しぶりに訪れたその街は、なんだかおかしなことになっていて……。

 この先も、マリーたちの冒険を見守っていただけたら幸いです。


 それから、もしもこの話が気に入っていただけましたら、評価やブックマーク登録をいただけたらうれしいです。作者とっては、はげみになりますので、よろしくお願いします。




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