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召喚されたおおまか聖女は、ハッピー・エンドを希求する  作者: ココアの丘
第1章 学園の街

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17 ちょっと気づいたこと

 その後、学長が戻ったとのことだったので、私たちは学長室を訪れて話をした。さっきの件を報告したところ、学長は驚いた様子で、事を収めたことにお礼を言われた。

 ただ彼女の話では、この手の暴力事件が頻発している、といった話は聞いていないそうだ。少し前に一件だけ、街中で暴れた学生(私たちが見たギルドの件とは別らしい)のことが問題になったが、酒が絡んだケンカとして処理されていて、それ以外には大きな事件の報告は上がっていないという。

 ちなみに、こちらの世界では未成年の飲酒は、べつに法律で禁じられてはいない。好ましいとも思われていないみたいだけど。

 学長室を出た後、私は言った。


「報告が上がっていないとか言うてたけどなあ。現場レベルでもみ消してるって可能性も、あるんと違う? 特に今は卒業シーズンやし、学生のためにも問題を表沙汰にしたくない、ってこともあるやろ」

「確かに、それは考えられるな」


 ジークはうなずいた。けど、トライデンは納得のいかない様子で、


「それはどうかなあ。この学校の先生って、そんな感じの人はあまりいないんだけどな。それに、もしもそんな騒ぎがあったら、まずは学生の間で噂になるんじゃねえか? 先生がもみ消したとしても。俺、友だちづきあいは広い方だと思ってるんだが、今までそんな話は聞いたことがないぞ」

「事件が起きたのが学校の外だったために、先生や学生は知らないのかもしれない」

「うーん。街の人や、実習で衛兵の人と話すこともわりとあるんだが、そこでも聞いてないんだがなあ」


 トライデンは首をひねりながら、


「ところで、さっき使った魔法は何なんだ?」

「キュアや。状態異常を治す魔法やね。なんとなくやけど、マービンとかいう子の魔力の流れがおかしくなってるような気がしたんで、使ってみたんや。そしたら、ああなった」

「なるほど。その魔法が効果があったということは、彼に何らかの状態異常が起きていたということなのだろうが……問題は、なぜそんな状態になったか、だな」


 こんどはジークが首をひねる。けどすぐに、


「ここでそんなことを考えていても意味はないか。気にはなるが、我々にもすべきことがある。予定通りに明日、出発することにしよう」


 ちなみにその後、トライデンが改めて友人や知り合いの衛兵・騎士に尋ねてまわり、ジークも冒険者ギルドに寄って、話を聞いてみたらしい。けど、やっぱりそういう事件の報告は、上がっていないとのことだった。私はと言うと……宿に戻った私は、今までに聞いた話を、じっくりと考え直してみた。


 そして、ちょっとしたことに気がついた。


 ◇


 その翌日の朝。


 宿を出た私とジークは、再びハイファン王立学園に向かっていた。トライデンとは、門の前で待ち合わせている。

 昨晩、ちょっとしたことに気がついた私だったんだけど、一晩寝て起きてみたら、また少し考えが変わっていた。

 よく考えてみたら、そこまで強い証拠でもないよなあ。それに、そこまでたいした事件が起きているわけでもない。そもそもああいうことって、私の管轄外だし。まあそれを言ったら、魔族との戦いなんてもの自体、私には関係ないんだけど、これはほぼ強制されてこうなっているわけだからね。

 だったら、強制されてるわけでもない今回の件は、放っておいてもいいでしょう。

 ということで、予定通り出発することにしたのだった。


 門についてほどなくして、トライデンも姿を現した。もちろん、制服姿などではない。皮鎧を着て剣を腰に、背嚢と盾を背中に背負った、旅の冒険者の装備だ。けっこう、大きな盾だな。彼のジョブは「重騎士」だそうだから、あれが標準装備なんだろう。敵の攻撃を引きつけて仲間を守る、まさに盾役のジョブだね。


「おはよう、ジーク、マリー」


 トライデンは私たちを見つけると、にっこり笑って片手を上げた。昨日までは、ジークを見ると緊張して思わず敬語を口にしていたのに、今日はもう、こんな感じでフランクに話してくる。けっこう順応が速い。


「おはようさん」

「おはよう、トライデン。今日からよろしく頼む。

 ところで昨日の件だが、君の友人、マービンといったか、彼のその後の体調はどうなんだ?」

「あのあと、しばらくしたら目を覚ましたよ。体の方は大丈夫そうだったが、ちょっと気分が悪いらしくて、今日一日は寝ていることにしたそうだ。ま、リリーがついていれば大丈夫だろう」

「ああなった原因について、本人は何と言っている?」

「それがはっきりしないんだ。マービンのやつ、口では知らない、って言ってるんだがな。長年の友人の勘で言わせてもらうと、どうも何か、隠しているような気が……」

「どっか、体調でもおかしかったんと違う? それでなんか、薬でも飲んでたとか」

「薬? いや、そんなことはないと思う。俺も少し気になったから、どこか悪いところでもあるのかと聞いたんだが、あいつはそんなことはない、と言っていた。マリーも、試合が始まるまでは、体調が悪いなんて全然思わなかった、と言っていたし」


 私の問いに、トライデンは首を振った。けど、三人で考えても、やっぱり答の出る問題でもなさそうだ。話題はやがて別のことに移り、私たちはこれからの旅のことを話しながら、街の北門の近くにある馬車置き場に向けて歩き出した。

 今日からまた、あの馬車に乗っての旅になる。あれもそんなに好きではないけど、もう少し先に行くと、馬車ではなくて歩きでの旅になるんだよね。けっこうな長い距離を、自分の足で歩いていかなければならない。ちょっと不安もあるけど、置いて行かれないよう、がんばらなくては。

 ところが、歩き出してすぐ、私たちの背後から大きな声が響いてきた。


「待て、トライデンー!」




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