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第15話 真相

「使徒の本命は当然セシル。アレキサンダーがセシルを殺したっていうことにして、セシルをさらおうとした。まあ学長の息子だからってのは正解にかすってはいるな」


「あ? 俺があいつと戦うのが使徒の目論みだったっていうのか?」


「お前の周囲に、そうだな……セシルの何かしらの情報でも使って決闘を煽ってきたやつはいなかったか? 多分いただろ」


 アレキサンダーは思い出した。使徒がいつの間にかすり替わっていたルーク。


 セシルが特務繋がりだという情報をルークがアレキサンダーに流し、敵愾心を煽ったことを。


「だからってなんで俺があいつを殺したことにする必要があるんだよ。それこそ誰でもいいじゃねえか」


「違うんだな。そこにはお前の親父さんが“アカデミー”の学長だという事実が必要になる。一つ、お前さんとセシルが決闘をする。二つ、セシルを抵抗できない程度に痛めつけてもらってから使徒が誘拐する。三つ、お前さんを口封じに抹殺する。するとどうなる? セシルを殺害した犯人のアレキサンダーを学長がどこかに匿って、学長権限でセシルの死亡を失踪として握り潰した。大体こんな絵が描けるんじゃないか?」


「親父はそんなことしねえ!」


 アレキサンダーは思わず大声で言い返す。


「親父さんはそうかもしれないが、世間様はどう思うだろうな? それに事件を起こして騎士団付属の“アカデミー”に泥を塗ることで、騎士団の責任も問われる。使徒にとっては一石二鳥だな」


 自分の意思でやったと思っていたことが、そうではなかった。


 使徒に操られていた事実にアレキサンダーは愕然とする。


「そこまでにしてあげてください、兄さん。それに遮音の魔術は? 話が外に丸聞こえですよ」


「悪い悪いフレデリカ。手間賃だと思って見逃してくれ」


 医務室に入ってきたのはフレデリカだった。


 偶然今日は本部不在のベネディクトに代わって、ヴァルターは本部に残った。


 そしてフレデリカが特務代表として指揮を取りに“アカデミー”へとやって来たのだった。


 するとフレデリカの背中から聞き覚えのある声がした。


「ポコちゃんのことわすれてたおばかいるな?」


 フレデリカの背中から這い出てきたウサギ型使い魔、ポコちゃんが怒った様に言った。


「ごめん、ポコちゃん。クラリッサが人質にされて。焦ってて……」


「おばかにんげん!」


「ポコちゃん、セシル君も悪気があったわけじゃないのよ。許してあげて」


 フレデリカがポコちゃんをなだめる。


 対になるぬいぐるみ使い魔のシーちゃんは緊急連絡用として、現在ヴァルターの下にいた。


「うん。あたまのおばかもなおしてあげてね」


 ぬいぐるみ相手といえどセシルには返す言葉もない。


 ポコちゃんを最初から頼っていればヘルマンもディーンも、死ぬことはなかったかもしれないのだから。


 ポコちゃんをなだめ終えるとフレデリカは仕事モードに戻る。


「治療が終わり次第、皆さんには特務騎士団の本部へ移動してもらいます。アレキサンダー君もです」


「なんで俺まで!」


「特務の機密保持の為です。我慢してください」




 フレデリカが治療を始めてしばらくすると、医務室の外からもめる様な声が聞こえる。


「友達が戻らないんです! 使徒も出たっていうし、ここにいるか確認させてください!」


「悪いがここは現在部外者の立ち入りを禁止している。部屋で帰りを待つんだな」


 ヘンリーの声だった。


 戻らないセシルを心配して、学校中を探し回っていたのだ。


 フレデリカでも『原石』が消費した魔力を補う様な治療はできない為、セシルは先に怪我だけ治してもらって他の三人の治療が終わるのを待っていた。


 フレデリカから廊下でヘンリーと話す許可をもらったセシルは、ヘンリーが特務騎士に強制的に退去させられる前に医務室から出た。


「セシル! やっぱりここだったか! 心配したんだぜ、マジで」


「ごめんヘンリー。使徒が絡んでるってわかった途端にここへ閉じ込められてたから」


「もう外にまで話が広まって大騒ぎだよ。『黒父の反乱』の再現だってさ」


「『黒父の反乱』?」


「今はもう解体された昔の“アカデミー”……そこの学長が最初の使徒でさ。思想に賛同した生徒達と一緒に教王府から離反したんだ。そこから勢力を拡大して現在に至るわけなんだけど……。で、今回ブレンダ教官が使徒だったわけだろ? だからもう寮も王都もその話で持ちきりだよ」


(最初の使徒が“アカデミー”の学長? この国は一体どうなってるんだ?)


「いやー安心したら気が抜けてきたわ。安否確認ついでに聞いとくけど、勝ったのか?」


「まあ勝った……のかな」


 セシルはアレキサンダーが戦意喪失していた姿を思い出して答える。


「すっげえよ! あのアレキサンダーを倒しちまうなんて、さっすがオレの友達だぜ!」


「聞こえてんだよ! ヘンリー!」


 医務室からアレキサンダーの怒声が聞こえてきた。


「セシルの無事もわかったし、オレ部屋に戻ってるわ。なんか部屋がスゲー荒らされててさ、片付けないと」


 アンがポコちゃんを探したときの後始末はヘンリーがしているようだ。


「これから事情聴取があって今日は帰れないみたいだから……詳しい話はまた明日な!」


「ああ! また明日!」


 セシルはヘンリーを見送ると医務室に戻るのだった。




 四人は“アカデミー“から特務本部に転移すると、それぞれが放課後にあったことを時系列順に聴取された。


 特にルーク、ブレンダ、ヨロイについては詳細な部分まで聞かれた。


 アレキサンダーに至っては嘘か真か、セシルの能力の詳細について外部に口外すると心臓が爆発する呪いをかけられたらしい。


 聴取が終わったのは夜遅くだった。


 それぞれに部屋が与えられたが、流石のアンも今回は疲れ果てた様で自室でおとなしくしている。


(......もう寝ようか)


 新しく渡された首輪をはめ、寝る準備を始めると部屋のドアがノックされた。


(アンのやつ、結局来たのか? いや、アンはノックとかしないよな……)


「……どうぞ」


 ドアを開けて入ってきたのはクラリッサだった。


「クラリッサ、今日は本当にごめん。謝って済む問題じゃないと思うけど……今はその、謝ることしかできない」


「違くて! セシル聞いて! 今はそういう話をしに来たんじゃないんだってば!」


 再度謝罪するセシルをクラリッサが慌ててさえぎる。


「その話なら、あたしこそセシルに酷いこと言っちゃってごめん」


「いいんだよ。クラリッサの指摘は正しかったし、俺が周りを見なかったことが悪いんだ」


「だからっ! 何が悪いとかそういう話でもないんだって! そういう自分を責めるのはちょっと中止!」


 反省の弁を述べるセシルを再びさえぎるクラリッサ。


「じゃあ、何を……?」


「中止とか言っといて今日の話に戻るのはちょっとごめんだけど、何も言わずに聞いて?」


「うん、わかった」


「ぶっちゃけ今日のあんたの行動、不正解中の不正解だった! もうこれ以上ないくらい! でもね、ある部分では正解もしてるの。それは、あたしを助けに来てくれたこと」


「でもそれが不正解だったんじゃ……」


「黙って聞く! 確かに不正解だったよ? でもそれは理屈の話。あのとき四人の男に囲まれて、しかもみんなあたしのことを殺すって言ってた。いくらあたしでも心細かった。そんなとき、助けに来てくれた人がいた。正直理屈より先に……嬉しいと思った。頼もしいと思った。嬉しすぎて泣くかと思った。そう、あんたは......その、気持ちの部分では大正解してたの!」


 話をさえぎりかけたセシルを一喝して、クラリッサは話を続けた。


 彼女は途中から、話しながら照れる様に伏目がちになっていた。


「それは、そう思ってくれたなら、よかったけど……」


「だから、不正解でもあたしは感謝してるし、セシルは自分を責めすぎないこと! じゃあね! お休み!」


 言いたいことを一方的に言って、クラリッサは勢いよくドアを閉めて去っていった。


 クラリッサの言わんとすることはセシルになんとなく伝わった。


 今日の一件は教訓として深く心に刻むべき出来事だったが、必ずしも無意味な行動ではなかったということを聞いてセシルの気持ちは少し軽くなった気がした。


「お休み。ありがとう。クラリッサ」


 クラリッサとの絆を感じ、セシルは一人、つぶやく様に言うのだった。




 眠りにつく彼は、翌日から新たな任務が与えられ、より激しい使徒との戦いに身を投じていくことをまだ知らない。

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