70話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
夏休みが終わり学校では始業式が始まるがそこには志乃の姿はなかった。
そしてホームルームで先生から家庭の事情で前から志乃とその親から退学の相談を受けていた事やそれが少し早まり、夏休み中に志乃が退学した事が説明された。
陽葵は学校が終わってすぐに志乃の住んでいたアパートへ行くが浜名瀬と書かれていたはずの表札には何も無い。
陽葵が隣の部屋のチャイムを連続で鳴らすと悠真が何事かと慌てて出て来た。
悠真「何々?陽葵ちゃんじゃないか、どうしたんだ?」
陽葵「浜名瀬さんが何処へ行ったか知らない?」
悠真「え?知らないけど何かあったのか?」
陽葵「浜名瀬さん、夏休みの間に学校辞めたらしいの。表札も出てないし、何かあったんじゃないかって思って。」
悠真「そうなの?」
悠真も知らなかったらしく慌てて隣の表札を確認する。
悠真「本当だ。だけど引っ越しの業者とか見てないよ。」
陽葵「そりゃ、浜名瀬さんだもん。業者はいらないよ。」
悠真「え。まさか全て手で運んだとか?あの人ならあり得そうだけど、、」
陽葵「ううん。隠里っていう別空間に全て入ってるの。」
悠真「別空間!?そんなファンタジーみたいな事、、は、もう起こってるか。」
陽葵「だけどこのまま浜名瀬さん見つからなかったらどうしよう。」
悠真「電話は?スマホの番号知らないの?」
陽葵「うーん。緊急時以外は掛けるなって言われているからな。」
悠真「何も言わずにいなくなったんだよ。緊急時だって。」
陽葵「うん。そうだよね。」
陽葵は悠真の言葉に納得して志乃に電話を掛けるがスマホからは電波の届かない所か、電源が入っていませんとの声が聞こえてくるだけだった。
なので続けて真琴にも掛けてみるとそっちはすぐに繋がった。
陽葵「あ、まこ姉!」
真琴「多分、浜名瀬さんの事よね。」
陽葵「そう!何か知ってるの?」
真琴「私も驚いたんだけどね。浜名瀬さん、修行を始めたらしいの。」
陽葵「はい!?浜名瀬さんが?何の?」
真琴「私も詳しく聞いてないんだけど何か元巫女の妖怪から術を習うって今日も朝からどこか行ってたのよ。」
陽葵「浜名瀬さん巫女になるの?」
真琴「新しい技術を学ぶって感じだったから違うとは思うけどね。」
陽葵「それで浜名瀬さん、そっちにいるんだよね?」
真琴「今はいないけど屋敷の出入り口もこっちに繋がっているし戻っては来ると思う。」
陽葵「ならそっち行く。」
真琴「え、だけど今、、」
そこで陽葵は電話を切った。
悠真「いたのか?」
陽葵「うん。妖ノ郷に移ったみたい。」
悠真「それはどこだ?名前からして妖怪がいそうだけど。」
陽葵「そうだよ。妖怪が住んでいる空間で基本は妖怪しか入れない場所。」
悠真「どうやって行くんだ?」
陽葵「私にはハラミがいるから。」
悠真「ハラミって飼い猫だろ?」
陽葵「とにかく私は浜名瀬さんに会いに行くから。」
悠真「え、あ、、」
妖ノ郷へ行くと決めた陽葵はアパートを後にして走って家に帰ると、ハラミを連れて妖ノ郷に行く事になった。
陽葵がハラミと共に妖ノ郷へ入って樹霧之介の家へ行くと中には樹霧之介と黒根、風見と共に見た事ない妖怪が2人座っていた。
陽葵「ここに浜名瀬さんいる?、、って誰?」
黒根「真琴は間に合わんだか。」
陽葵「え?」
樹霧之介「陽葵さん、真琴に会いませんでしたか?」
陽葵「ううん。まこ姉がどうしたの?」
黒根「客が来てたからお主がここに来ないように電話を掛けようとしたが繋がらんだから迎えに行ったんじゃ。無駄じゃったがの。」
陽葵がスマホを確認すると不在着信がいくつか来ていた。
陽葵「ここに来ることで頭がいっぱいで気がつかなかった。」
その時手に大き目の卵くらいの大きさの金属を持った志乃が入って来た。
志乃「陽葵?許可無くここに来るなと言っただろ。」
陽葵「浜名瀬さんこそ急に学校辞めるとかどうしたの。」
志乃「あー。始業式今日だったか。」
陽葵「一緒に大学行こうって言ったじゃん!」
志乃「そんな約束はしていない。後で聞くから先にこっちの用事を進めさせてくれ。」
陽葵「そう言えばその手に持っているの何?」
志乃「これは金玉という妖怪だ。」
陽葵「金玉?床の間に置くとお金持ちになるっていうあの?」
志乃「何でそういう事だけ覚えているんだ?まあ、正確にはその抜け殻だけどな。」
陽葵「抜け殻?それどうするの?」
???「それはわしらが頼んだんじゃ。」
木槌を持った顔が長い毛で覆われている妖怪が喋り出す。
志乃「待たせてすまないな。」
???「本当にそれは本物なんだろうな。」
今度は熊手を持ったナマケモノの様な妖怪が喋る。
陽葵「浜名瀬さん、この妖怪達は誰?」
志乃「木槌を持っているのが槍毛長、熊手の方が虎隠良だ。いつも一緒にいる禅釜尚の釜が壊れてそれを直せる金属を探しているらしいからお前は大人しくしてろよ。」
陽葵「分かった。」
虎隠良「早く見せてくれ。偽物だったら分かるからな。」
志乃「満足するまで調べてくれていい。」
志乃は虎隠良に手に持っていた金玉を渡すと、虎隠良は光に当てたりして観察している。
槍毛長「これ、あんたはどうやって手に入れたんじゃ?」
志乃「昔、これを傷つけて祟られた家があってな。中の本体を退治したが気味が悪いからと譲り受けたんだ。」
虎隠良「なるほど、傷はあるが状態は良い。これを本当に譲ってくれるのか?」
志乃「私が持っていても加工はできないからな。助けになるなら使ってやってくれ。」
槍毛長「ただより高い物はないという、後で相応の礼はさせてもらおう。」
志乃「私もただ同然で貰ったようなものだけどな。」
虎隠良「だが人間界でもこれはヒヒイロカネと呼ばれる貴重な金属だろ?」
陽葵「ヒヒイロカネ!?あのゲームとかで出てくる伝説の金属!?本当にあったの?」
志乃「使い道のない金属なんてどんなに貴重だろうが置いておくだけならただの石と変わらない。」
虎隠良「まあ、あいつみたいに特殊なものでなければこいつの加工は難しいか。」
志乃「ああ。だから気にするな。」
槍毛長「じゃがな、、」
志乃「なら虎隠良。少し足の爪を削らせてくれないか?」
虎隠良「爪か?良いがどうするんだ?」
志乃「今こいつらの連絡手段を探していたんだ。」
槍毛長「それなら禅釜尚が壊れた時のかけらが残っとるんじゃ。それを使えばもっと良い物が作れるぞ。」
志乃「確かにそうだが良いのか?」
槍毛長「ああ、その2つを使ってこちらで良い物を作ってやろう。お前は金属の加工はあまり得意じゃなさそうだからな。」
志乃「助かる。」
槍毛長「いやいや、こちらこそ助かった。禅釜尚が回復したら一緒にまた来るよ。」
そう言って槍毛長は虎隠良と出て行った。
陽葵「それで浜名瀬さん。学校辞めて修行ってどういう事?私の修行は?」
志乃「お前はまず妖怪の事を覚えろ。その為に渡したものがあるだろ。」
陽葵「そうだけど、、」
志乃「それに警察官になるんだろ。人を守るには責任が伴う。責任を背負える人間になるには知識が必要だ。今は受験勉強に集中しろ。」
陽葵「浜名瀬さんが何も言わずに消えたからじゃん。」
志乃「何でお前に一々報告しないといけないんだ。」
陽葵「気になって勉強できないよ。」
志乃「勉強できないのは初めからだろ。人のせいにするな。」
陽葵「違うもん。気になって集中できないんだもん。」
志乃「お前の集中力が無いのも初めからだ。」
陽葵「そうだけど、より集中できないの。」
志乃「気にするな。」
陽葵「もう!浜名瀬さんがここで修行するなら私もする!」
志乃「お前は大学受験に集中しろ。」
志乃の剣幕に、陽葵は志乃に無理に戻るように言うのは無理だと察して寂しそうにする。
陽葵「もう、戻らないの?」
志乃「私があげた試験会場へ行ける札あるだろ。」
陽葵「うん。もしかしてそこに何かある?」
志乃「ああ。」
陽葵「何があるの?」
志乃「自分で確かめろ。」
陽葵「ケチ。」
志乃「霊力を溜めれば行けるんだ。それとも要らなかったか?」
陽葵「いる。私頑張るもん。」
志乃「だが今は大学受験の方が大事だ。そっちに合格してから開けろよ。」
陽葵「分かった。どっちも頑張るからそしたらご褒美頂戴。」
志乃「、、分かった。」
陽葵「約束だからね。」
そう言って陽葵はバタバタと帰って行った。
黒根「やかましかったの。」
樹霧之介「あ、志乃さん。禅釜尚の件ですがお礼が僕達の為の道具で良かったんですか?」
志乃「他に欲しい物は無かったからな。」
黒根「相変わらず欲が無いの。禅釜尚の欠片なら他にも色々作れたはずじゃろ。」
志乃「今必要な物を選んで何が悪い。」
樹霧之介「ありがとうございます。」
志乃「樹霧之介は素直だよな。」
そう言いながら志乃は黒根の方を見る。
黒根「何じゃ?こんな爺さんが素直だとしても気持ち悪いだけじゃろ。」
山姥「おい、用事は済んだか?」
槍毛長と虎隠良が出て行った事を確認した山姥が志乃を呼びに来る。
志乃「ああ、今行く。」
志乃は修行の途中で真琴から禅釜尚に使える金属が無いかと管狐が伝えに来たので修行を抜け出していたのだ。
志乃は話を切り上げて山姥と山へ戻る。
それから数日後、樹霧之介の家にまた陽葵が来ていた。
志乃「何でまた1人で来たんだ?」
ハラミ「俺もいるぞ。」
陽葵「そうだよ。最近ハラミだって成長しているんだよ。」
志乃「横にか?」
陽葵の家で食っちゃ寝を繰り返しているハラミは少しぽっちゃりとしてきている。
陽葵「まあ、一緒に運動しようって言った時の逃げ足と隠れる技も成長しているよ。」
志乃「陽葵がここに来れないようにするためにも一緒に修行するか?」
陽葵「する!」
志乃「お前じゃない。ハラミだけだ。」
ハラミ「修行って何してるんだよ。」
志乃「水行や座禅とかだな。他にも断食や山歩きもあるがそっちはもうしているようなものだから他は術を教えてもらっている。」
ハラミ「水!?断食!?俺には無理だ!」
陽葵「私の時はそんな事しなかったよね。」
志乃「したかったのか?」
陽葵は少しその様子を思い浮かべるが体力はあるが忍耐の無い自分には無理だと思い首をブンブンと横に振る。
志乃「まあ、今回は山伏の修行だからな。」
陽葵「何でそんな事してるの?」
志乃「私だって成長したいんだ。」
陽葵「浜名瀬さんがこれ以上強くなってどうするの?」
志乃「これまでは力技で解決してきたがそうもいかないことだってある。」
陽葵「何かあったの?」
志乃「陽葵こそ何でわざわざこっちに来たんだ?」
陽葵「用事が無いと来ちゃ駄目なの?」
志乃「用事があっても来るな。どうしてもという時は電話していいから。」
陽葵「いいの?やったー。、、とは言ったけど今日電話しても繋がらなかったよ。」
志乃「基本電源切っているからな。」
陽葵「意味ないじゃん。」
志乃「分かった。電源は入れとくから。」
陽葵「ちゃんと出てよね。」
志乃「手が空いていたらな。」
陽葵「緊急だったらどうするの。」
志乃「はいはい、本当に何かあった時だけだぞ。アパート教えた時は来てたのに何でこれだけは守るんだ。」
陽葵「アパートの時は浜名瀬さんじゃなくて悠真先輩に会いに行ってたんだもん。」
志乃「言い訳ができる時は堂々と約束破るんだな。」
陽葵「破ってないもん。」
志乃「はあ、ここに来るなという約束は破っているだろ。」
陽葵「だって今回は悪い妖怪が出たかもしれないんだよ。」
樹霧之介「そうなんですか?風見は何も感じていないようですが。」
陽葵「最近近所でペットが謎の病気になっていてそのペット全員に変な歯形があるんだって。」
志乃「人が飼っている動物に危害を加える奴か。」
陽葵「罹れば2,3日で死んじゃうんだよ。2本の牙みたいな痕が付いているから吸血鬼の仕業とか言われているんだって。」
志乃「血を吸うのか?」
陽葵「歯形があるからそうなんじゃない?」
志乃「大きさとかは分かるか?」
陽葵「噂話だけしか聞いてないからそこまでは分からない。」
志乃「見ては無いのか?」
陽葵「うん。だけど動物病院の近くにいた人が持っていたキャリーの中から少しだけだけど妖気を感じたよ。」
志乃「妖気の痕跡も分かるようになってきたか。」
陽葵「ふふん。私も成長したでしょ。」
志乃「そうだな。こっちの修行も一段落ついたところだから一度行ってみるか。」
樹霧之介「なら僕も行って良いですか?」
陽葵「私も行く!」
志乃「陽葵は勉強しろ。」
陽葵「だけど妖気が出ていたキャリーを持っていた人、私しか見てないよ。」
志乃「、、ちなみに病気に罹ったペットのいる人と知り合いではないんだな?」
陽葵「そうだけど、私も役に立つってところ見せたい!」
志乃「まあいいだろ。ハラミには協力してもらう事になるだろうからな。」
ハラミ「俺?何で?」
志乃「人に聞く時のきっかけにはなる。」
ハラミ「え、俺以外でもできるだろ?ほら、管狐とか。」
志乃「管狐をペットにしている人なんていないだろ。」
ハラミ「俺だってペットじゃなくて式神だ。」
志乃「今のところペットみたいなものだろ。」
ハラミ「変化できる奴いなかったか?」
志乃「変化しなくても同じ事ができる奴がいるんだ。必要ない。」
めんどくさい事になりそうなので逃げようとしたハラミを捕まえて志乃は樹霧之介と陽葵と共に被害が多いと噂の場所に聞き込みに行く。
5号に妖気を探してもらうと動物病院に着いた。
病気になって入院しているペットが多いのだろう。
志乃「少し話を聞きたいな。」
陽葵「どうやって?」
志乃「まあ、それは、ねぇ。」
志乃はハラミの方を見る。
ハラミ「注射か?俺はもう嫌だぞ、ここに行くの。」
そんな訴えも空しくハラミは陽葵が持って来たキャリーに入れられ動物病院へ行く。
受付「今日はどうされました?」
志乃「こいつ最近太った気がして、、」
その言葉にキャリーの中でガンッという音が聞こえる。
俺はそんなに太っていないという無言の抗議だ。
志乃「一度見て欲しいと思ったらいつも行っている病院が今週いっぱい休診でして、散歩がてらこちらに伺いました。」
受付「そうなんですね。ワクチンや予防接種はそちらで?」
志乃「はい、一通り済ませています。」
受付「分かりました。こちらでも入院する子達が増えているので少し休診しようかと話も出ているんです。」
志乃「今何か流行っているんですか?」
受付「原因はまだわかっていないのですが、似た症状の子が増えています。」
志乃「その症状とか気を付けた方が良い事とかありますか?」
受付「小さい噛み痕があるって事なので鼠か何かから病気を貰ったのではないかと考えています。室内飼いの子も掛かっているので気を付けてくださいね。」
志乃「そうなんですね。気を付けます。」
受付「はい。もし何か変化があったらすぐに連れてきてくださいね。」
志乃「はい。ありがとうございます。」
陽葵「浜名瀬さん。何か分かった?」
志乃「これだけじゃ分からない。候補としては野衾だが病気にするような奴ではないはずなんだよな。まあ、今4号と5号に入院しているペットを調べてもらっているからそれを待ってだな。」
樹霧之介「あのムササビの妖怪ですか?だったら空飛びますし捕まえるの苦労しそうですね。」
看護師「ハラミ君と飼い主さんどうぞ~。」
志乃「診察には陽葵が行ってくれ。」
陽葵「え。」
志乃「聞きたい事は聞けたし、今は管狐達の方に集中したい。できるだけ時間を稼いでくれ。」
陽葵「分かった。」
志乃に言われて陽葵とハラミで診察室に入る。
先生「こんにちは。今日は健康診断ですね。」
陽葵「はい。お願いします。」
陽葵は診察台にハラミを出して先生に診てもらう。
先生は触診しながら陽葵に質問をする。
先生「食欲や元気が無いなんて事は?」
陽葵「食欲はありますし。少し怠惰で動く事は少ないですが元気もあると思います。」
ハラミ「シャー。」
ハラミは余計な事を言うなと抗議する。
先生「確かに元気ですね。」
陽葵「それでハラミはどうですか?」
先生「そうですね。確かに標準より少し太っていますがこれくらいなら大丈夫ですよ。」
それを聞いてハラミは喉をゴロゴロと鳴らす。
先生「心配なようなら血液検査もしましょうか?」
ハラミは喉を鳴らすのを止めて陽葵の方を見ながら注射は嫌だ、注射は嫌だと目で訴える。
だが志乃から時間を稼いでほしいと言われていた陽葵はそれを承諾してしまった。
陽葵「はい。できればお願いします。」
ハラミ「シャー、シャー。」
先生が注射器の準備をしている間に陽葵はハラミの説得を試みる。
陽葵「浜名瀬さんのためなんだから少し我慢してよ。」
ハラミ「シャー。」
陽葵「我慢しなかったら今日のおやつ無しだからね。」
それを聞いてハラミは威嚇を止めた。
先生「さっきから人の言っている事が分かっているような反応ですね。」
陽葵「頭だけはいいんです。」
先生「はは、だけど太ってはいるのでおやつはあげ過ぎないようにしてくださいね。」
ハラミ「シャー。」
陽葵「注射頑張ったら少し上げても良いですか?」
先生「そうだね。悪い事ばかりじゃハラミくんも可哀そうだからね。」
陽葵「ハラミ我慢できるよね。」
ハラミはもうどうにでもしてくれという感じで前足を出した。
先生「注射にこんなに協力的な猫初めて見るよ。」
それから健康診断は順調に終わり、待合室で待っていた志乃と樹霧之介と合流する。
陽葵「浜名瀬さんどうだった?」
志乃「ああ、4号が牛打ち坊の薬を持って行った。」
陽葵「牛打ち坊?牛を飼っていた人なんていたの?」
志乃「いや、いたのは犬と猫だけだ。それに牛打ち坊は狸くらいの大きさがあるはずだから歯型が小さい理由が分からない。」
樹霧之介「もしかしてこの前の野槌と同じ理由かも知れませんね。」
陽葵「野槌?」
受付「ハラミ君の飼い主さん。」
志乃「はい。」
会計も終わり病院を出てやっと話せるハラミは不機嫌そうにキャリーの中から喋り出す。
ハラミ「俺頑張ったんだからな約束忘れるなよ。」
陽葵「分かってるよ。ねえ、浜名瀬さん牛打ち坊だっけ?どうやって見つけるの?」
志乃「ハラミに囮をしてもらうか。」
ハラミ「これ以上何すんだよ。」
志乃「病気になってもすぐに治せる心配するな。」
ハラミ「何するんだって聞いてるんだ。もう注射は嫌だぞ。」
志乃「注射はもう無い。少し牙で噛まれるだけだ。」
ハラミ「注射より痛いじゃないか。嫌だぞ。」
志乃「この後、焼肉用の肉を買いに行こうと思っていたんだが、、」
ハラミ「、、少し、だけだぞ。」
志乃達はスーパーへ寄った後、陽葵の家へと向かうと美和が出迎えてくれる。
晴臣は仕事で留守にしているみたいだ。
美和「いらっしゃい。」
志乃「こんにちは。」
樹霧之介「こんにちは。」
美和「あら、初めまして可愛いお友達ね。」
陽葵「え、お母さん樹霧之介見えるの?」
樹霧之介「中に入るなら挨拶しないといけないと思って見えるようにしています。」
陽葵「そんな事できたんだ。」
樹霧之介「真琴が何回かお邪魔していると思うんですがその時はどうしてたんですか?」
陽葵「普通に入ってもらってた。夜だったから気を使わせたのかな?」
樹霧之介「そうだったんですね。」
美和「用事は何か分からないけど上がって。」
樹霧之介「お邪魔します。」
志乃「お邪魔します。」
ハラミ「肉食いたい。」
陽葵「もー。」
志乃「いいさ。少し台所借りてもいいか?」
陽葵「私がやるよ。」
ハラミ「止めてくれ。」
ハラミは食い気味に陽葵を止める。
樹霧之介「何かあったんですか?」
志乃「樹霧之介も気を付けた方がいい。」
陽葵「そんな事ないもん。」
ハラミ「お前、あの事忘れたとは言わせないぞ!」
陽葵「ちょっと味付けに失敗しただけじゃん。」
ハラミ「その後にお前がした事だ。何で砂糖を入れた。」
陽葵「塩入れすぎたなら砂糖入れたら中和できるかなって思って、、」
志乃「さっさと始めるぞ。お前らは先に部屋にいてくれ。」
志乃は台所を借りてお肉を焼いて2階に移動し、お肉の入ったお皿をハラミの前に置く。
ハラミ「やった。美味そうに焼けてるじゃないか。」
樹霧之介「志乃さん。妖怪を呼び出すと言っていましたがどうするんですか?」
志乃「これを使う。」
志乃は4号に粉末の入った壺を持って来てもらう。
陽葵「それ何?」
志乃「血梅香。この匂いは血を好む妖怪を呼び寄せるんだ。」
ハラミ「それなら俺いらないんじゃないか?」
志乃「近くに来て美味しそうな獲物がいなければすぐに帰ってしまうだろ。」
陽葵「美味しそう、、」
陽葵はハラミの方をチラッと見る。
ハラミ「ハミミへフンハホ。」
ハラミは口にお肉を詰め込みながら喋っている。
志乃「適度に太った良い感じの囮がいるんだ。使わない手はないだろ。」
ハラミ「もう俺囮になる事決まっているのか?」
志乃「肉食べただろ。」
ハラミ「確かに約束したけど、、」
志乃はハラミがお肉を食べ終えたことを確認すると3号を竹筒から出して血梅香を焚いてもらうと部屋中に木と鉄のような匂いが広がっていく。
ハラミ「ちょ。もう始めるのか?」
志乃「ああ。動くなよ。」
志乃は10号も出すと煙を風でハラミに纏わせる。
ハラミ「煙たい。」
志乃「我慢しろ。」
しばらく待っていると部屋の外から妖気が近付いてくることが分かった。
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