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70話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

夏休みが終わり学校では始業式が始まるがそこには志乃(しの)の姿はなかった。

そしてホームルームで先生から家庭の事情で前から志乃(しの)とその親から退学の相談を受けていた事やそれが少し早まり、夏休み中に志乃(しの)が退学した事が説明された。

陽葵(ひまり)は学校が終わってすぐに志乃(しの)の住んでいたアパートへ行くが浜名瀬(はまなせ)と書かれていたはずの表札には何も無い。

陽葵(ひまり)が隣の部屋のチャイムを連続で鳴らすと悠真(ゆうま)が何事かと慌てて出て来た。

悠真(ゆうま)「何々?陽葵(ひまり)ちゃんじゃないか、どうしたんだ?」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんが何処へ行ったか知らない?」

悠真(ゆうま)「え?知らないけど何かあったのか?」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん、夏休みの間に学校辞めたらしいの。表札も出てないし、何かあったんじゃないかって思って。」

悠真(ゆうま)「そうなの?」

悠真(ゆうま)も知らなかったらしく慌てて隣の表札を確認する。

悠真(ゆうま)「本当だ。だけど引っ越しの業者とか見てないよ。」

陽葵(ひまり)「そりゃ、浜名瀬(はまなせ)さんだもん。業者はいらないよ。」

悠真(ゆうま)「え。まさか全て手で運んだとか?あの人ならあり得そうだけど、、」

陽葵(ひまり)「ううん。隠里(かくれざと)っていう別空間に全て入ってるの。」

悠真(ゆうま)「別空間!?そんなファンタジーみたいな事、、は、もう起こってるか。」

陽葵(ひまり)「だけどこのまま浜名瀬(はまなせ)さん見つからなかったらどうしよう。」

悠真(ゆうま)「電話は?スマホの番号知らないの?」

陽葵(ひまり)「うーん。緊急時以外は掛けるなって言われているからな。」

悠真(ゆうま)「何も言わずにいなくなったんだよ。緊急時だって。」

陽葵(ひまり)「うん。そうだよね。」

陽葵(ひまり)悠真(ゆうま)の言葉に納得して志乃(しの)に電話を掛けるがスマホからは電波の届かない所か、電源が入っていませんとの声が聞こえてくるだけだった。

なので続けて真琴(まこと)にも掛けてみるとそっちはすぐに繋がった。

陽葵(ひまり)「あ、まこ姉!」

真琴(まこと)「多分、浜名瀬(はまなせ)さんの事よね。」

陽葵(ひまり)「そう!何か知ってるの?」

真琴(まこと)「私も驚いたんだけどね。浜名瀬(はまなせ)さん、修行を始めたらしいの。」

陽葵(ひまり)「はい!?浜名瀬(はまなせ)さんが?何の?」

真琴(まこと)「私も詳しく聞いてないんだけど何か元巫女の妖怪から術を習うって今日も朝からどこか行ってたのよ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん巫女になるの?」

真琴(まこと)「新しい技術を学ぶって感じだったから違うとは思うけどね。」

陽葵(ひまり)「それで浜名瀬(はまなせ)さん、そっちにいるんだよね?」

真琴(まこと)「今はいないけど屋敷の出入り口もこっちに繋がっているし戻っては来ると思う。」

陽葵(ひまり)「ならそっち行く。」

真琴(まこと)「え、だけど今、、」

そこで陽葵(ひまり)は電話を切った。

悠真(ゆうま)「いたのか?」

陽葵(ひまり)「うん。妖ノ郷(あやかしのさと)に移ったみたい。」

悠真(ゆうま)「それはどこだ?名前からして妖怪がいそうだけど。」

陽葵(ひまり)「そうだよ。妖怪が住んでいる空間で基本は妖怪しか入れない場所。」

悠真(ゆうま)「どうやって行くんだ?」

陽葵(ひまり)「私にはハラミがいるから。」

悠真(ゆうま)「ハラミって飼い猫だろ?」

陽葵(ひまり)「とにかく私は浜名瀬(はまなせ)さんに会いに行くから。」

悠真(ゆうま)「え、あ、、」

妖ノ郷(あやかしのさと)へ行くと決めた陽葵(ひまり)はアパートを後にして走って家に帰ると、ハラミを連れて妖ノ郷(あやかしのさと)に行く事になった。

陽葵(ひまり)がハラミと共に妖ノ郷(あやかしのさと)へ入って樹霧之介(きりのすけ)の家へ行くと中には樹霧之介(きりのすけ)黒根(くろね)風見(かざみ)と共に見た事ない妖怪が2人座っていた。

陽葵(ひまり)「ここに浜名瀬(はまなせ)さんいる?、、って誰?」

黒根(くろね)真琴(まこと)は間に合わんだか。」

陽葵(ひまり)「え?」

樹霧之介(きりのすけ)陽葵(ひまり)さん、真琴(まこと)に会いませんでしたか?」

陽葵(ひまり)「ううん。まこ姉がどうしたの?」

黒根(くろね)「客が来てたからお主がここに来ないように電話を掛けようとしたが繋がらんだから迎えに行ったんじゃ。無駄じゃったがの。」

陽葵(ひまり)がスマホを確認すると不在着信がいくつか来ていた。

陽葵(ひまり)「ここに来ることで頭がいっぱいで気がつかなかった。」

その時手に大き目の卵くらいの大きさの金属を持った志乃(しの)が入って来た。

志乃(しの)陽葵(ひまり)?許可無くここに来るなと言っただろ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんこそ急に学校辞めるとかどうしたの。」

志乃(しの)「あー。始業式今日だったか。」

陽葵(ひまり)「一緒に大学行こうって言ったじゃん!」

志乃(しの)「そんな約束はしていない。後で聞くから先にこっちの用事を進めさせてくれ。」

陽葵(ひまり)「そう言えばその手に持っているの何?」

志乃(しの)「これは金玉(かなだま)という妖怪だ。」

陽葵(ひまり)金玉(かなだま)?床の間に置くとお金持ちになるっていうあの?」

志乃(しの)「何でそういう事だけ覚えているんだ?まあ、正確にはその抜け殻だけどな。」

陽葵(ひまり)「抜け殻?それどうするの?」

???「それはわしらが頼んだんじゃ。」

木槌を持った顔が長い毛で覆われている妖怪が喋り出す。

志乃(しの)「待たせてすまないな。」

???「本当にそれは本物なんだろうな。」

今度は熊手を持ったナマケモノの様な妖怪が喋る。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん、この妖怪達は誰?」

志乃(しの)「木槌を持っているのが槍毛長(やりけちょう)、熊手の方が虎隠良(こいんりょう)だ。いつも一緒にいる禅釜尚(ぜんふしょう)の釜が壊れてそれを直せる金属を探しているらしいからお前は大人しくしてろよ。」

陽葵(ひまり)「分かった。」

虎隠良(こいんりょう)「早く見せてくれ。偽物だったら分かるからな。」

志乃(しの)「満足するまで調べてくれていい。」

志乃(しの)虎隠良(こいんりょう)に手に持っていた金玉(かなだま)を渡すと、虎隠良(こいんりょう)は光に当てたりして観察している。

槍毛長(やりけちょう)「これ、あんたはどうやって手に入れたんじゃ?」

志乃(しの)「昔、これを傷つけて祟られた家があってな。中の本体を退治したが気味が悪いからと譲り受けたんだ。」

虎隠良(こいんりょう)「なるほど、傷はあるが状態は良い。これを本当に譲ってくれるのか?」

志乃(しの)「私が持っていても加工はできないからな。助けになるなら使ってやってくれ。」

槍毛長(やりけちょう)「ただより高い物はないという、後で相応の礼はさせてもらおう。」

志乃(しの)「私もただ同然で貰ったようなものだけどな。」

虎隠良(こいんりょう)「だが人間界でもこれはヒヒイロカネと呼ばれる貴重な金属だろ?」

陽葵(ひまり)「ヒヒイロカネ!?あのゲームとかで出てくる伝説の金属!?本当にあったの?」

志乃(しの)「使い道のない金属なんてどんなに貴重だろうが置いておくだけならただの石と変わらない。」

虎隠良(こいんりょう)「まあ、あいつみたいに特殊なものでなければこいつの加工は難しいか。」

志乃(しの)「ああ。だから気にするな。」

槍毛長(やりけちょう)「じゃがな、、」

志乃(しの)「なら虎隠良(こいんりょう)。少し足の爪を削らせてくれないか?」

虎隠良(こいんりょう)「爪か?良いがどうするんだ?」

志乃(しの)「今こいつらの連絡手段を探していたんだ。」

槍毛長(やりけちょう)「それなら禅釜尚(ぜんふしょう)が壊れた時のかけらが残っとるんじゃ。それを使えばもっと良い物が作れるぞ。」

志乃(しの)「確かにそうだが良いのか?」

槍毛長(やりけちょう)「ああ、その2つを使ってこちらで良い物を作ってやろう。お前は金属の加工はあまり得意じゃなさそうだからな。」

志乃(しの)「助かる。」

槍毛長(やりけちょう)「いやいや、こちらこそ助かった。禅釜尚(ぜんふしょう)が回復したら一緒にまた来るよ。」

そう言って槍毛長(やりけちょう)虎隠良(こいんりょう)と出て行った。

陽葵(ひまり)「それで浜名瀬(はまなせ)さん。学校辞めて修行ってどういう事?私の修行は?」

志乃(しの)「お前はまず妖怪の事を覚えろ。その為に渡したものがあるだろ。」

陽葵(ひまり)「そうだけど、、」

志乃(しの)「それに警察官になるんだろ。人を守るには責任が伴う。責任を背負える人間になるには知識が必要だ。今は受験勉強に集中しろ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんが何も言わずに消えたからじゃん。」

志乃(しの)「何でお前に一々報告しないといけないんだ。」

陽葵(ひまり)「気になって勉強できないよ。」

志乃(しの)「勉強できないのは初めからだろ。人のせいにするな。」

陽葵(ひまり)「違うもん。気になって集中できないんだもん。」

志乃(しの)「お前の集中力が無いのも初めからだ。」

陽葵(ひまり)「そうだけど、より集中できないの。」

志乃(しの)「気にするな。」

陽葵(ひまり)「もう!浜名瀬(はまなせ)さんがここで修行するなら私もする!」

志乃(しの)「お前は大学受験に集中しろ。」

志乃(しの)の剣幕に、陽葵(ひまり)志乃(しの)に無理に戻るように言うのは無理だと察して寂しそうにする。

陽葵(ひまり)「もう、戻らないの?」

志乃(しの)「私があげた試験会場へ行ける札あるだろ。」

陽葵(ひまり)「うん。もしかしてそこに何かある?」

志乃(しの)「ああ。」

陽葵(ひまり)「何があるの?」

志乃(しの)「自分で確かめろ。」

陽葵(ひまり)「ケチ。」

志乃(しの)「霊力を溜めれば行けるんだ。それとも要らなかったか?」

陽葵(ひまり)「いる。私頑張るもん。」

志乃(しの)「だが今は大学受験の方が大事だ。そっちに合格してから開けろよ。」

陽葵(ひまり)「分かった。どっちも頑張るからそしたらご褒美頂戴。」

志乃(しの)「、、分かった。」

陽葵(ひまり)「約束だからね。」

そう言って陽葵(ひまり)はバタバタと帰って行った。

黒根(くろね)「やかましかったの。」

樹霧之介(きりのすけ)「あ、志乃(しの)さん。禅釜尚(ぜんふしょう)の件ですがお礼が僕達の為の道具で良かったんですか?」

志乃(しの)「他に欲しい物は無かったからな。」

黒根(くろね)「相変わらず欲が無いの。禅釜尚(ぜんふしょう)の欠片なら他にも色々作れたはずじゃろ。」

志乃(しの)「今必要な物を選んで何が悪い。」

樹霧之介(きりのすけ)「ありがとうございます。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)は素直だよな。」

そう言いながら志乃(しの)黒根(くろね)の方を見る。

黒根(くろね)「何じゃ?こんな爺さんが素直だとしても気持ち悪いだけじゃろ。」

山姥(やまんば)「おい、用事は済んだか?」

槍毛長(やりけちょう)虎隠良(こいんりょう)が出て行った事を確認した山姥(やまんば)志乃(しの)を呼びに来る。

志乃(しの)「ああ、今行く。」

志乃(しの)は修行の途中で真琴(まこと)から禅釜尚(ぜんふしょう)に使える金属が無いかと管狐(くだきつね)が伝えに来たので修行を抜け出していたのだ。

志乃(しの)は話を切り上げて山姥(やまんば)と山へ戻る。

それから数日後、樹霧之介(きりのすけ)の家にまた陽葵(ひまり)が来ていた。

志乃(しの)「何でまた1人で来たんだ?」

ハラミ「俺もいるぞ。」

陽葵(ひまり)「そうだよ。最近ハラミだって成長しているんだよ。」

志乃(しの)「横にか?」

陽葵(ひまり)の家で食っちゃ寝を繰り返しているハラミは少しぽっちゃりとしてきている。

陽葵(ひまり)「まあ、一緒に運動しようって言った時の逃げ足と隠れる技も成長しているよ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)がここに来れないようにするためにも一緒に修行するか?」

陽葵(ひまり)「する!」

志乃(しの)「お前じゃない。ハラミだけだ。」

ハラミ「修行って何してるんだよ。」

志乃(しの)「水行や座禅とかだな。他にも断食や山歩きもあるがそっちはもうしているようなものだから他は術を教えてもらっている。」

ハラミ「水!?断食!?俺には無理だ!」

陽葵(ひまり)「私の時はそんな事しなかったよね。」

志乃(しの)「したかったのか?」

陽葵(ひまり)は少しその様子を思い浮かべるが体力はあるが忍耐の無い自分には無理だと思い首をブンブンと横に振る。

志乃(しの)「まあ、今回は山伏の修行だからな。」

陽葵(ひまり)「何でそんな事してるの?」

志乃(しの)「私だって成長したいんだ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんがこれ以上強くなってどうするの?」

志乃(しの)「これまでは力技で解決してきたがそうもいかないことだってある。」

陽葵(ひまり)「何かあったの?」

志乃(しの)陽葵(ひまり)こそ何でわざわざこっちに来たんだ?」

陽葵(ひまり)「用事が無いと来ちゃ駄目なの?」

志乃(しの)「用事があっても来るな。どうしてもという時は電話していいから。」

陽葵(ひまり)「いいの?やったー。、、とは言ったけど今日電話しても繋がらなかったよ。」

志乃(しの)「基本電源切っているからな。」

陽葵(ひまり)「意味ないじゃん。」

志乃(しの)「分かった。電源は入れとくから。」

陽葵(ひまり)「ちゃんと出てよね。」

志乃(しの)「手が空いていたらな。」

陽葵(ひまり)「緊急だったらどうするの。」

志乃(しの)「はいはい、本当に何かあった時だけだぞ。アパート教えた時は来てたのに何でこれだけは守るんだ。」

陽葵(ひまり)「アパートの時は浜名瀬(はまなせ)さんじゃなくて悠真(ゆうま)先輩に会いに行ってたんだもん。」

志乃(しの)「言い訳ができる時は堂々と約束破るんだな。」

陽葵(ひまり)「破ってないもん。」

志乃(しの)「はあ、ここに来るなという約束は破っているだろ。」

陽葵(ひまり)「だって今回は悪い妖怪が出たかもしれないんだよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうなんですか?風見(かざみ)は何も感じていないようですが。」

陽葵(ひまり)「最近近所でペットが謎の病気になっていてそのペット全員に変な歯形があるんだって。」

志乃(しの)「人が飼っている動物に危害を加える奴か。」

陽葵(ひまり)「罹れば2,3日で死んじゃうんだよ。2本の牙みたいな痕が付いているから吸血鬼の仕業とか言われているんだって。」

志乃(しの)「血を吸うのか?」

陽葵(ひまり)「歯形があるからそうなんじゃない?」

志乃(しの)「大きさとかは分かるか?」

陽葵(ひまり)「噂話だけしか聞いてないからそこまでは分からない。」

志乃(しの)「見ては無いのか?」

陽葵(ひまり)「うん。だけど動物病院の近くにいた人が持っていたキャリーの中から少しだけだけど妖気を感じたよ。」

志乃(しの)「妖気の痕跡も分かるようになってきたか。」

陽葵(ひまり)「ふふん。私も成長したでしょ。」

志乃(しの)「そうだな。こっちの修行も一段落ついたところだから一度行ってみるか。」

樹霧之介(きりのすけ)「なら僕も行って良いですか?」

陽葵(ひまり)「私も行く!」

志乃(しの)陽葵(ひまり)は勉強しろ。」

陽葵(ひまり)「だけど妖気が出ていたキャリーを持っていた人、私しか見てないよ。」

志乃(しの)「、、ちなみに病気に罹ったペットのいる人と知り合いではないんだな?」

陽葵(ひまり)「そうだけど、私も役に立つってところ見せたい!」

志乃(しの)「まあいいだろ。ハラミには協力してもらう事になるだろうからな。」

ハラミ「俺?何で?」

志乃(しの)「人に聞く時のきっかけにはなる。」

ハラミ「え、俺以外でもできるだろ?ほら、管狐(くだぎつね)とか。」

志乃(しの)管狐(くだぎつね)をペットにしている人なんていないだろ。」

ハラミ「俺だってペットじゃなくて式神だ。」

志乃(しの)「今のところペットみたいなものだろ。」

ハラミ「変化できる奴いなかったか?」

志乃(しの)「変化しなくても同じ事ができる奴がいるんだ。必要ない。」

めんどくさい事になりそうなので逃げようとしたハラミを捕まえて志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)陽葵(ひまり)と共に被害が多いと噂の場所に聞き込みに行く。

5号に妖気を探してもらうと動物病院に着いた。

病気になって入院しているペットが多いのだろう。

志乃(しの)「少し話を聞きたいな。」

陽葵(ひまり)「どうやって?」

志乃(しの)「まあ、それは、ねぇ。」

志乃(しの)はハラミの方を見る。

ハラミ「注射か?俺はもう嫌だぞ、ここに行くの。」

そんな訴えも空しくハラミは陽葵(ひまり)が持って来たキャリーに入れられ動物病院へ行く。

受付「今日はどうされました?」

志乃(しの)「こいつ最近太った気がして、、」

その言葉にキャリーの中でガンッという音が聞こえる。

俺はそんなに太っていないという無言の抗議だ。

志乃(しの)「一度見て欲しいと思ったらいつも行っている病院が今週いっぱい休診でして、散歩がてらこちらに伺いました。」

受付「そうなんですね。ワクチンや予防接種はそちらで?」

志乃(しの)「はい、一通り済ませています。」

受付「分かりました。こちらでも入院する子達が増えているので少し休診しようかと話も出ているんです。」

志乃(しの)「今何か流行っているんですか?」

受付「原因はまだわかっていないのですが、似た症状の子が増えています。」

志乃(しの)「その症状とか気を付けた方が良い事とかありますか?」

受付「小さい噛み痕があるって事なので鼠か何かから病気を貰ったのではないかと考えています。室内飼いの子も掛かっているので気を付けてくださいね。」

志乃(しの)「そうなんですね。気を付けます。」

受付「はい。もし何か変化があったらすぐに連れてきてくださいね。」

志乃(しの)「はい。ありがとうございます。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。何か分かった?」

志乃(しの)「これだけじゃ分からない。候補としては野衾(のぶすま)だが病気にするような奴ではないはずなんだよな。まあ、今4号と5号に入院しているペットを調べてもらっているからそれを待ってだな。」

樹霧之介(きりのすけ)「あのムササビの妖怪ですか?だったら空飛びますし捕まえるの苦労しそうですね。」

看護師「ハラミ君と飼い主さんどうぞ~。」

志乃(しの)「診察には陽葵(ひまり)が行ってくれ。」

陽葵(ひまり)「え。」

志乃(しの)「聞きたい事は聞けたし、今は管狐(くだぎつね)達の方に集中したい。できるだけ時間を稼いでくれ。」

陽葵(ひまり)「分かった。」

志乃(しの)に言われて陽葵(ひまり)とハラミで診察室に入る。

先生「こんにちは。今日は健康診断ですね。」

陽葵(ひまり)「はい。お願いします。」

陽葵(ひまり)は診察台にハラミを出して先生に診てもらう。

先生は触診しながら陽葵(ひまり)に質問をする。

先生「食欲や元気が無いなんて事は?」

陽葵(ひまり)「食欲はありますし。少し怠惰で動く事は少ないですが元気もあると思います。」

ハラミ「シャー。」

ハラミは余計な事を言うなと抗議する。

先生「確かに元気ですね。」

陽葵(ひまり)「それでハラミはどうですか?」

先生「そうですね。確かに標準より少し太っていますがこれくらいなら大丈夫ですよ。」

それを聞いてハラミは喉をゴロゴロと鳴らす。

先生「心配なようなら血液検査もしましょうか?」

ハラミは喉を鳴らすのを止めて陽葵(ひまり)の方を見ながら注射は嫌だ、注射は嫌だと目で訴える。

だが志乃(しの)から時間を稼いでほしいと言われていた陽葵(ひまり)はそれを承諾してしまった。

陽葵(ひまり)「はい。できればお願いします。」

ハラミ「シャー、シャー。」

先生が注射器の準備をしている間に陽葵(ひまり)はハラミの説得を試みる。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんのためなんだから少し我慢してよ。」

ハラミ「シャー。」

陽葵(ひまり)「我慢しなかったら今日のおやつ無しだからね。」

それを聞いてハラミは威嚇を止めた。

先生「さっきから人の言っている事が分かっているような反応ですね。」

陽葵(ひまり)「頭だけはいいんです。」

先生「はは、だけど太ってはいるのでおやつはあげ過ぎないようにしてくださいね。」

ハラミ「シャー。」

陽葵(ひまり)「注射頑張ったら少し上げても良いですか?」

先生「そうだね。悪い事ばかりじゃハラミくんも可哀そうだからね。」

陽葵(ひまり)「ハラミ我慢できるよね。」

ハラミはもうどうにでもしてくれという感じで前足を出した。

先生「注射にこんなに協力的な猫初めて見るよ。」

それから健康診断は順調に終わり、待合室で待っていた志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)と合流する。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんどうだった?」

志乃(しの)「ああ、4号が牛打(うしう)(ぼう)の薬を持って行った。」

陽葵(ひまり)牛打(うしう)(ぼう)?牛を飼っていた人なんていたの?」

志乃(しの)「いや、いたのは犬と猫だけだ。それに牛打(うしう)(ぼう)は狸くらいの大きさがあるはずだから歯型が小さい理由が分からない。」

樹霧之介(きりのすけ)「もしかしてこの前の野槌(のづち)と同じ理由かも知れませんね。」

陽葵(ひまり)野槌(のづち)?」

受付「ハラミ君の飼い主さん。」

志乃(しの)「はい。」

会計も終わり病院を出てやっと話せるハラミは不機嫌そうにキャリーの中から喋り出す。

ハラミ「俺頑張ったんだからな約束忘れるなよ。」

陽葵(ひまり)「分かってるよ。ねえ、浜名瀬(はまなせ)さん牛打(うしう)(ぼう)だっけ?どうやって見つけるの?」

志乃(しの)「ハラミに囮をしてもらうか。」

ハラミ「これ以上何すんだよ。」

志乃(しの)「病気になってもすぐに治せる心配するな。」

ハラミ「何するんだって聞いてるんだ。もう注射は嫌だぞ。」

志乃(しの)「注射はもう無い。少し牙で噛まれるだけだ。」

ハラミ「注射より痛いじゃないか。嫌だぞ。」

志乃(しの)「この後、焼肉用の肉を買いに行こうと思っていたんだが、、」

ハラミ「、、少し、だけだぞ。」

志乃(しの)達はスーパーへ寄った後、陽葵(ひまり)の家へと向かうと美和(みわ)が出迎えてくれる。

晴臣(はるおみ)は仕事で留守にしているみたいだ。

美和(みわ)「いらっしゃい。」

志乃(しの)「こんにちは。」

樹霧之介(きりのすけ)「こんにちは。」

美和(みわ)「あら、初めまして可愛いお友達ね。」

陽葵(ひまり)「え、お母さん樹霧之介(きりのすけ)見えるの?」

樹霧之介(きりのすけ)「中に入るなら挨拶しないといけないと思って見えるようにしています。」

陽葵(ひまり)「そんな事できたんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)が何回かお邪魔していると思うんですがその時はどうしてたんですか?」

陽葵(ひまり)「普通に入ってもらってた。夜だったから気を使わせたのかな?」

樹霧之介(きりのすけ)「そうだったんですね。」

美和(みわ)「用事は何か分からないけど上がって。」

樹霧之介(きりのすけ)「お邪魔します。」

志乃(しの)「お邪魔します。」

ハラミ「肉食いたい。」

陽葵(ひまり)「もー。」

志乃(しの)「いいさ。少し台所借りてもいいか?」

陽葵(ひまり)「私がやるよ。」

ハラミ「止めてくれ。」

ハラミは食い気味に陽葵(ひまり)を止める。

樹霧之介(きりのすけ)「何かあったんですか?」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)も気を付けた方がいい。」

陽葵(ひまり)「そんな事ないもん。」

ハラミ「お前、あの事忘れたとは言わせないぞ!」

陽葵(ひまり)「ちょっと味付けに失敗しただけじゃん。」

ハラミ「その後にお前がした事だ。何で砂糖を入れた。」

陽葵(ひまり)「塩入れすぎたなら砂糖入れたら中和できるかなって思って、、」

志乃(しの)「さっさと始めるぞ。お前らは先に部屋にいてくれ。」

志乃(しの)は台所を借りてお肉を焼いて2階に移動し、お肉の入ったお皿をハラミの前に置く。

ハラミ「やった。美味そうに焼けてるじゃないか。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。妖怪を呼び出すと言っていましたがどうするんですか?」

志乃(しの)「これを使う。」

志乃(しの)は4号に粉末の入った壺を持って来てもらう。

陽葵(ひまり)「それ何?」

志乃(しの)血梅香(ちばいこう)。この匂いは血を好む妖怪を呼び寄せるんだ。」

ハラミ「それなら俺いらないんじゃないか?」

志乃(しの)「近くに来て美味しそうな獲物がいなければすぐに帰ってしまうだろ。」

陽葵(ひまり)「美味しそう、、」

陽葵(ひまり)はハラミの方をチラッと見る。

ハラミ「ハミミへフンハホ(何見てるんだよ)。」

ハラミは口にお肉を詰め込みながら喋っている。

志乃(しの)「適度に太った良い感じの囮がいるんだ。使わない手はないだろ。」

ハラミ「もう俺囮になる事決まっているのか?」

志乃(しの)「肉食べただろ。」

ハラミ「確かに約束したけど、、」

志乃(しの)はハラミがお肉を食べ終えたことを確認すると3号を竹筒から出して血梅香(ちばいこう)を焚いてもらうと部屋中に木と鉄のような匂いが広がっていく。

ハラミ「ちょ。もう始めるのか?」

志乃(しの)「ああ。動くなよ。」

志乃(しの)は10号も出すと煙を風でハラミに纏わせる。

ハラミ「煙たい。」

志乃(しの)「我慢しろ。」

しばらく待っていると部屋の外から妖気が近付いてくることが分かった。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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