69話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
山姥が話すこれまで知りもしなかった両親の話を志乃はただ静かに聞いていた。
山姥「これまでが私の知るあいつらの事だ。」
志乃「、、谷を見に行っても良いか?えっと、霧依。」
山姥「その名は村から捨てられた時に一緒に捨てた。今はただの婆だよ。それから谷の方だな、私も一緒に行こう。」
そこからしばらく進んだ場所にその場所はあった。
白霧ヶ淵という名前にふさわしくその谷には深い白い霧が掛かっていて底が見えない。
志乃「ここから、、」
山姥「お前は泣かないんだな。」
志乃「受け入れ切れていないっていうのもあるが、今は少し感情が薄いんだ。」
山姥「辛い事があったのかもしれないが、たまに思いっきり泣いた方が良い事もある。戻ればいいな。」
志乃「ああ。」
山姥「気になっている事はあるか?答えれる事なら答えよう。」
志乃は谷の方を見て少し考えてから口を開く。
志乃「、、母は、少しだけだが人魚の能力があったんだよな。」
山姥「そうだな。その為にあいつに狙われた。」
志乃「母は、ここから飛び降りて、死ぬことができたんだろうか。」
山姥「その問いには答えられない。」
少しだけだが再生能力があった志乃の母親、死ねずに苦しんでいないか心配だったが志乃は前に熱でうなされた時に見た夢を思い出す。
志乃「そう言えば夢の中だったが2人の男女に会った。よくは覚えていないが子供の自分に優しく微笑んでいた気がする。」
山姥「そうか。あいつらはちゃんと成長した我が子に会えたんだな。」
志乃「あの人達が幽霊ならちゃんと逝けたんだよな。」
志乃はもう一度谷の底を覗いてみる。
700年以上経った今では亡骸も無いだろうが自分を守るために散った命を思って志乃は静かに手を合わせた。
しばらく手を合わせていたら急に後ろから声が聞こえる。
樹霧之介「志乃さん駄目です!」
その声と同時に志乃の背後から樹霧之介が抱きしめる。
志乃「ちょ。落ちたらどうする。」
最近樹霧之介達とはよく会うのでいつの間にか警戒が薄れていたのか、樹霧之介達の妖気を感じても何も思わないようになっていて後ろにいたことに気づく事ができなかった。
樹霧之介「飛び降りるなんて駄目です!」
志乃「どうせここから落ちても私は死ぬことはできない。樹霧之介の中の私はそんなに死にたがりなのか?」
樹霧之介「違うんですか?」
山姥「はは、お前思いの可愛いお仲間じゃないか。」
樹霧之介「え、あ、あなたは?」
樹霧之介は慌てて志乃から離れる。
山姥「ただの婆さんだよ。」
樹霧之介「志乃さんはここにあの玉の事を調べに来たんですよね?この方が何か知っているんですか?」
山姥「玉?」
志乃「忘れてた。そう言えばそっちも調べているんだったな。」
志乃はポケットに入れていた呪いの玉を取り出す。
山姥「少し見せてくれ。」
樹霧之介「志乃さん、この方は何者なんですか?」
志乃「元山の巫女の山姥だ。」
樹霧之介「元巫女さんなんですね。」
山姥「元元煩いぞ。確かに現役ではないが何か気に障る。」
樹霧之介「失礼しました。」
志乃「それでその玉について何か分かるか?」
山姥「あいつはたまにここに来ていた。私はその時だけ起きてあいつを観察していたんだ。この玉にはあいつと同じような呪いの気配がする。」
志乃「ならそいつが作った玉なのか?」
樹霧之介「あの、あいつとかそいつって誰の事ですか?」
志乃「えっと、惣領でいいのか?」
山姥「私もあいつの名は知らん。適当にそれでいいだろ。」
樹霧之介「惣領ってどこかのお偉いさんですか?」
山姥「それこそ元かもしれないがな。」
樹霧之介「それでその人がどうかしたんですか?っていうか人なんですか?」
山姥「私はどこまで言って良いのか分からん。説明は任せたぞ。」
志乃「え、あ、、えっと、、」
急に振られて志乃は口籠ってしまう。
樹霧之介「え、そんなに言い難い事ですか?」
志乃「まず、私がここに来た理由だが。」
樹霧之介「はい。」
志乃「とある筋からここが私の両親が亡くなった場所だと聞かされたからだ。」
樹霧之介「志乃さんの両親?もしかしてここから飛び降りたんですか!?」
志乃は静かに頷く。
樹霧之介「ならお墓参りって事ですよね。僕、それを邪魔したんですか?」
志乃「そんな事は無い。墓参りはついでだから。」
樹霧之介「いや、ご両親ですよ。ついでではないですよ。」
志乃「この玉の事も知れるかもと思って来た。」
樹霧之介「いや、志乃さんさっきまでその玉の事忘れてましたよね。」
志乃「仕方ないだろ。たまたま両親の事を知っているものに出会ったんだから。」
樹霧之介「それがこの方なんですか?」
志乃「そうだ。私の母の友人で一通り聞かせてもらった。」
樹霧之介「なら志乃さんの両親が飛び降りた理由も?」
志乃「ああ、だがこれは私の問題だ。お前は気にしなくていい。」
樹霧之介「、、志乃さん無理してませんか?」
志乃「していない。どうした?」
樹霧之介「たとえ知らなかったとしても両親が亡くなった話を聞いたんです。悲しくないんですか?」
山姥「なんだ。こいつはあの事知らないのか?」
樹霧之介「あの事?」
志乃「私の感情が薄い事はこいつも知っている。」
樹霧之介「それでも、親の死を知って泣けないのは辛くないですか?」
志乃は樹霧之介に見つめられて気まずそうにしている。
志乃「、、そうだ、山姥。その玉の呪いの効果は分かるか?」
山姥「これはあいつの分身体だ。」
志乃「ならこれが惣領なのか?」
山姥「分身体と言ってもこれだけでは何もできない。これを呑んだ妖怪に意識は移せるだろうがな。」
志乃「だがその玉を吞み込んだ野槌が巨大化していた。何か分からないか?」
山姥「これを呑めば呪いも移る。あいつ自身呪いで姿が変わっていたらしいからな。そんな効果があってもおかしくはない。」
志乃「そうか。」
山姥「だが出会ったのが野槌で良かったな。見える妖怪だったらお前の居場所がバレていたかもしれない。」
志乃「そうだな。次から気を付けよう。」
樹霧之介「志乃さんは誰かに狙われているんですか?」
志乃「樹霧之介、私は山姥と少し話したい。お前は一度帰らないか?」
樹霧之介「邪魔はしないのでここにさせてください。」
樹霧之介は志乃の服を掴んで必死に訴える。
山姥「仲間なんだろ?秘密は良くないと思うぞ。」
志乃「はあ、それならもう1人聞かせたい奴がいる。一旦妖ノ郷に戻ろう。」
樹霧之介「はい。」
志乃「山姥。お前はどうする?」
山姥「私の友はもういない。だがその友が命懸けで守った奴の今を見てみたい。一緒に行っても良いか?」
志乃「ああ。樹霧之介も良いか?」
樹霧之介「もちろんです。是非来てください。」
志乃達は歩いて妖ノ郷の入り口がある場所へと向かう。
高い草は樹霧之介の体を半分ほど隠すが樹霧之介は樹の根を操って草を退けて道を作り、歩いて行く。
山姥「器用なもんだね。」
樹霧之介「ありがとうございます。」
山姥「私は山の巫女をしていたから木霊には何度かあった事があるがここまで木を手足みたいに使えるものはいなかったな。」
樹霧之介「ならどんな事をしていたんですか?」
山姥「ほとんどが声だけだったね。人型自体が珍しい。」
樹霧之介「そうなんですか?」
山姥「父と言っていたからお前は2代目なんだろう?余程人好きな奴なんだろな。」
樹霧之介「あ、いえ。人が好きなのはどちらかと言うと母の方なんです。」
山姥「ほう、2体の妖怪から生まれた2代目か珍しいね。」
樹霧之介「そうなんですか?」
山姥「妖怪は子を作る時に妖力のほとんどを使う事になるから2代目を作る妖怪自体が珍しいんだ。まあ、複数体で1体の子を作れば負担は軽くなるが、気が合わないと難しいか。」
樹霧之介「母が僕を作った時は母の妖力は限界を迎えていました。なので父と一緒に僕を作ったんだと思います。」
山姥「そうか、何か嫌な事を思い出させたみたいで悪かったね。」
樹霧之介「大丈夫です。これは父から聞いた話で僕の記憶には無いので。」
山姥「そうか。ほら、お前も両親の記憶は無いんだろ。私から聞いただけの話であまり落ち込むな。」
志乃「あ、ああ。」
樹霧之介「志乃さん。大丈夫ですか?」
志乃「大丈夫、、いや、これまで考えてこなかったからこそいきなり聞かされて少し混乱している。」
山姥「仕方ないとはいえ生まれたばかりの赤ん坊を他人に預けたからな。そりゃ両親の事なんて考えられないさ。」
志乃「まあ、そっちもそうなんだがまさか700年以上悩んでいたこれが血筋と親戚のせいだとは思って無くてな。」
樹霧之介「そうなんですか?」
志乃「詳しくはあっちに着いてから話すよ。」
山姥「それでお前はこれからどうしたい?」
志乃「これから?」
山姥「この話を聞いて何かしたい事はできたか?」
志乃「、、いいや。これまで通りだ。」
山姥「そうか、残念だ。」
樹霧之介「残念?」
山姥「いや、何でもない。」
それから3人は妖ノ郷にある樹霧之介の家へと到着した。
樹霧之介「父さん、ただいま。」
黒根「おかえり。ちゃんと志乃とは会えたようじゃの。」
樹霧之介「はい。」
黒根「それでその後ろの客はどんな用かの。」
志乃「この山姥は元山の巫女で私の母の友人だ。」
黒根「ならお主、親の事が分かったのか。」
樹霧之介「そうなんです。それで志乃さんの不老不死の事も何か分かったようなんです。」
黒根「そうか。じゃがそれらは喜ばしい事では無さそうじゃの。」
黒根は気落ちしている志乃を見る。
志乃「話さないと駄目か?」
黒根「わしはお主と人魚を探したんじゃぞ。」
志乃「だから言いたく無い。」
山姥「話したい奴がいると言ったのはお前じゃなかったか?」
志乃「確かに言ったが、、」
黒根「何じゃハッキリしないの。お主らしくない。自身の産みの親の事なんて今まで考えてこなかったじゃろう。」
志乃「それは調べる術も無いし、考えるだけ無駄だと思っていたからだ。」
黒根「それにお主、あの玉の事を調べに行ったはずなのに何でお主の出生の話になっとるんじゃ?」
志乃「そっちも関係あったんだ。」
黒根「ますます分からん。さっさと話せ。」
樹霧之介「僕も知りたいです。志乃さんの両親は何であんな所で死ななくてはいけなかったんですか?」
志乃「分かった。話すから落ち着け。」
志乃は山姥から聞いた話をかいつまんで話し、玉はその惣領が妖怪を手下にするためにばら撒いていると説明した。
黒根「はぁー。結局探していた人魚はお主の中におったんか。」
樹霧之介「えっと、志乃さん、いや、清埜、さん?」
志乃「志乃でいい。その名前は両親が付けてくれた大切な物ではあるがいきなり受け入れる事はできない。」
樹霧之介「じゃあ、志乃さん。志乃さんの中にもその呪いがあるんですよね。大丈夫なんですか?」
志乃「今までも平気だったからいきなり変わる事は無いとは思う。」
山姥「そうだな。あいつの血縁でもあるお前の中に入ったせいか、お前に合わせて大きく変化しているようだ。」
志乃「呪いの効果を変える事ができたのもそのせいなのか。」
樹霧之介「だけど惣領って人は姿が変わったんですよね。志乃さんがそうなる可能性はあるんですか?」
山姥「今のところ人魚の血と呪いが上手く噛み合っているし、あいつのようにはならないだろう。」
黒根「人魚と呪いを作った奴両方の血が流れているからこそ釣り合いが取れているのか。」
樹霧之介「それでその人ってまだ生きているんですか?」
志乃「この玉が新しい物だったからいるんだろうな。」
樹霧之介「きっと志乃さんの事探してますよね。」
山姥「だがその呪いを受けているという事はその時にもう見つかっているはずだ。何故700年も逃げる事ができた?」
志乃「人魚を食べたのが小さい時だったから、もしかしたらあっちは私が子供だと思っているのかもしれない。」
山姥「子供の姿しか知らなくても推測はできるだろ。」
志乃「あ、いや。実は篁音から私以外の不老不死の少女の話を聞いていたんだ。その人は成長しなかったらしい。」
山姥「篁音?」
志乃「知り合いの烏天狗だ。」
樹霧之介「その不老不死の少女はどうなったんですか?」
志乃「、、食べられたらしい。」
山姥「なるほど、あいつは人に呪いを掛けた後に取り込む事で自身の呪いを変化させようとしているのか。」
樹霧之介「そんな事出来るんですか?」
山姥「同じ呪いでも本体を変えると効果が変わる事があるんだ。望んだ結果になった呪いを取り込んで自身の呪いの効果を上書きしようとしているんだと思う。」
樹霧之介「本体を変えると効果も変わるのなら取り込んだ呪いの効果も変わるんじゃないですか?」
山姥「だから本体ごと取り込んでいるんだろう。」
樹霧之介「食べるってそういう、、」
黒根「それでそいつに食べられたらどうなるんじゃ?」
山姥「それは分からない。死んでいるのか、あいつの中で生き続けているのか。」
黒根「と言うかそいつ、前に言っていた出来損ないを生み出している奴じゃないのか?そいつも不死身なんじゃろ?」
山姥「出来損ないか、そう呼ばれているのであればそれは呪いを受けて望んだ結果にならなかったもの達のなれの果てだろうな。あいつは呪いを通して外を見聞きできるからその為に生かしているんだろう。」
樹霧之介「志乃さんにも呪いは掛かっているんですよね。志乃さんを通して何か見聞きする事もできるんですか?」
山姥「こいつの中の呪いは完全にこいつを本体としている。そういう事はできないだろう。」
樹霧之介「それなら一先ず安心ですね。」
山姥「その代わり解呪する事が難しくなっているな。」
志乃「解呪自体はできるのか?」
山姥「不死の呪いだからな。今のところ方法はない。」
志乃「そうか、、」
黒根「それにしてもわしらは人魚を探し、あちらは子供を探していたのか。どちらも見当違いなものを探していたんじゃの。」
樹霧之介「あっちにはいつまでも勘違いしていて欲しいですね。」
黒根「じゃがそいつは志乃の両親の仇でもある。お主はどうするつもりじゃ?不死身であれば倒せないじゃろ。」
山姥「倒せないなら封印すればいい。とは言ってもお前はそういうのは苦手みたいだがな。」
樹霧之介「どういうことですか?」
山姥「お前の封印は雑な物ばかりだ。知識はあるが誰かから本格的に学ぶ事はできなかったんじゃないか?」
志乃「私の師匠が教えてくれたのは戦う方法がほとんどで封印の知識は文献での知識だ。今までは教わった結界術や札でそれらしい事をして何とかなっていたところもあったからな。あまり考えてこなかった。」
山姥「自己流でここまでできるのも凄いがな。お前が良ければ私が教える事もできるぞ。」
志乃「良いのか?」
山姥「ああ。お前の母とは知識を交換し合った仲だ。そっちの技術も教える事もできる。」
志乃「ならお願いしたい。」
山姥「あい、分かった。」
黒根「志乃、学校はどうするつもりじゃ?放課後や休日だけで学べる事か?」
志乃「、、辞めるしかないだろうな。」
黒根「良いのか?友も出来たんじゃろ?陽葵なんて煩くするじゃろ。」
山姥「友もいるのか。私はそこまで強制するつもりはないのだが。」
志乃「私が学びたいんだ。それに、、」
黒根「それに何じゃ?」
志乃「何でもない。山姥、住むところはあるか?」
山姥「昔住んでいた場所はもう無いだろうし、探さないとな。」
志乃「黒丸、妖ノ郷で住めそうなところはあるか?」
黒根「あるぞ。樹霧之介、紹介してやれ。」
樹霧之介「はい。」
志乃「後、山姥は元巫女ならこういう空間の知識もあるんじゃないか?」
山姥「あるがどうしたんだ?」
志乃「ここを管理していた妖怪が今はいなくてこの黒丸と樹霧之介が見よう見まねで管理しているんだ。手伝うことはできないか?」
山姥「そういう事なら手伝おう。」
樹霧之介「良いんですか?」
山姥「ここに住まわせてくれるなら少しは働かないとな。」
樹霧之介「助かります。今色んな所に行けるように出入口を増やしているんですが上手くいかない事が多いんです。」
山姥「分かった、見てみよう。」
志乃「私は退学の手続きとかあるからそろそろ戻る。」
樹霧之介「志乃さんはこの後もあのアパートに住むんですか?」
志乃「、、陽葵に場所教えてしまったからあそこに住み続けることはできないな。」
樹霧之介「ならいっその事ここに住みませんか?」
黒根「そうじゃな。山姥に修行つけてもらうのであれば近くに住んだ方が良くないか?」
志乃「それなら昔みたいにあの屋敷にここへの入口を作るのはどうだ?」
黒根「ならこの裏にでも繋げるか?」
志乃「それは遠慮する。何でわざわざお前に出入りを監視されないといけないんだ。」
黒根「仕方ない。なら昔と同じところで良いか。」
志乃「昔と同じ、、それでもここと近いな。」
黒根「何故駄目なんじゃ。」
志乃「まあいい。そこにする。」
山姥「なら私の最初の仕事は志乃の屋敷とやらに出入口を作る事か?」
志乃「お願いできるか?」
樹霧之介「先に志乃さんのアパートへ行きますか?」
志乃「いや、先に山姥の家を決めてくれ。明日また来るからそれはその時にしてもらう。」
樹霧之介「山姥さんもそれでいいですか?」
山姥「私はどちらでもいい。」
志乃「なら私は色々準備があるから帰る。山姥の事、よろしくな。」
樹霧之介「はい。」
それから志乃は一旦アパートへ帰り退学や退去の準備を進める。
次の日のお昼に志乃が妖ノ郷へ行こうと外へ出ると既に樹霧之介と山姥が近くまで来ていた。
志乃「2人共来てくれたのか。」
樹霧之介「どちらにしろここに来る事にはなるんです。志乃さんの手間を省こうと思って。」
志乃「すまないな。」
山姥「それにしても時間が経っていた事は知っていたがここまで人の世が変わっていたとはな。」
樹霧之介「さっきからすごい周りを見ていましたね。」
山姥「私らを見れる人間も少なそうだしこの後町を散策しても良いか?」
樹霧之介「はい。良ければ案内しますよ。」
山姥「ありがとう。じゃあ、さっさと仕事を終わらせるか。」
そう言って山姥は屋敷のある隠里に入ってそこから妖ノ郷へ繋がる出入口を作る。
山姥「常闇を使って時間を止めるとか、結構大胆な事をしているんだな。」
志乃「ここを残したかったからな。」
山姥「未来を心配するのもたまには良いのかもな。」
志乃「それでこれ、もう少し安全に固定することはできそうか?」
山姥「確かに今のままだと誰かが下手に触れれば暴走しかねないな。まあ、ここはあまり人を入れないんだろ。」
志乃「ああ。この出入り口も特定のものしか通れなくしてくれているんだろ?」
山姥「そういうのは分かるのか。そうだ、お前の許可無しでは通れないようにした。」
志乃「助かる。」
山姥「それで修行はいつからする?そうすればその封印も安定すると思うんだが。」
志乃「先に学校の手続きとかを終わらせたいから1週間ほど時間が欲しい。」
山姥「構わない。いつでも待っている。」
志乃「助かる。」
それから1週間後、志乃の修行が始まる。
山姥が巫女時代に修行していた事もあり、山姥と出会ったあの山で行う事になった。
山姥「それじゃ私とお前は師弟関係になったわけだが。」
志乃「はい。」
山姥「いや、言葉遣いは前と同じで良い。急に変えられても変な感じだ。」
志乃「なら他に何かあるのか?」
山姥「私との間で隠し事は無しにしないか?」
志乃「何の話だ?」
山姥「今のお前の目はあの時の両親と同じ目をしている。追い詰められて自害を決めたあいつらにな。」
志乃「、、そうか。」
山姥「何を悩んでいる?」
志乃「別に、、」
山姥「そんな事ないだろ。お前は今何か思いつめている。」
志乃「、、私は、仲間と同じ時間を送れない。」
山姥「それでも一緒にいてくれる仲間はいる。」
志乃「だが必ず別れの時はくる。」
山姥「お前の父もそんな奴だったな。悪い事ばかり考えて今を大事にしないんだ。」
志乃「今を大事に、、」
山姥「最初お前の中を見た時に封印を2つ見つけた。何を封印しているんだ?」
志乃「残忍に殺された妖怪や人の魂を使った呪い、、」
山姥「荒ぶる魂は危険だ。そんなものをよく自分の中に封印しようとしたな。」
志乃「自暴自棄になっていたからな。」
山姥「お前の仲間が不憫に感じるよ。それで最後の1つは何だ?」
志乃「、、私は、もうあいつに見つかっている。」
山姥「急になんだ?あいつは子供を探しているんじゃなかったのか?」
志乃「私が呪いの効果を変えれる事は話したよな。」
山姥「ああ。」
志乃は山姥の前で子供の姿になる。
志乃「この姿は小さな隙間に入るのに便利なんだ。前に海中でこの姿から大人の姿に戻ったところを出来損ないに見られて足を掴まれてから頭の中に声が響くんだ。それを封印している。」
山姥「既に印をつけられていたのか。」
志乃「印?」
山姥「あいつはお前の両親に逃げられてから逃がしたくない者には印を付けているんだ。」
志乃「封印されていたのによく知っているな。」
山姥「あいつはあの姿になってから話す人がいないのかあの谷に来てはよく独り言を言っていたからな。」
志乃「頭の中で聞いてもいないのにペラペラと喋っていたからそれは分かる気がするな。」
山姥「まあ、それを封印したのは賢明な判断だ。封印術を先に教えるからその封印はもっと強くしろ。」
志乃「ああ、、」
山姥「今から教える技はお前の選択肢を広げると信じている。だから後悔する事だけは選ぶなよ。」
志乃「分かっている。」
山姥「私はあいつらをあいつの手から逃がしたが、正直後悔している。あいつらが生きてもう一度お前を腕に抱けていた未来もあったんじゃないかって。」
志乃「急にどうしたんだ?」
山姥「あそこではなくもっと別の場所に誘導できていれば、あいつの手の及ばない場所を知っていればと、私はあの結界の中でそんな後悔ばかりしていたよ。お前は友を失い残された奴の気持ちは分かるだろう。」
志乃「だが私はそれを知ってもそれを繰り返すしかないんだ。この終わるかも分からない人生をずっと、仲間との別れを恐れながら生きるか、1人で寂しく生きるかしかないんだ。」
山姥「、、そうだな。これまでの時間を寝て過ごした私には分からない事もあるか。すまない。」
志乃「あ、いや。私も、、言い過ぎた。」
山姥「修行を始めよう。お前が生きている事が知られているなら時間は無いからな。」
志乃「ああ。よろしく頼む。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




