68話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃は先日見つけた呪いの玉を調べていると最近できたものだという事が分かる。
次に誰が作ったかを調べるためにこんな事ができる人間がいないか前に妖怪達を誘拐していた律樹に話を聞くために律樹のいる烏天狗の山へ行く事にした。
志乃が天狗の山へ行くと歓迎を受けたので全員のしながら屋敷に辿り着くと篁音が迎えてくれた。
篁音「あら、志乃さんいらっしゃい。」
志乃「相変わらず話を聞いてくれないな。」
篁音「わざとですよ。私のお供で何回もあなたを見ているのに知らないわけないじゃないですか。」
志乃「つまりここに来るたびに相手しないといけないのか。」
篁音「相手になれるものがあまりいないので良い刺激になっています。それで今回は何の用ですか?」
志乃「ああ、律樹はいるか?少し聞きたいことがあってな。」
篁音「今はお風呂の掃除をしていると思います。終わったらこちらに来るように伝えますのでそれまで2人でお話ししましょうか?」
志乃「話す事なんてあるのか?」
篁音「志乃さんはあの人間に何の用なんですか?」
志乃「先日野槌を倒したんだがそいつがこんな物を呑み込んでいてな。最近作られた感じだったからこういう物を作る者に心当たりが無いか聞きたくてな。」
篁音「これですか、、確かに呪いの気配がしますね。」
篁音は志乃が取り出した玉をまじまじと眺めていたが、しばらくして何かに気づいたようにどこかへ行ってしまった。
しばらく待っていると篁音が戻って来ると、手には赤黒いデコボコした胡桃大の石のような物を持っていた。
志乃「それは?」
篁音「前にお話したお千代がいなくなった場所に落ちていました。」
志乃「見てみても良いか?」
篁音「ええ。」
志乃がその石のような物を持ってみると急に志乃の頭の中に声が響く。
???「〓〓〓〓、〓〓〓〓〓〓、〓〓〓〓。」
それは言葉の様だがまるで水の中で話しているような感じで意味は聞き取れなかったがいきなり頭に響いた声に驚いた志乃はその石を放して床に落としてしまう。
志乃「すまない。」
志乃は慌てて落としてしまった石を拾い上げるが次は何も聞こえない。
篁音「どうしました?」
志乃「これを持った途端声が聞こえた。」
篁音「どんな声でなんて言っていましたか?」
篁音は志乃に詰め寄り質問をする。
志乃「はっきり聞こえたわけじゃない。性別すらも分からない声で内容も分からなかった。」
篁音「そうですか。今は聞こえますか?」
志乃「最初の1回きりだ。」
篁音「女性の声ならお千代かもとは思ったんですが。」
志乃「はっきりとは聞こえなかったが多分お千代とは違うと思う。」
篁音「何でそう言えるんです?」
志乃「内容は聞き取れなかったが高圧的な言い方だった。」
篁音「ならお千代を攫った奴の声でしょうか。」
志乃「断定はできないが可能性は高いな。」
志乃はその時、その声が度々自分の頭の中で聞こえる声とそっくりな事は言えなかった。
篁音「それでこれ、志乃さんが持って来たものと少し似ていると思って持って来たんですがどうでしょうか?」
志乃「私が持って来た玉からは声は聞こえなかった。形は違うが大きさや色は似ているな。後は呪いの部分だが、、」
篁音「私の持って来た方は最初から呪いの気配はありませんでした。でも役割が終わって無くなった可能性もありますよね。」
志乃「私もその線が強いと思っている。」
篁音「ですがもう1つ疑問が増えましたね。」
志乃「あの声か。せめて何を言っているか分かれば良かったんだが。」
篁音「時間が経てばまた聞こえるかもしれません。」
志乃「、、帰りにまた触れてみるか。」
篁音「お願いします。出来るだけお千代の情報を知りたいんです。」
志乃「ああ、、」
志乃はお千代の事になると必死になる篁音を見て隠し事をしている事に罪悪感を覚えた。
そんな時、掃除を終えた律樹がやって来た。
律樹「お呼びですか?ってあなたは。」
律樹は基本的に屋敷の掃除等を任されていて、生活は変わったが特にやつれているとかも無く元気そうだ。
志乃「久しぶりだな。」
律樹「なら僕を呼んだ理由はあなたが関係しているのでしょうか?」
志乃「すっかり丸くなったな。」
篁音「ふふ。調教は得意ですから。」
律樹「そんな事はないです。食事に関しては最初戸惑いはありましたが衣食住は保証されてますし、仕事も聞けば教えてもらえるので居心地は良いです。」
志乃「そうか。それで私が来たのはお前に聞きたいことがあったからだ。」
律樹「僕にですか?」
志乃「ああ、お前以外で呪具や呪いを扱える人物は知らないか?」
律樹「僕以外だと怜司しか知りませんね。」
志乃「まあ、そうか。」
篁音「私も他に悪さするような者はいないか聞きました。」
志乃「なら何で初めに言わない。」
篁音「その玉について何か知っているか確認したかったんです。律樹、何か知りませんか?」
律樹「いえ、初めて見ます。」
篁音「そうですか。そうだ、律樹もちょっとこれ持ってみてください。志乃さんちょっと借りますね。」
篁音は志乃の手の上から玉と石を取り上げて律樹に渡すと、律樹はそれをまじまじと眺めている。
律樹「ただの石と玉に見えますね。」
篁音「頭の中に声が聞こえたりとかはありませんか?」
律樹「いえ、そういう事はありません。」
篁音「そうですか。それなら志乃さんだけ声が聞こえたという事ですが何故でしょうか。」
志乃「これから調べる。」
篁音「なら私も手伝いましょう。」
志乃「え。」
篁音「この石の所有は私ですし、お千代の手掛かりが掴めるなら協力は惜しみません。」
志乃「先に玉の方を調べたい。」
篁音「一緒に調べればいいじゃないですか。それに志乃さん、私に隠し事していますよね。」
志乃「それは、、」
篁音「いいんですよ。隠し事の1つや2つ、誰にでもありますから。ですがそれがあの話と関係あるのであれば話は別です。」
律樹「あの話?」
篁音「あなたはもう大丈夫です。仕事に戻ってください。」
律樹「あ、はい。」
律樹が仕事に戻ると篁音は志乃に向き直る。
篁音「さて、私はあなたに情報を提供しました。あなたも知っている事を話すべきでは?」
志乃「お千代に繋がるかは分からないが去年の秋に出来損ないと出くわした。」
篁音「それはどこでですか?」
志乃「猫の国のある港だ。」
篁音「あちらの方ですか。結構行動範囲は広いんですね。それでここで話すという事は会っただけじゃないですよね。」
志乃「...。」
篁音「喋りにくい事でしたらまたお酒でも用意しましょうか?」
志乃「いらない。今、野々香はどうしている?」
篁音「あの子も夏休み中ですが何やら大学でやりたい事があるとかで里帰りはしてくれませんでした。」
志乃「ならいい。」
篁音「あの子がいると喋りにくい事ですか?」
志乃「、、荒鱓を退治した後、海中で足に怪我を負わされた。」
篁音「動きにくい場所とはいえ志乃さんに怪我させるなんてやりますね。」
志乃「そして、その後から頭に声が響くようになった。」
篁音「それはお千代と同じじゃないですか。」
篁音が手を挙げると周りの烏天狗達は戦闘態勢に入る。
志乃「ここで戦うのであれば大百足を呼び出すぞ。」
篁音「ですがみすみす友を2人も奪われるわけにはいきません。」
志乃「対策はある。」
篁音「本当ですか?」
志乃「ああ、今は準備中だ。」
篁音「まあ、いいです。ですが分かっている事は全て話してもらいますからね。」
篁音が手を下ろすと戦闘態勢は解かれて烏天狗達は通常の勤務に戻る。
志乃「今は声を封印しているからそこまで情報は無い。」
篁音「前に聞いてきたきよのというのはもしかしてその声から聞いた名前ですか?」
志乃「封印しても聞こえる時は聞こえるからその時にたまたま聞いたんだ。」
篁音「封印はどのくらい持ちそうなんですか?」
志乃「私の中の呪い。これを全て解呪するまでは持たせるつもりだ。」
篁音「それはいつですか?」
志乃「今年の冬休みまでには解呪は終わると思う。本格的に動くのはそれからだな。」
篁音「そうですか。」
篁音は少し考えて覚悟を決めたように話し出す。
篁音「志乃さん。その封印、少しの間解くことはできませんか?」
志乃「今ならまだ弱いから出来るとは思うが。」
篁音「お千代は頭に響く声から情報を得ていました。危なそうならこちらで対処しますのでお願いできませんか?」
志乃「この声と話すのか、、」
篁音「こればかりは無理強いできませんがどうかお願いします。」
志乃「、、分かった。」
篁音「本当ですか?」
志乃「情報はあった方がいい。一時的に解くから危なくなったらこの封呪符を頭に貼ってくれ。」
篁音「分かりました。」
志乃は一息つくと胡坐をかいて瞑想する時と同じ姿勢を取る。
志乃が目を瞑って動かなくなってから1時間が経とうとしていたところだった。
志乃「うっ。」
志乃は急に口元を押さえ、顔を誰にも見られないように後ろを向いて背を丸める。
篁音「志乃さん!?」
いつも冷静な志乃がいきなり取り乱しているのを見て篁音はすぐに駆け寄り封呪符を貼る。
それでも志乃の震えは止まらず篁音が落ち着くまで優しく背をさすったり声かけをしていると少し落ち着いてきたのか顔を上げる。
篁音「大丈夫ですか?私が無理言ったせいで、すみません。」
それに志乃は首を横に振ると震えた弱々しい声で答える。
志乃「大丈夫。大丈夫、、」
そうは言うが志乃の顔色は悪く、膝の上で組んでいる手はまだ震えていた。
篁音「こんな時に聞くのは心苦しいですが、何か分かりましたか?」
志乃「、、全て本当かは分からない、、嘘で、あってほしい、、」
弱々しい声で話す志乃を見て篁音はこれ以上は聞けず震える志乃の手を握り、優しく抱きしめる。
篁音はお千代も頭の声について話す時は震えていた事を思い出して志乃にこんな事を頼んだ事を後悔していた。
篁音「今日はこのまま泊まって行ってください。布団を用意します。」
志乃の反応は無く、まだ震えているので篁音は志乃を両手で抱き寄せて自分の心臓の音を聞かせる。
しばらくしたら落ち着いてきたのか志乃が篁音から離れて口を開く。
志乃「お千代の事が分かった。」
篁音「あなたの様子からして良い事ではない事は分かりますが頼んだのは私です。教えてくれますか?」
志乃「まずは篁音が持って来たその石は私が回収した玉とは少し違うものだが同じような物だった。」
篁音「やっぱりこの石も呪いの媒介だったんですね。」
志乃「その石の中にあった呪いはお千代に移ってお千代は魚の姿になった。」
篁音「魚、出来損ないのような姿ですか?」
志乃は首を横に振る。
志乃「本当に魚だ。普通の魚と違うのは髪が生えている事くらい、、」
そこまで言うと志乃は口ごもる。
篁音「少し違いますが人魚みたいですね。」
志乃「私が食べた人魚もそんな感じだった、、一切れだけだったけど、私は、、」
志乃の様子に篁音は何かに気づき、すぐにフォローしようとする。
篁音「それは志乃さんが小さい時です。小さい子どもなんて何でも口に入れようとしますよ。」
志乃「それは3歳くらいまでの話だろ。あの時私は自分の判断で肉を口に入れた。」
篁音「それでも魚であれば食べれると思ってしまいます。あなたは悪くありませんよ。それに一切れだけだったんですよね。残りはどうなったんですか?」
志乃「確かにそれは、自分が食べたと声の主が言っていた。あの後も生きてはいて再生し、海へ戻ったらしい。」
篁音「ほら、志乃さんはお千代を殺してはいません。」
志乃「それでも食べた。人魚と分かっていた時点で半分は人間だと分かっていたのに。」
篁音「飢饉の時なんて生きるために人の肉を食べる人間はいました。」
志乃「私が食べたのは興味本位からだった。それに切った事によって苦しめた事に変わりはない。」
篁音「もう、終わった事です。事実が分かったからと言って苦しむ事ではないはずです。」
志乃「それだけじゃない。」
篁音「他に何があったんですか?」
志乃「それだけじゃない、けど、、」
篁音「言った方がスッキリしますよ。」
志乃「...。」
篁音「言いたくない事ですか?」
志乃「...。」
篁音「聞きたい事は聞けました。無理に言わなくてもいいです。」
志乃「、、すまない。」
篁音「無理言ってすみませんでした。客間に布団を用意してあります。今日はもう休みましょう。」
志乃「、、ああ。」
篁音「それで封印は大丈夫ですか?」
志乃「一部しか解いてなかったから再封印は出来た。」
篁音「それでもこれだけ影響があるんですね。」
志乃「声が聞こえるだけにしたはずなのにな。」
篁音「声以外にも何かあるんですか?」
志乃「洗脳のような頭に干渉してくる感じがした。」
篁音「志乃さん、やっぱりここで暮らす事を考えませんか?」
志乃「駄目だ。話を聞いて余計に放っておけなくなった。」
篁音「、、私では、止められないんでしょうね。」
志乃「...。」
篁音「、、暗い話は止めましょう。寝る前にさっぱりして少しでも気分を晴らしましょうか。」
篁音は志乃の手を引いてお風呂場に行き、志乃はまた篁音に洗われてそれが一通り終わると志乃は客間に案内された。
篁音「何かあればすぐに駆けつけます。ちゃんと知らせてくださいね。」
志乃「ああ。」
篁音は静かに襖を閉めて行ってしまった。
真っ暗な部屋で1人で布団の中に入るが、さっきの事を思い出して寝れずにいると、心配した管狐達が竹筒から出て来た。
志乃はそのうちの1匹を撫でていると自分もと他の管狐が志乃の手の下に入って来る。
その光景を見て志乃の気持ちが少しだけだが軽くなり、3号に灯りを点けてもらい、9号に風呂敷とブラシを持って来てもらうと風呂敷を床に敷いて管狐達のブラッシングを始めた。
志乃「私を風呂に入れる篁音もこんな気持ちなのかな。」
少し独り言を喋りながらブラッシングが一通り終わると眠気が来たので志乃は眠りにつく事にした。
その夜、志乃は夢を見る。
それは志乃が人魚を食べる時の夢で、そこで志乃は第三者視点でその様子を見ていた。
漁師の1人が獲って来た見た事のない魚。
興味津々でそれを眺める子供の自分。
この夢で初めて志乃は人魚の目が自分を見ていたことに気づいた。
当時は背が低く人魚自体をあまり見れていなかったのもあったが人魚の顔は髪の毛で覆われており見えていなかったのだ。
言い訳にはなりそうだがそれもあり人の髪の毛が生えた魚としか思っておらず、まさか元人間で知り合いの友だったなんて、この時は思いもしなかったし、分かるわけもなかった。
それでも漁師達が匂いで食べる事を断念した後にその人魚に近づく自分にその事を伝えたかったがその声は届くわけがない。
そして子供の志乃はゴミ捨て用の桶から捨てられた人魚を一切れ口に入れてその場で動かなくなっていた。
匂いがきつくて吐き出そうか考えていたことは覚えているがこんな長い間止まっている事なんて自分は知らず、しばらくして育ての親である漁師に声を掛けられて我に返る。
その時に口に含んでいた肉は飲み込んでしまったがこれで良かったと思ってしまう。
桶に捨てられた人魚を見ると髪の毛の間から悔しそうな顔が覗いていたからだ。
あのままだったらもしかしたらもっと食べていたのかもしれない。
あの後あの匂いがずっと忘れられなかったのは長い間口の中に含んでいたからだった。
そしてずっと興味本位で食べたと思いこんでいたが、実際にはお千代の人魚に乗り移った声の主が人魚を食べさせようと子供の志乃を操っていた。
自分の意思ではない事に少し安堵したが元人間の肉を食べた事に変わりはない。
志乃は口に残る魚とは違う肉の感触と異臭を思い出して気持ち悪くなり目が覚める。
部屋の中はまだ暗かったが、障子を開けて外を確かめると少しだけ陽の光が見えた。
窓を開けると涼しい風が吹いていたのでそのまま気持ちを落ち着けていると廊下に通じる襖の方から声が聞こえる。
篁音「志乃さん、大丈夫ですか?」
志乃は声の方に近づいて襖を開けると寝間着姿で心配そうな顔の篁音が立っていた。
志乃「少し夢見が悪かっただけだ。」
篁音「私があんな事頼まなければ良かったんでしょうね。」
志乃「いつかは知る事だった。今知れて良かったと思っている。」
篁音「そうですか。」
志乃「お前は仕事があるだろ。こんな早くから起きて大丈夫なのか?」
篁音「もう十分に睡眠は取れましたから。」
志乃「それならいいが、、」
篁音「志乃さんは朝食食べれますか?」
志乃「いや、食欲は無い。」
篁音「そうですか。」
志乃「準備をしたら帰ろうと思っている。」
篁音「送りましょうか?」
志乃「1人になりたいんだ。」
篁音「、、分かりました。ですが見送りだけはさせてください。」
志乃「準備ができたら知らせる。」
篁音「はい。」
それから志乃は襖を閉めると今まで監視していた烏天狗がいなくなっている事に気が付く。
1人になりたいと言った志乃の言葉に篁音が気を使ってくれたんだろう。
志乃は準備が終わると廊下に出て9号に拍子木を持って来てもらってそれを鳴らすと篁音が慌てて出てきた。
篁音「もう行くんですか?」
陽が昇り始めた頃だったのでもう少し休んでから行くと思っていた篁音は驚いている。
志乃「これ以上迷惑は掛けれないからな。」
篁音「気にしないでください。」
志乃「それに少し調べたいこともある。」
篁音「それは今じゃなくても良いんじゃありませんか?」
志乃「調べないと落ち着かないんだ。」
篁音「そうですか。何かあればいつでも頼ってくれてもいいんですよ。」
志乃「ありがとう。」
志乃は天狗の山を出て一番近い妖ノ郷の入り口から妖ノ郷に入る。
行きたい場所が少し遠いので妖ノ郷を通って行こうとしたのである。
その時に黒根を連れた樹霧之介と出会う。
樹霧之介「志乃さん。何か用ですか?」
志乃「少し行きたい場所があったんだ。お前らこそ朝から起きているなんて珍しいな。」
黒根「久しぶりに出入口を増やしたら不安定な物もあってな。調整してきたんじゃ。」
志乃「そうか。私は妖力が使えないから直接的な手伝いはできないからな。」
黒根「お主が竹筒を置いて行った時からたまに1号も手伝ってくれとる。昨日の夜は出てきてくれんだから一晩掛かってしまったが何かあったんか?」
志乃「まあ、少しな。」
黒根「今からもどこか行くようじゃがあまり無理するなよ。」
志乃「気になった事を少し調べようと思っているだけだ。」
樹霧之介「もしかしてあの玉の事何か分かったんですか?」
志乃「分かった事もあるがもう少し詳しく調べる。」
黒根「お主がそれほどまでに手間取るなんての。ここから入って来たという事は烏天狗にも何か聞きに行ったんじゃろ。」
志乃「ああ。」
樹霧之介「何か手伝えることはありませんか?」
志乃「一晩調整していたのなら今は眠いだろ。いいから寝ろ。」
樹霧之介「志乃さんは寝たんですか?」
志乃「篁音に半ば無理矢理な。」
黒根「なら大丈夫じゃろ。わしらは帰ろうか。」
樹霧之介「はい。」
それから志乃はとある出口から妖ノ郷の外に出るとそこは人は訪れない山の奥で、少し進むとそこは膝まで届く笹やススキなどの草が生えていて獣道すら見えない。
それでも草をかき分けて進んでいくと斜面のくぼみに不自然な石の盛り上がりがあった。
志乃はそれに近づき草を退けると3つの大石が偶然にしてはあまりに整った三角形を描き、その中心に低く積まれた石群が苔に覆われていた。
志乃は石でできた三角形の中に足を踏み入れ中心の積まれた石に手を伸ばして触れてみる。
石には薄く結界が張ってあり、掛かっている術を隠しているので知らずに見ただけではそれが何かを封印している塚だとは分からないだろう。
その封印は志乃が使っている物とは違う封印術で繊細ながらも強固なので解除に時間は掛ったが何とか順番に術を解いていき、最後の石を退かすと煙と共に1人の老婆が現れた。
老婆「あんたがこの結界を解いたのか?」
志乃「そうだ。お前は山姥だな。何でこんなところに封印されているんだ?」
山姥「なんだ。何か知っていて解いたわけじゃなさそうだな。」
志乃「この先に目的の場所があるんだがこの塚を見つけて気になったんだ。」
山姥「ふむ、それはこの塚を封印した霊力がお前の霊力と似通っているからだろう。」
志乃「、、確かに。言われてみれば似ていた。何で分かった?」
山姥「私はこれでも昔は巫女だった。今は妖怪となって霊力は使えなくなったが知識や感覚は残っている。」
志乃「そうか。それでお前を封印したのは誰なんだ?」
山姥「潮埜という女だ。私がまだ巫女だった頃、山伏として私の村に来て友となった。」
志乃「友なのに封印されたのか?」
山姥「これは私を守るためだった。自分でも出れたがあいつがいなくなった世界に興味が無くてそのまま寝た。」
志乃「いなくなった?封印されたのならいるだろ?」
山姥「あいつらは大切なものを守るために自害を決めていた。私には止められなかった。」
志乃「、、もしかしてそれはこの先にある谷と関係があるのか?」
山姥「逃げきれないと悟った2人はそこに向かう途中で私を封印した。十中八九飛び降りただろうな。」
志乃「ある人物に私の両親はこの先の谷で自害したと聞かされた。」
山姥「封印を解いた時点で気づいてはいたがお前が清埜だな。」
志乃「私はずっと志乃と呼ばれていた。今更その名前は受け入れられない。」
山姥「なら志乃と呼ぼう。それでもその名はあいつらがお前の親であった証だ。それだけは忘れないでやってくれ。」
志乃「もちろんだ。」
山姥「それでお前はここで何があったか知りたいか?」
志乃「、、私は正直700以上年生きてきた中で両親の事を考えたことはなかった。」
山姥「700年?お前、そこに少し座れ。」
志乃は何故そんなに驚かれたのか分からなかったが言われた通りに座ると山姥は志乃の頭に手を置く。
山姥「あいつの呪いか?少し違うような気もするが。」
志乃「この呪いは解くことはできないのか?」
山姥「呪いが既に浸透している。難しいだろう。」
志乃「この呪いはどんなものなんだ?」
山姥「その前にお前の両親の話をした方がいい。お前は聞きたくないかもしれないがこれから役に立つかもしれない。」
志乃「聞きたくないわけじゃない。」
山姥「そう言えばこの先の谷に行こうとしていたんだったな。」
志乃「これまで考えた事もない人達の事を受け入れられるか少し怖いんだ。」
山姥「どう思おうがあいつらは気にしないだろう。そんな奴らだ。」
志乃「、、聞かせてくれ。」
山姥は語りだした。
それは800年ほど前、志乃が生まれる前の話だった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




