64話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
卒業式が終わった放課後、帰ろうとしていた志乃と陽葵の所に野々香がやって来た。
野々香「別れるの嫌だ。留年したい。」
志乃「もう卒業式も終わったんだから諦めろ。」
野々香「やーだー。」
陽葵「永遠の別れじゃないんだから。」
志乃「それに学校でもあれからほとんどあってないだろ。」
野々香「それでも近くにいるのといないのじゃ全然違う。」
志乃「昔だって離れてはいただろ。」
野々香「それでも時々烏から聞いてたもん。今は烏も駄目って約束しちゃったし。」
志乃「確かにその約束よく守っているな。」
野々香「そうでしょ。ならそろそろ、、」
志乃「駄目だ。」
野々香「えー。」
志乃「約束は約束だからな。」
野々香「ならこうするもん。」
そう言って野々香は志乃に抱きついて顔を埋める。
陽葵「ずるい。浜名瀬さんもいつものように避けてよ。」
志乃「しばらく離れるんだ。少しくらいならいいだろ。」
野々香「えへへ。」
志乃「だけどこれは付けていかないからな。」
志乃は野々香に付けられた烏の羽を外す。
野々香「ちぇ。」
志乃「そろそろいいだろ。」
野々香「もうちょっと。」
志乃は中々離れない野々香を剥がして帰ろうとする。
野々香「あー。まだ話そうよ。」
志乃「小細工しようとする奴と話す事は無い。」
野々香「もうしないから。」
志乃「それでも話す事ないだろ。」
野々香「志乃も私と同じ大学行こうよ。」
志乃「行く所は自分で考える。」
野々香「えー。ここ演劇に力入れているんだよ。志乃も一緒に女優になろうよ。」
志乃「それは嫌だ。」
野々香「そしたら年齢をごまかしたり死亡届とかもこっちで管理できるよ。」
志乃「まだ決められない。」
野々香「でもここも候補に入れておいてよね。」
志乃「分かった、分かった。」
野々香「来年どこ行くか聞きに来るから。」
志乃「来るな。」
最後だからと付き纏う野々香を振り払いアパートへ帰ってしばらく本をまとめたりしてから息抜きに外を見てみると悠真が外で探し物をしていた。
志乃「どうしたんだ?」
悠真「あ、それがその、、何でもないです。」
志乃を見て左手を隠す悠真。
志乃「何でもないのか。」
そう言って志乃は部屋へ戻ろうとする。
悠真「ごめんなさい。待ってください。ブレスレットを落としたんです。」
志乃「私があげたあれか?」
悠真「そう、それ。今日家に帰ったらいつの間にか無くて外に落ちてないか探していたんだ。」
志乃「どこに行って来たんだ?」
悠真「陽介と映画に行ったんだけどその時に着けて行ったのは覚えている。」
志乃「ならその映画館にあるんじゃないのか?」
悠真「今日はもう遅いから明日行くよ。今日は近くに落ちていないかを確認していたんだ。」
志乃「この辺には無い。明日映画館や陽介に聞いた方がいいだろう。」
悠真「分かるのか?」
志乃「あれには私の霊力が込められているから近くにあれば分かる。」
悠真「なら明日一緒に映画館に行ってくれないか?」
志乃「大事にしてくれているみたいだからな、仕方ない。朽護の玉を見つけるだけだぞ。」
悠真「お願いします。」
次の日朽護の玉を探すために朝から電車に乗って映画館に向かう。
悠真「駅員さんに聞いてもそんな落とし物無いって言われたよ。浜名瀬さんはここでも何も感じない?」
志乃「そうだな。少なくともこの電車内には無い。」
悠真「それで浜名瀬さんは何で大人の姿なの?」
志乃「これが一番楽なんだ。何か不都合な事があったか?」
悠真「いや、高校生の姿なら兄妹って事にできたなと思って。」
志乃「今でも同級生みたいには見えるぞ?」
悠真「それだとデートみたいじゃないか。」
志乃「駄目なのか?」
悠真「今から行く所、同じ大学の人もよく来るんだ。見られたらなんて言われるか。」
志乃「知り合いでは駄目なのか?」
悠真「絶対嘘だと思われてからかわれる。」
志乃「なら人気のない場所で高校生になるか。」
悠真「だけど僕一人っ子だからそれはそれでややこしい事になりそう。」
志乃「どうすればいいんだ?」
悠真「、、このままで大丈夫です。」
志乃「本当だな?」
悠真「はい。」
志乃「そう言えば陽介には連絡取ったのか?」
悠真「だけどあいつ今日から家族で旅行行くって言っていたせいか昨日から連絡付かないんだ。」
志乃「どこに行ったんだ?」
悠真「海の見える温泉地って言っていたけど詳しくは聞いてない。」
志乃「海か。」
悠真「海気になる?ここは山に囲まれて海は見えないからね。」
志乃「いや、別に。」
そんな事を話していると目的地に着いたので電車を降りて映画館までは少し歩くらしく昨日歩いた道を辿って映画館へ行く途中、2人組の男性に声を掛けられる。
男性1「あれ?悠真じゃん。どこ行くの?」
悠真「うげ。」
男性1「そんな声出すなって。隣の人は誰だよ。彼女?」
悠真「隣に住んでる人だよ。」
男性2「なんでそんな人と2人で歩いているんだよ。」
志乃「探し物をしている。木製の腕輪なんだが見てないか?」
男性1「もしかしてこないだ大事そうに着けていたやつか?」
悠真「それ。昨日映画見に行った時に落としたみたいなんだ。」
男性1「俺は見てないな。お前は?」
男性2「見てない。それにしてもお姉さん一緒に探してあげているんだ。優しいね。」
志乃「少し事情があってな。」
男性2「それってどんな事情?」
悠真「いいだろ。こっちは忙しいんだ。」
男性1「でもさ、隣の人に一緒に探してって頼むってなかなかの信頼じゃない?俺だったら言えないわ。」
悠真「前にお世話になった事があっただけだ。」
男性2「それにしては映画館で落としたなんて都合がいいよな。今から行くんだろ、2人で。」
悠真「本当にそんなんじゃないから。」
男性1「怪しいな。」
悠真「ああもう。浜名瀬さん、行きましょう。」
男性2「良ければ俺らも探そうか?」
悠真「いいよ。こっちで何とかする。」
男性1「俺らはお邪魔だもんな。」
悠真「そんなんじゃないって。」
男性1「いいって。見つかったら報告よろしくな。あと進展も。」
悠真「本当に違うからな。」
男性1「はいはい。」
男性2人はニヤニヤしながらその場を去って行った。
悠真「はあ、休み明けの学校が怖いよ。」
志乃「まあ、この辺にも無さそうだからさっさと映画館の方に行こう。」
悠真「そうだね。今はブレスレットの事を考えよう。」
志乃と悠真が映画館に着くと悠真はスタッフに落とし物が無いか聞きに行く。
悠真「すみません。木製のブレスレットの落とし物って届いていませんか?」
スタッフ「昨日の落とし物は届いていませんね。もしスクリーンの場所が分かれば、上映後に清掃スタッフが確認できますがどうしますか?」
悠真「ちょっと待ってください。確かネットで予約したのでメールが残っているはずです。」
悠真はスマホを出して少し操作するとスタッフにスマホの画面を見せる。
悠真「これです。スクリーンの4番、J列の右端です。」
スタッフ「分かりました。もし見つけたら連絡しますので連絡先を教えていただいても良いですか?」
悠真「はい。電話番号が080、、」
悠真は手続きを済ませて待っていた志乃と合流する。
悠真「見つかって無いって。浜名瀬さんはどう?」
志乃「そうだな。ここからだと少し遠いから私にも分からない。」
悠真「そうか。」
志乃「他の所に落ちているかもしれない。今は別の所を探してみよう。」
悠真「そうだね。この後カラオケにも行ったんだ。あ。ちょっと待って。」
志乃「どうした?」
悠真「映画を見る前にトイレに行ったんだ。濡らしたくなくて一度外してポケットに入れてる。」
志乃「その時に落としたのかもしれないな。」
悠真「一度トイレも探してみる。この辺で待っていて。」
志乃「分かった。」
それから悠真がトイレを探して戻って来たが志乃の姿が見えない。
悠真「この辺で待っていてって言ったのにどこ行ったんだ?」
悠真が志乃を探していると、来る時に話しかけてきた2人組の男性の1人が慌てた様子で悠真に話しかける。
男性1「おい、お前の彼女さん大変な事になっているぞ。」
悠真「え。何があったんだ?」
男性1「とにかくこっちだ。」
悠真が男性に連れられて来た場所で顔色の悪い志乃が壁に寄りかかり息が荒く、苦しそうにしていてそれをもう1人の男性が心配そうに声を掛けていた。
悠真「どうした?大丈夫なのか?」
志乃「平気だ。」
悠真「せめてベンチに座ろう。」
男性2「顔色悪いけど大丈夫なのか?救急車呼ぼうか?」
志乃「いい。」
志乃はゆっくりとベンチへ移動して座って休んでいると次第に顔色も呼吸も戻ってくる。
志乃「もう大丈夫だ。心配かけたな。」
男性1「貧血ってやつか?悠真もあまり連れまわすんじゃないぞ。」
悠真「そうだな。今日はもう帰るよ。」
男性2「俺らも送ろうか?」
志乃「いい。」
志乃は立ち上がり出口へと歩きだす。
男性1「せめて出口まででも、、」
志乃「大丈夫だ。」
男性2人は断られたので志乃を心配しながらも志乃と悠真の2人をそのまま見送った。
志乃は早歩きで歩き、それを悠真が追いかける。
志乃「少しヤバい事になったかもしれない。」
悠真「どうしたんだよ。そんなに体調が悪いのか?」
志乃「腕輪に仕掛けていた術が発動した。」
悠真「え?どういう事だ?」
志乃「あの腕輪は一度身代わりになると言っただろ。」
悠真「それは聞いた。」
志乃「だが材料が足りずに全てを防げるわけじゃないんだ。だから防げなかったらその分が私に来るように術をかけていた。」
悠真「もしかしてさっきのはその代償なのか?」
志乃「そうだ。あの腕輪が防げないほどの攻撃を腕輪を着けた人間が受けた。」
悠真「なら腕輪は落としたんじゃなくて盗まれていたのか?」
志乃「分からない。落とした人間がたまたま拾った可能性もある。だけどあれは着けていないと発動しない。」
悠真「そんなの盗んだのと同じじゃないか。それで今はどこに向かっているんだ?駅はあっちだぞ。」
志乃「お前は1人で帰ってくれ。厄介な妖怪が出てきたかもしれない。」
悠真「お前はどうするんだ?」
志乃「あいつは放ってはおけない。」
志乃は人気のない空き地の隅まで来ると1号を出して妖ノ郷の入り口を開けてもらい、その中へ入ると霊感の無い悠真は急に志乃が消えたように見えてびっくりしている。
志乃は妖ノ郷へ入ると樹霧之介の家へ向かうが樹霧之介はおらず、裏に周り黒根に話しかける。
志乃「黒丸。」
黒根「志乃か。今樹霧之介達は風見が感じた妖気の正体を探りに出ておる。」
志乃「そいつもしかしたら牛鬼かもしれない。」
黒根「それが本当なら樹霧之介達が危険じゃ。じゃが何でそんな事が分かるんじゃ。」
志乃「さっき、隣人にあげた腕輪に仕掛けていた術が発動したんだ。」
黒根「ならその隣人がそこにいるのか?」
志乃「いや、そいつはその腕輪を無くしていたから別の人間だ。」
黒根「そうか。」
志乃「それで樹霧之介達はどこに行ったんだ?」
黒根「こっちじゃ。」
黒根は1つの出口に志乃を案内する。
黒根「ここから出た所にある海辺の村に行っておる。」
志乃「分かった。」
黒根「樹霧之介達を頼む。じゃがお主も無理するなよ。」
志乃「ああ。」
志乃が妖ノ郷から海辺に出ると焔達が髪の長い女性の頭と人の手が生えた大蛇の妖怪と戦っていて、樹霧之介と真琴がその後ろで座り込んでいるのが見える。
志乃「大丈夫か?」
樹霧之介「志乃さん。」
志乃が樹霧之介に近づくと樹霧之介の腕には大きな石が抱えられており、それは樹霧之介の腕と真琴の手に貼り付いているみたいだった。
志乃がその石に封呪符を貼り付けると樹霧之介と真琴から離れて落ちる。
樹霧之介「助かりました。」
真琴「ありがとう。」
志乃「何があった?」
樹霧之介「風見が感じた妖気を辿ってこの出入り口から出たら女性がいて近づこうとしたら風見に妖怪だと指摘されたんです。それで警戒して距離を取ろうとしたら徐々に大きくなって赤ん坊を落としたので咄嗟に抱えたら石になって離そうとしても離れなくて、取ろうとしてくれた真琴の手にもくっ付いてどんどん重くなってきた時に志乃さんが来てくれたんです。」
志乃「あいつは濡女だ。石に変わる赤ん坊で人を動けなくして牛鬼に食べさせるんだ。近くに牛鬼はいなかったか?」
樹霧之介「いえ、他の妖怪は見ていません。」
その時、山の方から地を響かすような咆哮が聞こえた。
樹霧之介「今のは?」
志乃「牛鬼だろう。海の中で見えていないが濡女の体は300メートル以上ある気を付けてくれ。」
樹霧之介「志乃さんはどうするんですか?」
志乃「気になる事があるから牛鬼の方に行く。」
樹霧之介「僕も行きます。」
志乃「あいつは毒を吐く。私には効かないから私が行く。」
樹霧之介「僕も多少の毒なら浄化できます。」
志乃「真琴。禍避の織物まだ持っているか?」
真琴「もちろん。」
志乃「あれは妖怪の毒も防いでくれる。せめてそれを着けて来てくれ。」
樹霧之介「分かりました。」
それだけ言って志乃が山へ向かおうとすると濡女がそれに気づき蛇の体で志乃の前を塞ぐが志乃は結界を足場にそれを乗り越え、その間にも焔達が攻撃していたので志乃1人に構う事ができずに志乃は山へと向かう事ができた。
志乃が山の中に入ると祠とその後ろに立ち入り禁止の看板が付いた柵があったが、それを越えて奥へ行くとすぐに牛鬼の姿を見つけ、木の陰から様子を窺うと牛鬼は何かを探しているのかきょろきょろと辺りを見渡している。
牛鬼は牛のような頭と蜘蛛の足を持った巨大な体をしており、何かに苛立っているようで度々咆哮をあげながら歩いている。
志乃はそれに気付かれないように辺りを探すと木の陰に1人の人間を見つけ、近づくと陽介が震えながら縮こまっていた。
志乃「お前だったのか。」
陽介「ああ、浜名瀬さん。助けに来てくれたんですね。」
志乃「次は助けないと言ったはずだ。ここからは自力で逃げてくれ。」
陽介「あいつの叫び声を聞くたびに足がすくんで動けなくなるんだ。走れないよ。」
志乃「それでも走れ。でないと牛鬼に食い殺されるぞ。」
陽介「やっぱりあの化け物は牛鬼なのか?」
志乃「お前、ここに入ったのはやっぱり偶然じゃないな。」
陽介「だってこのブレスレットは一度ならどんな攻撃も無効化してくれるんだろ。」
陽介は右腕に着けた木製のブレスレットを志乃に見せてくるが木製の勾玉や丸玉は割れ、いくつか無くなっている。
志乃「一度だけな。こんな凶暴な奴を呼び起こしておいて一度だけの攻撃で終わると思っていたのか?」
陽介「ブレスレットが割れたら戻ろうと思っていたんだ。それなのにあいつが急に現れて、それから記憶が無いんだ。気が付いてからあいつが隙を見せた時に逃げれたのはいいがあいつの叫び声を聞いてから足がすくんで動けないし、カメラは無くなるしで散々だ。」
志乃「人の物を盗って立ち入り禁止の場所に入ったんだ。自業自得だろ。」
陽介「おい、後ろ。」
牛鬼は2人を見つけ志乃の後ろに来ていて前足を振り上げていた。
志乃「身を低くしろ!」
志乃は陽介の頭を片手で押さえて伏せさせるとその上を牛鬼の前足が掠り、隠れていた木と周りの木はへし折れて隠れられる場所が近くに無くなってしまった。
陽介「ひえっ。」
牛鬼は続けて陽介に対して前足を振り下ろすが志乃はそれを短刀で受け止める。
だが牛鬼の巨体と力で押されて志乃の怪力でも長くはもたないだろう。
志乃は陽介の方を見るが完全に腰が抜けて立つことも難しそうなので牛鬼の届かない場所へと蹴り飛ばす。
志乃「走れ!」
志乃がそう叫ぶも陽介は呆然として動こうとはしなかったが陽介を蹴り飛ばした時に志乃はバランスを崩していてそのせいで牛鬼の攻撃を止められずに牛鬼の前足が志乃の腹部を貫いた。
それを見た陽介は我に返り恐怖心からその場を走って離れるが背後からはくちゃくちゃと肉を食む音やバリボリと骨の砕ける音が聞こえていた。
耳を塞ぎ、前も見ずに草木にぶつかりながらも走って行くと立ち入り禁止の柵がありそこにぶつかって止まる。
近くに来ていた樹霧之介と真琴がその音を聞いて駆けつけるとそこには涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をした陽介を見つける。
樹霧之介「大丈夫ですか?」
陽介「こ、子供?誰?」
樹霧之介「僕は樹霧之介といいます。あなた、女性には会いませんでしたか?」
陽介「女性、それは浜名瀬とかいう奴か?」
樹霧之介「そうです。志乃さんはどうしましたか?」
陽介「志乃、、あの人の名前、志乃っていうんだ。」
樹霧之介「それでその人は今どこにいるんですか?」
陽介「あの人は死んだよ。」
樹霧之介「え!?」
陽介「俺を庇って牛鬼の前足で串刺しにされたんだ。こちらを見る生気の無い目、力なく垂れさがる手足、もう忘れられない。」
樹霧之介「そんな。」
陽介「牛鬼が食べる音も聞いたんだ。もう食べられて骨も残っていないかも、、」
真琴「流石の浜名瀬さんでも体が無くなればどうなるか分からないわよ。」
樹霧之介「僕、行きます。食べられる前に取り返しましょう。」
陽介「止めとけ。腹を一突きにされていたんだ。もう、生きてはいないよ。」
樹霧之介「だけど志乃さんは、、」
話の途中で牛鬼の咆哮が響き渡る。
陽介「ひぃぃ。」
樹霧之介「話は後です。先に牛鬼の方へ行きましょう。」
陽介「子供に何ができるんだ?」
樹霧之介は陽介を無視して山を登ろうとすると空から羽虫のような羽が生えた牛鬼が落ちて来て柵や祠を踏み潰した。
陽介「何でこいつ空飛べるんだよ。もう終わりだ。俺も食われるんだ。」
怯える陽介の目の前で牛鬼が吠えると何かが切れたように陽介は気絶する。
その陽介に向かって前足を振り下ろそうとする牛鬼に樹霧之介は周りに生えてる木を操り木の枝で牛鬼の前足を絡め取り一時的に動きを止めるが牛鬼の力は強く、木の枝を引きちぎると邪魔をした樹霧之介に狙いを変えた。
真琴は紙の槍を用意してそれに硬いの文字を付与し、牛鬼に攻撃するとそれは牛鬼の胴体に刺さり牛鬼が悲鳴に似た声を上げたがすぐに真琴の槍は抜けて牛鬼の怪我は治る。
真琴「何こいつ。怪我治るの?」
樹霧之介「とにかくこの男性からこいつを離しましょう。」
樹霧之介は陽介から距離を離す為に山を登る。
そして途中まで上手く誘導できていたが捕まらないと分かると急に方向を変えてまた陽介の方へ行こうとする。
牛鬼のスピードは速く、このままでは陽介が食べられてしまうのではないかと樹霧之介が思った時、上からまた何かが降って来て牛鬼の頭にぶつかる。
それは志乃が結界で上から移動して牛鬼の頭に蹴りをいれたのだ。
牛鬼は動かなくなり志乃は牛鬼の上から樹霧之介の前に飛び降りる。
樹霧之介「志乃さん。無事だったんですね。」
志乃「そう簡単にやられるわけないだろ。」
真琴「さっき男の人と会ってその人が浜名瀬さんが死んだとか言っていたのよ。」
志乃「先に陽介の方に会っていたのか。」
樹霧之介「それに志乃さんが戦っているはずの牛鬼もこっちに来ましたし本当に何かあったのかと思ったんです。」
志乃「牛鬼は一度狙った獲物をしつこく追いかける。いきなり羽が生えて飛んだことで逃してしまったんだ。」
真琴「それでさっきからあの男性を狙っているのね。」
樹霧之介「志乃さん。お腹貫かれたって聞きましたが大丈夫なんですか?」
樹霧之介はそう言いながら志乃の腹部を観察している。
志乃「あいつ、前に犬神に取り憑かれているのに今回も自ら牛鬼を起こしたから自分のした事を分からせる為に2号で幻を見せたんだ。」
樹霧之介「なら怪我とか何もしていないんですよね?」
志乃「ああ。服に血も付いてないだろ?」
真琴「ならあの男性が聞いた食べる音は何だったの?」
志乃「さあ、幻聴でも聞いたんじゃないのか?」
志乃は嘘をつくときの仕草をしてしまう。
樹霧之介「何隠しているんですか?」
志乃はあの時腹部は刺されなかったが牛鬼の前足は志乃の片腕を直撃していたのだ。
牛鬼は少しでも回復しようとその志乃の腕を食べていて、その音を陽介は聞いていた。
牛鬼を逃したのは片腕だったから、牛鬼に追いつくのが遅かったのは樹霧之介と真琴がそこにいるのを妖気で分かっていたので腕の回復を待ち、8号で血の付いた服を変化させていたからである。
志乃「それよりも牛鬼だ。少し厄介なんだ手伝ってくれ。」
樹霧之介「分かりました。でも、心配したんですからね。」
志乃「悪かった。」
その時牛鬼が起きて動き出してしまった。
志乃「相変わらず丈夫だな。」
真琴「浜名瀬さんでも倒せないの?」
志乃「急所が少し厄介な場所にあるんだ。」
樹霧之介「何処にあるんですか?」
志乃「牛鬼の喉の所に膨らみがあるだろ。」
樹霧之介「はい。あそこですか?」
志乃「あれは毒袋だ。万が一破れば村にまで毒が広がるだろう。そしてその袋の奥に急所である霊核珠がある。」
真琴「それってどんなの?」
志乃「あのたるんだ皮と皮の隙間に人の握り拳ほどの大きさで赤く脈打っている部分がある。毒袋にも近いから狙いをつけ難い。」
真琴「この巨体のそんな小さなものを的確に攻撃するしかないの?」
志乃「霊核珠はこいつの生命力の源だ。それがある限り多少の傷はすぐに治るが壊れてしまえば自分の毒で自ら死ぬ。他にも治せないほどの攻撃を与えられれば倒せはする。」
真琴「治せないほどの攻撃って?」
志乃「前は黒丸に抑えてもらって私が胴を2つに斬ったんだが今の私にはそんな力は無い。」
樹霧之介「あの巨体を斬ったんですか?」
志乃「だけどあの時は人を食べてもう少し大きくなっていたな。」
志乃達は牛鬼の攻撃を避けながら話をしていたが牛鬼は志乃に向かって何かの構えを取る。
志乃「毒がくる。少し離れろ。」
牛鬼が毒を吐くと予め離れた場所で待機していた3号が炎を飛ばして毒に火を付ける。
真琴「火で無毒化できるのね。」
志乃「ああ。焔がいてくれればよかったんだが、あっちも手こずっているようだな。」
樹霧之介「そうですね。濡女は倒し方とかあるんですか?」
志乃「あいつに弱点とかは無いが体が大きいだけで戦闘能力はそこまで無い。あの石にさえ気を付ければ焔達は大丈夫だろ。」
毒が効かないことが分かると牛鬼は突進攻撃に切り替えて志乃達に突っ込んでくるが直線的な攻撃が当たる事は無い。
牛鬼が振り向いてもう一度突っ込んでくる時、避けようとした樹霧之介に対して咆哮を上げると樹霧之介の足から力が抜ける。
このままでは樹霧之介は牛鬼に轢かれてしまうだろう。
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