63話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
放課後になり志乃が帰りの準備をしていると12号が志乃から離れてどこかに行こうとしている。
志乃が呼ぶと我に返ったように戻って来たがいつもは戦闘時と志乃が言った時以外志乃から離れない12号が自ら離れてどこかに行こうとした事で異常を感じて志乃は12号が行こうとした場所へ行く事にした。
陽葵「浜名瀬さん。今日も一緒に帰ろう。」
志乃「用事ができたから今日は先に帰れ。」
陽葵「私も行く。」
志乃「何があるか分からないんだ。」
陽葵「だけど変な妖気は無いよ。」
志乃「まあ、変なものはいないか。それに勝手に付いて来そうだ。」
陽葵「うん。」
志乃「少しは否定してくれ。」
志乃は12号に行こうとした場所を案内させてそれに付いて行き、陽葵はその後を付いて行く。
すると校舎から少し離れた今はほとんど使われていない旧部室棟の1部屋がカーテンで中が見えないようになっていて12号はその部屋に反応を示している。
妖気も何も感じないが部屋の前に立つと微かに声が聞こえてきた。
志乃が勢いよく扉を開けるとキャーという叫び声とガタガタと椅子が倒れる音がする。
部屋の中には女子高生が3人机を囲んで何かをしていて、志乃が扉を開けた事により驚いて叫び声をあげながら立ち上がったようだ。
女子1「え、あ。許可無しに使っていたから先生が来たのかと思った。」
女子2「あなた達2年生ね。何しに来たの?」
志乃「使われていない部屋で何をしているのか気になっただけだ。」
陽葵「あれ?それこっくりさんですか?」
女子3「そうよ。それもあっていきなり開けられてびっくりしたわよ。」
女子2「これで呪われたらあなた達のせいだからね。」
志乃「呪い?何しようとしていたんだ?」
陽葵「浜名瀬さんこっくりさん知らないの?」
志乃「聞いた事ないな。」
陽葵「こっくりさんは狐、狸、戌って書いてこっくりって呼ぶんだけど、あの机の上に乗っている紙あるじゃん。あれと10円玉を用意して低級霊を呼び出して軽い質問に答えてもらう儀式だよ。」
志乃「狐狸戌。それで名前に狐の入った管狐の12号が反応したのか。少しは効果があるみたいだな。」
女子2「何の話か分からないけど邪魔しないでよ。」
志乃「何でそんなことするんだ?」
女子1「私達は今年受験だからそれが合格するか聞きたかったの。」
志乃「勉強した方が良いんじゃないのか?」
陽葵「浜名瀬さん。ここでその正論は駄目だよ。」
女子3「私達はもう入試が終わって結果待ちなの。」
女子2「だから不安を少しでも払拭しようとこんな事しているってわけ。悪い?」
女子1「あなた達も来年分かるわよ。」
陽葵「そうですね。」
女子2「それに最近こういうのが流行っているからやってるのは私達だけじゃないわよ。」
陽葵「他にもしている人がいるんですか?」
女子1「最初は別の物を試そうとしていたんだけど、その場所が見つからなくて私達はこっくりさんしてみようってなったの。準備する物も少ないしね。」
陽葵「それって何ですか?」
女子1「なんか古い公衆電話に特定の手順で電話を掛けると質問に答えてくれるんだって。」
女子2「ただしその手順を間違えたりNG行動をすると異世界へ連れて行かれるんだって。」
陽葵「へー。」
女子1「ねえ、折角情報教えたんだしもしその公衆電話見つけたら良かったら教えてくれない?」
陽葵「え、うん。」
それから志乃と陽葵は旧部活棟から出て帰路に着く。
陽葵「ねえ、浜名瀬さんこれって何かの妖怪の仕業かな?」
志乃「さあな、今のところそんな妖気は無いから何とも言えない。」
陽葵「だけど確実に隠里にいるよね。なら妖気を感じなくてもおかしくないよ。」
志乃「まだ悪さをしているわけじゃないからあまり首を突っ込むな。」
陽葵「悪さしないならいいじゃん。私も質問してみたい。」
志乃「対価を求める妖怪も少なくない。あまり正体の分からないものに何かを頼むな。」
陽葵「分かったよ。」
志乃「実際にハラミも対価がないと動かないだろ。」
陽葵「今は寒いからってどちらにしろ家から動かないよ。」
志乃「それで最近見ないのか。」
それから数日後、学校の生徒で行方不明者が出たと朝礼で伝えられた。
行方不明になったのは3年生で大学受験を控えていた女子生徒で不安とストレスで失踪してしまったのではないかと言われていたが、一部の生徒はその女子生徒は公衆電話の世界に連れ去られたと噂している。
その日の休み時間に陽葵は志乃の所に行って話している。
陽葵「浜名瀬さん。朝の話、妖怪の仕業かな?」
志乃「受験の不安で自分からいなくなったんじゃないか?」
陽葵「だけどこの間の公衆電話の話もあるし気になるよ。」
志乃「陽葵は私を信じてないんだな。」
陽葵「そうじゃないけど。」
志乃「妖怪が関わってないなら私達の出番はない。大人しくしてろ。」
陽葵「えー。」
それから放課後になって志乃と陽葵は一緒に帰り、いつも別れる場所まで来たが陽葵は志乃と同じ方向へ行こうとする。
志乃「お前はあっちだろ。」
陽葵「今日の話し悠真先輩に相談しようと思って。浜名瀬さんの所じゃないからいいでしょ。」
志乃「悠真は霊感ないだろ。」
陽葵「大学受験について聞くんだよ。どんなストレスを感じたら失踪するのかなって。もしかして浜名瀬さんは妖怪の仕業だと思っているの?」
志乃「違う。」
陽葵「浜名瀬さんが掌を見せるのって嘘をついている時なんだってね。」
志乃「誰から聞いた?」
陽葵「悠真先輩から。浜名瀬さんが御影になっている時度々その癖を見せていたって。意外と分かりやすいんだね。」
志乃「はあ。5号ですら妖気を感じないって事は妖気を完全に隠せるほど強い妖怪だ。お前は決して首を突っ込むなよ。」
陽葵「言われなくても浜名瀬さんに任せるよ。」
志乃「私はこれからあの噂を調べてみるが付いてくるなよ。」
陽葵「行かないって。少し気にはなるけど、、」
志乃「来るなよ。」
陽葵「いいもん。私は悠真先輩の所に行くから。」
志乃「そうしてくれ。」
陽葵「だけどまこ姉に連絡するくらいならいいよね。」
志乃「余計な事はするな。」
陽葵「だけど強い妖怪なんでしょ。」
志乃「可能性があるだけだ。まだその生徒が自ら失踪した可能性もある。」
陽葵「可能性があるなら知らせた方が良いじゃん。」
志乃「、、勝手にしろ。」
陽葵「何でも1人で解決しようとしないでよ。」
志乃「ちゃんと頼るところは頼っているだろ。」
志乃はそう言うとその場から離れ、5号に公衆電話を探してもらうと1つだけ見つけたのでそこに調べに行ったが特に怪しいところは無く、他にも公衆電話を探すが見つけられずに夜になってしまった。
次の日の放課後に学校で噂されている事なので学校の近くに何かないかと近くの人気のない裏道を歩いていると5号が何かに反応して一点を見つめている。
この道は帰り道とは反対方向なのであまり来た事は無かったが明らかに不自然な電話ボックスが夕日に照らされてそこにたたずんでいた。
曇ったガラス越しに中を見てみると中には古びた緑色の電話が置いてあるが今のところ妖気は感じない。
だが5号が探した時に見つけられなかった事もあり、志乃は注意しながら近付きドアの部分に触れてみる。
志乃「結界か。」
その電話ボックスを媒体に結界が張られていて妖気が外に漏れないように細工されていて志乃がドアを開けると中から妖気を感じる。
公衆電話を使っているので自分の知らない新しい妖怪だと思ってたがその考えを否定する感じたことのある妖気。
しかも今は会いたくない妖怪の物だという事が分かるがそれでもここに行方不明者がいるのであれば無視はできない。
志乃「女子生徒を攫ったのはお前か?」
その問いに答えるものは無く、代わりに電話がジリリリリリリリと音をたてた。
志乃は受話器に手を伸ばし、それを手に持って耳に当てるとおじさんのような低い声が聞こえる。
???「あなたの悩みは何?」
志乃「女子生徒を帰せ。」
???「それは悩みじゃない。あなたの悩みは何?」
志乃「分かっているんだろ。お前は心を読めるからな覚。」
覚「そうよ。」
志乃「そっちに女子生徒はいるのか?」
覚「いる。何故私がこの子を攫ったのか聞きたいようだけどその話はこっちに来て話さない?」
志乃「、、いいだろう。」
志乃はそう答えた途端に暗闇に包まれる。
暗く周りは見えないがしばらくすると電話の音が聞こえたのでそっちへ向かうと電話の音は徐々に小さくなり代わりに鉛筆の走る音やページをめくる音がし始め、焦った女性の声も聞こえる。
女性「分からない。このままじゃ落ちちゃう。間に合わない。」
志乃の足元に何も書かれていない答案用紙が落ちてくる。
覚「これがこの子の悩み。」
志乃「受験に追われて、前が見えていないんだな。」
それから辺りが見えるようになると目の前には体中に長い毛を持ち獣の様な耳をした二本足の猿のようなものが座っていた。
周りには夜の山の風景が広がって風が吹き、木の枝を揺らしている。
覚「ここが私の住処だった。だけど立ち入る人がいなくなり私の存在は薄くなっていた。人の記憶から消えれば私の存在はじきに消える。それが私の悩み。」
周りの景色は山から住宅地に移り道を歩いている。
覚「消えたくなかった私は人里に下りた。だけど私の姿は醜く、人の前にこの姿を現したくは無かった。それでも存在を伝える方法を探していたら公衆電話の噂を聞いた。声だけなら姿を見せずに存在を伝える事ができる。」
周りの景色は歩いている様だったが公衆電話からベルの音が鳴るとその前で止まり、中に入った。
覚「そこで不安な気持ちを抱えている人が1人でいる時にだけ前に現れてベルを鳴らす、そしたら大体の人が受話器を取る。そこで悩みを聞いて求める言葉を囁く。それだけで私の存在は保たれた。噂が噂を呼び、私の元へ訪れる人は増えていった。だけど、、」
そこで周りの景色はまた真っ暗になってしまった。
覚「欲が出た。相手の事は分かっても相手は私の事を何も知らない。もっと存在を知ってほしい。だから一番多く来てくれたこの子の目の前に姿を現した。そしたらこの子は怖がって逃げようとした。だけどこれまでとは違い私は昔みたいにはっきりとここに存在できたんだ。」
そこでいきなり明るくなり目の前に大きく覚が映し出される。
覚「だけどこの子が私を忘れればまた薄い存在に戻ってしまうだろう。逆にこの子が私を覚えている限り私はここに存在し続けられる。だからここに招待した。」
志乃「その子がいれば存在できるなら何故まだ公衆電話があるんだ?」
覚「あなたはよく知っているでしょ。人の一生は短い。この子がいなくなってもいいように、公衆電話の噂は続けないといけない。だけどあなたが来てくれた。」
そこから周りは海の景色になる。
そこは志乃が見慣れた光景でそこには志乃の育ての親である漁師が働いていた。
覚「あなたは関わった人達から自分の記憶が消える事を願っている。」
周りの景色は志乃と死に別れたもの達との思い出を次々と映し出す。
志乃「違う。」
覚「そう、あなたの望みは矛盾だらけ。忘れてほしいけれど今の関係を続けたい。」
周りに陽葵や樹霧之介達の姿が写る。
覚「だけど先に逝くのは仲間の方。今の関係が深ければ深いほど喪失感も強い。元々そこまで深く関わりを持つつもりではなかったのに居心地が良くて後回しにしていたら後戻りできないところまで来てしまった。今、自分が消えてしまえばその喪失感を味わうのは仲間の方。それも嫌だから早めに忘れてほしい、そう思っている。」
志乃「止めろ。」
覚「こうしたい、だけどこうなるのは嫌だ。あなたは欲張りね。」
志乃「欲張って何が悪い。後悔をしない様に生きたいんだ。」
覚「だけどこれまで仲間にその後悔を押し付けてきたでしょう?これからもそんな生き方をしていくの?」
志乃「私はお前が連れて行った女子生徒を連れ戻しに来ただけだ。どこにいる。」
覚「図星を付かれて話を逸らす癖、直した方が良いよ。あなたは根が正直すぎる。呪いを受けた時は感情の大半と痛覚が無くなったおかげで廃人にならなくて済んだ。死の無いあなたにとってそれは生きている事を実感できる唯一の物だった。だけどあなたは手放した。」
志乃「...。」
覚「約束ってそんなに大事?今のあなたは本当に生きているって言えるの?」
志乃「うるさい!」
覚「地獄に逝くよりここにいた方が良いんじゃない?私はあなたが覚えてくれていれば存在し続けられる。あなたはここにいればこれ以上後悔も喪失感も味わうことは無い。あなたがここに残るって言ってくれればあの子だって解放してあげられる。ここは何も変わらない安心できる場所だよ。」
志乃「ここには私が欲しい物は無い。」
覚「そうね。それは私には用意できない。だけどあなたがそれを欲したら誰かが後悔することになる。なら最初からない方がいいでしょ。」
志乃「私にはまだやらないといけない事が残っている。」
覚「それをして誰が喜ぶの?あなたの考えているものは今ほとんど活動してない。あなたの頭の声だって今は聞こえていない。ここまで届きはしない。それはあなたが死ぬための言い訳に過ぎない。ただ仲間を悲しませるだけ。」
志乃「私がここにいても同じことだ。」
覚「そうかもね。私は相手の頭を覗くだけで記憶を弄る事は出来ない。それでもこれ以上思い出を増やす前に消えればまだ心の傷は少ないんじゃない?」
志乃「そうかもしれない。でも、ここにいても後悔はするだろ。」
覚「外に出ても同じ。それどころかここにいる時よりも沢山後悔することになる。ここにいれば少なくとも私の役には立つよ。」
志乃「それでも私は行く。」
覚「そう。なら私は止めない。」
志乃「止めないというよりかは止められないんだろ。」
覚「そのとおりよ。力ではあなたには敵わない。この空間だってあなたならすぐに出て行ける。あなたの心を動かせないなら私に勝ち目はない。もうわかっている。だけど最後に言わせて。あなたの今の考えでは確実に後悔する。あなたもあなたの仲間も。」
志乃「あいつらには悪いと思っている。けれど覚悟はしている。」
覚「あなただけ覚悟が決まっていてもね。」
志乃「...。」
覚「いいわ。あの子はあっちにいる。私はもう人を攫ったりしないからいるのは許してよね。」
志乃「分かった。」
志乃が覚の指差す方向へ進むと気絶している女子学生を見つけたのでその女子学生を担ぐと周りの景色が変わり学校の裏口辺りに出る事ができた。
既に辺りは暗くなっていたが女子学生の家が分からなかったので志乃は女子学生を裏口に降ろして目が覚めるのを待っていると後ろから聞きなれた声が聞こえる。
樹霧之介「志乃さん。やっと見つけました。」
樹霧之介は息を切らせて志乃の方に走って来ていた。
志乃「どうした?」
樹霧之介「真琴から聞きましたよ。志乃さんも気付かない巧妙な手口を使う妖怪が学生を攫ったって。僕達にも手伝わせてください。」
志乃「少し尾びれが付いているな。」
樹霧之介「あれ?だけどその後ろにいる方、もしかしていなくなった学生ですか?」
志乃「そうだ。」
樹霧之介「なら退治できたんですね。」
志乃「いや、もう人を攫わないという条件で見逃した。」
樹霧之介「嘘かもしれないのに良かったんですか?」
志乃「その時はまた行かないといけないかもな。」
樹霧之介「志乃さん、どうしたんですか?」
志乃「何が?」
樹霧之介「何かスッキリした様な感じがします。」
志乃「そうだな。少し心の中が整理できた気がする。」
樹霧之介「今回の相手は誰だったんですか?」
樹霧之介がそう聞いた時、気絶していた女子学生がピクリと動き、志乃は慌てて近くの木の陰に隠れる。
女子学生は起きると不思議そうな顔をして辺りを見渡すと歩き出した。
志乃「私は無事にあいつが帰れるか見守ってから帰るから樹霧之介は解決したと他の仲間に伝えてくれ。」
志乃は女子学生に聞こえないようにヒソヒソ声で樹霧之介に話す。
樹霧之介「良いですが原因の妖怪は誰だったのか聞いても良いですか?」
志乃「、、覚だ。」
樹霧之介「あの心を読む妖怪ですか?」
志乃「そうだ。知識はあるが力は無い。今回は少し気持ちが焦ってしてしまっただけのようだったから様子を見ることにした。」
樹霧之介「そうだったんですね。」
それから志乃は2号の幻で姿を消すとその女子学生を家まで見届けてから自分のアパートに帰った。
しばらくして公衆電話の噂は不安な人の前に現れて悩みを聞いてくれるものに変わったが偽物が現れて間違えてそっちに入るとどこかに連れ去るという噂もあり、実際に何人か行方不明になっているらしい。
その話を聞いた日の昼休み。
陽葵「浜名瀬さん。また出たの?」
志乃「いや、違う奴だ。」
覚「そうよ。私の所に来る人が減っちゃったの、何とかしてよ。」
いつの間にか窓の外にいた覚も話しかけてくる。
陽葵「誰?」
覚「私は覚。今は公衆電話の妖怪よ。」
陽葵「え、なら、、」
覚「攫ったのは最初の1人だけ。それももう解放したわ。」
陽葵「そ、そうなんだ。」
覚「何?私の話し方変?」
陽葵「いえ、ちょっと声と話し方のギャップがあるだけです。」
志乃「それで何でわざわざ来たんだ?」
覚「ちょっと私も行きたくて。」
志乃「いいが何するんだ?」
覚「少し文句を言いたいの。私の真似をして風評被害を出すなんて許せない。」
志乃「なら、、」
覚「分かった。そこで明日待っているわ。」
志乃「ああ。」
覚は言う事だけ言うとさっさとどこかへ行ってしまった。
陽葵「浜名瀬さん何も言ってなかったのにどこで待ってるつもりなんだろ。」
志乃「あいつは人の心を読める。私が考えていた場所へ来るだろ。」
陽葵「あ、それで私が言う前に色々答えてたんだ。」
志乃「妖怪の勉強しているんじゃなかったのか?」
陽葵「だって公衆電話の妖怪なんて昔はいなかったでしょ?」
志乃「覚は元々山に住む妖怪だ。時代の変化に合わせただけで昔からいる。」
陽葵「そうなんだ。それで明日私も、、」
志乃「来るな。」
陽葵「ですよね。」
次の日の夕方、志乃が公園に来ると覚が待っていたので一緒に近くにある公衆電話の場所へ行く。
それは最初に5号が見つけていた物でその時は異変が無かったが今は妖気が溢れている。
屋根付きの屋外電話機は黄ばんでいてボタンの文字も擦れて読む事ができない。
ボロボロで使えるかも分からないその公衆電話に志乃が近づいて受話器を取り耳に当てると今度は少年のような若い声が聞こえる。
???「君は何に悩んでいるの?」
志乃「お前が攫った人達はどこにいる?」
???「え?」
その時覚が受話器に手を掛けようとしたので志乃は覚も話せるようにしゃがんで受話器を覚にも向ける。
覚「ちょっとあなたねえ。私の真似して何考えてるの?」
???「真似?僕はただ知りたいだけ。人間は何に悩んでいるのか。」
志乃「そんな事知ってどうするんだ?」
???「僕を捨てた人は悩んでいた。僕のせいで悩ませた。僕のせいでいじめられた。僕のせいで母親が怒って捨てられた。」
覚「違うわね。」
志乃「そうだな。」
???「何でそんな事言えるの?」
志乃「そんな自分を悩ませるような物を付喪神になるまで大事にしない。」
付喪神「なら何であの子は僕を見る時悲しそうな顔をするの?」
覚「あなたを見る時の顔はそれだけじゃないはずよ。」
付喪神「確かに最初は笑ってた。よく僕に話しかけてくれた。だけどそれは段々少なくなって、いつも見える場所にいたのに僕は引き出しに入れられた。」
覚「それはあなたの持ち主が成長したからよ。成長して周りに合わせないといじめられ、自分の好きな事を知られるのが怖くなった。それでも捨てられないからせめて人に見られない場所にあなたをしまいこんだ。」
付喪神「だけど結局は捨てられた。僕はいらないんでしょ?」
覚「あなたを捨てたのはあの子の母親よ。あなたの持ち主はあなたを捨てようとは思っていない。」
付喪神「そうかな。」
志乃「それで何でお前は人を攫ったんだ?」
付喪神「引き出しに入ってからあの子は悩みしか言わなくなった。僕はあの子の言葉を聞くことしかできなかった。だからあの子と同じ悩みを抱えた人達といたらあの子のことが分かるかなって思った。だけどそんな人をどうやって見つけようか考えていたらこの公衆電話に悩みを話す人を見たの。」
志乃「それでこの公衆電話に取り憑いて同じ悩みを持った人を攫ったのか。」
付喪神「悪い事とは分かっていた。だけどあの子の事が知りたくて、知ってまた会いたくて、、」
志乃「とにかく関係ない人は解放してくれ。」
付喪神「うん。」
覚「ねえ、スマホ貸してくれない?」
志乃「いいが急にどうした?」
覚「いいから。」
志乃は覚にスマホを貸し出し、熊のぬいぐるみの付喪神から解放された人達を近くの公園へ運んでベンチ等に寝かせる。
志乃が全ての人を運び終えて戻ると覚が付喪神にスマホの画面を見せていた。
覚「これ、あなたの持ち主?」
付喪神「そう、この子が僕を大事にしてくれた人。前と姿は違うけど間違いない。」
志乃もそのスマホの画面を見てみるとそこはインフルエンサーのページだった。
そのインフルエンサーはテディベア好きで有名で、その理由は昔可愛い物が好きで買ってもらったテディベアが関係しているらしい。
でもその趣味を馬鹿にされて隠していたがその間は自分を自分自身で否定している感じがして辛く、第一志望の大学に受かれなかった事により母親に大切にしていたテディベアを捨てられてしまい、守れなかった事を今も後悔していると書いてある。
同じテディベアを探したが生産が終了していて手に入れる事は出来ず、今は集められる様々なテディベアを集めているそうだ。
覚「ねえ、あなた。この熊をここの事務所に郵便で送れないかしら。」
志乃「いいが直接持って行かなくてもいいのか?」
覚「あなた、事務所の前に置いて行こうとか思っているでしょ。そんな事しても気味悪がられるだけよ。郵便ならテディベア好きを知っている誰かから送られたと思ってくれる。この人はファンからのプレゼントは受け取っているらしいし付喪神になっているだけで他は異常の無いぬいぐるみなら受け取ってもらえるはずよ。」
付喪神「僕、あの子の元に戻れるの?」
志乃「したいのは山々だが、、」
覚「送り主に自分の名前を使うのが嫌ならあの陽葵って子の名前を借りればいいじゃない。」
志乃「え?」
覚「これ見つけれたのあの子の頭の中にこのインフルエンサーがいたからなのよ。」
志乃はしばらく考えると陽葵の家に行く事を決める。
志乃が陽葵の家に着いてピンポンを鳴らすと陽葵の母親である美和が出てくる。
美和「あら、浜名瀬さん。陽葵に用事ですか?」
志乃「ああ。」
美和「もしかして陽葵が何かやらかしました?」
志乃「いや、今回は頼みがあって来た。」
美和「そうなんですね。今呼んできますね。」
そう言って美和が2階に上がるとすぐに陽葵が下りてきた。
陽葵「浜名瀬さんが私に頼みごとなんてどうしたの?」
志乃「その騒がしいのを止めるよう頼んではいるけどな。」
陽葵「けど今日は違うんでしょ。」
志乃「ああ。このインフルエンサー知っているだろ。」
志乃はスマホの画面を見せて説明する。
陽葵「うん。男の人なのに可愛い物が好きでセンスも良いから最近よく見ている人だよ。」
志乃「この人宛に事務所に郵便を送りたいんだがお前の名義を借りたい。」
陽葵「もしかしてその浜名瀬さんが抱いているテディベア?」
志乃「そうだ。こいつは元々このインフルエンサーの持ち物だったんだ。今回の誘拐事件の犯人だが持ち主の元に行けば大人しくなるだろう。」
陽葵「分かった。いいよ。」
志乃「自分の名前を貸すんだぞ。少しは考えろ。」
陽葵「浜名瀬さんだもん。最初からどんな事でも許可するつもりだったよ。」
志乃「本当か?」
覚「本当の事よ。ただしキツイものは断るかもとも思っていたけどね。」
陽葵「余計な事を言わないでよ。」
志乃「まあ、ありがたく使わせてもらう。ありがとな。」
陽葵「うん。また頼ってよね。」
それから志乃は郵送のために付喪神を洗って修復した後丁寧に梱包する。
コンビニで郵送し、無事に本人の元に届いたようでその人のSNSには捨てられたテディベアとそっくりなテディベアが贈られた事と、送ってくれた人への感謝と大切にするという事が書かれていた。
このテディベアが捨てられた物と同じ物だとは思ってはなさそうだが無事に届いたことに安堵していると陽葵からそのインフルエンサーから手紙が届いたと言って一緒に読む事になった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




