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60話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

志乃(しの)陽葵(ひまり)は大学で映画を撮っているという悠真(ゆうま)の部屋で悠真(ゆうま)の友人についての話をすることになった。

引っ越して来たばかりなのもあって段ボールが部屋の中に散乱しているがちゃぶ台は出してあったので悠真(ゆうま)は段ボールから座布団を探してちゃぶ台の周りに敷いてそこに志乃(しの)陽葵(ひまり)は座る。

悠真(ゆうま)「さっき友人が倒れたっていう連絡と一緒にこんな映像も届いたんだ。」

悠真(ゆうま)志乃(しの)陽葵(ひまり)にスマホの画面を見せると映像を再生する。

映像はどこかの部屋の中で、何か物音がしたからカメラを回したらしく何かが走るような音と何かが落ちる音が台所からしているらしくカメラを持ったままゆっくりと近付いて行く。

そして台所にカメラを向けると髪を稚児髷(ちごわげ)にして、着物を着た犬顔の子供が落としたお皿の匂いを嗅いでいてその様子はまるで犬の様でその子供は撮影者を見つけると驚いて手を足のようにして4つ足の動物のように開いていた小さな窓から飛び出してしまい、撮影者は慌てて窓の外を写した後、下へ駈け下りていく。

撮影されたのは5階で、落ちたら怪我では済まない高さだが下に降りた撮影者はその子供の影も形も見つけることはできなかった。

志乃(しの)白児(しらちご)か、犬神(いぬがみ)が呼んだのであれば力を付けてきているな。」

悠真(ゆうま)「なあ、その犬神(いぬがみ)って何なんだ?」

陽葵(ひまり)「そうそう、呪術の一種ってどういう事?」

志乃(しの)「その前に少し気になる事があるんだが試しても良いか?」

陽葵(ひまり)「え、何?」

志乃(しの)悠真(ゆうま)だったか?ちょっとその窓をカメラで撮ってみてくれないか?」

悠真(ゆうま)「何でそんなことするんだ?まあいいけど。」

悠真(ゆうま)は窓の写真を撮るが窓と普通の景色しか映らない。

次に志乃(しの)悠真(ゆうま)のカメラを借りて撮ってみると窓の近くを飛ぶ管狐(くだぎつね)の姿が写る。

志乃(しの)「見えている人が撮ると写るのか。」

悠真(ゆうま)「え、なにこれ。この生物はなんなんだ?」

志乃(しの)は黙ってその2枚の写真を消去する。

悠真(ゆうま)「ちょっと何しているんだよ。」

志乃(しの)「それで犬神(いぬがみ)の事だったか。」

悠真(ゆうま)「無視かよ。」

志乃(しの)「やり方は色々あるが基本は飢えさせた犬の頭を切り落とした霊を使う。この時に怨念を溜めるとより強力なものになるんだ。」

陽葵(ひまり)「何でそんな事するの?」

志乃(しの)「その犬の頭を器に入れて祀るとその人に憑いて願望を成就させるんだ。」

悠真(ゆうま)「なら何で陽介(ようすけ)は倒れたんだ?それが本当なら願いが叶っているはずだろ?」

志乃(しの)「最初にも言った通りこれは呪術だ。やり方次第では良くも悪くもなる。お前の友人に憑いている奴は今主人を失って暴走している。祓わなければこのままこいつを取り殺した後、近くの人に取り憑くを繰り返すだろう。」

悠真(ゆうま)「なら祓ってくれ。」

志乃(しの)「お前は高校生の私にそんな力があると思っているのか?」

悠真(ゆうま)「こんなに詳しいんだ。君に力は無くても祓える人を知らないか?」

志乃(しの)「それなら師匠を紹介しよう。」

陽葵(ひまり)「あ。そっちなんだ。」

悠真(ゆうま)「そっち?他にも誰かいるのか?」

志乃(しの)「気にしなくていい。陽葵(ひまり)は余計な事を言うな。」

悠真(ゆうま)「それでいつ紹介してくれる?」

志乃(しの)「次の土曜日でも良いか?」

悠真(ゆうま)「そんな悠長にしていても良いのか?」

志乃(しの)「師匠にも予定がある。すぐにどうこうなるものではないんだから慌てるな。」

悠真(ゆうま)「人の命が掛かっているんだぞ。」

志乃(しの)「元はと言えば面白半分にそんな所に行ったお前の友人が悪いんだ。」

悠真(ゆうま)「俺達は本気だ。本気で映画を撮るために命懸けでカメラを回すんだ。」

志乃(しの)「ならその為に住処を荒らされるもの達の事を考えた事があるのか?命を賭けるのであればお前らでその代償を払え。」

悠真(ゆうま)「わ、悪かった。土曜日まで待つよ。」

志乃(しの)「それじゃ、私は帰らせてもらう。」

悠真(ゆうま)「あ。ちょっと待って。」

志乃(しの)「何だ?」

悠真(ゆうま)「君が浜名瀬(はまなせ)って苗字は表札見て分かったんたけど、もしかして名前は志乃(しの)って言わない?」

志乃(しの)「そうだが何で知っているんだ?」

悠真(ゆうま)「やっぱり。翠嶺高校(すいれいこうこう)浜名瀬(はまなせ)って去年の演劇部の大会で主役してた人だよね。代役とは思えない演技で最後なんて僕も引き込まれたよ。良かったら僕の映画に出ないか?」

志乃(しの)「断る。」

悠真(ゆうま)「少しくらい考えても良いじゃないか。」

陽葵(ひまり)「諦めた方が良いですよ。あの時も浜名瀬(はまなせ)さん渋っていましたし、あなたの映画は浜名瀬(はまなせ)さんあまり好きではなさそうなので。」

悠真(ゆうま)「何が悪いんだ?人を怖がらせるほど迫力のある映画だぞ。」

志乃(しの)「取らぬ狸の皮算用ってことわざ知っているか?」

悠真(ゆうま)「ウッ。」

志乃(しの)「とにかく私は師匠を紹介するだけだ。それ以上は何もしない。」

そう言って志乃(しの)は立ち上がり部屋を出て行ってしまった。

2人になった陽葵(ひまり)悠真(ゆうま)は沈黙の後、話し出す。

悠真(ゆうま)「、、それで君は?名前も聞いてなかったよね。」

陽葵(ひまり)「私は桜庭(さくらば)陽葵(ひまり)といいます。浜名瀬(はまなせ)さんは私の友達、、いえ、姉弟子です。」

悠真(ゆうま)「へー。なら君も同じ師匠に習ってるんだ。そう言えば犬神(いぬがみ)の名前を最初に言ったのは君だったっけ。」

陽葵(ひまり)「それで私も来年は3年生になるんですが大学の事聞いても良いですか?」

悠真(ゆうま)「進学するのかい?参考になるかは分からないけどいいよ。その代わり僕からも質問させてもらうよ。」

陽葵(ひまり)「答えれる事なら、、」

それから意外と意気投合したみたいで話が盛り上がり、その声は隣にいる志乃(しの)の耳にまで届いていた。

志乃(しの)は1号を陽葵(ひまり)の傍に置いて余計な事を話したら噛み付くように圧を掛けているので特に変な事は話さず解散していった。

それから土曜日になって志乃(しの)は8号に男の姿にしてもらい悠真(ゆうま)の部屋のチャイムを鳴らす。

悠真(ゆうま)「誰ですか?」

志乃(しの)「弟子の1人に連絡を貰った。お前が悠真(ゆうま)で間違いないな。」

悠真(ゆうま)「じゃああなたが志乃(しの)さんと陽葵(ひまり)さんの師匠なんですか?」

志乃(しの)「そうだ。で、犬神(いぬがみ)に取り憑かれた奴はどこにいるんだ?」

悠真(ゆうま)「隣町にいます。ここから電車で行くんですが大丈夫ですか?」

志乃(しの)「分かった。行こう。」

志乃(しの)は待ち時間に犬神(いぬがみ)白児(しらちご)の動画を見せてもらい、2人で電車に乗るが会話が無く気まずい雰囲気が流れていた。

悠真(ゆうま)「あ、あの。」

志乃(しの)「なんだ?」

悠真(ゆうま)「なんて呼べばいいですか?師匠って言うのも僕の師匠ではないので違う気がするんですよね。」

志乃(しの)「好きに呼べ。」

悠真(ゆうま)「ならせめて名前を教えてください。」

志乃(しの)は前に陽葵(ひまり)が書いていた師匠の設定を思い出す。

志乃(しの)御影(みかげ) (さく)。」

悠真(ゆうま)御影(みかげ)さんですね。」

志乃(しの)「ああ。」

悠真(ゆうま)「それで御影(みかげ)さんが祓っている様子を撮ってもいいでしょうか?」

志乃(しの)「断る。」

悠真(ゆうま)御影(みかげ)さんが映っているところはモザイクにしたりして特定できないようにします。」

志乃(しの)「それで映画が成り立つのか?」

悠真(ゆうま)「映像が無いよりはマシです。それに正体不明の陰陽師とかカッコいいじゃないですか。」

志乃(しの)「なら好きにしろ。」

悠真(ゆうま)「良いんですか?」

志乃(しの)「どうせ見れる者しか映像には残せない。」

悠真(ゆうま)「僕には無理って事ですか?」

志乃(しの)「お前には無理だな。」

悠真(ゆうま)「なら何で陽介(ようすけ)は撮れたんですか?」

志乃(しの)「最初は犬神(いぬがみ)の縄張りに入った事により繋がりができて見えていたようだが今は中に犬神(いぬがみ)がいるから見えているようだな。」

悠真(ゆうま)「僕もあの神社には行きましたよ。」

志乃(しの)「今はもうそこに犬神(いぬがみ)はいない。だからお前には見えなかった。」

悠真(ゆうま)「僕も見えるようになるにはどうすればいいんですか?」

志乃(しの)「ならお前も犬神(いぬがみ)に取り憑かれてみるか?」

悠真(ゆうま)「それで僕にもあの映像が撮れるなら。」

志乃(しの)「お前の友人の様子を見てもその威勢が続けばいいな。」

悠真(ゆうま)「え。」

それからバスを乗り継いで病院へ到着する。

受付で友人だと説明してから撮影許可を取るが本人が正気ではないとの事で許可は下りなかった。

悠真(ゆうま)「倒れる前に許可は取ったのに本人の許可が無ければ駄目ってなんだよ。」

志乃(しの)「どちらにしろ面白いものではない。」

そんな話をしながら病院の廊下を歩いていると犬の遠吠えのような叫び声が聞こえてきて、廊下を医者と看護師と思われる人達が叫び声が聞こえた部屋に入って行く。

志乃(しの)悠真(ゆうま)もその叫び声が聞こえた部屋に入ると、医者が鎮静剤を打っているところだった。

入って行った医者と看護師の他にも家族だろうか男女数人も中にいた。

悠真(ゆうま)「おばさん。陽介(ようすけ)どうですか?」

陽介(ようすけ)母「あんたね。どの面下げて来たの?あんたが変な事にうちの子を巻き込んだからこんな事になったんだよ。」

陽介(ようすけ)父「落ち着け。お見舞いに来たんだろ。挨拶くらいは許してやれ。」

悠真(ゆうま)「僕は今日、陽介(ようすけ)の中のものを祓える人を連れてきたんです。」

陽介(ようすけ)母「そんなのいいからさっさと出て行って!」

陽介(ようすけ)父「落ち着いてくれ。美咲(みさき)も怖がっているだろ。」

陽介(ようすけ)の妹だろうか病室の隅には中学生くらいの女の子がいて泣きそうになっている。

陽介(ようすけ)母「お祓いなんて詐欺よ。あなたもいい年してこんな事していて恥ずかしくないの?」

志乃(しの)は黙って陽介(ようすけ)の母親に近づいて手を取り掌を数ヵ所押すと指先から白く細い糸のようなものが現れ、志乃(しの)がそれを引き抜くと陽介(ようすけ)の母親は落ち着いてきたのか顔が緩やかになってきた。

陽介(ようすけ)母「私またカリカリしてごめんなさい。」

志乃(しの)「自分の子供が治るかも分からない病気になったんだ。感情が荒ぶるのは分かるがもう少し周りも見てやれ。」

志乃(しの)美咲(みさき)の方を見ると陽介(ようすけ)の母親は美咲(みさき)を抱きしめて謝っている。

陽介(ようすけ)父「あいつは一度癇癪を起すと中々止まらないんだ。何をしたんだ?」

志乃(しの)(かん)(むし)だ。本来は赤ん坊に憑いて癇癪等を起こさせる妖怪なんだがたまに大人でも憑きやすい人がいる。」

陽介(ようすけ)父「(かん)(むし)?妖怪?」

悠真(ゆうま)陽介(ようすけ)の母親にも妖怪が取り憑いていたのか?」

志乃(しの)「妖怪は見えないだけで身近にいる。」

陽介(ようすけ)父「あいつの癇癪は妖怪のせいなのか?」

志乃(しの)「元々の気質もあるだろうな。そういう者に取り憑きやすいから。」

陽介(ようすけ)父「次なったらどうすればいい?」

志乃(しの)「今回は話が進みそうになかったから祓っただけだ。優しく見守ってやればじきに収まる。」

悠真(ゆうま)「それよりも陽介(ようすけ)だよ。信用してくれたのなら見せてもいいだろ。」

陽介(ようすけ)父「あ、ああ。だけど変な事はしないでくれよ。」

志乃(しの)「その前にお前が見ろ。妖怪に下手に近づいたらどうなるかその目で見て学んでおけ。」

悠真(ゆうま)「分かった。」

悠真(ゆうま)はカーテンで隠れていた陽介(ようすけ)のベッドに近づきその顔を見る。

悠真(ゆうま)「う。」

陽介(ようすけ)の顔を見て悠真(ゆうま)は怯えと戸惑いの混ざったような顔をする。

何か言おうとしているが言葉は出てこないようだ。

それもそのはずで陽介(ようすけ)の顔は人の顔ではあるが鼻は潰れ、目は見開いて口は横に大きく開き、そこからは舌がだらしなく垂れ下がって涎が垂れ流しになり、その姿はまるで犬のようだったのだ。

志乃(しの)「映画を撮るためだったらこんな姿になって死ぬのもいとわないか?」

悠真(ゆうま)「それは、、」

志乃(しの)「覚悟も知識も無いのにこちら側に足を踏み入れるな。諦めて他の物を撮るんだな。」

悠真(ゆうま)「また御影(みかげ)さんに頼むのは?」

志乃(しの)「馬鹿の尻ぬぐいはこの1回だけだ。」

志乃(しの)は7号を出すと呪滅符(じゅめつふ)陽介(ようすけ)の腹部に貼り霊力を込めると陽介(ようすけ)の耳から斑模様の大きめの鼠の様な生き物が一列になって飛び出し、どこかへ行こうとするのでそれを7号は追って行く。

そんな事があっても見えない人には室内なのに風が起こったくらいにしか感じなかった。

志乃(しの)「終わった。他にもする事あるから俺はもう行く。」

悠真(ゆうま)「え。もう?」

陽介(ようすけ)の顔はまだ戻らず目は開いているが意識が無いのか動かない。

悠真(ゆうま)「なあ、引き受けたのなら最後までしてくれよ。」

志乃(しの)「最後ってどこまでだ?もうこいつの中に犬神(いぬがみ)はいない。」

悠真(ゆうま)「なら何でこいつの顔は治らないんだ?」

志乃(しの)「時間が経てば治る。俺は逃げた犬神(いぬがみ)を追わないといけないんだ。邪魔するな。」

悠真(ゆうま)犬神(いぬがみ)はまだいるのか?」

志乃(しの)はそれには答えず犬神(いぬがみ)が行った場所を7号から教えてもらいその場所に向かう。

犬神(いぬがみ)が向かった場所は最初に見せてもらった映像に映っていたあの神社だった。

痛手を負った犬神(いぬがみ)は元の住処に戻って回復しようとしているのだ。

志乃(しの)は崩れた場所から本殿へ入り、床板を外すと白児(しらちご)がいて壺を抱えて守っている。

志乃(しの)は床下に下りて白児(しらちご)にゆっくりと近付いて優しく語りかける。

志乃(しの)「もうそんな事しなくても良い。お前は休んでいいんだ。」

白児(しらちご)志乃(しの)の事を警戒しながらも壺から離れない。

壺は大きく白児(しらちご)には持ち上げられそうにないので移動できず少しずつ近づく志乃(しの)を唸りながら睨みつける事しかできない。

志乃(しの)白児(しらちご)に近付いて手を出すと噛まれるが志乃(しの)はそのまま何かを唱えて白児(しらちご)の額に触れると白児(しらちご)は徐々に薄くなって煙となって消えた。

守るものがいなくなった壺の蓋を開けると犬神(いぬがみ)が一列になって出てきて頭が犬の人間に変わる。

犬神(いぬがみ)「なぜ捨てた。なぜ置いてった。なぜ、なぜ、、」

そうブツブツ言いながら犬神(いぬがみ)志乃(しの)に襲い掛かる。

志乃(しの)は床下から上がってそれをかわし、外に走って出ると犬神(いぬがみ)は追いかけて来る。

犬神(いぬがみ)「主、なぜ逃げる。」

志乃(しの)「私はお前の主じゃない。」

犬神(いぬがみ)「主、、あ、るじ、、行か、ないで、、」

志乃(しの)「行かないで、、」

志乃(しの)は一瞬樹霧之介(きりのすけ)の家で見た夢を思い出す。

その隙を狙って犬神(いぬがみ)志乃(しの)の耳に右手を伸ばしてきていた。

志乃(しの)はすぐにその手を払いのけると1歩踏み出して犬神(いぬがみ)の胸に呪滅符(じゅめつふ)を貼り、発動させる。

すると犬神(いぬがみ)は苦しみながらまた鼠の様な姿になると一列になって長くなると志乃(しの)の周りを回って志乃(しの)を囲んだ。

犬神(いぬがみ)「なんで、、痛い、酷い、、」

そんな事を呟きながら志乃(しの)に取り憑こうと隙を狙っている。

志乃(しの)は9号から短刀を受け取って犬神(いぬがみ)を観察すると1匹の犬神(いぬがみ)に狙いを定めて短刀を振るが避けられてしまいそのせいで警戒されて離れた場所で人の姿になる。

犬神(いぬがみ)「殺そうとした。お前は主じゃない。」

志乃(しの)「最初からそう言っているだろ。」

犬神(いぬがみ)「違うならいらない。違うなら消えろ。」

犬神(いぬがみ)の頭が大きくなると人の体が消えて犬の頭だけが志乃(しの)に襲い掛かる。

犬神(いぬがみ)志乃(しの)の首を狙って飛び付くが志乃(しの)は結界でそれを防ぎ、反撃しようとするが自由に飛んでいる犬の首に剣を当てることができない。

犬神(いぬがみ)志乃(しの)の手の届かない所で飛びながら志乃(しの)の隙を窺っているので志乃(しの)霊縛符(れいばくふ)を付けた棒手裏剣を投げて当てると犬神(いぬがみ)から一匹、棒手裏剣が刺さった鼠の犬神(いぬがみ)が落ちて白い煙となって消えた。

一緒に棒手裏剣も外れたので犬神(いぬがみ)の動きが鈍る事なく志乃(しの)に向かってくる。

志乃(しの)は避けることなく腕で防御すると、腕に犬神(いぬがみ)が噛み付いたことにより一時的に動きを止める事に成功したので霊縛符を数枚貼り付けて犬神(いぬがみ)の動きを完全に封じると志乃(しの)犬神(いぬがみ)を腕から外して地面に置くと眉間に向かって短刀を突き刺した。

すると辺りに甲高い鳴き声が響き渡り、鼠の姿に分裂して四方八方に散っていくと散った犬神(いぬがみ)は白い煙となって消えていき、最後には全て白い煙となって消えてしまった。

全て消えると志乃(しの)は短刀を9号に渡して片付けてもらい、後ろを向くと鳥居の所で悠真(ゆうま)がカメラを持って立っていた。

志乃(しの)「見てたのか?」

悠真(ゆうま)「はい。僕にも見る事ができました。」

志乃(しの)犬神(いぬがみ)の縄張りだったからな。撮ったのか?」

悠真(ゆうま)「、、はい。ですが消しませんよ。」

志乃(しの)「それはいい。俺の顔を加工してもらえば使ってもらっても構わない。」

悠真(ゆうま)「いえ、これは使いません。」

志乃(しの)「いいのか?」

悠真(ゆうま)「僕はこれを参考にこれ以上の映像を撮りたいと思いました。」

志乃(しの)「それはこれ以上の妖怪に会いたいという事か?」

悠真(ゆうま)「いえ、僕にはもうそんな度胸はありません。あなたの戦いを見て僕にはとても敵わないことが分かりました。やっぱり命は惜しいですから。」

志乃(しの)「そうか。」

悠真(ゆうま)「なのでしっかりとしたシナリオを書いて役者を雇います。必要ならCGとかの知識を付けるか使える人を探します。」

志乃(しの)「なら良かったよ。」

悠真(ゆうま)「それでさっき嚙まれていませんでした?病院に行くなら陽介(ようすけ)に会いに行ってくれませんか?あなたが病院を出て行ってすぐに目を覚ましたんです。」

志乃(しの)「傷ならない。そいつに会う気も無いからこのまま帰る。」

悠真(ゆうま)「なら一緒に帰りませんか?」

志乃(しの)「何故お前と帰らないといけない?」

悠真(ゆうま)「同じアパートに住んでいるんじゃないんですか?」

志乃(しの)「何故そう思う。」

悠真(ゆうま)「僕、今日あなたを待っていたんですが階段を上る音が聞こえなかったんです。あのアパート古いから静かに登ろうとしてもカンカンと音が鳴るじゃないですか。」

志乃(しの)「音を立てないようにはできる。」

悠真(ゆうま)「ですが下りる時は普通に音立てていましたよね。来る時だけ音が鳴らないようにするなんて不自然じゃないですか。ねえ、浜名瀬(はまなせ)さん。」

志乃(しの)「何のことだ。」

悠真(ゆうま)「引っ越した当初からおかしいと思っていたんです。あんなボロアパートに高校生が1人暮らしって。それにあなたと初めて会った日の前日、数日どこかに泊まって帰って来た日です。その時やっと隣の人が帰って来たって思って少し覗いたら大人の女性が隣に入ったのを見て驚きました。しかも朝出てきたのは高校生で動揺を隠せませんでした。」

志乃(しの)「お前は人の姿がコロコロ変わるような馬鹿げた事が起こっていると言いたいのか?」

悠真(ゆうま)「はい。これでも観察力はあると自負しているんです。」

志乃(しの)悠真(ゆうま)の真剣な眼差しに押されて8号の変化を解く。

悠真(ゆうま)「やっぱりその大人の女性が本来の姿なんですか?」

志乃(しの)「そうだな。」

悠真(ゆうま)「駄目元で聞きますが僕の映画に出演なんて、、」

志乃(しの)「断る。」

悠真(ゆうま)「ですよね。」

志乃(しの)「誰もいないからあのアパートに住んでいたんだがこんな事ならどこか引っ越すか?」

悠真(ゆうま)「安心してください。僕があのアパートに引っ越したのは近くに心霊現象が起きる場所があるのと、雰囲気があったからもしかしたら何か撮れるかもと思ったからです。もう撮る必要は無くなったので契約期間が過ぎたら出て行きます。」

志乃(しの)「それはどのくらいなんだ?」

悠真(ゆうま)「えっと。」

志乃(しの)「何故考える。」

悠真(ゆうま)「いえ、あ。そう言えばあなたも名前を聞かれて少し考えこんでいましたね。その時確実に本名は言わないなと思いました。それに陽葵(ひまり)さんとのやり取りも弟子同士というより師匠と弟子って感じの会話でしたよね。」

志乃(しの)「話を変えるな。」

悠真(ゆうま)「そんなに僕に出て行ってほしいんですか?もう秘密も知ってしまいましたし別にいいじゃないですか。」

志乃(しの)「秘密を知った奴が近くにいるのが嫌なんだ。」

悠真(ゆうま)「別にあなたに干渉しようとは思っていませんよ。」

志乃(しの)「なら余計にいる意味ないだろ。」

悠真(ゆうま)「あそこにいると何かアイディアが閃きそうなんです。」

志乃(しの)「勝手にしろ。」

悠真(ゆうま)「はい。あ、干渉しないとは言いましたけどお礼に行ってもいいですか?お祓いの料金も払わないといけませんし。」

志乃(しの)「基本金は受け取っていない。金を払えばいつでも祓えるなんて思われても嫌だからな。」

悠真(ゆうま)「今回のは感謝の気持ちです。」

志乃(しの)「、、勝手にしろ。」

悠真(ゆうま)「それじゃあ僕は陽介(ようすけ)の家族にこの事話してから帰ります。」

志乃(しの)「そうか。」

それから悠真(ゆうま)と別れて志乃(しの)は電車でアパートへ帰った。

志乃(しの)は部屋で思い出した夢について考えていた。

知らない人のはずなのに何故か見たとたんに嬉しくなって、しかもどこかへ行く時に引き留めようとしていた。

そして夢の中の自分がいた場所やしていた事から考えても確実に自分のはずなのにその人の記憶はその夢以外には無く、顔も名前も自分とどんな関係なのかも分からない。

海で出来損ないに掴まれてから小さな声が頭の中で響いているがそれと関係はあるのか。

声は今は小さく聞き取れないが徐々に、確実に大きくなっている。

今度声の事は言わずにさりげなく篁音(たかね)に聞いてみようと考えているとチャイムが鳴ったので高校生の姿で玄関のドアを開ける。

するとそこには悠真(ゆうま)陽介(ようすけ)の両親と妹の美咲(みさき)がいた。

志乃(しの)「何の用ですか?」

陽介(ようすけ)母「あら。あなたは?」

悠真(ゆうま)「あ、その人は御影(みかげ)さんの弟子の1人で、今回紹介してくれた人です。」

陽介(ようすけ)母「そうだったのね。私はあなたの師匠に助けられた陽介(ようすけ)の母です。」

志乃(しの)「それは、どうも。」

陽介(ようすけ)母「それで、その時お礼を言えなかったから悠真(ゆうま)君にここにいるかもと言われてきたんだけど、いらっしゃいますか?」

志乃(しの)「何を勘違いしているのかは知りませんがここは私が住んでいる所で師匠はいませんよ。」

美咲(みさき)「え、あの人に会えないの?私も弟子入りしたかったのに。」

志乃(しの)「師匠はいないのでこれで失礼します。」

志乃(しの)がドアを閉めようとするとそれを悠真(ゆうま)が止める。

悠真(ゆうま)「ちょちょちょ。待って。」

志乃(しの)「何?」

悠真(ゆうま)「君なら御影(みかげ)さんに連絡取れるだろ?」

志乃(しの)「師匠は忙しいので緊急的な案件以外受け付けません。それにあなた。干渉しないって言っていませんでした?」

悠真(ゆうま)「お礼は良いって言われたんだよ。」

志乃(しの)「ですが師匠はいません。」

悠真(ゆうま)「なら伝言はいいだろ。伝言とお礼、君に渡すから御影(みかげ)さんに渡してくれないか?」

志乃(しの)「、、それなら。」

悠真(ゆうま)「良かった。そういう事なので今日は浜名瀬(はまなせ)さんに伝えてくれますか?」

陽介(ようすけ)母「もう一度会いたかったけれど、忙しいなら仕方ないわね。」

美咲(みさき)「なら御影(みかげ)さんに今日はありがとうございました。良ければ私も弟子にしてくださいって言っておいてください。」

志乃(しの)「分かった。」

陽介(ようすけ)母「私からも、初対面の人に詐欺師なんて言ってしまってすみませんでした。あなたは立派な人間です。家の陽介(ようすけ)がお世話になりました。ありがとうございます。と伝えてください。」

志乃(しの)「師匠はそんな事気にしないとは思うけど伝えておきます。」

陽介(ようすけ)父「私からも、陽介(ようすけ)を助けてくれてありがとうと伝えてください。それとこれ少ないですが受け取ってくださいと渡してもらえますか?」

志乃(しの)「師匠はお金は受け取りません。」

陽介(ようすけ)父「はい。聞きました。ですがそれはお金で解決できない事をしているからですよね。私達ではこんな形でしかお礼できないので受け取ってほしいのです。」

志乃(しの)「それが分かっているのであればいいです。こちらから伝えて渡しましょう。」

陽介(ようすけ)父「よろしくお願いします。」

志乃(しの)「他にありますか?」

美咲(みさき)「お姉さんってあの人にお祓いとか習っているんだよね。どんな事しているの?」

志乃(しの)「修行の内容は他言するなと言われています。」

美咲(みさき)「そうだよね。外に漏らしたら駄目だよね。ねえ、もう一度会うにはどうすればいいかな?」

志乃(しの)「どちらにしろこれ以上弟子は増やさないと言っていたので望みは薄いかと。」

美咲(みさき)「何でお姉ちゃんがそんな事言えるの?会ってみなきゃ分からないよ。」

志乃(しの)「弟子だからです。」

美咲(みさき)「むむ。なら私がお姉ちゃんより有能だって分かれば私を弟子にしてくれるでしょ。」

志乃(しの)「霊感も無いのに?」

美咲(みさき)「あるもん。」

志乃(しの)「あなたのお兄さんのようになりたくないなら大人しくした方が良いですよ。」

美咲(みさき)「そうなればまた助けてくれる、、」

陽介(ようすけ)母「止めなさい!」

美咲(みさき)「何で。お母さんもまた会いたいって言っていたでしょ。」

陽介(ようすけ)母「それでも、あなたまであんな事になるなんてお母さんは許しません。」

美咲(みさき)「、、ごめんなさい。」

陽介(ようすけ)父「もしも時間があれば改めてお礼がしたいとも伝えておいてください。私達はこれで失礼します。」

志乃(しの)「分かりました。」

悠真(ゆうま)陽介(ようすけ)は2日後に退院するんだ。そしたらまた来ても良いか?」

志乃(しの)「今、引っ越しを検討している。」

悠真(ゆうま)「ごめん。これ以上は干渉しないよ。だけど陽介(ようすけ)には君の事話してもいいか?」

志乃(しの)「勝手にしろ。もしその話しが広がっても行くところはあるんだ。」

悠真(ゆうま)陽介(ようすけ)にも口止めはするよ。」

志乃(しの)「人の口に戸は立てられない。どうなるかな。」

志乃(しの)は扉と鍵を閉めて部屋に戻る。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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