48話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃は真琴に手助けされながら株式会社ヒカリアシストとその社長の葛城 怜司(かつらぎ れいじ)の事をネットで調べていた。
真琴「この今日あげられた写真だけ背景違うわね。旅館かしら?」
志乃「これもしかしたら本拠地にいるのかもしれない。」
真琴「え?何でそう思うの?」
志乃「少ししか写ってないが斎守家で見た祭壇が写っているんだ。」
真琴「もしかしてこれ?棚じゃないの?」
志乃「端っこしか写ってないから見た事なければそう思うだろうな。」
真琴「これで分かるのは普通にすごいと思うわよ。」
志乃「特殊な模様が見えたんだ。この祭壇は自分の呪いを他人に移す物だからこいつはほぼ黒だな。」
真琴「呪いを受けるようなことしてるならそうよね。」
志乃「誰かが裏にいる可能性はあるからもう少し調べる必要はあるだろうけど。」
真琴「だけど同じような写真は他には無さそうね。ほとんどが社内で撮られているわ。」
黒根「何故それだけ本拠地で撮ったんじゃろうな。」
真琴「確かにこれだけ異常に情報が少ないのよね。」
茂蔵「罠って可能性は?」
樹霧之介「だけど誰に対してでしょうか?」
茂蔵「そりゃあ、昨日倉庫を壊した奴さ。」
真琴「タイミング的にも可能性は高いけど何のために?」
茂蔵「報復じゃないのか?」
志乃「だけど篁音も拠点を潰している。何で今回だけ?」
茂蔵「大切な場所だったとか?、、違うかあんなボロ倉庫。」
真琴「それにSNSに載せるとか人間くらいしか見ないわよ。」
樹霧之介「確かに真琴みたいに持っているものもいますが大体の妖怪は人のお金が必要なので持っていません。」
真琴「そしたら浜名瀬さんを狙っているって事になるけど、、」
志乃「あそこにいた人間の記憶は弄ったから廃人になっているはずだ。元に戻っても覚えてはいないだろ。」
樹霧之介「だけど1人逃げましたよね。」
志乃「そいつも私の事は化け狸だと思っていた。私が撃たれたところを見ているから死んでいると思っているかも。」
真琴「浜名瀬さん撃たれてたの?そう言えばその赤黒いの血?」
志乃「今気付いたのか?」
真琴「それによく見たら結構汚れているじゃない。先に銭湯に行くわよ。」
狸の死体を洗ったり一晩土の上で過ごしていたので汚れているのは当たり前の事だった。
志乃「どうせまた汚れる。」
真琴「駄目。一緒に行くわよ。」
志乃「紙の妖怪なのにお湯に入っていいのか?」
真琴「正確には手紙に宿る想いの妖怪よ。泳げないけど水には入れるわ。」
志乃「着替え持ってないぞ。」
真琴「私の貸すわよ。」
そのまま志乃は真琴に妖ノ郷にある銭湯へ引っ張られていった。
樹霧之介「行っちゃいましたね。」
その時行ったと思った真琴が戻ってくる。
真琴「樹霧之介と茂蔵も来るの。」
樹霧之介「僕も!?」
茂蔵「お、おいらは大丈夫だぞ。」
真琴「グダグダ言わない。」
樹霧之介「はい。」
樹霧之介は素直に準備をして、逃げようとした茂蔵は真琴の紙に捕まって連行される。
銭湯に着くと志乃と真琴は女湯、樹霧之介と茂蔵は男湯へ入って行く。
脱衣所で志乃が服を脱ぐと真琴が志乃の体を確認する。
真琴「本当に傷はもうないのね。」
志乃「そう言っているだろ。」
真琴「服に血がべったり付いていたから心配だったの。」
志乃「それにしては気付くの遅かったな。」
真琴「銃の方に気を取られていたからね。」
志乃「まあいい、さっさと入ってまた情報集めるぞ。」
志乃と真琴は風呂場へ移動すると体を洗ってから湯船に入る。
真琴「ねえ、今調べている人って妖怪で何してるの?」
志乃「今回は狸の皮で呪具を作ろうとしていた。」
真琴「前に貰った髪切り虫の剃刀もそうなんだけど何で消えないの?」
普通妖怪が死んだら例外はあるが大体は煙となって消えてしまう。
志乃「妖力が残ってると消えない。」
真琴「そんな方法あるの?」
志乃「今回は妖力を外に出ないように封印した後、生きたまま皮を剥いでいた。」
真琴「何でそんな事、、」
志乃「死ねば妖力は封印していたとしても抜けていくからな。」
真琴「だけど剝いでる途中で死なないの?」
志乃「知らないガスボンベが置いてあって気になって調べたら麻酔だった。できるだけ死なないようにして皮を剥いだ後、特殊な液体に入れて妖力を定着させる。今回は妖力が完全に無くなる前に皮以外も回収できたから復元できたが最悪皮だけで葬式を上げることになったな。」
真琴「復元?」
志乃「殺された狸の遺体を復元してあっちで葬式を挙げてもらったんだ。」
真琴「服が汚れてたのはそれもあったからなのね。だけど生きたままでないと妖怪で呪具が作れないならあの剃刀って、、」
志乃「髪切り虫は牙を切っても普通に再生する。」
真琴「へー。」
志乃「まあ、被害は出てたから牙を貰った後に退治したけど。」
真琴「そう、、それで人間達は狸の皮で何を作ろうとしていたの?」
志乃「狸の皮で作れる呪具で野々香に貰った資料に書いてあったのは化姿外套、羽織ると別人の姿になれるみたいだ。」
真琴「何でそんな物作ろうとするのかしら。」
志乃「2匹分の皮で1着できるみたいだから量産しようとしたことは分かるがそれ以外は知らん。知りたくもない。」
真琴「そうよね。」
志乃「そろそろ上がるか。」
真琴「ええ。」
志乃と真琴が上がると樹霧之介と茂蔵が待っていた。
志乃「待たせたか?」
樹霧之介「僕達も今上がったところです。」
茂蔵の方を見ると少し元気がない。
真琴「そんなにお風呂嫌だった?」
茂蔵「臭い消えるから嫌いなんだ。なのに樹霧之介、石鹸でゴシゴシと、、」
樹霧之介「そんな恨みがましく言わないでくださいよ。」
真琴「綺麗になったじゃない。」
志乃「そうだ。今の茂蔵はフワフワだぞ。」
茂蔵「嬉しくねーよ。」
志乃達は樹霧之介の家に戻って調べ物を再開する。
真琴「あれ?あの写真無くなっている。」
お風呂から戻って再度SNSを確認すると本拠地で撮ったであろう写真が消えていた。
真琴「誤爆だったのかしら。」
茂蔵「なら罠だとか考えたのは考えすぎだったのか?」
真琴「そうかもね。」
それからも何かないか探すが情報は出てこなかった。
真琴「これ以上は見つからないわね。」
志乃「そうみたいだな、明日また色々と調べてみるよ。」
真琴「何か当てでもあるの?」
志乃「放置してきた人が回収されていれば良いんだけどな。」
真琴「何かしたの?」
志乃「式神の紙を付けているからそいつらの場所が分かるんだ。」
真琴「そんなことしてたのね。」
それから色々仮説を立てたり話し合っているといつの間にか夕方になっていたので志乃はアパートへ帰る事にする。
志乃は帰ると持ち帰った液体を調べた後、明日に備えて早めに寝る事にした。
次の日、志乃は会社へ行く前に狸の時の拠点へ行ってみる。
放置した人に付けておいた式神を頼りに場所を探るが全員崖の下に落とされていて生きている者はいなかった。
死体は野ざらしのまま放置されていたので志乃は警察に匿名で電話してその場を後にした。
何の情報も得られなかった志乃は準備して会社のある街へ行く事にする。
少し遠い都会の方にあるので妖ノ郷の出入り口も使い、近い場所まで来ると電車で移動してしばらく歩くとやっとオフィスのあるビルまで来ることができた。
階数は3階、2号に姿を消してもらって結界を使い外から覗くと日曜日なのに数人が仕事をしていた。
パソコンに向かって何かを打ち込んでいる人や電話をしている人、上司なのか少し離れた場所の机でのんびりパソコンを見ている人もいる。
だが社長である葛城 怜司の姿は見えず、志乃は動きがあるまで見張ってみるが全員お昼頃に退社していった。
結界もなさそうなので誰もいなくなったオフィスに7号を忍び込ませる。
窓からだと目立つので裏口から入ると3階まで登り、オフィスの扉の鍵を7号に開けてもらって中に入る。
人の気配が無いので資料を漁ってみるが野々香に貰った資料すらも見当たらない。
主にしていたのは営業や事務作業のようで妖怪の事は何も見当たらず、パソコンも調べてみようとするがパスワードが分からない。
だが上司と思われる人が机の下を覗いていたのを見ていたので志乃も見てみるとパスワードが書かれたメモを見つけることができた。
パソコンを立ち上げると気になるファイルやメールを開いて見てみるが特に収穫は無い。
管理が杜撰なのは最初から大切な情報が無いからなのだろうか。
志乃は諦めてアパートへ戻り、真琴から借りた服を返すためにも妖ノ郷へ行き、樹霧之介の家に最初に立ち寄った。
樹霧之介「志乃さん。どうでしたか?」
志乃「収穫無し。無駄骨だったよ。」
黒根「どちらもか?」
志乃「ああ。あっちが次の行動を起こすまで手詰まりだな。」
黒根「もどかしいな。」
樹霧之介「本拠地、見つけれそうにないですか?」
志乃「烏天狗の時の拠点、狸の時の拠点、そして今日のオフィス、全て離れすぎていて場所が絞り込めないんだよ。」
樹霧之介「烏天狗の時の拠点は調べたんですか?」
志乃「そこは篁音が調べているだろ。あいつは知識も観察力もあるから見逃しは無いと思う。」
樹霧之介「そうなんですね。」
志乃「妖ノ郷から行けるところは順番に見回ろうと思う。」
樹霧之介「それなら僕達でやります。」
志乃「妖怪を攫っている奴らだ。お前らだと危なくないか?」
樹霧之介「異常があるかどうかを見るだけです。人間には近付きません。」
志乃「うーん。なら渡しておきたいものがある。作らないといけないから少し待ってくれ。」
黒根「あれか?」
志乃「そう言えば昔お前にも持たせていたな。」
樹霧之介「何ですか?」
志乃「できたらわかる。少し場所借りるな。」
樹霧之介「はい。」
志乃は9号に材料を持って来てもらうと、志乃は小さな鈴が付いたお守りを作る。
志乃「これは術に使われている霊力に反応して鈴が鳴る。」
志乃が結界符を近付けると鈴はリンリンと小さく音を発する。
志乃「もし術が発動していれば音が変わる。」
志乃が結界を張ると鈴はリーンと高い音に変わった。
志乃「鈴が鳴ったら近付かず報告してくれ。」
樹霧之介「分かりましたがこのお守りはいるんですか?」
志乃「そっちは術を一度だけ跳ね返してくれる。使いきりだが逃げるための時間稼ぎには使えるだろう。」
樹霧之介「ありがとうございます。」
志乃「妖力には何も反応しないから妖怪と戦う時は使えないからそこは気を付けてくれ。」
樹霧之介「はい。」
志乃「それじゃあ。人数分作るから渡しておいてくれるか?」
樹霧之介「分かりました。」
志乃はお守りを全員分作ると真琴から借りた服と共に樹霧之介に預けてアパートへ帰った。
次の日の学校の休み時間、志乃は野々香のクラスに顔を出す。
志乃「野々、、」
野々香「志乃!志乃から来てくれるなんて嬉しい!」
野々香は志乃が教室の扉から顔を出した瞬間に飛びついてきたが志乃はそれを避ける。
志乃「要件は分かっているんだろ。」
野々香「文化祭の事?」
志乃「分かってないなら言う事は無い。戻る。」
野々香「嘘嘘。何かあったの?」
野々香の奇行で注目を集めていたので階段下に移動して話を続ける。
志乃「狸が皮目的で人間に攫われていた。」
野々香「それでどうなったの?」
志乃「潰した。それで野々香はヒカリアシストって会社知っているか?」
野々香「知らない。何それ。」
志乃「狸を捕まえていた人間を雇っていた会社だ。雇われていた人間から聞きだしたんだがそっちは?」
野々香「母上は頭に血が上ると容赦ないから。」
志乃「そうか。生存者はいなかったんだな。」
野々香「うん。それにそこにいた全員が何かしらの術を使っていたらしいから手加減もできなかったんだって。」
志乃「呪具を使っていた可能性は?」
野々香「霊力の籠った物は見つからなかったって。」
志乃「霊力以外の物はあったのか?」
野々香「うん。妖力が籠った呪具はいくつも見つかったの。」
志乃「あの資料に書いてあった物か?」
野々香「そこまでは分からない。」
志乃「その呪具で攻撃した可能性は?」
野々香「母上が言うにはどの術も陰陽師が使うような術だったって。」
志乃「あの資料にはそんな記述は無かったな。呪具は残っているか?」
野々香「壊れてたから拠点と一緒に埋めたって。」
志乃「貴重な情報源埋めたのか。」
野々香「資料は回収したからもういいと思ったんだと思う。仲間が何人か犠牲になっていたから早め目に潰したかったんだね。」
志乃「そうか、、」
野々香「それでその会社って誰が運営しているの?」
志乃「葛城 怜司って奴だ。一度その会社のオフィスに忍び込んでみたが何もなかった。」
野々香「志乃はその名前に聞き覚えある?」
志乃「無い。念のため篁音にも聞いておいてくれ。」
野々香「分かった。」
志乃「それにしてもこっちはそんな術使う奴なんて見てないし、呪具と呼べる物も銃と鉄製のケージくらいだったのに結構違うんだな。」
野々香「まあ、烏天狗と狸だからね。」
志乃「確かに捕獲難易度は違うよな。」
野々香「志乃は他に気付いたことはある?」
志乃「、、特には無いな。」
野々香「それじゃ文化祭の事なんだけど、、」
志乃「私はもう戻る。」
野々香「えーまだ時間あるよ。他の事も話そうよ。」
志乃「他に話すことは無い。」
野々香「それでも行かないでよ。」
志乃「何もすることがないじゃあな。」
野々香「あー。」
志乃は野々香をおいて教室へ戻って行った。
学校が終わってから志乃も樹霧之介達と見回りに出ていたが特に何もなく、文化祭の日がやって来た。
志乃のクラスはフライドポテトの屋台をしていて志乃は1日目の午前中の店番なので屋台でお客さんを待っていると舞台の宣伝も兼ねて衣装で文化祭を回っている。
野々香「志乃。ポテト頂戴。」
志乃「はい。」
志乃は既にできている物を保温ケースから出す。
野々香「作り置きじゃなくて揚げたてが欲しい。」
志乃「なら5分後にまた来い。」
野々香「揚がるまで話そうよ。」
志乃「宣伝しなくていいのか?」
野々香「志乃にこの衣装見せたくて来たんだよ。」
拓海「ああ、いたいた。急に走り出すなよ。衣装が汚れたらどうする。」
一緒に回っていたであろう拓海や他の人達も野々香の方に近付いて来る。
志乃「久しぶりだな。」
拓海「おお、久しぶりだな浜名瀬。風牙の目的はお前か。」
野々香「ねえ、ポテト揚げたてが食べたいからしばらくここにいても良い?」
拓海「すぐ揚がるのか?」
志乃「5分ほど掛かる。」
???「あ、あの。」
志乃「うん?お前は確か照明係にいた、、」
???「覚えていていただいて光栄です。真壁 文香です。あの、浜名瀬さんは演劇部に入ってくれないんですか?」
志乃「それは修一に言われて断っている。」
文香「分かっています。ですが来年3年生が卒業するとアクションをこなせる人がいなくなるんです。」
志乃「何故お前がそれを気にする?」
文香「私、全国大会が終わって結城先輩から部長の座を譲り受けました。」
志乃「それで今はお前がシナリオを書いているのか?」
文香「はい。それで最初のコンテストは風牙先輩と大塚先輩のおかげで突破できました。」
志乃「お前もアクション中心に書いているのか?」
文香「それがこの学校の演劇部の強みだと思うんです。」
志乃「それはお前が書きたくて書いているのか?」
文香「それは、、」
志乃「自信の無いシナリオでよく賞が取れたな。」
文香「それは先輩方のおかげです。ですがこのまま勝ち上がっても、、」
志乃「全国大会は来年だから野々香達はいない。だから私にしてほしいと。」
文香「はい。私浜名瀬さんの彩月、すごく好きだったんです。」
志乃「どこが好きなんだ?」
文香「彩月は1人では何もできない人物だったけれど椿との出会いから強さが見えてきて、だけどまだ弱さを持っていてそれを仲間同士で埋め合って、最後のシーンなんて1人に戻っても仲間を信じて真っ直ぐ突き進む姿は静かながらも迫力がありました。」
志乃「そ、そうか。だがそれにはアクションは必要か?」
文香「確かに戦闘はその人物を魅せるには良いですが他にも方法はあると思います。」
志乃「それならそれを書いてみたらいいんじゃないか?」
文香「だけど私は浜名瀬さんの演技に惚れたんです。もし心変わりしたらいつでも来てください。と言うか心変わりさせます。」
志乃「どうやって?」
文香「結城先輩から聞きました。浜名瀬さんは先輩のシナリオを読んで舞台に立ったんですよね。なら私のシナリオも読んでください。」
志乃「え。」
文香「それで気に入ったら全国大会だけでもいいんです。出てください。」
拓海「ハハハ。」
文香「何ですか?」
拓海「お前、もう全国大会に行けると思っているのか。」
文香「確かにまだ大会はありますが先輩方がいればきっと行けますよ。」
拓海「そうだな。頑張ろうぜ。」
文香「はい。」
志乃「ポテト揚がったぞ。」
野々香「あ。志乃と話す時間が。」
拓海「いいじゃないか。またな浜名瀬。」
志乃「ああ。」
野々香「ああー。志乃ー。」
他の所も回らないといけないので野々香は拓海に引っ張られて行った。
志乃「あんなに明るく未来を話せるのは羨ましいな。」
志乃はその賑やかな団体を静かに見送る。
もうしばらく店番を続けていると交代の時間になったので志乃も文化祭を回ろうとすると陽葵に呼び止められた。
陽葵「浜名瀬さん。」
志乃「何だ?」
陽葵「一緒に回ろ。」
志乃「断る。」
陽葵「何で?いいじゃん。」
志乃「静かに回りたいんだ。」
陽葵「修学旅行とか楽しそうに一緒に回ってくれたじゃん。」
志乃「あれは班で行動しないといけなかったからだ。」
陽葵「ねえ。あの後何かあったの?」
志乃「別に。」
陽葵「教えてよ。」
志乃「お前に話すことは無い。余計な事に首を突っ込むな。」
陽葵「私じゃそっちの事は手伝えない。だけど1人で悩まないでよ。」
志乃「、、分かったよ。これから野々香の舞台だ。見に行くか?」
陽葵「うん。」
志乃達は舞台のある体育館へ行くと野々香に見つかり舞台衣装の野々香が近付いて来て注目の的になる。
野々香「志乃、見に来てくれたんだ。」
志乃「お前次だろ。準備しろ。」
野々香「もう少し時間あるから大丈夫。こっち来てよ。陽葵もほら。」
野々香は志乃と陽葵の手を引いて最前列の席に来る。
志乃「ここ関係者席だぞ。」
野々香「大丈夫。」
修一「席は空いているからいいですよ。」
文香「浜名瀬さん。是非見て行ってください。」
志乃「修一もこっちに座っているんだな。」
修一「真壁さんはシナリオ書くのは初めてみたいだから私も手伝ったんだ。」
文香「既存のシナリオでも良かったんですが先輩が私の書いた話を読んでシナリオ書いてみないかと提案してくれたんです。」
志乃「それでアクション中心になったのか?」
修一「私の得意分野ですから。」
文香「でも話の筋は通ってますし、先輩は他の部員の得意分野も把握して役割分担も上手くて、、私、来年できるんでしょうか?」
修一「卒業するまではサポートするからそれまでに自信つければいいよ。」
文香「はい、頑張ります。」
それから演劇が始まった。
内容は古びた洋館に迷い込んだ男女が亡霊に襲われながらもそれぞれの目的を果たそうとするものだった。
男性は初めはバズろうと1人で撮影の為に洋館に入ったが閉じ込められたために他の出口を探すために歩いていると、この洋館に隠された弟の遺体を探しに来たと言う女性に出会う。
男性は女性の事が信じられないので初めは別行動をとるが亡霊に襲われた時に助けられてそれから距離は取りつつも一緒に行動したが徐々にその女性に惹かれていく。
だが洋館の秘密を知るたびにその女性がこの世のものでない事を知る。
次第に男性は自身の脱出よりも女性をこの洋館に縛り付けている弟の遺体を探す事を優先するが、そんなものは初めから洋館には無く、それを知った女性は悪霊に取り込まれる。
それから男性は女性の悪霊からも逃げながらまだ行っていない場所を発見し、そこで亡霊の正体が女性の弟だという事を知った。
その場所は外にも通じており、このまま逃げる事も出来たが男性は喋れない亡霊の為に自身の体を貸し出し、女性を説得して姉弟は無事成仏、男性も真っ当な人生を送ろうと洋館を後にするという話だった。
演劇が終わると野々香が真っ先に志乃の元に駆けつける。
野々香「志乃ー見てくれたー?」
志乃「見た見た。陽葵行くぞ。」
陽葵「うん。」
野々香「えー、ちょっと待ってよ。片付け終わったら私も行く。」
陽葵「多い方が楽しいし私はいいよ。」
志乃「仕方ないな。」
野々香を待って3人で文化祭を回る。
野々香「ねえ、まずはどこに行く?」
陽葵「お化け屋敷とかどう?」
志乃「本物見ているのにか?」
陽葵「いいじゃん。」
野々香「もしかして志乃怖いの?」
志乃「本物知っているとつまんないだろ。」
陽葵「いいから入ろうよ。」
野々香「そうだよ。」
それから3人で文化祭を回ってその日は終わった。
文化祭2日目、陽葵は店番だったので志乃は1人で図書館で本を読んでいると野々香に見つかる。
野々香「志乃、やっと見つけた。」
志乃「これはもう纏わりつくなという約束に反していないか?」
野々香「烏は使ってないでしょ。」
志乃「それで何だ?」
野々香「ここにいるなら暇なんでしょ。今日も見に来てよ。」
志乃「見るだけなら。」
野々香「乱入してほしいとかもう考えてないから。」
志乃「仕方ないな。」
志乃は野々香に連れられてまた劇を見ることになった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




