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48話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

志乃(しの)真琴(まこと)に手助けされながら株式会社ヒカリアシストとその社長の葛城(かつらぎ) 怜司(れいじ)(かつらぎ れいじ)の事をネットで調べていた。

真琴(まこと)「この今日あげられた写真だけ背景違うわね。旅館かしら?」

志乃(しの)「これもしかしたら本拠地にいるのかもしれない。」

真琴(まこと)「え?何でそう思うの?」

志乃(しの)「少ししか写ってないが斎守さいもり家で見た祭壇が写っているんだ。」

真琴(まこと)「もしかしてこれ?棚じゃないの?」

志乃(しの)「端っこしか写ってないから見た事なければそう思うだろうな。」

真琴(まこと)「これで分かるのは普通にすごいと思うわよ。」

志乃(しの)「特殊な模様が見えたんだ。この祭壇は自分の呪いを他人に移す物だからこいつはほぼ黒だな。」

真琴(まこと)「呪いを受けるようなことしてるならそうよね。」

志乃(しの)「誰かが裏にいる可能性はあるからもう少し調べる必要はあるだろうけど。」

真琴(まこと)「だけど同じような写真は他には無さそうね。ほとんどが社内で撮られているわ。」

黒根(くろね)「何故それだけ本拠地で撮ったんじゃろうな。」

真琴(まこと)「確かにこれだけ異常に情報が少ないのよね。」

茂蔵(もぞう)「罠って可能性は?」

樹霧之介(きりのすけ)「だけど誰に対してでしょうか?」

茂蔵(もぞう)「そりゃあ、昨日倉庫を壊した奴さ。」

真琴(まこと)「タイミング的にも可能性は高いけど何のために?」

茂蔵(もぞう)「報復じゃないのか?」

志乃(しの)「だけど篁音(たかね)も拠点を潰している。何で今回だけ?」

茂蔵(もぞう)「大切な場所だったとか?、、違うかあんなボロ倉庫。」

真琴(まこと)「それにSNSに載せるとか人間くらいしか見ないわよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「確かに真琴(まこと)みたいに持っているものもいますが大体の妖怪は人のお金が必要なので持っていません。」

真琴(まこと)「そしたら浜名瀬(はまなせ)さんを狙っているって事になるけど、、」

志乃(しの)「あそこにいた人間の記憶は弄ったから廃人になっているはずだ。元に戻っても覚えてはいないだろ。」

樹霧之介(きりのすけ)「だけど1人逃げましたよね。」

志乃(しの)「そいつも私の事は化け狸だと思っていた。私が撃たれたところを見ているから死んでいると思っているかも。」

真琴(まこと)浜名瀬(はまなせ)さん撃たれてたの?そう言えばその赤黒いの血?」

志乃(しの)「今気付いたのか?」

真琴(まこと)「それによく見たら結構汚れているじゃない。先に銭湯に行くわよ。」

狸の死体を洗ったり一晩土の上で過ごしていたので汚れているのは当たり前の事だった。

志乃(しの)「どうせまた汚れる。」

真琴(まこと)「駄目。一緒に行くわよ。」

志乃(しの)「紙の妖怪なのにお湯に入っていいのか?」

真琴(まこと)「正確には手紙に宿る想いの妖怪よ。泳げないけど水には入れるわ。」

志乃(しの)「着替え持ってないぞ。」

真琴(まこと)「私の貸すわよ。」

そのまま志乃(しの)真琴(まこと)妖ノ郷(あやかしのさと)にある銭湯へ引っ張られていった。

樹霧之介(きりのすけ)「行っちゃいましたね。」

その時行ったと思った真琴(まこと)が戻ってくる。

真琴(まこと)樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)も来るの。」

樹霧之介(きりのすけ)「僕も!?」

茂蔵(もぞう)「お、おいらは大丈夫だぞ。」

真琴(まこと)「グダグダ言わない。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

樹霧之介(きりのすけ)は素直に準備をして、逃げようとした茂蔵(もぞう)真琴(まこと)の紙に捕まって連行される。

銭湯に着くと志乃(しの)真琴(まこと)は女湯、樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)は男湯へ入って行く。

脱衣所で志乃(しの)が服を脱ぐと真琴(まこと)志乃(しの)の体を確認する。

真琴(まこと)「本当に傷はもうないのね。」

志乃(しの)「そう言っているだろ。」

真琴(まこと)「服に血がべったり付いていたから心配だったの。」

志乃(しの)「それにしては気付くの遅かったな。」

真琴(まこと)「銃の方に気を取られていたからね。」

志乃(しの)「まあいい、さっさと入ってまた情報集めるぞ。」

志乃(しの)真琴(まこと)は風呂場へ移動すると体を洗ってから湯船に入る。

真琴(まこと)「ねえ、今調べている人って妖怪で何してるの?」

志乃(しの)「今回は狸の皮で呪具を作ろうとしていた。」

真琴(まこと)「前に貰った髪切(かみき)(むし)の剃刀もそうなんだけど何で消えないの?」

普通妖怪が死んだら例外はあるが大体は煙となって消えてしまう。

志乃(しの)「妖力が残ってると消えない。」

真琴(まこと)「そんな方法あるの?」

志乃(しの)「今回は妖力を外に出ないように封印した後、生きたまま皮を剥いでいた。」

真琴(まこと)「何でそんな事、、」

志乃(しの)「死ねば妖力は封印していたとしても抜けていくからな。」

真琴(まこと)「だけど剝いでる途中で死なないの?」

志乃(しの)「知らないガスボンベが置いてあって気になって調べたら麻酔だった。できるだけ死なないようにして皮を剥いだ後、特殊な液体に入れて妖力を定着させる。今回は妖力が完全に無くなる前に皮以外も回収できたから復元できたが最悪皮だけで葬式を上げることになったな。」

真琴(まこと)「復元?」

志乃(しの)「殺された狸の遺体を復元してあっちで葬式を挙げてもらったんだ。」

真琴(まこと)「服が汚れてたのはそれもあったからなのね。だけど生きたままでないと妖怪で呪具が作れないならあの剃刀って、、」

志乃(しの)髪切(かみき)(むし)は牙を切っても普通に再生する。」

真琴(まこと)「へー。」

志乃(しの)「まあ、被害は出てたから牙を貰った後に退治したけど。」

真琴(まこと)「そう、、それで人間達は狸の皮で何を作ろうとしていたの?」

志乃(しの)「狸の皮で作れる呪具で野々香(ののか)に貰った資料に書いてあったのは化姿外套(けしがいとう)、羽織ると別人の姿になれるみたいだ。」

真琴(まこと)「何でそんな物作ろうとするのかしら。」

志乃(しの)「2匹分の皮で1着できるみたいだから量産しようとしたことは分かるがそれ以外は知らん。知りたくもない。」

真琴(まこと)「そうよね。」

志乃(しの)「そろそろ上がるか。」

真琴(まこと)「ええ。」

志乃(しの)真琴(まこと)が上がると樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)が待っていた。

志乃(しの)「待たせたか?」

樹霧之介(きりのすけ)「僕達も今上がったところです。」

茂蔵(もぞう)の方を見ると少し元気がない。

真琴(まこと)「そんなにお風呂嫌だった?」

茂蔵(もぞう)「臭い消えるから嫌いなんだ。なのに樹霧之介(きりのすけ)、石鹸でゴシゴシと、、」

樹霧之介(きりのすけ)「そんな恨みがましく言わないでくださいよ。」

真琴(まこと)「綺麗になったじゃない。」

志乃(しの)「そうだ。今の茂蔵(もぞう)はフワフワだぞ。」

茂蔵(もぞう)「嬉しくねーよ。」

志乃(しの)達は樹霧之介(きりのすけ)の家に戻って調べ物を再開する。

真琴(まこと)「あれ?あの写真無くなっている。」

お風呂から戻って再度SNSを確認すると本拠地で撮ったであろう写真が消えていた。

真琴(まこと)「誤爆だったのかしら。」

茂蔵(もぞう)「なら罠だとか考えたのは考えすぎだったのか?」

真琴(まこと)「そうかもね。」

それからも何かないか探すが情報は出てこなかった。

真琴(まこと)「これ以上は見つからないわね。」

志乃(しの)「そうみたいだな、明日また色々と調べてみるよ。」

真琴(まこと)「何か当てでもあるの?」

志乃(しの)「放置してきた人が回収されていれば良いんだけどな。」

真琴(まこと)「何かしたの?」

志乃(しの)「式神の紙を付けているからそいつらの場所が分かるんだ。」

真琴(まこと)「そんなことしてたのね。」

それから色々仮説を立てたり話し合っているといつの間にか夕方になっていたので志乃(しの)はアパートへ帰る事にする。

志乃(しの)は帰ると持ち帰った液体を調べた後、明日に備えて早めに寝る事にした。

次の日、志乃(しの)は会社へ行く前に狸の時の拠点へ行ってみる。

放置した人に付けておいた式神を頼りに場所を探るが全員崖の下に落とされていて生きている者はいなかった。

死体は野ざらしのまま放置されていたので志乃(しの)は警察に匿名で電話してその場を後にした。

何の情報も得られなかった志乃(しの)は準備して会社のある街へ行く事にする。

少し遠い都会の方にあるので妖ノ郷(あやかしのさと)の出入り口も使い、近い場所まで来ると電車で移動してしばらく歩くとやっとオフィスのあるビルまで来ることができた。

階数は3階、2号に姿を消してもらって結界を使い外から覗くと日曜日なのに数人が仕事をしていた。

パソコンに向かって何かを打ち込んでいる人や電話をしている人、上司なのか少し離れた場所の机でのんびりパソコンを見ている人もいる。

だが社長である葛城(かつらぎ) 怜司(れいじ)の姿は見えず、志乃(しの)は動きがあるまで見張ってみるが全員お昼頃に退社していった。

結界もなさそうなので誰もいなくなったオフィスに7号を忍び込ませる。

窓からだと目立つので裏口から入ると3階まで登り、オフィスの扉の鍵を7号に開けてもらって中に入る。

人の気配が無いので資料を漁ってみるが野々香(ののか)に貰った資料すらも見当たらない。

主にしていたのは営業や事務作業のようで妖怪の事は何も見当たらず、パソコンも調べてみようとするがパスワードが分からない。

だが上司と思われる人が机の下を覗いていたのを見ていたので志乃(しの)も見てみるとパスワードが書かれたメモを見つけることができた。

パソコンを立ち上げると気になるファイルやメールを開いて見てみるが特に収穫は無い。

管理が杜撰なのは最初から大切な情報が無いからなのだろうか。

志乃(しの)は諦めてアパートへ戻り、真琴(まこと)から借りた服を返すためにも妖ノ郷(あやかしのさと)へ行き、樹霧之介(きりのすけ)の家に最初に立ち寄った。

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。どうでしたか?」

志乃(しの)「収穫無し。無駄骨だったよ。」

黒根(くろね)「どちらもか?」

志乃(しの)「ああ。あっちが次の行動を起こすまで手詰まりだな。」

黒根(くろね)「もどかしいな。」

樹霧之介(きりのすけ)「本拠地、見つけれそうにないですか?」

志乃(しの)烏天狗(からすてんぐ)の時の拠点、狸の時の拠点、そして今日のオフィス、全て離れすぎていて場所が絞り込めないんだよ。」

樹霧之介(きりのすけ)烏天狗(からすてんぐ)の時の拠点は調べたんですか?」

志乃(しの)「そこは篁音(たかね)が調べているだろ。あいつは知識も観察力もあるから見逃しは無いと思う。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうなんですね。」

志乃(しの)妖ノ郷(あやかしのさと)から行けるところは順番に見回ろうと思う。」

樹霧之介(きりのすけ)「それなら僕達でやります。」

志乃(しの)「妖怪を攫っている奴らだ。お前らだと危なくないか?」

樹霧之介(きりのすけ)「異常があるかどうかを見るだけです。人間には近付きません。」

志乃(しの)「うーん。なら渡しておきたいものがある。作らないといけないから少し待ってくれ。」

黒根(くろね)「あれか?」

志乃(しの)「そう言えば昔お前にも持たせていたな。」

樹霧之介(きりのすけ)「何ですか?」

志乃(しの)「できたらわかる。少し場所借りるな。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

志乃(しの)は9号に材料を持って来てもらうと、志乃(しの)は小さな鈴が付いたお守りを作る。

志乃(しの)「これは術に使われている霊力に反応して鈴が鳴る。」

志乃(しの)結界符(けっかいふ)を近付けると鈴はリンリンと小さく音を発する。

志乃(しの)「もし術が発動していれば音が変わる。」

志乃(しの)が結界を張ると鈴はリーンと高い音に変わった。

志乃(しの)「鈴が鳴ったら近付かず報告してくれ。」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりましたがこのお守りはいるんですか?」

志乃(しの)「そっちは術を一度だけ跳ね返してくれる。使いきりだが逃げるための時間稼ぎには使えるだろう。」

樹霧之介(きりのすけ)「ありがとうございます。」

志乃(しの)「妖力には何も反応しないから妖怪と戦う時は使えないからそこは気を付けてくれ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

志乃(しの)「それじゃあ。人数分作るから渡しておいてくれるか?」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりました。」

志乃(しの)はお守りを全員分作ると真琴(まこと)から借りた服と共に樹霧之介(きりのすけ)に預けてアパートへ帰った。

次の日の学校の休み時間、志乃(しの)野々香(ののか)のクラスに顔を出す。

志乃(しの)野々(のの)、、」

野々香(ののか)志乃(しの)志乃(しの)から来てくれるなんて嬉しい!」

野々香(ののか)志乃(しの)が教室の扉から顔を出した瞬間に飛びついてきたが志乃(しの)はそれを避ける。

志乃(しの)「要件は分かっているんだろ。」

野々香(ののか)「文化祭の事?」

志乃(しの)「分かってないなら言う事は無い。戻る。」

野々香(ののか)「嘘嘘。何かあったの?」

野々香(ののか)の奇行で注目を集めていたので階段下に移動して話を続ける。

志乃(しの)「狸が皮目的で人間に攫われていた。」

野々香(ののか)「それでどうなったの?」

志乃(しの)「潰した。それで野々香(ののか)はヒカリアシストって会社知っているか?」

野々香(ののか)「知らない。何それ。」

志乃(しの)「狸を捕まえていた人間を雇っていた会社だ。雇われていた人間から聞きだしたんだがそっちは?」

野々香(ののか)「母上は頭に血が上ると容赦ないから。」

志乃(しの)「そうか。生存者はいなかったんだな。」

野々香(ののか)「うん。それにそこにいた全員が何かしらの術を使っていたらしいから手加減もできなかったんだって。」

志乃(しの)「呪具を使っていた可能性は?」

野々香(ののか)「霊力の籠った物は見つからなかったって。」

志乃(しの)「霊力以外の物はあったのか?」

野々香(ののか)「うん。妖力が籠った呪具はいくつも見つかったの。」

志乃(しの)「あの資料に書いてあった物か?」

野々香(ののか)「そこまでは分からない。」

志乃(しの)「その呪具で攻撃した可能性は?」

野々香(ののか)「母上が言うにはどの術も陰陽師が使うような術だったって。」

志乃(しの)「あの資料にはそんな記述は無かったな。呪具は残っているか?」

野々香(ののか)「壊れてたから拠点と一緒に埋めたって。」

志乃(しの)「貴重な情報源埋めたのか。」

野々香(ののか)「資料は回収したからもういいと思ったんだと思う。仲間が何人か犠牲になっていたから早め目に潰したかったんだね。」

志乃(しの)「そうか、、」

野々香(ののか)「それでその会社って誰が運営しているの?」

志乃(しの)葛城(かつらぎ) 怜司(れいじ)って奴だ。一度その会社のオフィスに忍び込んでみたが何もなかった。」

野々香(ののか)志乃(しの)はその名前に聞き覚えある?」

志乃(しの)「無い。念のため篁音(たかね)にも聞いておいてくれ。」

野々香(ののか)「分かった。」

志乃(しの)「それにしてもこっちはそんな術使う奴なんて見てないし、呪具と呼べる物も銃と鉄製のケージくらいだったのに結構違うんだな。」

野々香(ののか)「まあ、烏天狗(からすてんぐ)と狸だからね。」

志乃(しの)「確かに捕獲難易度は違うよな。」

野々香(ののか)志乃(しの)は他に気付いたことはある?」

志乃(しの)「、、特には無いな。」

野々香(ののか)「それじゃ文化祭の事なんだけど、、」

志乃(しの)「私はもう戻る。」

野々香(ののか)「えーまだ時間あるよ。他の事も話そうよ。」

志乃(しの)「他に話すことは無い。」

野々香(ののか)「それでも行かないでよ。」

志乃(しの)「何もすることがないじゃあな。」

野々香(ののか)「あー。」

志乃(しの)野々香(ののか)をおいて教室へ戻って行った。

学校が終わってから志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)達と見回りに出ていたが特に何もなく、文化祭の日がやって来た。

志乃(しの)のクラスはフライドポテトの屋台をしていて志乃(しの)は1日目の午前中の店番なので屋台でお客さんを待っていると舞台の宣伝も兼ねて衣装で文化祭を回っている。

野々香(ののか)志乃(しの)。ポテト頂戴。」

志乃(しの)「はい。」

志乃(しの)は既にできている物を保温ケースから出す。

野々香(ののか)「作り置きじゃなくて揚げたてが欲しい。」

志乃(しの)「なら5分後にまた来い。」

野々香(ののか)「揚がるまで話そうよ。」

志乃(しの)「宣伝しなくていいのか?」

野々香(ののか)志乃(しの)にこの衣装見せたくて来たんだよ。」

拓海(たくみ)「ああ、いたいた。急に走り出すなよ。衣装が汚れたらどうする。」

一緒に回っていたであろう拓海(たくみ)や他の人達も野々香(ののか)の方に近付いて来る。

志乃(しの)「久しぶりだな。」

拓海(たくみ)「おお、久しぶりだな浜名瀬(はまなせ)風牙(ふうが)の目的はお前か。」

野々香(ののか)「ねえ、ポテト揚げたてが食べたいからしばらくここにいても良い?」

拓海(たくみ)「すぐ揚がるのか?」

志乃(しの)「5分ほど掛かる。」

???「あ、あの。」

志乃(しの)「うん?お前は確か照明係にいた、、」

???「覚えていていただいて光栄です。真壁(まかべ) 文香(ふみか)です。あの、浜名瀬(はまなせ)さんは演劇部に入ってくれないんですか?」

志乃(しの)「それは修一(しゅういち)に言われて断っている。」

文香(ふみか)「分かっています。ですが来年3年生が卒業するとアクションをこなせる人がいなくなるんです。」

志乃(しの)「何故お前がそれを気にする?」

文香(ふみか)「私、全国大会が終わって結城(ゆうき)先輩から部長の座を譲り受けました。」

志乃(しの)「それで今はお前がシナリオを書いているのか?」

文香(ふみか)「はい。それで最初のコンテストは風牙(ふうが)先輩と大塚(おおつか)先輩のおかげで突破できました。」

志乃(しの)「お前もアクション中心に書いているのか?」

文香(ふみか)「それがこの学校の演劇部の強みだと思うんです。」

志乃(しの)「それはお前が書きたくて書いているのか?」

文香(ふみか)「それは、、」

志乃(しの)「自信の無いシナリオでよく賞が取れたな。」

文香(ふみか)「それは先輩方のおかげです。ですがこのまま勝ち上がっても、、」

志乃(しの)「全国大会は来年だから野々香(ののか)達はいない。だから私にしてほしいと。」

文香(ふみか)「はい。私浜名瀬(はまなせ)さんの彩月(あやつき)、すごく好きだったんです。」

志乃(しの)「どこが好きなんだ?」

文香(ふみか)彩月(あやつき)は1人では何もできない人物だったけれど椿(つばき)との出会いから強さが見えてきて、だけどまだ弱さを持っていてそれを仲間同士で埋め合って、最後のシーンなんて1人に戻っても仲間を信じて真っ直ぐ突き進む姿は静かながらも迫力がありました。」

志乃(しの)「そ、そうか。だがそれにはアクションは必要か?」

文香(ふみか)「確かに戦闘はその人物を魅せるには良いですが他にも方法はあると思います。」

志乃(しの)「それならそれを書いてみたらいいんじゃないか?」

文香(ふみか)「だけど私は浜名瀬(はまなせ)さんの演技に惚れたんです。もし心変わりしたらいつでも来てください。と言うか心変わりさせます。」

志乃(しの)「どうやって?」

文香(ふみか)結城(ゆうき)先輩から聞きました。浜名瀬(はまなせ)さんは先輩のシナリオを読んで舞台に立ったんですよね。なら私のシナリオも読んでください。」

志乃(しの)「え。」

文香(ふみか)「それで気に入ったら全国大会だけでもいいんです。出てください。」

拓海(たくみ)「ハハハ。」

文香(ふみか)「何ですか?」

拓海(たくみ)「お前、もう全国大会に行けると思っているのか。」

文香(ふみか)「確かにまだ大会はありますが先輩方がいればきっと行けますよ。」

拓海(たくみ)「そうだな。頑張ろうぜ。」

文香(ふみか)「はい。」

志乃(しの)「ポテト揚がったぞ。」

野々香(ののか)「あ。志乃(しの)と話す時間が。」

拓海(たくみ)「いいじゃないか。またな浜名瀬(はまなせ)。」

志乃(しの)「ああ。」

野々香(ののか)「ああー。志乃(しの)ー。」

他の所も回らないといけないので野々香(ののか)拓海(たくみ)に引っ張られて行った。

志乃(しの)「あんなに明るく未来を話せるのは羨ましいな。」

志乃(しの)はその賑やかな団体を静かに見送る。

もうしばらく店番を続けていると交代の時間になったので志乃(しの)も文化祭を回ろうとすると陽葵(ひまり)に呼び止められた。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。」

志乃(しの)「何だ?」

陽葵(ひまり)「一緒に回ろ。」

志乃(しの)「断る。」

陽葵(ひまり)「何で?いいじゃん。」

志乃(しの)「静かに回りたいんだ。」

陽葵(ひまり)「修学旅行とか楽しそうに一緒に回ってくれたじゃん。」

志乃(しの)「あれは班で行動しないといけなかったからだ。」

陽葵(ひまり)「ねえ。あの後何かあったの?」

志乃(しの)「別に。」

陽葵(ひまり)「教えてよ。」

志乃(しの)「お前に話すことは無い。余計な事に首を突っ込むな。」

陽葵(ひまり)「私じゃそっちの事は手伝えない。だけど1人で悩まないでよ。」

志乃(しの)「、、分かったよ。これから野々香(ののか)の舞台だ。見に行くか?」

陽葵(ひまり)「うん。」

志乃(しの)達は舞台のある体育館へ行くと野々香(ののか)に見つかり舞台衣装の野々香(ののか)が近付いて来て注目の的になる。

野々香(ののか)志乃(しの)、見に来てくれたんだ。」

志乃(しの)「お前次だろ。準備しろ。」

野々香(ののか)「もう少し時間あるから大丈夫。こっち来てよ。陽葵(ひまり)もほら。」

野々香(ののか)志乃(しの)陽葵(ひまり)の手を引いて最前列の席に来る。

志乃(しの)「ここ関係者席だぞ。」

野々香(ののか)「大丈夫。」

修一(しゅういち)「席は空いているからいいですよ。」

文香(ふみか)浜名瀬(はまなせ)さん。是非見て行ってください。」

志乃(しの)修一(しゅういち)もこっちに座っているんだな。」

修一(しゅういち)真壁(まかべ)さんはシナリオ書くのは初めてみたいだから私も手伝ったんだ。」

文香(ふみか)「既存のシナリオでも良かったんですが先輩が私の書いた話を読んでシナリオ書いてみないかと提案してくれたんです。」

志乃(しの)「それでアクション中心になったのか?」

修一(しゅういち)「私の得意分野ですから。」

文香(ふみか)「でも話の筋は通ってますし、先輩は他の部員の得意分野も把握して役割分担も上手くて、、私、来年できるんでしょうか?」

修一(しゅういち)「卒業するまではサポートするからそれまでに自信つければいいよ。」

文香(ふみか)「はい、頑張ります。」

それから演劇が始まった。

内容は古びた洋館に迷い込んだ男女が亡霊に襲われながらもそれぞれの目的を果たそうとするものだった。

男性は初めはバズろうと1人で撮影の為に洋館に入ったが閉じ込められたために他の出口を探すために歩いていると、この洋館に隠された弟の遺体を探しに来たと言う女性に出会う。

男性は女性の事が信じられないので初めは別行動をとるが亡霊に襲われた時に助けられてそれから距離は取りつつも一緒に行動したが徐々にその女性に惹かれていく。

だが洋館の秘密を知るたびにその女性がこの世のものでない事を知る。

次第に男性は自身の脱出よりも女性をこの洋館に縛り付けている弟の遺体を探す事を優先するが、そんなものは初めから洋館には無く、それを知った女性は悪霊に取り込まれる。

それから男性は女性の悪霊からも逃げながらまだ行っていない場所を発見し、そこで亡霊の正体が女性の弟だという事を知った。

その場所は外にも通じており、このまま逃げる事も出来たが男性は喋れない亡霊の為に自身の体を貸し出し、女性を説得して姉弟は無事成仏、男性も真っ当な人生を送ろうと洋館を後にするという話だった。

演劇が終わると野々香(ののか)が真っ先に志乃(しの)の元に駆けつける。

野々香(ののか)志乃(しの)ー見てくれたー?」

志乃(しの)「見た見た。陽葵(ひまり)行くぞ。」

陽葵(ひまり)「うん。」

野々香(ののか)「えー、ちょっと待ってよ。片付け終わったら私も行く。」

陽葵(ひまり)「多い方が楽しいし私はいいよ。」

志乃(しの)「仕方ないな。」

野々香(ののか)を待って3人で文化祭を回る。

野々香(ののか)「ねえ、まずはどこに行く?」

陽葵(ひまり)「お化け屋敷とかどう?」

志乃(しの)「本物見ているのにか?」

陽葵(ひまり)「いいじゃん。」

野々香(ののか)「もしかして志乃(しの)怖いの?」

志乃(しの)「本物知っているとつまんないだろ。」

陽葵(ひまり)「いいから入ろうよ。」

野々香(ののか)「そうだよ。」

それから3人で文化祭を回ってその日は終わった。

文化祭2日目、陽葵(ひまり)は店番だったので志乃(しの)は1人で図書館で本を読んでいると野々香(ののか)に見つかる。

野々香(ののか)志乃(しの)、やっと見つけた。」

志乃(しの)「これはもう纏わりつくなという約束に反していないか?」

野々香(ののか)「烏は使ってないでしょ。」

志乃(しの)「それで何だ?」

野々香(ののか)「ここにいるなら暇なんでしょ。今日も見に来てよ。」

志乃(しの)「見るだけなら。」

野々香(ののか)「乱入してほしいとかもう考えてないから。」

志乃(しの)「仕方ないな。」

志乃(しの)野々香(ののか)に連れられてまた劇を見ることになった。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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