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浜名瀬志乃の学び舎日誌  作者: 火乃香


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46話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

修学旅行も終わり文化祭の準備が本格的に始まった。

文化祭では学年ごとにする事は決まっており、1年生は教室内でできる催し物、2年生は屋台、3年生は舞台か小売りになっていて2年生である志乃(しの)のクラスはフライドポテトを売る事になった。

そんなある日休み時間に野々香(ののか)が突撃してきた。

野々香(ののか)志乃(しの)志乃(しの)。」

志乃(しの)「何だ。付き纏わないという約束だぞ。」

野々香(ののか)「久しぶりなんだから付き纏っては無いでしょ。」

志乃(しの)「何か用なのか?」

野々香(ののか)「また舞台に立たない?」

志乃(しの)「断る。」

野々香(ののか)「考えてくれてもいいじゃん。」

志乃(しの)「何で誘ったんだ?」

野々香(ののか)「去年は私が乱入したじゃん。だから今年もあったら良いなって。」

志乃(しの)「乱入しろと?」

野々香(ののか)「うん。」

志乃(しの)「断る。」

野々香(ののか)「だよね。」

志乃(しの)「分かっているなら何しに来たんだ。」

野々香(ののか)「してくれたら嬉しかったんだけど本題入るね。」

志乃(しの)「何だ?」

野々香(ののか)「ねえ、明辻(あけつじ)って聞いたことある?」

志乃(しの)「その家なら潰れたはずだ。」

野々香(ののか)「そう言うってことは志乃(しの)は手出してないの?」

志乃(しの)「噂を聞いて念の為調べには行ったがその時にはもう無かった。」

野々香(ののか)「潰れた理由は知ってる?」

志乃(しの)「大きく異形な妖怪がそいつの屋敷を潰したこと以外は知らない。」

野々香(ののか)「調べなかったの?」

志乃(しの)「調べるも何も調べられる物は無かったし、助けないといけない妖怪もいなかったからな。それでその家がどうしたんだ?」

野々香(ののか)明辻(あけつじ)家は財産を失ってから技術を売って細々と生活していたみたい。」

志乃(しの)「みたいっていうのは?」

野々香(ののか)「この前仲間が襲われて母上が襲ってきた人間の拠点を1つ潰したの。」

志乃(しの)「そうか。」

野々香(ののか)「で、その拠点からこれが見つかったの。」

野々香(ののか)はA4サイズの封筒を志乃(しの)に渡し、志乃(しの)はその中の資料に目を通す。

それは明辻(あけつじ)家が行っていたであろう実験の結果や開発した術の資料だった。

志乃(しの)「これ、、」

野々香(ののか)「見た事あるものない?」

野々香(ののか)の持って来た資料には明辻(あけつじ)家の家紋と様々な妖怪を利用した術が書かれていて、その中には斎守(さいもり)家が使っていた妖力を吸い取る結界や木霊(こだま)を無理矢理生かして力を搾り取る術の事も書かれていた。

野々香(ののか)「母上が言うには斎守(さいもり)家は明辻(あけつじ)家から技術を買って使っていたんじゃないかって。推測だけど。」

志乃(しの)「それでこれが今でも使われているのか?」

野々香(ののか)「それが使われているかは分からないけど母上が見つけたのはコピーされた物だったから元の資料はまだ誰かの手元にあるのは確実だよ。」

志乃(しの)「お前がこれを私に見せに来た理由は?」

野々香(ののか)「この術を使う人間がいるかもしれないっていう警告。」

志乃(しの)「そうか。」

野々香(ののか)「それにこっちの方があれより優先度高いでしょ。」

志乃(しの)「そうだな。」

野々香(ののか)「もしかして志乃(しの)も手詰まってる?」

志乃(しの)「もって事はそっちもあまり進んでないようだな。」

野々香(ののか)「まあ、母上がずっと調べても出てこないからね。一度出来損ないが出てきたからってこれ以上どう進めればいいんだって話しだよ。」

志乃(しの)「そうか。」

志乃(しの)は資料を封筒に戻して野々香(ののか)に渡そうとする。

野々香(ののか)「それは志乃(しの)が持っていてよ。」

志乃(しの)「良いのか?」

野々香(ののか)「母上が見つけた資料のコピーだし、志乃(しの)なら使う事はないから。」

志乃(しの)「そういう信用はあるんだな。」

野々香(ののか)「その代わり烏天狗(からすてんぐ)が何人か行方不明なんだ。何か分かったら教えて。」

志乃(しの)「そういう事か、分かった。」

野々香(ののか)「あと、、」

志乃(しの)「何だ?」

野々香(ののか)「文化祭の舞台、見に来てよ。」

志乃(しの)「時間が合えばな。」

野々香(ののか)「2日間の内1日くらい時間合うでしょ。」

志乃(しの)「まだ分からないぞ。」

野々香(ののか)「乱入しなくてもいいから来てよ。来なきゃヤダ。ヤダヤダヤダ。」

志乃(しの)「分かったから駄々をこねるな。」

それからその日の帰り道、陽葵(ひまり)志乃(しの)に質問する。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん、今日野々香(ののか)と何話してたの?その封筒は?」

志乃(しの)「見るか?」

陽葵(ひまり)「いいの?」

志乃(しの)は黙って野々香(ののか)から貰った封筒を陽葵(ひまり)に渡し、陽葵(ひまり)は封筒の中から紙を取り出して中を見る。

陽葵(ひまり)「ヒッ!」

志乃(しの)「一応大事なものだ。落とすなよ。」

陽葵(ひまり)は中を見て驚き、すぐに出した紙を封筒に戻して志乃(しの)に返す。

陽葵(ひまり)「なにこれ。」

志乃(しの)「そういう実験をしていた家の資料だ。お前が見たのは大蝦蟇(おおがま)の解剖図だな。人型の妖怪の物じゃなくて良かったな。」

陽葵(ひまり)「何でそんな物があるの。」

志乃(しの)烏天狗(からすてんぐ)が人間に襲われたらしい。その人間の拠点で見つけたそうだ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんは平気なの?」

志乃(しの)「もっと酷いものをこの目で見てきた。」

陽葵(ひまり)「、、そうなんだ。それでどうするの?」

志乃(しの)「まだ実験が行われているなら潰すつもりだ。」

陽葵(ひまり)「危ない事だよね。」

志乃(しの)「昔から続けている事だ。」

陽葵(ひまり)「だけど、今の浜名瀬(はまなせ)さんいつもより何だろう何か、あれだよね。」

志乃(しの)「何だ?」

陽葵(ひまり)「最初の頃に戻った感じする。」

志乃(しの)「2年も経っていないのに変わるか?」

陽葵(ひまり)「だけど最初の浜名瀬(はまなせ)さん、怖かったよ。」

志乃(しの)「帰り道に襲われれば誰だって敵意を向ける。」

陽葵(ひまり)「いや、それはそうなんだけど。やっと馴染んできた感じしてたからさ。」

志乃(しの)「そうかもな。」

陽葵(ひまり)「戻らなくても良いんだよ。」

志乃(しの)「時代が変わろうが人が変わらなければ私がやる事は変わらない。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんがしないといけない事なの?」

志乃(しの)「知ってしまった以上無視はできない。」

陽葵(ひまり)「何で野々香(ののか)もこんなの浜名瀬(はまなせ)さんに見せたんだよ。」

志乃(しの)野々香(ののか)に当たるな。お前にこれを見せたのは妖怪だけではなく人間にも気を付けてほしいからだ。」

陽葵(ひまり)「人も怖いのは分かるけど何で?」

志乃(しの)「今の時代霊力を使える人は貴重だ。騙されて利用される可能性がある。」

陽葵(ひまり)「だけど私の霊力そこまで無いんだよね。」

志乃(しの)「霊力の量ではなく、それが使えるかどうかが問題なんだ。」

陽葵(ひまり)「そうか。」

志乃(しの)「もう知らない人には付いて行くなよ。」

陽葵(ひまり)「もうしないよ。それにあの時は催眠にも掛かっていたんだから。」

志乃(しの)「お守りは持っているか?」

陽葵(ひまり)「うん。肌身離さず持ってる。」

志乃(しの)「ならいい。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。無理しないでね。」

志乃(しの)「善処する。」

陽葵(ひまり)「もー。」

それから志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)達にも気を付けるよう言いに行く為に妖ノ郷(あやかしのさと)へ向かうが志乃(しの)妖ノ郷(あやかしのさと)にある樹霧之介(きりのすけ)の家の前までくると何かもめているのか中から怒鳴り声が聞こえてきたので志乃(しの)は扉を開けて中に入った。

???「何でここに人間がいる!わしらを騙したのか!?」

黒根(くろね)「落ち着かんか。こいつは昔わしと仕事しておった人間じゃ。」

中では樹霧之介(きりのすけ)黒根(くろね)茂蔵(もぞう)が2匹の狸の話を聞いているようだが樹霧之介(きりのすけ)は大柄な狸に委縮していて茂蔵(もぞう)は隅で固まっていてまともに話せているのは黒根(くろね)くらいだった。

志乃(しの)刑部狸(ぎょうぶだぬき)だな。狸の大将が何の用で来ているんだ?」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「お前に言う必要はない!」

志乃(しの)「私も怒鳴る事しか脳の無い奴の話は聞く気はない。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「何だと。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)は立ち上がり志乃(しの)に詰め寄る。

志乃(しの)「そうすれば誰もがお前に怯むと思うな。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「女のくせに生意気な奴だな。こんな細い奴片手で足りるぞ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)志乃(しの)に手を伸ばすが志乃(しの)は一瞬で刑部狸(ぎょうぶだぬき)を組み伏せてしまった。

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「いだだだだ。」

志乃(しの)「それで黒丸(くろまる)。こいつは何を怒鳴っていたんだ?」

志乃(しの)刑部狸(ぎょうぶだぬき)の上から黒根(くろね)に話しかける。

???「それは私から話させていただきます。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)の隣にいたもう1匹の狸が話し出す。

志乃(しの)「お前は?」

???「私は影吉(かげきち)と申します。この刑部狸(ぎょうぶだぬき)の側近をさせていただいております。」

志乃(しの)「それでお前達は何しにここに来たんだ?」

影吉(かげきち)「その前に暴力を振るおうとしたことは謝りますので降りて頂けませんか?」

志乃(しの)は下にいる刑部狸(ぎょうぶだぬき)を見て少し考えてから刑部狸(ぎょうぶだぬき)から降りる。

それから全員ちゃぶ台に着くと影吉(かげきち)は不機嫌な刑部狸(ぎょうぶだぬき)の代わりに話し始めた。

影吉(かげきち)「まずは騒がしてしまった事を謝罪します。」

志乃(しの)「私は用事があってここに来たんださっさと本題に入ってくれ。」

影吉(かげきち)「はい。私達が来たのはこの刑部狸(ぎょうぶだぬき)が治めている山に人間が入り仲間達を連れ去った事を相談に来たのです。」

志乃(しの)「何でここなんだ?」

影吉(かげきち)「そちらの黒根(くろね)殿は昔そういう問題を解決していたと茂蔵(もぞう)に聞いていたのです。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「だが頼って来てみたらどうだ。こんなちんちくりんに何ができる。しかもその跡継ぎがこんな子供だと?わしを馬鹿にしているのか。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)を順番に指差す。

志乃(しの)黒丸(くろまる)は昔負った傷で今はこんな姿だがそれが無ければお前よりも強いぞ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「問題は今起こっているんだ。今強くなくては意味ないだろ!」

影吉(かげきち)「落ち着いてください。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「だから最初からこんな落ちこぼれの言う事なんて聞く必要はないと言ったんだ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)茂蔵(もぞう)の方を睨みつけ、より小さくなる茂蔵(もぞう)を見て志乃(しの)茂蔵(もぞう)を抱えて一度外に出ると1人で戻って来た。

志乃(しの)「つまりお前らの仲間を取り返せばいいんだろ。なら私が行く。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「確かにお前は強いだろうが人間は信用できない。」

黒根(くろね)「じゃからこいつは昔破魔凪(はまなぎ)と呼ばれ、わしと一緒に妖怪達を助けていたんじゃ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「だがそれは200年以上も昔の話だろ。人間がそんな長く生きられるはず無い。」

志乃(しの)「何だ。証拠が必要か?」

志乃(しの)は9号が持って来た短刀を受け取り腕を切ろうとする。

樹霧之介(きりのすけ)「待ってください!」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)の短刀を持った腕を押さえる。

志乃(しの)「何でだ?こういう奴に信じさせるにはこれが一番早い。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「それで何するっていうんだ?」

志乃(しの)「お前は私が不死だと信じられないんだろ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「不死?どんな妖怪でも神にでもならなければいつかは消える。弱い人間にそんな奴がいるか。」

樹霧之介(きりのすけ)「刺激しないでください。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)、放してくれ。」

黒根(くろね)刑部狸(ぎょうぶだぬき)。こいつは人魚の肉を食べて不死なんじゃ。今はそれを信じてくれ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「わしはこいつが不死だろうが関係ない。人間は信用しない。」

志乃(しの)「そうか。」

志乃(しの)は短刀を鞘にしまい、竹筒へ戻す。

黒根(くろね)「それでその狸達を連れて行った人間に心当たりはあるんか?」

影吉(かげきち)「その人間どもは数匹攫っては引き上げるを繰り返していて尻尾を掴むことができません。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)影吉(かげきち)、こいつらに頼むことなんてない。帰るぞ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)は立ち上がり、出口へ歩いて行き、影吉(かげきち)はそれに付いて行く。

志乃(しの)「なら私は私の用事を済ませるか。黒丸(くろまる)明辻(あけつじ)家を覚えているか?」

黒根(くろね)「、、そんな家あったかの?」

志乃(しの)「妖怪を攫って実験をしている家があると聞いて一緒に行っただろ。」

それを聞いて帰ろうとしていた刑部狸(ぎょうぶだぬき)影吉(かげきち)は足を止める。

黒根(くろね)「ああ。行ったがもう無くなっていたあの家か。それでそれがどうしたんじゃ?」

志乃(しの)「今日、野々香(ののか)に聞いた話なんだが烏天狗(からすてんぐ)も攫われて篁音(たかね)がそいつの拠点を潰したらしい。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「お前、烏天狗(からすてんぐ)のまとめ役と知り合いなのか?」

志乃(しの)達は刑部狸(ぎょうぶだぬき)を無視して話を進める。

黒根(くろね)「それでそれが明辻(あけつじ)家の者だという事が分かったんか?」

志乃(しの)「首謀者はまだ分からないがその拠点からこの資料が出てきたそうだ。」

志乃(しの)野々香(ののか)に貰った資料の入ったA4サイズの封筒をちゃぶ台の上に出す。

影吉(かげきち)「すみません。拝見してもよろしいですか?」

志乃(しの)「勝手にしろ。」

影吉(かげきち)が封筒から資料を出すと顔色が悪くなったが仲間の為か責任感があるのかそのままペラペラとめくって刑部狸(ぎょうぶだぬき)と一緒に目を通す。

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「人間はどうしてこんな残酷な事ができるんだ。」

志乃(しの)「それで野々香(ののか)が言うには篁音(たかね)が見つけた資料は複製だったから元の資料はまだ人間の元に在って悪用される恐れがあるという事だった。だから樹霧之介(きりのすけ)達にも気を付けてほしいと言いに来たんだが既に他の被害が出ているとはな。」

影吉(かげきち)「これが本当なら既に攫われた仲間は、、」

志乃(しの)「妖力が弱くても狸を狙ったのなら可能性は高いな。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「おい!何でそんな平然としている。お前、影吉(かげきち)が仲間が攫われたと言った時からこれを予想していたんだろ!」

志乃(しの)「ああ。予想は出来た。だがお前が初めから冷静に話し合えばもっと早く分かった事だ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「わしのせいだというのか!」

志乃(しの)「そうだ。仲間思いなのはいいが頭に血が上り相手の話を聞かない。頼み事をしに来ているくせに仲間の悪口を言う。そして信用できないから頼らないと言って来たのはお前だ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「だがお前は妖怪を助けてきたんだろ。なら今回も、、」

志乃(しの)「何だ?人間は200年も生きられないんだろ。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「だが人間の起こした事だ。なら人間であるお前が解決してもいいだろう。」

志乃(しの)「なら、暴れて人を傷つける妖怪をお前は退治してくれるのか?」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「それがわしの仲間なら解決するさ。」

志乃(しの)「お前の仲間を攫った人間は私の仲間じゃない。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「それは、、」

黒根(くろね)志乃(しの)よ。もういいんじゃないのか?」

志乃(しの)黒丸(くろまる)。これ、覚えているか?」

志乃(しの)は資料の中から妖力を吸い取る結界と木霊(こだま)を無理矢理生かして力を搾り取る術の資料を見せる。

黒根(くろね)「これ、斎守(さいもり)家が使っていたやつか?」

志乃(しの)「そうだ。これを残すつもりは初めから無い。」

樹霧之介(きりのすけ)「だけどどうするんです?」

その時扉が開き、茂蔵(もぞう)と2匹の管狐(くだぎつね)が入って来る。

茂蔵(もぞう)「見つけた!見つけたぜ。」

志乃(しの)刑部狸(ぎょうぶだぬき)。お前の言う落ちこぼれの方が優秀だったようだな。」

刑部狸(ぎょうぶだぬき)「いつの間に。」

志乃(しの)茂蔵(もぞう)を連れて外に出た時、茂蔵(もぞう)に仲間を助けられないか相談を受けていた。

なので5号と7号を茂蔵(もぞう)に山に連れて行ってもらい、5号で狸の匂いがする人間をさがして拠点を特定する為に7号でその人間の後を茂蔵(もぞう)と共に追ってもらっていたのだ。

志乃(しの)「私はお前の依頼は受けない。お前らより先に仲間に頼まれたことがあるからな。茂蔵(もぞう)行くぞ。」

茂蔵(もぞう)「おう、こっちだ。」

そう言って志乃(しの)茂蔵(もぞう)を連れて樹霧之介(きりのすけ)の家から出て行った。

樹霧之介(きりのすけ)「待ってください!僕も行きます。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)、対人戦の経験は?」

樹霧之介(きりのすけ)「、、無いです。」

志乃(しの)「なら私の指示に従ってもらうぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。無茶しませんか?」

志乃(しの)「私の方が慣れているんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「答えになっていません。」

志乃(しの)「しなくていいならしない。」

樹霧之介(きりのすけ)「、、指示には従います。だけど無茶はできるだけしないでください。」

志乃(しの)「分かった。」

樹霧之介(きりのすけ)「それで僕は何をすればいいんですか?」

志乃(しの)茂蔵(もぞう)と一緒に狸達の誘導を頼みたい。ただ、特殊な結界が張っている可能性もあるから私が先に行って安全を確かめる。」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりました。」

茂蔵(もぞう)「1人で大丈夫なのか?」

志乃(しの)「潜入は1人の方がやりやすい。」

樹霧之介(きりのすけ)「ここは志乃(しの)さんに任せましょう。」

茂蔵(もぞう)「気を付けてくれよ。」

志乃(しの)「ああ。」

それから茂蔵(もぞう)に案内されて古い倉庫に辿り着く。

樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)は少し離れた木の陰に隠れ、志乃(しの)が1人で2号と6号で姿と音を消してまずは建物の外を調べる。

建物自体には結界は張っていなかったのでそのまま中にも忍び込み、中を確認する。

この廃倉庫は元々木材を保管や加工をしていた場所のようで区切られた部屋は無く、中は柱が少なくて天井が高い。

入り口の近くには数人の見張りがいて、奥には鉄製のケージが置いてあり、中には狸達がいるが全員妖力を封印されているみたいだ。

部屋の中心の方には血で汚れた金属製の机と縄や刃物などが入った箱、机の横にはガスボンベと膨らんでいる黒いビニール袋が複数置いてある。

そして少し離れた場所に水道があり、そこには液体に浸けた狸の皮があって干す場所も確保されていた。

今はもう暗くなりはじめる時間なので作業はしていないのだろう。

志乃(しの)は中を確認した後外に出て気付かれないように姿を現し、4号と10号を出すと4号の催眠薬を10号の風で中に充満させていく。

しばらくして中の人達が寝静まると志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)を呼んで中に入る。

樹霧之介(きりのすけ)「何ですかこれ。」

樹霧之介(きりのすけ)は中の惨状に眉をひそめ、茂蔵(もぞう)志乃(しの)の肩に乗って周りを見ないようにしている。

ケージの前に来ると中の狸達は志乃(しの)を見ると怖がってケージの奥で震える。

志乃(しの)「人間が怖いのか、仕方ないよな。ここから出すのは2人でできるか?」

茂蔵(もぞう)「頑張る。」

樹霧之介(きりのすけ)「いいですが志乃(しの)さんはどうするんですか?」

志乃(しの)「私はあいつらを処分する。」

志乃(しの)は寝ている人間達を指差す。

樹霧之介(きりのすけ)「処分って殺すんですか?」

志乃(しの)「殺しはしない。少し記憶を弄るだけだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「霊力は足りるんですか?」

志乃(しの)「繊細な事はしない。記憶に干渉して引っ掻き回せる霊力があればいい。」

樹霧之介(きりのすけ)「そしたらその人達どうなるんですか?」

志乃(しの)「こいつらは生きたまま狸の皮を剥いでいるんだ。気にすることは無い。」

樹霧之介(きりのすけ)「何でそんな酷い事するんです!」

志乃(しの)「無駄話は止めておこう。狸達の救出が先だ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい、、」

それから順調に樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)はケージの扉を開けて狸達を解放していく。

志乃(しの)は寝ている人の額に人差し指を当てた後、倉庫の外に放り投げるのを人数分繰り返していると見張りの人が持っている無線機から声が聞こえる。

定期連絡の催促で志乃(しの)は応答できず、異変を感じた仲間がもうすぐここにやって来るだろう。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)。あとどれくらいかかる?」

樹霧之介(きりのすけ)「まだ、扉が重くて開けにくいんです。」

志乃(しの)は1つしかない出入り口に結界符(けっかいふ)を貼って結界を張り、狸達の解放を手伝おうとするが志乃(しの)が近づくとバラバラに逃げてしまう。

志乃(しの)茂蔵(もぞう)。解放した狸達をあっちの隅へ集めてくれ。」

茂蔵(もぞう)「分かった。みんなこっちに集まってくれ。」

狸1「茂蔵(もぞう)、お前。人間の言う事に従うのか?」

茂蔵(もぞう)「そうだけどこいつはお前らを捕まえた人間と違う。」

狸2「出してくれた事は感謝するが落ちこぼれの言う事なんて信じられるか。」

狸3「そうだ、あいつらとグルだったらどうするんだ。」

茂蔵(もぞう)「落ち着いてくれ。」

狸1「そいつの言う事聞いて何かあったらお前責任とれるのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「不安なのは分かりますがここで言い争っても時間の無駄です。落ち着いてください。」

狸3「お前も人間の味方か。」

まだ出していない狸もいるのに出した狸の一部が騒ぎだしてしまった。

茂蔵(もぞう)樹霧之介(きりのすけ)は必死にそれを止めようとするが止まらない。

すると志乃(しの)が9号から短刀を受け取り空になった鉄製のケージの1つを真っ二つに切り裂き、騒いでいた狸の1匹に短刀を突きつける。

志乃(しの)「黙れ。ここで切られるか指示に従うかどちらかを選べ。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。何してるんですか!」

志乃(しの)「もうすぐここに奴らの仲間が来る。救出を急がなくてはいけないのにお前らの文句に一々付き合ってられん。邪魔されるくらいなら今斬る。」

騒いでいた狸は志乃(しの)の気迫に押され大人しくなり、狸は全員静かに隅へと固まった。

おかげで他の狸の救出もスムーズに済み、最後のケージを開けたところで外が騒がしくなってきた。

志乃(しの)は壁の一部を短刀で切ると小さめの出口を作る。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)、ここから木の枝で道を作って隠れながら山に戻れるか?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい出来ます。」

志乃(しの)茂蔵(もぞう)は山までの道案内を頼む。」

茂蔵(もぞう)「任せておけ。それで浜名瀬(はまなせ)の服、子供用に変えれば良いか?」

志乃(しの)「なぜそんな事する?」

茂蔵(もぞう)「だってこの穴、今の浜名瀬(はまなせ)じゃ通れないだろ。」

志乃(しの)「このままここを放っておいたらまた同じ事が起こる。再起不能になるまで潰さないといけない。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん残るつもりですか?無茶しないって約束したじゃないですか。」

志乃(しの)「無茶な事じゃない。昔はよくやっていた事だ。それに人間に不信感を持っている狸達がいる所に私が行くわけにはいかない。」

樹霧之介(きりのすけ)「それは、、」

志乃(しの)「終わったら樹霧之介(きりのすけ)の家で待っているから。」

樹霧之介(きりのすけ)「無事に戻ってくださいね。」

志乃(しの)「ああ。」

戻って来た人達は3人で外に放り出した人に気付いたらしく外から声が聞こえる。

人間1「おい、お前ら大丈夫か?」

志乃(しの)「早く行け。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

樹霧之介(きりのすけ)は木の枝を静かに操作して道を作り、茂蔵(もぞう)が最初に出ると他の狸達も付いて行った。

志乃(しの)は奥を見られないように人間達の前に現れる。

志乃(しの)「煩いぞ。」

人間2「お前誰だ。」

人間1「もしかして仲間を助けに来た狸か?」

人間3「化けているのか、獣が生意気だな。」

人間1「こいつらはお前が何かしたのか?」

志乃(しの)「そうだがお前らがした事を考えれば妥当じゃないか?」

人間3「獣が人間様に何言ってんだ。」

人間の1人が志乃(しの)に向かって猟銃を撃つが結界に弾かれる。

人間1「結界か?何で狸がこんなのを張れるんだ?」

志乃(しの)「こんな簡単な事も分からないんじゃお前らの頭は獣以下らしいな。」

人間3「何だと。」

跳弾を恐れた人間の1人が体当たりをしようとして来た時、志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)が最後に出て行ったのを確認して結界を解くと体当たりしようとした人はバランスを崩して倉庫の中に倒れ込む。

志乃(しの)「さて、どうしようか。」

志乃(しの)は倒れ込んだ人が起き上がる前に背中を足で押さえつけて腕を掴み、そのまま肩の関節を外す。

人間3「ギャア。」

志乃(しの)「痛いか?生皮を削ぐよりマシだと思うが?」

人間2「こいつ、そいつを放せ。」

1人は志乃(しの)に銃を向けるが志乃(しの)の足元に倒れている人に当てられないので撃てずにいる。

志乃(しの)「仲間が傷つくのが怖いか?殺さないだけマシだと思うが?」

人間2「獣を殺して何が悪い。お前らだって他の動物を食べているだろ。」

志乃(しの)「ならお前らは狸を殺さないと生きられなかったのか?」

人間2「そうだよ。狸の皮を売らなきゃ生活できないんだ。」

志乃(しの)「ここには20匹を超える狸がいた、狸の皮ってそんなに安いのか?」

人間2「俺は雇われているだけだ。値段なんて知らない。」

人間1「会話なんてするな。足元に当たらないように頭を狙え。」

そう言って後ろにいた人が前に出て志乃(しの)に銃口を向けてきたので志乃(しの)は撃たれる前にその狙ってきた人の腹に蹴りを入れるとその人は吹っ飛んでもう1人の人間の後方で気絶する。

志乃(しの)はそれを見て戦意を消失している最後の1人に近づき銃を取り上げる。

志乃(しの)「お前は素直に色々話してくれそうだ。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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