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34話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

夏休みに入り志乃(しの)が修行の進捗を見に行くと陽葵(ひまり)から里帰りの日程が決まったと言ってきた。

志乃(しの)「決まったのか。それで私は行ってもいいのか?」

陽葵(ひまり)「うん。あの時の事でまだ不安があるのは皆知っているから。浜名瀬(はまなせ)さんが良いならって。」

志乃(しの)「そうか。」

陽葵(ひまり)「だから浜名瀬(はまなせ)さんは気にせずに来て。」

志乃(しの)「分かった。」

そしてその日がやって来た。

陽葵(ひまり)の父親の実家に行く為に陽葵(ひまり)の親戚が車を出してくれる。

陽葵(ひまり)の家に来てくれたので志乃(しの)も準備をして車を待つ。

陽葵(ひまり)母「志乃(しの)ちゃんせっかくの夏休みなのに本当に良いの?」

志乃(しの)「はい。どうせ私の両親は仕事で構ってもらえないので。」

陽葵(ひまり)母「海外でのお仕事だっけ。大変ね。」

志乃(しの)「慣れてますから。」

陽葵(ひまり)母「本当にいい子ね。うちの子にならない?」

志乃(しの)「遠慮します。」

陽葵(ひまり)「いいじゃん。浜名瀬(はまなせ)さん一緒に暮らさない?」

志乃(しの)「断る。」

陽葵(ひまり)「何で?」

そんな話をしていると陽葵(ひまり)の家の前に車が止まる。

陽葵(ひまり)伯父「やあ、久しぶりだね。陽葵(ひまり)ちゃん大きくなった?」

陽葵(ひまり)「お久しぶりです。」

陽葵(ひまり)伯父「美和(みわ)ちゃんも久しぶりだね。」

美和(みわ)陽葵(ひまり)の母の名前だ。

美和(みわ)「ええ。お久しぶりです。お迎えありがとうございます。」

陽葵(ひまり)伯父「いいよ。それでそっちの子が電話で聞いた志乃(しの)ちゃんかな?」

志乃(しの)浜名瀬(はまなせ)志乃(しの)です。お世話になります。」

陽葵(ひまり)伯父「こちらこそ陽葵(ひまり)の事よろしく頼むよ。」

志乃(しの)「はい。」

美和(みわ)が助手席、志乃(しの)陽葵(ひまり)が後ろに乗り込み目的地へと出発するが陽葵(ひまり)の伯父さんはたまに志乃(しの)の方を気にしているようだ。

志乃(しの)「今回はいきなり来てしまってすみません。」

陽葵(ひまり)伯父「ああ。いやいや、それは良いんだ。こちらこそジロジロ見てしまって悪かったね。少し気になる事があるんだ。」

志乃(しの)「何でしょう?」

陽葵(ひまり)伯父「分かる範囲で良いんだけど君のご先祖に陰陽師の人っているかい?」

志乃(しの)「え?」

陽葵(ひまり)伯父「変な事聞いてしまってすまん。忘れてくれ。ただ決して君を部外者だとか邪魔者だとかは考えてないよ。大切な姪っ子の友達なんだから。」

志乃(しの)「はい。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんて何かお父さんの家と関係あったの?」

志乃(しの)「お前の父親の苗字を聞いていいか?」

陽葵(ひまり)「えっと、何だっけ、、」

志乃(しの)「何をしていた家だ?」

陽葵(ひまり)「家は立派な日本家屋だけど何してたかまでは分からないよ。」

志乃(しの)「名前も何してたかも分からない人との関係なんて知らないぞ。」

陽葵(ひまり)「あっちに着けば分かるから。」

志乃(しの)「そうだろうが少し行くのが怖くなったな。」

陽葵(ひまり)「何で。」

志乃(しの)「昔は人間とはあまり仲良くしてなかったから恨みを持つ家系もいるんだよ。」

陽葵(ひまり)「だけど昔の話でしょ。」

志乃(しの)「だけどお前の伯父さんが聞いてきたんだぞ。」

陽葵(ひまり)「それってどういう事?」

志乃(しの)「私の記録が残っている可能性があるんだ。」

陽葵(ひまり)「そっか。だけど私は見た事無いよ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)はあまり行っていないんだろ。」

陽葵(ひまり)「うん。」

志乃(しの)「まずは行ったら名前の確認だな。」

陽葵(ひまり)「それでも関係ないって言ってしまえば良いんだよ。」

志乃(しの)「それもそうなんだが、あまり記録には残さないようにしてたのに何で残っているのかが怖くてな。」

陽葵(ひまり)「それでも私の先祖が浜名瀬(はまなせ)さんと交流があったかもしれないなんて驚きだよ。」

志乃(しの)「悪い方でなければいいんだがな。」

陽葵(ひまり)「だけど妖怪退治もしてたんでしょ。英雄として残っているかもよ。」

志乃(しの)「強い力は逆に恐怖の対象になる事もある。自分らが手出しできなかった妖怪を倒して怖がられた事もあったんだぞ。」

陽葵(ひまり)「それは助けてもらって怖がる方がおかしいよ。」

志乃(しの)「私の信用が低いせいでもあるんだけどな。」

陽葵(ひまり)「そんな事無い。」

それまでヒソヒソ話していたが陽葵(ひまり)が急に大きな声を出して前方にいる2人にも聞こえたようだ。

陽葵(ひまり)伯父「どうしたんだい?」

陽葵(ひまり)「何でも無いです。」

陽葵(ひまり)伯父「伯父さんのせいだったらごめんね。本当に志乃(しの)ちゃんの事歓迎しているんだから。」

陽葵(ひまり)「大丈夫です。浜名瀬(はまなせ)さんの事は私が無理に頼んだから。私に責任あるの。」

陽葵(ひまり)伯父「責任とか使う年頃になったんだね。大丈夫だよ。子供が1人増えたくらいで煩くいう大人はいないんだから。」

陽葵(ひまり)「はい。」

それから順調に進み、浅めの川に架かる橋を渡って一軒の家にたどり着く。

陽葵(ひまり)伯父「着いたよ。」

美和(みわ)「ここまでありがとうございました。」

陽葵(ひまり)「伯父さんありがとう。」

志乃(しの)「ありがとうございます。」

陽葵(ひまり)の伯父さんは少し離れた駐車場に車を停めに行ったので3人で先に入る事になった。

志乃(しの)が表札を確かめてみると九重(ここのえ)と書かれていた。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。心当たりある?」

志乃(しの)「いや、無いな。」

陽葵(ひまり)「何で?」

志乃(しの)「何でと言われても名前を聞かなかった誰かかもしれない。」

陽葵(ひまり)「じゃあ何も分からないの?」

志乃(しの)「お前の親戚に聞けば何かわかるかもしれないだろ。」

陽葵(ひまり)「どう聞くの?」

志乃(しの)「、、わざわざ聞く必要もないか。」

陽葵(ひまり)「えー。気になるよ。」

美和(みわ)「どうしたの?入るわよ。」

陽葵(ひまり)「あ、うん。」

美和(みわ)は扉を開けて挨拶をする。

美和(みわ)「こんにちは。」

陽葵(ひまり)祖母「あらあら。いらっしゃい。よく来たね。」

美和(みわ)「お久しぶりです。数日間よろしくお願いします。」

陽葵(ひまり)祖母「ええ。」

陽葵(ひまり)「おばあちゃんこんにちは。」

陽葵(ひまり)祖母「まあまあ。陽葵(ひまり)ちゃん?大きくなって。それでその後ろの子がお友達?」

志乃(しの)浜名瀬(はまなせ)志乃(しの)です。しばらくお世話になります。」

陽葵(ひまり)祖母「志乃(しの)ちゃんね。こちらこそよろしくね。」

志乃(しの)「はい。」

陽葵(ひまり)祖母「私はお茶の用意をするから先に茶の間で待っていてね。」

陽葵(ひまり)「うん。」

美和(みわ)「手伝います。」

陽葵(ひまり)祖母「来たばかりなんだからいいよ。上がってゆっくりしなさいな。」

美和(みわ)「それじゃお言葉に甘えて、お邪魔します。」

陽葵(ひまり)「お邪魔しまーす。」

志乃(しの)「お邪魔します。」

3人で茶の間で待っていると陽葵(ひまり)の祖母がお茶を持って、車を置いてきた陽葵(ひまり)の伯父さんと共に入って来る。

陽葵(ひまり)伯父「やっぱり似てるな。」

陽葵(ひまり)「似てるって誰と?」

陽葵(ひまり)伯父「いや、志乃(しの)ちゃんがこの家に出る幽霊に似ているんだ。」

陽葵(ひまり)「幽霊?浜名瀬(はまなせ)さん何かこの家に恨みでもあるの?」

志乃(しの)「何でそうなる。」

陽葵(ひまり)伯父「いやいや、似てるってだけで志乃(しの)ちゃんより大人だったから。」

陽葵(ひまり)「ねえねえ。それって何処に出るの?」

陽葵(ひまり)伯父「奥の座敷だよ。」

陽葵(ひまり)「見に行っても良い?」

美和(みわ)「少し大人しくしてなさい。」

陽葵(ひまり)祖母「良いんじゃないかい?こんな田舎では窮屈だろう。それに、あの事を思い出してここを嫌うよりずっといい。」

美和(みわ)「すみません。」

陽葵(ひまり)祖母「あの子がいなくなったとしても自分の実家だと思ってくれていいんだから。楽にしなさい。」

美和(みわ)「ありがとうございます。」

陽葵(ひまり)伯父「陽葵(ひまり)ちゃん達は僕が見てるよ。母さんとゆっくりしていて。」

美和(みわ)「ご迷惑をおかけします。」

陽葵(ひまり)「行こう。伯父さん。浜名瀬(はまなせ)さんも。」

陽葵(ひまり)伯父「慌てないでよ。」

志乃(しの)達は奥の間に移動するとそこは薄暗く、電気を付けると志乃(しの)が何かに気づいて質問する。

志乃(しの)「すみません。この香炉っていつからありますか?」

志乃(しの)は床の間に飾られている香炉を指さす。

陽葵(ひまり)伯父「香炉?ああ、倉庫の整理をしていた時に見つけた物だよ。そう言えばこの香炉を出してから幽霊を見るようになったかも。もしかしてそういうのに詳しいの?」

志乃(しの)「少しだけです。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん妖怪とかに詳しいんだよ。」

陽葵(ひまり)伯父「そうなんだ。本当に先祖に陰陽師がいたりしてね。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんは先祖、、」

志乃(しの)陽葵(ひまり)。調子が戻ったのは良いが余計なことは言うんじゃない。」

陽葵(ひまり)「ごめんなさい。」

陽葵(ひまり)伯父「はは。そういうお年頃なんだよね。」

志乃(しの)「お前のせいで変な誤解が生まれているだろ。」

陽葵(ひまり)伯父「まあ、この部屋は自由に見てもらっていいから。」

志乃(しの)「香炉を触っても?」

陽葵(ひまり)伯父「壊さなければいいよ。」

志乃(しの)「それとこの家に慧玄(けいげん)という人はいましたか?」

陽葵(ひまり)伯父「僕は詳しく知らないけど、家系図がどこかにあったはずだよ。見る?」

志乃(しの)「いえ。そこまでは大丈夫です。」

陽葵(ひまり)伯父「母に言えばすぐ出してくれるから遠慮しないで。」

そう言って陽葵(ひまり)の伯父さんは部屋を出て行った。

陽葵(ひまり)慧玄(けいげん)って誰?」

志乃(しの)「前に言っただろ数年間だけ付き合った道具作りが好きな人間だ。」

陽葵(ひまり)「え。まさかその人が私のご先祖様?」

志乃(しの)「まだ分からない。あいつは器用だったからな。」

陽葵(ひまり)「それって遠回しに私が不器用って言ってない?」

志乃(しの)「事実だろ。」

陽葵(ひまり)「そうだけど。って何してるの?」

志乃(しの)は香炉を手に取ってひっくり返すと底に小さな取っ手が付いており、それを回すと中から大きめのビー玉くらいの白い玉が出てきた。

陽葵(ひまり)「壊さないって言われてたよね。」

志乃(しの)「仕様だ。壊してない。」

志乃(しの)は上下をもどしてから玉の出てきた所に指を入れると人の影が浮かび上がる。

陽葵(ひまり)「これって、浜名瀬(はまなせ)さん?」

そこには立体的な破魔凪(はまなぎ)時代の志乃(しの)が浮かび上がり、声は聞こえないがそれは立って誰かに何かを話しかけているようだった。

そして志乃(しの)が指を外すとそれは消える。

陽葵(ひまり)「今の何?もう一回やって。」

志乃(しの)「こんなもの残していたのか。貴重な霊嚢石(れいのうせき)をこんな事に使って。」

陽葵(ひまり)「どういう事?」

志乃(しの)「妖怪が自分の記憶を見せたりする技の応用で空間の記憶と再生をする術がある。それをこの香炉に仕込んでいるんだ。」

陽葵(ひまり)「なら今の浜名瀬(はまなせ)さんって過去の浜名瀬(はまなせ)さん?」

志乃(しの)「様子から見るに大きめの呪具の開発中に相談している時のものだな。」

陽葵(ひまり)「どうやって動かしたの?」

志乃(しの)「この下の所に霊力を流せばいい。あ。」

陽葵(ひまり)はキラキラした目で志乃(しの)を見ている。

陽葵(ひまり)「それ貸して。」

志乃(しの)「駄目だ。」

陽葵(ひまり)「何で。私のご先祖が作った物でしょ。」

志乃(しの)「保存されているのは私の姿だぞ。」

陽葵(ひまり)「だから見たいの。」

志乃(しの)「駄目だ。」

陽葵(ひまり)「その下の所に霊力を流すんだよね。」

志乃(しの)「駄目だぞ。」

陽葵(ひまり)「霊力流して無いのに何で伯父さんは浜名瀬(はまなせ)さんの姿が見れたの?」

志乃(しの)「それはこの霊嚢石(れいのうせき)のせいだ。これには私の霊力が込められている。電池みたいなものと思ってもらって構わない。」

陽葵(ひまり)「へー。何で今は映ってなかったの?」

志乃(しの)「多分劣化だな。」

志乃(しの)は香炉を横に置いて落ちた霊嚢石(れいのうせき)を拾って見てみる。

志乃(しの)「これには小さいひびが入っている。ここから霊力が漏れ出た時に記憶が再生されたんだろ。通常は別の操作で霊力を送れるようにしてある。」

陽葵(ひまり)「そうなんだ。」

説明中にも陽葵(ひまり)は香炉の方を見ているので志乃(しの)はため息をついて香炉を触るとパチッと音がする。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。今なにしたの!?」

志乃(しの)「中の記憶を消した。」

陽葵(ひまり)「壊したら駄目だって言われてたじゃん。」

志乃(しの)「香炉としての機能はある。」

陽葵(ひまり)「壊したことには変わりないよね。」

志乃(しの)「壊してはいない。記憶をまた記録すれば使える。」

陽葵(ひまり)「その記憶が大事なんじゃん。」

その時襖が開いて陽葵(ひまり)の伯父さんが入って来た。

陽葵(ひまり)伯父「家系図が見つかったんだが喧嘩か?」

陽葵(ひまり)「伯父さん。」

志乃(しの)「幽霊を祓っただけです。もう出ないと思いますよ。」

陽葵(ひまり)伯父「そ、そうか。それでその香炉、、」

志乃(しの)「すみません。気になって下を開けてしまいました。元に戻しておきますね。」

陽葵(ひまり)伯父「ああ。それにしてもその下、開ける事が出来たんだな。知らなかったよ。」

志乃(しの)は気付かれないように9号に霊嚢石(れいのうせき)を回収してもらい、香炉を元に戻す。

志乃(しの)「ほらいつまで不貞腐れているんだ。行くぞ。」

陽葵(ひまり)「もう少し見たかった。」

志乃(しの)「どちらにしろあれをここの家の人に説明できない。」

陽葵(ひまり)「そうだけど。」

志乃(しの)達が茶の間に行くと1つの巻物が広げられている。

陽葵(ひまり)「それが家系図?」

陽葵(ひまり)祖母「そうよ。それで志乃(しの)ちゃんが言っていた慧玄(けいげん)って人は江戸時代の人なの。よく名前知っていたわね。」

志乃(しの)「香炉に書いてありました。」

陽葵(ひまり)伯父「あれ、香炉見る前に言ってなかったか?」

志乃(しの)「そうでした?」

陽葵(ひまり)伯父「いや。まあ、いいか。」

陽葵(ひまり)祖母「それでこの人は発明家でね。今でも蔵にはこの人が作った道具があるんだよ。」

陽葵(ひまり)伯父「使用用途が分からないものばかりなのに父は捨てるなって言うんだ。」

陽葵(ひまり)「そう言えばお父さんが消えた日、倉庫の掃除してたかも。」

陽葵(ひまり)伯父「ごめん。嫌な事思い出させたね。」

陽葵(ひまり)「ううん。大丈夫。ねえ、倉庫の中も見ていいかな。」

陽葵(ひまり)伯父「陽葵(ひまり)ちゃんが言うなら良いけど、無理しなくてもいいよ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんがいるから大丈夫。」

陽葵(ひまり)伯父「そうか。なら鍵を取って来るよ。」

陽葵(ひまり)「うん。ありがとう。」

志乃(しの)「あの香炉に代わる何かを見つけようとしてないだろうな。」

陽葵(ひまり)「へへ。」

志乃(しの)「むやみに霊力流すなよ。危ない物も作っていたんだから。」

陽葵(ひまり)「分かったよ。」

それから倉庫に向かうと陽葵(ひまり)の伯父さんが鍵を開けてくれて志乃(しの)陽葵(ひまり)は中に入る。

壁いっぱいに棚があり、箱や見た事の無い道具が並んでいて中には甲冑や金庫などもある。

陽葵(ひまり)伯父「僕は外で待ってるけど気をつけてね。」

陽葵(ひまり)「うん。それじゃ浜名瀬(はまなせ)さん行こ。」

志乃(しの)「中の物壊すなよ。」

陽葵(ひまり)「大丈夫大丈夫。」

志乃(しの)「たまに出てくるその自信はどこから来るんだ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)は倉庫の中に入り、陽葵(ひまり)が棚を物色している間に志乃(しの)は霊力に反応するものが無いか調べている。

陽葵(ひまり)「ねえ、浜名瀬(はまなせ)さん。ここにも香炉があったよ。」

志乃(しの)は少し触って霊力を流してみる。

志乃(しの)「これもさっきと同じ呪具だな。」

陽葵(ひまり)「じゃあこれにも何か記憶が入ってるの?」

志乃(しの)「それなら本来の使い方しているみたいだから見ても良い。」

陽葵(ひまり)「本来の使い方?」

陽葵(ひまり)は疑問に思ったが、さっき志乃(しの)がしたように香炉の下を開けるが玉は出てこず、そのまま指を当てて霊力を流してみる。

すると今度は何かの設計図の様な物が浮かび上がった。

陽葵(ひまり)「なにこれ。」

志乃(しの)「本来は自分の発明が誰かに取られないように設計図とかを香炉に偽造して置いておく物なんだ。」

陽葵(ひまり)「へー。じゃあいくつか見つけたけどあれ全部設計図?」

志乃(しの)「調べてみないと分からないがそうだろうな。」

陽葵(ひまり)「なら何であれだけ浜名瀬(はまなせ)さんの映像が入っていたんだろ。」

志乃(しの)「知らん。」

陽葵(ひまり)「装飾もあれだけ凝っていたよね。」

志乃(しの)「そうだな。」

陽葵(ひまり)「本当に知らないの?」

志乃(しの)「何が言いたい。」

陽葵(ひまり)「いやいや。浜名瀬(はまなせ)さんが隠し撮りに気づいて無かった事に疑問がありまして。」

志乃(しの)「それだけ心を許してしまっていたのは認めるがそれだけだ。」

陽葵(ひまり)「恋仲とかじゃなかったの?」

志乃(しの)「家庭を築くのは一度で十分だ。」

陽葵(ひまり)「え。浜名瀬(はまなせ)さん、結婚していたの?」

志乃(しの)「ああ。子供もいたが私より先に老いて死んだ。」

陽葵(ひまり)「そんな暗い話サラッと言わないで。」

志乃(しの)「もう遠い昔の話だ。」

陽葵(ひまり)「えっと。なんかごめん。」

志乃(しの)「何故謝る。」

陽葵(ひまり)「思い出したいものじゃないでしょ。」

志乃(しの)「思い出すも何もいつも思っている事だ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんはそういう事乗り越えてるんだね。」

志乃(しの)「乗り越えてはいない。そこで止まっているから常に頭にあるんだ。」

陽葵(ひまり)「そう、なんだ。」

陽葵(ひまり)はそれから何も言えずに黙ってしまった。

それからは黙々と作業を続ける。

高い場所は志乃(しの)が結界を使って登り調べて全て調べ終わった。

志乃(しの)「おかしいな。」

陽葵(ひまり)「どうしたの?」

志乃(しの)「私はあいつに霊嚢石(れいのうせき)を10個渡したんだがさっきのも合わせて6個しか見つからない。」

陽葵(ひまり)「江戸時代でしょ。壊れたとか無くなったとかじゃないの?」

志乃(しの)「それなら良いんだが今もまだこれが入った呪具があったりしたら怖いんだよな。」

陽葵(ひまり)「そんなに長く持つの?」

志乃(しの)「中の霊力を使っていないなら発動する可能性はある。さっきの香炉だって勝手に動いただろ。」

陽葵(ひまり)「そうだったね。」

志乃(しの)「無害な物なら良いが危険なものに入っていないか心配だ。」

陽葵(ひまり)「だけど危険だって分かっていて入れっぱなし何てことあるの?」

志乃(しの)「動かし方で危険になるものもある。」

陽葵(ひまり)「心配なら何で浜名瀬(はまなせ)さんは見に行かなかったの?」

志乃(しの)「私の事を忘れていそうな時に一度行ったんだが引越していた。」

陽葵(ひまり)「そうだったんだ。」

志乃(しの)「それに私は動かさないなら抜いておくように口酸っぱく言っていたのにあの香炉の他にも2つ呪具の中に入ったままだった。空だったから良かったが。」

陽葵(ひまり)「私のご先祖様いい加減な人だったんだね。」

志乃(しの)「何かに集中すると他を忘れる性格だったからな。他が心配だ。」

陽葵(ひまり)「だけど倉庫だけにある事は無いんじゃない?香炉も家にあったんだから。」

志乃(しの)「そうか。5号。」

志乃(しの)は5号を出して家内を探してもらいもう一度倉庫の中に入って本を取ってくる。

陽葵(ひまり)「なにそれ。」

志乃(しの)「あいつが書いた発明品の説明書だ。時間が掛かりそうだから読んで待とうと思う。」

陽葵(ひまり)「へー。」

陽葵(ひまり)志乃(しの)が読んでいる本を覗いてみると絵は何とか分かるがミミズのような字が書いてあって読む事はできない。

陽葵(ひまり)「何て書いてあるの?」

志乃(しの)「ここには風を起こす道具の説明が書いてある。これに霊嚢石(れいのうせき)の1つが入っていたから気になってな。まあ、無害そうなやつで良かったよ。」

陽葵(ひまり)「そうなんだ。もう1つは何に入っていたの?」

志乃(しの)「ちょっと待って。」

志乃(しの)はページをパラパラと巡る。

志乃(しの)「多分これだな。猫の鳴き声を発する道具。ネズミ避けに作ったらしいが効果無かったのなら抜いておけば良いのに。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんはこの字よく読めるね。」

志乃(しの)「教えてもらったからな。」

陽葵(ひまり)「教えて貰ったって?」

志乃(しの)「これは暗号だ。」

陽葵(ひまり)「私には汚い字にしか見えないよ。」

志乃(しの)慧玄(けいげん)の字はお前とは違って綺麗だったぞ。」

陽葵(ひまり)「一言余計じゃない?」

志乃(しの)「事実だ。」

そんな話をしていると5号が戻って来て2個の霊嚢石(れいのうせき)を持っている。

志乃(しの)「空が2つに使いさしが2つ、未使用は1つで壊れているのが3つか。まだ2つ足りないな。」

陽葵(ひまり)伯父「おーい。何か見つかったかい?」

志乃(しの)はその声を聞いて霊嚢石(れいのうせき)を竹筒の中に入れる。

陽葵(ひまり)伯父「おや、その本。汚い字で読めないだろ。」

志乃(しの)「絵を見ていました。」

陽葵(ひまり)「ねえ伯父さん。この香炉少し貸してもらってもいい?」

陽葵(ひまり)伯父「香炉?さっきみたいに幽霊でも出るのかい?」

陽葵(ひまり)「出るかもしれないから試したいの。」

陽葵(ひまり)伯父「そうか。よくわからないけど壊したりはしないでね。」

陽葵(ひまり)「うん。」

陽葵(ひまり)伯父「志乃(しの)ちゃんも気になる物があればいいよ。帰る時までに倉庫に戻しておいてくれればいいから。」

志乃(しの)「はい。じゃあこの本と、、」

志乃(しの)はそう言って本をもう一冊と少し大きめの鈴を持って来た。

それは古く所々錆びていて中の玉も無いようで音も鳴らず、装飾も紐で黒ずんだ布が結び付けられているだけだ。

陽葵(ひまり)伯父「それでいいの?」

志乃(しの)「はい、しばらく貸していただけませんか?」

陽葵(ひまり)伯父「別にいいけど、、なんでそんなガラクタが良いの?」

志乃(しの)「少し気になっただけです。」

陽葵(ひまり)伯父「そうか。それなら無くなっても問題無さそうだし持って行ってもらってもいいよ。」

志乃(しの)「ですがここのお爺さんは蔵の中の物は捨てるなと言っていたんでしょ?」

陽葵(ひまり)伯父「捨てるなとは言っててもあげるなとは言われてないからね。どうせ無くなっても気付かないよ。」

志乃(しの)「ありがとうございます。」

陽葵(ひまり)伯父「本は返してね。」

志乃(しの)「はい。」

陽葵(ひまり)「え、それ貰うの?ガラクタだよ。」

志乃(しの)「壊すかもしれないからその方が良い。」

陽葵(ひまり)「これ何に使うの?」

志乃(しの)「...。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん?」

志乃(しの)「なあ、約束覚えているか?」

陽葵(ひまり)「約束?」

志乃(しの)「去年の夏休みにした約束だ。」

陽葵(ひまり)「もしかして消えるなってやつ?」

志乃(しの)「ああ。消えない。消えても戻ってくると言っただろ。」

陽葵(ひまり)「なんで今それを言うの?」

志乃(しの)「1つだけ破っても良いか?」

陽葵(ひまり)「何で。」

志乃(しの)「気になる事が出来た。」

陽葵(ひまり)「嫌だよ。約束したもん。」

志乃(しの)「お前の親戚にも迷惑をかける。」

陽葵(ひまり)「余計駄目じゃん。」

志乃(しの)「戻ってくる。それだけは守るから。」

陽葵(ひまり)「やだ。どこ行くの?私も連れてってよ。」

志乃(しの)「残念ながら1つしか見つからなかった。」

陽葵(ひまり)「もしかしてその鈴が関係あるの?」

志乃(しの)「そうだ。」

志乃(しの)は鈴を竹筒の中に入れる。

陽葵(ひまり)「あ!出してよ。それ私のご先祖様が作った物でしょ。」

志乃(しの)「私が貰ったものだ。」

陽葵(ひまり)「ならずっと浜名瀬(はまなせ)さんから離れないから。」

志乃(しの)「好きにしろ。」

志乃(しの)は黙っておけば良かったかもと少し後悔していた。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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