3.5話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
私の名前は桜庭 陽葵。
翠嶺町のごく一般的な家庭のひとりっ子で、翠嶺町高等学校に通っている。
人にはよくドジだとか猪突猛進だとか言われているが、少し注意力が無いだけだ。
そういえば今日、女子野球部の試合があるけど、陸上部の私には関係ないね。
朝から有り余る体力を発散する為にいつものコースを走っていると、とある公園で柄の悪そうな男が中学生位の男の子を脅迫している現場に遭遇する。
私はすぐに仲裁に入ったが、柄の悪そうな男は私に向かって拳を振り下ろす。
咄嗟に目を瞑り、ガードするが衝撃は来ない。
代わりに何か温かい物の中に包まれている感覚がある。
目を開けようとするが瞼が重く開けていられない。
「守ってあげるからね。」そんな声が頭に響き、そのまま眠ってしまった。
目を覚ますとそこは薄暗い洞窟のような場所だった。
周りには他にも数人の人がいる。
その中には脅迫を受けていた男子中学生もいた。
女性「大丈夫?」
私よりも先に居たであろう女性が声をかけてきた。
陽葵「はい、大丈夫です。ここはどこでしょう?」
女性「私もわからないの。外に出ようとしても見えない何かがあって通れなくて。」
その話通り、光が見える方向に進もうとすると見えない何かにあたる。
よく目を凝らして見ると獣みたいな何かが見えるような気がする。
陽葵「貴女はいつからここに?」
女性「昨日からよ。」
陽葵「閉じ込められた理由って分かりませんか?」
女性「私は夫のDVに悩まされていて、昨日は暴力も酷かったの。それで殴られるって思ったらここにいたの。」
陽葵「私も、なんか柄の悪い男性に殴られそうになって声が聞こえたと思ったら眠くなってここにいたの。」
女性「声?」
陽葵「うん。守ってあげるからねみたいな優しい声。聞いてない?」
女性「聞いてないね。」
陽葵「ねぇ、他の人は聞いていない?」
私は奥にいたスーツの男性に話しかけた。
男性「僕は聞いてないよ。上司の理不尽な怒号を聞きながら残業してたらいつの間にかここにいたんだ。だけど、暴力を受けた、受けそうになった人達が集められたっていうのは当たっているかもね。僕の前にいる子は親から暴力を振るわれていたみたいだから。」
そう言う男性の前には小学1・2年生位の痩せた女の子が丸くなって座っている。
よく見ると手足にあざが見えていて痛々しい。
陽葵「ここではどうやって過ごしているの?」
男性「朝と昼過ぎに出られる時間があるんだ。だけど山奥みたいで歩いて戻る事は無理そうだった。しばらくしたらいつの間にかここに戻っていて木の実や竹に入った水が用意されているんだ。」
私はこの話を聞いて何者かに飼われているようなそんな感じがした。
太陽の位置的にお昼ごろだろうか、もう少し外を見ようと出口の方に近づくと見えない何かがなくなって外に出ることができた。
正直催していたのでありがたい。
外へ出ると男性のいう通り山奥のようで急斜面と木々が続いている。
茂みに隠れて用を足すと上空の方から気配を感じる。
うっすらとだが何かが見えているような気がする。
それがこちらへ近づいてきたと思ったらまた洞窟の中へ移動していた。
そして目の前には木の実と竹に入った水がある。
男性から聞いた通りだ。
そしてまた出口には見えない何かがあって出ることができなくなっている。
木の実は意外とおいしくてお腹が空いていたのもあってすべて無くなった。
それから少しやる気が出たので出口を塞ぐ何かを調べようと触れてみる。
女性「危なくない?」
陽葵「だけど怖い感じはしないよ。」
そう言って触ってみると大きな動物のようなフワフワとした毛の感触がある。
結構気持ちよくて撫でたり揉んだりしてみる。
するとそれは動いて生暖かい物がほほを撫でるような感じがしたかと思ったら少ししか見えなかった何かの姿が少しずつはっきりと見えるようになった。
そこには大きな赤い舌と口を持った巨大な毛でおおわれた獣のようなものがいた。
陽葵「あなたは誰?あなたがここに皆を連れて来たの?」
???「君には僕の姿が見えるの?」
陽葵「しゃべった!?」
女性「あなた何言ってるの?」
陽葵「ここに大きな犬みたいなのが。」
中学生「閉じ込められて気が狂ったのか?」
陽葵「違うけど、その犬がしゃべって。いやなんでもない。」
私もさっきまで見えなかったし、この声も聞こえていなかった。
今の時点で見えるのも聞こえるのも私だけなんだろう。
これが見えたきっかけは舐められたことだろうか。
陽葵「ねえ、他の人も舐めてみてよ。」
私はこの巨大な犬のようなものに話しかけた。
???「いいけど、他の人は君みたいに反応してくれなかったよ。」
陽葵「舐めたの?」
???「うん。全員じゃないけど。怖がってたから慰めようとして、たけど余計怖がられちゃった。」
じゃあなんで私だけ?
そう思ったが今はここを出ることを考えよう。
陽葵「ねえ、あなたは誰?」
???「わしは昔は赤舌と呼ばれてた。」
陽葵「赤舌?」
確かに大きな口から出ている大きな舌は真っ赤で何かそのままだなーと思った。
陽葵「何で私達を連れて来たの?」
赤舌「大丈夫。」
陽葵「?」
赤舌「守るから。安心して。」
陽葵「えっと。」
それからも同じような事しか言わず会話が成り立たなくなってしまった。
何とか帰してほしい事を伝えようとしていると外から声がする。
???「いた!赤舌。攫った人たちを帰してください。」
その声に赤舌は外を向いて警戒をする。
赤舌「誰だ。こいつらはわしが守るんだ!」
赤舌の体で外が見えないが、何か言い争いをしているようだ。
するとだんだん眠くなってくる。
周りを見ると他の人たちはみんな寝ていた。
???「わからないなら力ずくで。」
そんな声が聞こえたと思ったら赤舌の下から木の根っこが生えてくる。
それは赤舌の体に巻き付き締め付けるが、赤舌は鋭い爪を使い切り裂いて脱出する。
そして赤舌の体から雲のようなものが出てきて飛んで行く。
外が見えるようになり見てみると、小学3・4年生位の男の子が木々を操って戦っている。
空からの攻撃に苦戦しているようだ。
赤舌の攻撃は紙でできた盾が防いでいて着物を着た女性が操っているように見える。
だが赤舌は水を使い攻撃しており、紙の盾はすぐにボロボロになっていた。
しばらくすると雨が降り出す。
雨に当たった赤舌の動きが少しずつ鈍くなり、地面に落ちてしまう。
それを木の根が地面に固定し、完全に動きを封じてしまった。
それを見ていた私の足は自然に動いていた。
抵抗しようとする赤舌にとがった木の根でとどめを刺そうとしている間に割り込み叫ぶ。
陽葵「待って!」
木の根は間一髪で止まった。
???「急に飛び込むなんて、危険です!」
男の子が叫ぶ。
だけどここで見ているだけでは後悔しそうだった。
陽葵「待って。待ってください。」
???「その妖怪はあなたを攫ったの。これからも同じことをするならここで始末しないといけない。」
どこにいたのかわからなかったが大人しそうな女性が出て来た。
陽葵「だけど、悪気はなかったと思います。」
???「悪くなければ何をしても良いの?」
大人しそうな女性が問う。
陽葵「他に方法はないんですか?」
???「他って何かあるの?」
大人しそうな女性が詰め寄るが何も言い返せない。
???「雫待ちなよ。」
紙を操っていた女性が静止する。
大人しそうな女性は雫さんという名前らしい。
雫「だけど真琴、暴走した妖怪は力でしか解決できないよ。」
紙を操っていた女性は真琴さんという名前なのか。
真琴「それでもここまで必死なんだもの、無視はできないよ。」
雫「私達は被害を防ぐために動いているんでしょ。」
陽葵「皆さんの事はあまり知りませんが、私達のためということはわかります。それでももう少しこの子と話させてください。」
雫「暴走状態の妖怪と会話なんてできるわけない。ねえ、樹霧之介も止めてよ。」
樹霧之介とは男の子の事なんだろう。
樹霧之介「今は抵抗していないし、僕が抑えているから大丈夫だよ。」
陽葵「ありがとうございます。」
私は樹霧之介くんにお礼を言って、赤舌に近寄り声をかける。
陽葵「あなたはどうしてみんなを連れて来たの?」
赤舌「わしは、わしは守りたかった。弱い人間を他の人間から。」
陽葵「どうして?」
赤舌「わしは眠っておった。ここで目が覚めて聞いたんだ。助けてと、痛いと。その子は親に殴られていた。助けたら安心してわしの腕で眠ったんだ。他にも助けないといけない人間がいると思って連れてきた。それしかできなかった。わかってた。これでは駄目なことくらい。だけど見ていられなかった。」
陽葵「それは、、人間が解決しないといけないことだよ。」
赤舌「ああ、わかっていた。」
陽葵「ごめん。」
赤舌「なぜ謝る?」
陽葵「あれ?何でだろう。人間のせいで苦しめてしまったからかな。」
赤舌は何かを考える。
赤舌「わしはまた眠る。今度は声の聞こえない深い場所で。」
陽葵「うん。それが良い。」
赤舌「わしが連れてきてしまった人間たちを頼む。」
陽葵「わかった。」
話を聞いていた樹霧之介くんは赤舌に巻き付いている木の根を緩める。
すると赤舌は地面へ潜っていった。
潜る音と振動はしばらく続き、その間に私達は攫われた人たちがいる洞窟へと移動する。
他の人たちはぐっすりと眠っている。
多分赤舌が戦闘に巻き込まれないよう眠らせたんだと樹霧之介くんは言う。
真琴さんが紙に攫われた人達を乗せて山のふもとまで運ぶ。
被害者の人たちは目を覚ますと男子中学生はそのまま帰り、虐待を受けていた女の子はDVを受けていた女性とともに警察署へ行き、パワハラを受けていた男性は辞表を出すことを決め、すがすがしい顔をして帰って行った。
私以外は樹霧之介くんたちが見えないみたいだった。
私は好奇心が抑えられずに聞いてみる。
陽葵「ねえ、あなた達は何者なの?」
樹霧之介「今日の事は早めに忘れた方が良いですよ。」
陽葵「何で?」
樹霧之介「行きますよ。」
そう言って私の前から消えてしまった。
もやもやしながらも家へ帰って遅くなったことを叱られてしまうが、何故か少しほっとしてしまう自分がいる。
陽葵「また会えないかな。」
あの人たちは何者なのか、何で助けてくれたのかとか色々気になって仕方がない。
興奮して眠れないと思っていたが、疲れていたのか布団に入ると朝になっていた。
今日は日曜日、昨日の山へと気付いたら来ていてしまった。
するとズボンの裾を引っ張られる。
下を見ると小さな子供がいてその子が引っ張っているようだ。
陽葵「君どうしたの?親御さんは?」
そう優しく問いかけると俯いていた顔を上げる。
その顔一面に毛が生えており、1つしかない目をこちらに向けてニヤッと笑う。
これは人じゃない。
そう思った時には遅く、足を掴まれてしまう。
人には出せないような力でズルズルと引っ張られる。
振りほどこうとするがバランスを崩し、転んでしまった。
それでもお構いなしに引きずられていく。
周りは山で助けを呼んでも声は届かない。
そんな時、一枚の紙が妖怪の顔に張り付く。
紙をはがすため両手を足から離した瞬間に逃げ出すことができた。
そして妖怪が紙を外してこちらに向いた時、上から真琴さんが降ってきて妖怪の前に立ちふさがる。
真琴「これ以上ちょっかい出すなら相手するわよ!」
この言葉に妖怪は怖気づき逃げて行った。
陽葵「真琴さん怖かったよー。」
私は真琴さんに抱きついた。
真琴「よしよし。」
真琴さんは私の頭をなでながらなだめてくれる。
真琴「樹霧之介のお父さんに言われて見張っててよかったわ。」
陽葵「樹霧之介くんのお父さん?」
真琴「そう、樹霧之介のお父さんは物知りで色々アドバイスをくれるの。それで妖怪が見えて好奇心旺盛な女の子は放っておいたら大変なことになるって教えてくれて念のため見張ってたの。」
陽葵「そうなんだ。ところでさっきのは妖怪?」
真琴「そうよ。山童っていう妖怪ね。久しぶりに見える人間と出会えて嬉しかったみたい。」
陽葵「嬉しかったら連れ去るんですか?」
真琴「妖怪によるわね。もっと酷いことをする妖怪もいるから気を付けてね。」
そう言ってどこかに行こうとする真琴さんの手を掴む。
陽葵「待ってください真琴さん。いえ、まこ姉!」
真琴「まこ姉?」
陽葵「私、自分を守れるくらい、いえ、まこ姉みたいに強くなりたいです!」
真琴「え、いや。」
真琴/心の声「どうしよう~。」
しばらくして。
樹霧之介「それでここに連れて来たんですね。」
ここは妖ノ郷という場所らしい。
人間界とは別の空間で様々な妖怪たちが暮らしているみたいだ。
そして私はまこ姉にその空間にある樹霧之介くんのお家に案内された。
家の後ろに大きな切り株があってそこに樹霧之介くんのお父さんが宿っているらしい。
そして樹霧之介くんのお父さんは昔、黒い根の鬼、通称黒根と呼ばれるくらい強かったらしく私の事を相談しに来たのだ。
黒根「陽葵さんじゃったか、今回は災難じゃったのう。」
陽葵「いえ、おかげで樹霧之介くんたちに知り合えました。」
樹霧之介「あのすみません。その樹霧之介くんって言うのは止めてもらえますか?」
陽葵「え、じゃあ樹霧之介でいいの?」
樹霧之介「はい。それでお願いします。」
陽葵「わかった。樹霧之介、今回何で私にだけ妖怪が見えるようになったのかな?」
樹霧之介「それは陽葵さんに霊力があるからだと思います。なので他に人より妖怪との繋がりが薄くても見えるようになったのではないかと思います。」
陽葵「私にはさん付けなんだ。」
樹霧之介「何か言いました?」
陽葵「何でもないよ。繋がりって?」
樹霧之介「それは妖怪を見るためには妖怪と何かしらの繋がり、例えば陽葵さんの場合は数回の接触で見えるようになったみたいですね。」
陽葵「それで見えるようになるの?」
樹霧之介「陽葵さんの場合霊力そこそこ多いのでそれだけで見えるようになったんだと思います。」
陽葵「その霊力って何?」
樹霧之介「人が持っている不思議な力でしょうか?」
陽葵「それって何ができるの?」
樹霧之介「えっと。」
黒根「基本的には人ならざるものを見たり、感じることができる。わしの知り合いはそれで妖怪退治をしていたな。」
陽葵「それを使えば私でも戦えるようになる?」
樹霧之介「はい。霊力を使えるようになれば自衛くらいはできるかと。」
陽葵「それでどうやって使うの?」
樹霧之介「それは。」
樹霧之介はお父さんに目線を送って助けを求める。
黒根「霊力っていうのは妖怪の天敵みたいなものじゃからここに霊力を教えれる者はいないんじゃよ。」
陽葵「えー。」
黒根「昔の知り合いにいて、生きてはいると思うんじゃが。どこにいるのかわからん。」
陽葵「それじゃあ。私はどうしたらいいんですか?」
黒根「しばらく真琴を付けるから妖怪を見分けれるように頑張ってくれ。」
真琴「え、何で私なんですか?茂蔵とかでもよくないですか?」
黒根「真琴が持ってきた問題じゃから。」
真琴「だけどあなたに言われて監視してたせいでもあるんですよ。」
陽葵「まこ姉よろしくお願いします!」
黒根「ほら。こんなに懐いているんじゃ。」
真琴「仕方ないわね。」
そう言ってまこ姉はスマホを取り出す。
真琴「ずっとあなたに付くことはできないから、危険を感じた時や妖怪を見つけた時なんかは連絡しなさい。」
陽葵「スマホ持っていたんですね。」
真琴「まあ、現代の技術はも捨てたもんじゃないからね。」
樹霧之介「真琴は手紙の妖怪だから今の通信手段とか気になっているんですよね。」
陽葵「へぇ。それじゃ、樹霧之介は木の妖怪なの?」
黒根「そうじゃ。木霊という木に宿る妖精みたいなものじゃよ。」
陽葵「じゃあ、お父さんは家の後ろの木の妖精なんですね。樹霧之介の木もあるんですか?」
樹霧之介「僕は僕自身が木なんです。お父さんは妖力が弱くなって姿を保てないんです。」
陽葵「じゃあ、この姿は?」
そう言って小さい姿の樹霧之介のお父さんを指す。
樹霧之介「今は精神を切り離しているんです。なので本体である切り株からあまり離れることはできません。」
陽葵「そうなんだ。そういえば雫さんはいないの?」
樹霧之介「他のみんなはそれぞれの住処にいますよ。」
陽葵「へー。もしかして雫さん以外にも仲間がいるの?」
さっき茂蔵とかいう名前も出て来たからいるはず。
そう期待しながら回答を待つ。
樹霧之介「いますよ。あったときに紹介しますね。」
やっぱりいるんだ。
会うのが楽しみだ。
陽葵「ねえ、他の仲間にも会いたいし、ここに通っても良い?」
樹霧之介「この妖ノ郷に入るためには妖力が必要だから人間には無理ですよ。」
陽葵「えー。じゃあ。」
まこ姉の方を見る。
真琴「必要性がなければ入れません。」
陽葵「えー。」
だけどこれ以上は迷惑かけれないから残念だけどここでは身を引くことにする。
黒根「そろそろ親御さんが心配する時間ではないか?」
そう言えばここに来てどれくらいたったんだろう。
時間を見るともう5時を過ぎていた。
陽葵「もう帰らなきゃ!」
真琴「送るよ。」
そうしてバタバタと家を出る。
まこ姉が紙で家まで送ってくれたので6時までに帰ることができた。
2日連続で叱られることは回避できたが明日の学校の準備がまだだった。
慌てて明日の準備をして、寝る準備もばっちり。
さあ、明日のために寝よう。
次の日、学校に行くと1人でベンチに座って本を読んでいる人がいた。
その人の周りを何か細長い狐のような獣が飛んでいる。
すぐにまこ姉に連絡して呪いの類かもしれないので退治することになった。
校内では目立つので帰り道に静かに始末しよう。
見えない影のヒーローとかカッコいいよね。
そして3話につづく。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。