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32話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

志乃(しの)妖ノ郷(あやかしのさと)にある樹霧之介(きりのすけ)の家でさっき起こった事を話し合っていた。

黒根(くろね)「わしが忘れていたせいで(ほむら)に怪我を負わせてしまったのか。すまんかった。」

(ほむら)「もう大丈夫だ。」

志乃(しの)「私が何のために夜に行ったか考えなかったのか?」

黒根(くろね)「その時は人目のない時間に行ったのかと思ったんじゃ。」

志乃(しの)「昔は苦労して古寺に追い詰めたんだけどな。」

黒根(くろね)「忘れてはおらん。思い出せなかっただけじゃ。」

志乃(しの)「それを忘れるというんだ。」

黒根(くろね)「そ、それにしても志乃(しの)もわしも見た事無い妖怪か。」

志乃(しの)「話を変えるのか?」

黒根(くろね)「お主はどう考えておるんじゃ?」

志乃(しの)「、、まあ、そうだな。姿形はヒレと鱗のある海坊主に似ていたが別種だと思う。」

黒根(くろね)「今も新しい妖怪が生まれておるからの。もしかしたら新種かもしれん。」

志乃(しの)「凶暴性が無いとは言い切れないが調べる術も無いからな今は放置するしかない。」

黒根(くろね)「そうじゃな。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。切れましたよ食べてください。」

志乃(しの)「分かったよ。」

黒根(くろね)「お主も素直になったの。昔だったら逃げておるじゃろ。」

志乃(しの)「これで安心してもらえるならいいんだ。別に変な事は考えてないからな。」

黒根(くろね)「そうか。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)から果物を受け取り完食する。

志乃(しの)「ごちそうさま。どうだ樹霧之介(きりのすけ)。気分悪くなったりしてないか?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。大丈夫です。」

志乃(しの)「私はこのまま帰って寝るだけだが夢とかも見れるのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「そこまでは試した事は無いですね。志乃(しの)さんは夢を見るんですか?」

志乃(しの)「最近見ていないな。」

樹霧之介(きりのすけ)「ならなんで聞いたんですか?」

志乃(しの)「ちょっと気になっただけだ。」

それから志乃(しの)がアパートへ帰ろうと道を歩いていると玄羽(くろは)が現れる。

玄羽(くろは)「母上から伝言がある。」

志乃(しの)「今でなければ駄目か?」

玄羽(くろは)「急ぎの用でもあるのか?」

志乃(しの)「眠いから早めに帰りたい。」

玄羽(くろは)「昔は徹夜してた事もあるだろ。」

志乃(しの)「最近は夜寝ないと眠いんだ。」

玄羽(くろは)「お前も歳取ったって事か?」

志乃(しの)「不老不死にそれ言うか?」

玄羽(くろは)「まあいい。烏が海で出来損ないを見たと報告があった。」

それを聞いて志乃(しの)は9号に木の棒を出してもらい電柱をカンカンと叩く。

玄羽(くろは)「何でそんな回りくどい事をする。」

志乃(しの)カンカンカン(ここは合わせてくれ)

玄羽(くろは)志乃(しの)に合わせて持っている錫杖(しゃくじょう)で地面を突く。

玄羽(くろは)カンカン(仕方ないな)

志乃(しの)カンカン(それで何で)カンカンカン(今更出てきたんだ?)

玄羽(くろは)カンカンカン(それは知らないが)カンカンカン(お前もその場にいたん)カン(だろ)

志乃(しの)カンカン(もしかして)カンカンカン(あの魚頭の事か?)

玄羽(くろは)カン(そうだ)

志乃(しの)カンカン(だがあいつは)カンカンカン(私を見て違うと言った)

玄羽(くろは)カンカン(あいつらが)カンカンカン、(基準としているものが)カンカン(分からない) カンカン(念のため)カンカンカン(気を付けてくれ)

志乃(しの)カンカン(探しているのは)カンカンカン(他の奴じゃないのか?)

玄羽(くろは)カンカンカン(その可能性はあるが)カン(お前も)カンカンカン(条件に合っているんだ)

志乃(しの)カンカン(その条件)カンカン(他に何か)カンカンカン(あるんじゃないのか?)

玄羽(くろは)カンカンカン(あるかもしれないが)カンカンカン(それが分からないんだ) カンカンカン(気を付けて損はない)

志乃(しの)カンカン(そうだな)

玄羽(くろは)カンカンカン(お前はあれを見て)カンカンカン(何か気付いたこと)カンカン(はあるか?)

志乃(しの)カンカンカン(腕を切ったんだが)カンカンカン(次見た時には)カンカンカン(再生していた)

玄羽(くろは)カンカンカン(出来損ないでも)カンカンカンカン(再生能力はあるのか)

志乃(しの)カンカン(再生速度も)カンカン(早そうだった) カン(もしも)カンカンカン(調査するなら)カンカン(気を付けろ)

玄羽(くろは)カンカン(わかった)

志乃(しの)カンカンカン(他に何かあるか?)

玄羽(くろは)カンカン(以上だ)

志乃(しの)「そうか。」

玄羽(くろは)「もういいのか。何だったんだ?」

志乃(しの)「個人的な都合だ。付き合ってもらって悪かったな。」

玄羽(くろは)「別に良いが誰かに会話でも聞かれているのか?」

志乃(しの)「そんな感じだ。」

玄羽(くろは)「昔は自由な奴だと思っていたんだがな。どうしたんだ?」

志乃(しの)「長く生きてれば心変わりくらいするさ。」

玄羽(くろは)「そうか。」

志乃(しの)「もう何も無いなら帰って良いか?」

玄羽(くろは)「ああ。時間を取らせたな。」

そう言って玄羽(くろは)は飛んで行った。

志乃(しの)「はあ、一度寝たら妖ノ郷(あやかしのさと)に行かないとな。」

学校は休みだったので志乃(しの)はアパートで寝て起きると妖ノ郷(あやかしのさと)にある樹霧之介(きりのすけ)の家へと向かう。

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。待ってましたよ。あの烏天狗(からすてんぐ)と何の話していたんですか?」

志乃(しの)「個人的な話だ。」

樹霧之介(きりのすけ)「でもわざわざ烏天狗(からすてんぐ)の暗号で話す事なんですか?」

志乃(しの)「お前はもう少し他人の生活を覗くという事を考えた方が良いぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「う。でも、、」

志乃(しの)「私は心配をかけるような事をしていると自覚している。だからお前達が安心できるならいくらでも覗いてもらっても構わないが、聞かれたくないことだってあるんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですよね、すみません。」

黒根(くろね)「出来損ないというものの話に思うのじゃが何故聞かれたくないんじゃ?」

志乃(しの)「、、これについては話していいかな。」

黒根(くろね)「何かあったのか?」

志乃(しの)「私も詳しい事は知らないが特定の人間を妖怪に変える奴がいるらしい。」

樹霧之介(きりのすけ)「そんな危険な妖怪放っておいていいんですか?」

志乃(しの)「その特定の人間も分からないし、そいつが何故そんな事しているかも分からない。場所も分からないから手が出せないんだ。」

黒根(くろね)「じゃが烏天狗(からすてんぐ)がお主に話に来るという事はお主がその人間かもしれないという事なのじゃろう?」

志乃(しの)「そうかもと言われたがあの魚頭の妖怪に私は違うと言われた。」

黒根(くろね)「魚頭の妖怪と何か関係があるのか?」

志乃(しの)玄羽(くろは)が言うにはあの魚頭の妖怪が出来損ないらしい。」

樹霧之介(きりのすけ)「ならあの妖怪って元人間なんですか?」

志乃(しの)玄羽(くろは)が言う事が正しければな。まあ、人間が妖怪になる事なんて珍しい事じゃない。」

黒根(くろね)「じゃが人為的に作り出すのは違うんじゃないのか?それに出来損ないと呼ばれておるなら本当に作りたいものが別にあると考えれる。」

志乃(しの)「それも分からない。」

黒根(くろね)「本当か?」

志乃(しの)「本当だ。」

黒根(くろね)「分かった。お主は無茶はするが無謀な事はせん。情報が集まるまでは手は出さんじゃろ。」

志乃(しの)「分かってくれて良かったよ。」

黒根(くろね)「じゃが情報は共有してくれんか?」

志乃(しの)「分かったことがあれば言うよ。」

黒根(くろね)「本当じゃな。」

志乃(しの)「ああ。出来損ないの情報が分かれば伝える。約束だ。」

黒根(くろね)「、、ならいい。」

樹霧之介(きりのすけ)「それにしても人間をどうやって妖怪に変えているんでしょうね。」

志乃(しの)「人間を妖怪にする方法、、そう言えば孤児を集めて実験していた胸糞悪い事件あったよな。」

黒根(くろね)「それは解決したじゃろ。」

志乃(しの)狂骨(きょうこつ)の事もあるからどこかで妖怪になって生きてたりしてな。」

黒根(くろね)「怖いこと言うな。何か心当たりでもあるんか?」

志乃(しの)「いや。少し思い出しただけだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「何があったんですか?」

黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)は知らん方が良い。」

樹霧之介(きりのすけ)「何故です?」

黒根(くろね)「あの惨状は今思い出しても酷いもんじゃ。わしはもう見とうない。」

志乃(しの)「私もだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「だけどそれがまた行われている可能性があるんですよね。」

志乃(しの)「今は子供がいなくなれば事件になる。可能性は低いだろ。」

樹霧之介(きりのすけ)「なら何で言ったんですか。」

志乃(しの)「なんとなく。」

黒根(くろね)「なんとなくで嫌な事を思い出させるな。」

志乃(しの)「5号。どうした?」

5号が何かを感じて竹筒から出てくると同時にドタドタと足音がして扉を勢いよく開けて風見(かざみ)が現れる。

風見(かざみ)樹霧之介(きりのすけ)!今嫌な妖気を感じたんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「何処でですか?」

風見(かざみ)「川の方だ。」

樹霧之介(きりのすけ)「皆を集めて行きましょう。」

志乃(しの)「手伝おうか?。」

樹霧之介(きりのすけ)「断っても来ますよね。」

志乃(しの)「5号も反応しているからな。」

樹霧之介(きりのすけ)「なら、真琴(まこと)を呼んできてください。」

志乃(しの)「電話で呼べる。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうでした。僕は(しずく)(ほむら)を呼びます。」

風見(かざみ)「ワイはいつも通り茂蔵(もぞう)呼べばいいんだな。」

樹霧之介(きりのすけ)「お願いします。」

そして全員が集まると妖気を感じた川辺に行くが妖気はもう出ていなかった。

だが慌てた様子で複数の人が誰かの名前を呼んでいるのが見える。

志乃(しの)はそのうちの1人に声をかけてみた。

志乃(しの)「すみません。どうしたんですか?」

女性「あ。この辺で子供を見ませんでした?」

志乃(しの)「見てないですね。もしかしていなくなったんですか?」

女性「えっと、そうなんですが。あなた、この辺では見かけませんがどちらの方ですか?」

志乃(しの)「たまたま通り掛かったらあなた方の声が聞こえたので何かあったのかなと思い声をかけさせてもらいました。」

女性「そうなんですね。」

女性は志乃(しの)に疑いの眼差しを向けてくる。

志乃(しの)「早く見つかるといいですね。」

女性「はい。それでは私はこれで。」

志乃(しの)はその場を離れて樹霧之介(きりのすけ)達と話をする。

樹霧之介(きりのすけ)達は霊感が無いと見えないので1人で喋る変な人に見えるかもしれないからだ。

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。子供が行方不明って、、」

樹霧之介(きりのすけ)はさっき話した孤児の実験の話の事で不安そうだ。

志乃(しの)「まだどんな妖怪かも分からない。少しこの辺を探索しよう。」

志乃(しの)は2号で姿を消してから人探しをしている人の周辺の川辺を探すと子供が描いたような絵を見つける。

さっきの人達が回収したであろう絵を見てみると違和感を覚える。

その絵は川を模写した物のはずなのだが、川辺にあるはずの無い小さめの雑木や枝でできた小屋らしきものが描かれている。

その時もう一度妖気を感じてその場所に行くがすぐに感じなくなったうえにその場所には何も無い。

そこに風見(かざみ)も来ていたが同じような感じだ。

志乃(しの)風見(かざみ)に声を掛ける。

志乃(しの)風見(かざみ)も妖気を見失ったのか?」

風見(かざみ)浜名瀬(はまなせ)、そこにいるのか。」

志乃(しの)が姿を消している間は風見(かざみ)達にも姿は見えていない。

志乃(しの)「少し分かったことがあるんだが皆を集められるか?」

風見(かざみ)「分かった。」

風見(かざみ)が自分の釜を叩いて音を鳴らすとまずは茂蔵(もぞう)が現れて真琴(まこと)(しずく)(ほむら)と集まってくる。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)は?」

真琴(まこと)「そう言えばいないわね。」

茂蔵(もぞう)風見(かざみ)の音、聞こえなかったのか?」

風見(かざみ)「ちゃんと風に乗せて音を出したんだ。障害物がほとんどないここで聞こえない事は無いと思うぞ。」

志乃(しの)「なら行方不明の子供達と一緒にいる可能性があるな。」

真琴(まこと)「どういうこと?」

志乃(しの)風見(かざみ)に集めてもらったのは情報を共有しようと思ったからだ。」

(しずく)「何かわかったの?」

志乃(しの)「その前に誰か何か見つけていないか?」

真琴(まこと)「何かと言われても変わったものは無かったと思うけど。」

(しずく)「川の水も調べてみたけど特に気になる事は無かったわ。」

(ほむら)「変な匂いとかも感じなかったぜ。」

茂蔵(もぞう)「この辺走ってみたけど変わったものは見つけられなかった。」

風見(かざみ)「ワイもここの妖気以外気になった事は無いぞ。」

志乃(しの)「なら余計に厄介かもしれないな。」

真琴(まこと)「どういうこと?」

志乃(しの)「犯人は隠里(かくれざと)にいる可能性が高いというのとその入り方が分からないという事だ。」

風見(かざみ)「なら妖気が消えたのって隠里(かくれざと)にいるからか?」

志乃(しの)「ああ。そして子供を攫う時だけそれを開けているんだろう。」

風見(かざみ)「ならさっきの妖気は樹霧之介(きりのすけ)を攫ったから感じ取れたのか?」

志乃(しの)「だと思う。そしてもっと厄介なのは樹霧之介(きりのすけ)達を攫ったのが油取(あぶらと)りという妖怪の可能性が高い。」

真琴(まこと)「それってどんな妖怪なの?」

志乃(しの)「子供を攫って油を搾り取る妖怪だ。」

(ほむら)「人から油を取るのか?」

志乃(しの)「しかも串に刺して搾り取る結構凶悪な奴だ。」

真琴(まこと)「それ早く樹霧之介(きりのすけ)達見つけないとヤバいんじゃないの?」

(しずく)「けど隠里(かくれざと)の入り口が分からないんでしょ。」

志乃(しの)「入る事さえできれば中から開けることは可能だ。だからこうする。」

志乃(しの)は見られていないか確認して姿を現し、子供の姿に変えて服を8号に変えてもらう。

真琴(まこと)「その姿で戦えるの?」

志乃(しの)「中に入ったら戻る。その為に服を茂蔵(もぞう)じゃなくて8号に変えてもらったんだから。」

茂蔵(もぞう)「おいらも子供に変化できるぞ。」

志乃(しの)「一緒に誘拐されるか分からないからな。竹筒を持っていれば出てこれる8号の方が良い。」

茂蔵(もぞう)「分かったよ。」

志乃(しの)「私はこのまま1人でこの辺を歩いてみる。」

真琴(まこと)「気を付けてね。」

志乃(しの)「ああ。」

そして志乃(しの)が大人達に見つからないように川辺を歩いていると違和感を感じる。

さっきまでは無かった枝などの小さめの雑木でできた小屋が現れたのだ。

それからしばらくすると子供達を呼ぶ声が徐々に聞こえなくなり、代わりに小屋の中から子供の泣き声が聞こえてきた。

完全に隠里(かくれざと)の中に入った事を確認し、志乃(しの)は大人の姿に戻ろうと腰に着けていたはずの竹筒に手を伸ばすが竹筒が無くなっている。

子供達が持っていたはずの絵があっちの大人達に回収されていることから持ち物がこっちに来ない事は予想できたのにと志乃(しの)は後悔するが子供達の安全の確保と、この隠里(かくれざと)の出口を繋げることが目的なので先に小屋の中に入る。

すると油取(あぶらと)りだろう、油を塗りたくった様なぬめった肌をしたしわだらけの老婆が古びた旅装束を着て壺の中に大きな串を振り下ろそうとしていた。

だが布だけが掛かった小屋の出入り口から入って来た志乃(しの)に注目が行き、手を止める。

壺の中から子供の手足が見えていて油取(あぶらと)りは片手で壺の中の子供を押し付け、それに串を刺そうとしているようだ。

そして小屋の中には樹霧之介(きりのすけ)が戦ったのだろう、所々不自然に木の枝が伸びていてその一部は子供達を守るように伸びている。

油取(あぶらと)り「おや、新しい子供が来たようだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「止めろ!手を出すな。」

壺の中から樹霧之介(きりのすけ)の声が聞こえる。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)!」

志乃(しの)は棒手裏剣を投げて壺に刺すと棒手裏剣に付けた爆炎符(ばくえんふ)を爆破させて壺を割り、樹霧之介(きりのすけ)を解放する。

志乃(しの)は続けて樹霧之介(きりのすけ)の周りに4本の結界符(けっかいふ)を貼った棒手裏剣を投げて樹霧之介(きりのすけ)を囲うように結界を張ると油取(あぶらと)りは結界に弾かれる。

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん、、」

樹霧之介(きりのすけ)は結構妖力を使った後のようで元気がない。

油取(あぶらと)り「チッ、こいつの仲間か。だがいい油が取れそうな可愛い女の子じゃないか。」

志乃(しの)「できると思うなよ。」

油取(あぶらと)り「子供のくせに生意気な。」

油取(あぶらと)りは志乃(しの)に向かって串を投げつけるが、それは志乃(しの)の横をすり抜けて外の川辺に落ち、それを合図に志乃(しの)油取(あぶらと)りとの距離を詰める。

油取(あぶらと)り「わしに体術は効かないぞ。」

そう油断している油取(あぶらと)りのみぞおちに志乃(しの)は勢いよく一撃を入れる。

油取(あぶらと)り「ぐぅあ。」

効かない、効いても子供の攻撃だとたかを括っていた油取(あぶらと)りに会心の一撃が入り油取(あぶらと)りは悶える。

志乃(しの)「体術も手裏剣もお前の体中に塗られた油で無効化されることくらい知っている。」

志乃(しの)の拳には紙が巻かれていてそれが油を吸収したので油取(あぶらと)りに攻撃することができたのだ。

油取(あぶらと)り「この力もだが封油草(ふうしそう)の油取り紙を何故お前みたいな子供が持っている。」

志乃(しの)「説明どうも。棒手裏剣が刺さらない以上こいつで戦うしかないんだ。もう少し付き合ってもらうぞ。」

油取(あぶらと)り「先に搾られたいみたいだな。」

志乃(しの)「お前なんかにできると思うのか?」

油取(あぶらと)り「生意気な。」

腹を立てた油取(あぶらと)りは串を持って志乃(しの)を追いかけ、志乃(しの)油取(あぶらと)りを外に誘導する。

外で志乃(しの)は結界を足場にして体格差をカバーしようとするが、腕も短くて不意を突いたあの一撃以外当てることができない。

広い範囲を移動しながら攻撃を当てようとしていたが地面に足が着いた時に油で足を滑らせてしまい転んでしまう。

そこに油取(あぶらと)りが串を刺そうと襲って来たので志乃(しの)は棒手裏剣を串に当てるが棒手裏剣は弾かれて地面に刺さってしまった。

油取(あぶらと)り「無駄な抵抗だったな。」

志乃(しの)「狙い通りだよ。」

志乃(しの)は戦いながらあの川辺に繋がる場所を探していて霊門符(れいもんふ)が貼られた棒手裏剣をそこに刺さるように投げたのだ。

棒手裏剣の刺さった場所から川辺に繋がり、そこから12号が飛び込んでくるとそれに続いて真琴(まこと)達も入ってくる。

油取(あぶらと)り「何だこいつらは。」

志乃(しの)(ほむら)!そいつは火に弱い燃やしてくれ!」

(ほむら)「任せろ!」

(ほむら)が火の玉を油取(あぶらと)りに当てると油取(あぶらと)りの体に付いていた油に引火して油取(あぶらと)りの体は燃え上がった。

志乃(しの)は起き上がり真琴(まこと)が持って来てくれた竹筒から8号を出すと服を戻して大人の姿になり、油取(あぶらと)りが落とした串を拾って燃えて苦しんでいる油取(あぶらと)りにその串を刺して止めを刺すと油取(あぶらと)りは煙となって消えていった。

志乃(しの)は不安定になった隠里(かくれざと)を1号に維持してもらい小屋に入ると樹霧之介(きりのすけ)が子供達を宥めている。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)大丈夫か?」

最初は油取(あぶらと)りの相手をしなくてはいけなかったのでよく見てなかったが所々攻撃を受けたのか怪我をしているのが見える。

志乃(しの)「人に無茶するなって言っといて自分はいいのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「今回は仕方ないじゃないですか。」

志乃(しの)「そうだな。遅くなってすまなかった。」

真琴(まこと)「でも私達が来た時浜名瀬(はまなせ)さん、油取(あぶらと)りに刺されそうだったよね。」

樹霧之介(きりのすけ)「え?」

志乃(しの)「この隠里(かくれざと)を繋げるのに必要な事だったんだ。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)に見られて気まずそうだ。

志乃(しの)「それより崩れそうな隠里(かくれざと)を長く維持するのは難しい。早く出るぞ。」

捕まっていた子供達は全員で3人いて、樹霧之介(きりのすけ)が守っていたおかげで怪我は無かった。

隠里(かくれざと)から出ると探していた大人達がすぐに見つけてくれたので無事に帰る事が出来そうだ。

志乃(しの)は2号で姿を消して樹霧之介(きりのすけ)達と子供達を見送ると妖ノ郷(あやかしのさと)樹霧之介(きりのすけ)の家へ戻り、樹霧之介(きりのすけ)の怪我の手当をする。

樹霧之介(きりのすけ)以外は志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)の面倒を見るならと自分の暮らす場所へと帰って行った。

黒根(くろね)油取(あぶらと)りか。志乃(しの)、お主が寝ている時に一度出てきたな。」

志乃(しの)「その時はどうしたんだ?」

黒根(くろね)「誰も退治できず何人か子供が犠牲になってそのまま行方が分からなくなった。」

志乃(しの)「そうか。」

黒根(くろね)「じゃが今回はすぐに気付けて犠牲者は出なかった。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)が頑張ったからだ。」

黒根(くろね)「じゃがお主がいなければ樹霧之介(きりのすけ)も犠牲になっていたかもしれん。隠里(かくれざと)を繋ぐ技術も妖怪の弱点を知っているのもお主じゃ。」

志乃(しの)「妖怪の知識は黒丸(くろまる)も持っている。何が言いたい?」

黒根(くろね)志乃(しの)。もう少し樹霧之介(きりのすけ)達を見てくれんか?」

志乃(しの)「どういうことだ?」

黒根(くろね)「死に急ぐなという事じゃ。」

志乃(しの)「私がいつそんなことした?」

黒根(くろね)「いつもしとる。それに今は人魚の効果が操れるんじゃろ。なら時間の問題かなと思ってな。」

志乃(しの)「今は年齢を変えることくらいしかできないぞ。」

黒根(くろね)「今はな。」

志乃(しの)「正直な話。不老不死の効果の範囲内でしか変えられないんだ。あの時はもしかしたらと思ったが今はこの呪いの根本にあるのは不老不死でそれは変えれないのかもしれないと思っている。」

黒根(くろね)「お主が弱音を吐くなんて珍しいな。」

志乃(しの)「なあ、黒丸(くろまる)も私を置いて逝くのか?」

黒根(くろね)「わしは、いれるまではいるつもりじゃ。」

志乃(しの)「そうか。」

樹霧之介(きりのすけ)「父さんはこの姿でもう200年いるんです。そんなに心配することでもないですよ。」

志乃(しの)「そうだな。元気な頃の黒丸(くろまる)と比べてしまうとどうしてもな。」

黒根(くろね)志乃(しの)。」

志乃(しの)「大丈夫だ。」

黒根(くろね)「無理はするな。体は治っても心が壊れしまったら治らないんだ。」

志乃(しの)「分かってる。」

樹霧之介(きりのすけ)「どういうことですか?」

志乃(しの)「今は支えがあるから大丈夫だ。」

樹霧之介(きりのすけ)「僕、志乃(しの)さんの支えになっていますか?」

志乃(しの)「ああ。だから今日は無理せずもう休まないか?」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですね。いつも志乃(しの)さんに無茶するなって言っていますから。僕も早めに休みます。」

志乃(しの)「おやすみ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。おやすみなさい。」

黒根(くろね)「おやすみ。」

樹霧之介(きりのすけ)は家の外に出て眠りについた。

志乃(しの)「それじゃ私も帰ろうかな。」

黒根(くろね)「もう少し話していかんか?」

志乃(しの)「何を話すって言うんだ?」

黒根(くろね)「お主が隠している事じゃ。」

志乃(しの)「私が何を隠しているって?」

黒根(くろね)「出来損ないの事、、」

志乃(しの)「それは分かったら言うって、、」

黒根(くろね)「それ以外の事じゃ。例えば出来損ないを作ったものについてとかか?」

志乃(しの)「...。」

黒根(くろね)「図星か。お主が思い出したくもない孤児の実験の話をわざわざ出してきたんじゃ。惑わせようとしてきたんじゃろ。それに約束する時わざわざ出来損ないの情報と付け足した。それ以外の事を話さなくても良いようにな。」

志乃(しの)「どうして分かった。」

黒根(くろね)「何年付き合ってると思っとるんじゃ。」

志乃(しの)「だったら分かるだろ。それを言いたくない理由も。」

黒根(くろね)「わしらには関係ないと思っとるんか?」

志乃(しの)「しかも今回は不死者に直接関わる事だ。」

黒根(くろね)「それなら人魚の情報を一緒に探したわしには関係あるじゃろ。」

志乃(しの)「それでも今の私に手出しはできない。」

黒根(くろね)「相談してくれればこちらも知恵を出すぞ。」

志乃(しの)「お前達にも無理だ。」

黒根(くろね)「何故そう言い切れる。」

志乃(しの)「私が生きているからだ。」

黒根(くろね)「、、そういうことか。ならお主も手は出せんのじゃな。」

志乃(しの)「ああ。今の私には無理だ。」

黒根(くろね)「なら安心だな。」

志乃(しの)「それでも情報は集めるぞ。」

黒根(くろね)「分かっとる。お主が勝手することくらい。じゃがこちらも勝手させてもらうぞ。」

志乃(しの)「ああ。勝手にしろ。」

黒根(くろね)「無駄じゃろうが一応言っておくぞ。志乃、お主はわしらの仲間じゃ、お主の事で関係ない事は無い。」

志乃(しの)「、、今日はもう帰る。」

黒根(くろね)「ああ。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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