31話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃は妖怪の本を書き終え、陽葵に渡す。
陽葵「もうできたの?」
志乃「ああ。頑張れよ。」
陽葵「テストも近いんだけど。」
志乃「同じ勉強なんだから同時進行できないのか?」
陽葵「無理だよ。」
志乃「頑張ればできる。」
陽葵「えー。」
それから1学期の期末テストが終わり、補習を受けなくてはいけない人が発表された。
陽葵「浜名瀬さん。浜名瀬さんはテストどうだった?」
志乃「いつも通りだ。」
陽葵「浜名瀬さんっていつも平均点以上ではあるけど特に良い点ってわけではないよね。」
志乃「こういう勉強はしてこなかったからな。」
陽葵「だけど日本史とか得意そうじゃない?実際に見てるんでしょ?」
志乃「人間とはほとんど関わってこなかったからな。噂ぐらいは聞いたがそれが何年の事なのかも知らないぞ。」
陽葵「教科書に出ている人と会った事とかないの?」
志乃「会っていたとしても基本的に名前とか聞かなかったからな。」
陽葵「顔とか分からないの?」
志乃「普通の人の顔は変わるからな。」
陽葵「そうだよね。」
志乃「それでそんな話をしに来たのか?」
陽葵「それがですね。私赤点を取りまして補習なんですよ。」
志乃「知ってる。」
陽葵「それで先生に今募集しているボランティアに人が集まらないから参加してくれたら単位をあげてもいいと言われまして参加しようかなと。」
志乃「そうか。行って来い。」
陽葵「他に知り合いがいないので浜名瀬さんも来てください。」
志乃「何でだ。」
陽葵「勉強に集中できなかったのは写本もあったからなんだよ。」
志乃「お前が望んだことだ。」
陽葵「私は無理だって言ったもん。」
志乃「そのせいだけとは限らないだろ。」
陽葵「中間テストは大丈夫だったもん。」
志乃「それもギリギリじゃなかったか?」
陽葵「でも赤点は無かった。」
志乃「分かった。無理言った私も悪かった。」
陽葵「やった。じゃあ今から先生にボランティア申し込もう。」
志乃「はぁ。」
志乃はこの事で妖怪の勉強をしなくなるのを恐れて渋々ボランティアに行くことにする。
ボランティア当日。
ボランティアは昼過ぎから開催され、内容は海辺のゴミ拾いで、陽葵の他にも補習の代わりに参加しているようでやる気の無さそうな生徒がチラホラいる。
生徒は3,4名くらいでグループになって、各自割り当てられた場所のゴミを拾って時間になったら集合場所に集合するというほぼ自由行動みたいな感じだった。
端の方の場所を割り当てられた志乃が真面目にゴミを拾っていると1人の男子生徒に声を掛けられる。
男子「ねえねえ、君も補習?それとも自主参加?」
志乃「...。」
男子「無視するの?可愛い顔して酷いね。」
ボランティアは学校の体育服で参加しているのだが、名前の刺繍の色で学年が分かる。
声を掛けてきているのは1年のようだった。
男子「君、2年生?もしかして演劇部の大会で主役をしていた幻の人?」
志乃「...。」
男子「俺、あの舞台見てさ。君にお近づきになりたくて演劇部の体験に行ったのにその主役の人は助っ人だからって名前も教えてもらえなかったんだ。酷くね?だから俺はサッカー部に入った。カッコいいだろ。」
志乃「...。」
男子「こうやって知り合えたのも何かの縁だしさ。仲良くしようよ。こんなつまんないこと止めてさ、あっちで一緒にデートしようぜ。」
志乃「お前はここに何をしに来たんだ?」
男子「お。やっと話してくれた。俺は単位を貰いに来たんだ。誰も見てないんだからいいじゃないか。真面目にしなくてさ。」
志乃「お前に付き合う気は無い。邪魔だけはするな。」
男子「なんだよ。真面目ちゃんかよ。つまんね。」
そう言ってその男子はどこかへ行ってしまった。
志乃がそのままゴミ拾いを続けていると男子生徒の叫び声が聞こえる。
その声を聞いた生徒や先生が駆けつけると男子生徒は岩場に入り込んでいて慌てた人達の様子を見て笑っていた。
先生「何があった?」
男子「いやぁ、こっちにもゴミ落ちてないかなって思って移動したら足滑らせちゃって。へへ。」
先生「ゴミ拾いは砂浜だけで良い。岩場には入るな。」
男子「すんません。」
先生「他の人も砂浜以外には入るなよ。」
男子生徒の悪ふざけ以外は特に何もなく夕方になり、ゴミ拾いが終わると参加者達は集合場所へ集まるがあの男子生徒だけが来ていない。
先生「またあいつか。先生が探してくるからしばらく待っていなさい。」
そう言って先生は男子生徒を探しに行き、他の生徒は帰り支度を始める。
陽葵「団体行動できないの迷惑だよね。」
志乃「無理矢理ボランティアに参加させてくる人も迷惑だぞ。」
陽葵「だって1人じゃ心細かったんだもん。」
志乃「グループも違ったのに意味はあったのか?」
陽葵「浜名瀬さんが近くにいるだけでも心強いよ。」
そんな話をしていると今度はさっきとは別の岩場の方から叫び声が聞こえる。
今度は耳をつんざくような声だったが他の人はまたあの男子生徒の悪戯だと思い動く人はほとんどいなかった。
だが志乃と陽葵は妖気を感じていて志乃はこの声に心当たりがあった。
陽葵「浜名瀬さんこれって、、」
志乃「ああ。陽葵はここを動くなよ。」
陽葵「うん。」
志乃は鞄から竹筒を取り出すと妖気が強い方へ走り出す。
志乃がその場に到着すると下半身が蛇の女性が男子生徒に髪を絡めている。
志乃はすぐに呪滅符を出して女性の髪に貼り発動させると、女性が怯んで髪の毛は男子生徒から外れた。
それでもその女性は髪を伸ばして襲って来たので1号、2号、5号、9号を出して結界符を持たせて広い面に結界を張る。
すぐさま3号も出して炎で攻撃すると女性は岩場を這うように逃げて行った。
追いかけたかったが男子生徒の事もあるので後にする。
男子生徒は生きてはいたが気絶しているのでどうしようかと思っているところに先生が駆けつけた。
先生「どうした?」
志乃「叫び声を聞いて走ってきたらこの人が倒れていました。」
先生「熱中症か?」
志乃「貧血だと思います。」
先生「なんでそう思うんだ?」
志乃「あ、えっと。前に自分がなった時と似ていたのでそうかなと。」
先生「まあ、素人が判断できるものじゃないから病院へ連れて行こう。後は先生に任せて君は戻りなさい。」
志乃「はい。」
志乃が集合場所に戻ると陽葵が心配しながら待っていた。
陽葵「浜名瀬さん。何があったの?」
志乃「磯女だ。さっきの男子生徒が襲われていた。」
陽葵「それってどんな妖怪なの?」
志乃「水死した人間から生まれる妖怪で髪を使って血を吸うんだ。」
陽葵「なにそれ。その男子生徒は大丈夫だったの?」
志乃「生きてはいた。先生も病院に連れて行ってくれると言っていたから大丈夫だろ。」
陽葵「そうなんだ。それでその磯女はどうなったの?」
志乃「逃げた。また夜に来て退治する。」
陽葵「なら私も。」
志乃「今回は危ないから来るな。」
陽葵「危険な妖怪なの?1人で大丈夫?」
志乃「お前がいない方が戦える。」
陽葵「それはそうだけど、、」
夜になり、志乃は磯女を探しに海へ行くと岩場を歩いて人に似た形の岩を見つけ、それに5号も反応している。
志乃は短刀を取り出し構えるとその岩に斬りかかるが、岩が振り向くと磯女の顔が見えてそれが甲高い声で叫ぶ。
それに志乃は怯まずに短刀を振り下ろすがそれは磯女の操る髪の毛に阻まれてしまった。
志乃はすぐに体勢を立て直すが磯女は髪の毛を伸ばしてきたので志乃はそれを左腕で受けると髪の毛は志乃の腕に食い込みそこから血を吸い取られる。
志乃は血を吸い取られても死にはしないが回復には時間がかかるので大量に吸われるのは避けたい。
志乃は左腕に刺さった髪の毛を持って引くと志乃の怪力に磯女が引き寄せられたのでもう一度短刀を構えて斬ろうとするが髪の毛に阻まれてしまう。
短刀では攻撃が効かなそうなので志乃は短刀を落として呪滅符を取り出し、磯女に貼り付け発動させる。
それに磯女は怯み、志乃の左腕に刺さっている髪の毛を抜くが、志乃は髪の毛を掴んだままなので磯女は逃げられない。
志乃は追撃しようと2枚目の呪滅符を用意するが、磯女は逆に志乃に近づき髪の毛を志乃の全身に絡ませる。
逃げる事を阻止しようと構えていた志乃は急に近づかれた事で髪の毛に対処する事はできなかったが、冷静に右手が使える間に呪滅符を磯女に貼り発動させる。
磯女は苦しそうにはしたが髪の毛は離さず、志乃の体勢を崩そうと強く引っ張ってくる。
志乃は怪力でそれを阻止しているが足元の岩場は滑りやすく、おまけに絡まっている髪から血を吸われて意識が朦朧として磯女に少しずつ引き摺られ始める。
志乃が磯女と力比べをしていると雨が降り始めて磯女の力が少しずつ弱まってきたため、右腕の髪の毛を解き、9号に短刀を持って来てもらいうと危機を察知した磯女は髪の毛を解いて志乃から距離をとった。
その志乃の元に樹霧之介達が駆け寄って来る。
さっきの雨は雫が降らした状態異常を付与する雨だったのだ。
樹霧之介「志乃さん。大丈夫ですか?」
志乃「どうして来たんだ?」
真琴「陽葵から連絡が来たのよ。今夜浜名瀬さんが磯女と戦うって。」
志乃「そう言えば来るなとは言ったが連絡するなとは言ってなかったな。」
樹霧之介「1人で無茶しないでください。ふらふらじゃないですか。」
志乃「少し血を吸われただけだ。すぐに回復する。」
雫「私が雨で磯女を弱らせなかったら危ない様に見えたけど。」
志乃「それは、、助かった。」
雫「もう、私達が来なかったらどうするつもりだったの?」
志乃「人魚の効果は戻っているから何とかなる。」
樹霧之介「それって、怪我する事前提で戦うって事ですか?」
真琴「陽葵が連絡くれて良かったわね。」
志乃「すぐ治る。」
磯女は雨を振り落し志乃に向かって髪を伸ばすが、それを真琴が紙の盾で防ぎ、焔がその前に出て炎で磯女を攻撃しようとする。
志乃「炎は駄目だ!」
志乃の言葉は既に飛び出してしまった焔を止める事ができなかった。
磯女は髪を焔に伸ばしてきたので焔は避けるが、炎で出来た影が突かれると焔にも同じように突かれた様な怪我をする。
焔「イ”ッ。」
痛みで焔が炎を消し影が無くなると磯女は髪の毛を引っ込め、動けない焔に追撃しようとするがそれを志乃が短刀で追い払うがすぐに髪の毛を伸ばしてきたので結界で受け止め髪を掴むとそれを引いてピンと張らせて短刀でそれを切り裂いた。
磯女は髪の毛を切られたことにより警戒して動かなくなったのでその間に雫が焔を回収し、志乃は磯女と睨み合いながら4号に指示を出して傷薬と痛み止めを雫に渡してもらう。
志乃が磯女に近付くと磯女は距離を保とうと下がるのでそのまま磯女を誘導する。
志乃「樹霧之介いけるか?」
樹霧之介「はい!」
志乃は流木のある場所まで磯女を誘導していたので樹霧之介はその流木から枝を伸ばして磯女に絡みつかせる。
身動きの取れない磯女に志乃は蹴りを入れて海に落とすが、磯女は髪を伸ばして志乃の足に絡ませると志乃も一緒に海へ落とされてしまう。
だが水中が得意な志乃は短刀を使い、磯女の髪を切って浮上する。
志乃が水面から頭を出すと樹霧之介と真琴が近くまで駆けつける。
樹霧之介「志乃さん。」
真琴「早く上がって、磯女が来るわ。」
志乃「磯女は泳げないから大丈夫だ。」
志乃が陸の方に泳いでいると足を掴まれて水中に引き込まれる。
志乃が水中を見ると足を引いたのは磯女ではなく、全身に鱗が生えてヒレのある魚の顔をした人型の妖怪だった。
このままでは海の底まで引き込まれそうだったが志乃の足を掴んでいる腕の力は強く、解けそうにないので短刀を突き刺すが痛みを感じていないのか平気な顔をしてそのまま志乃を海の底へ連れて行こうとする。
息に余裕のない志乃は足を掴んでいる妖怪の腕を切り落としてすぐさま浮上するがその時にチラッとその妖怪の方を見ると追いかけては来ていなかったが腕が再生しているように見えた。
志乃は水面で息をするとすぐに陸に上がる。
海に沈んだ志乃を心配して泳げる雫と茂蔵も近くに駆けつけていた。
息を切らした志乃を樹霧之介達は心配する。
樹霧之介「大丈夫ですか?」
真琴「磯女は泳げないんじゃないの?」
志乃「今のは磯女じゃない。」
雫「磯女以外にも妖怪がいたの?」
志乃「多分海坊主の一種だと思う。」
雫「はっきりしないのね。」
志乃「海坊主にしては小さかったし、こんな陸の近くにいるのも変だからな。」
志乃はさっきの妖怪が痛みを感じて無さそうな事と再生した事を伏せて話す。
真琴「浜名瀬さんが知らない妖怪もいるのね。」
志乃「姿は鱗とヒレがある海坊主に似てはいたんだけどな。」
樹霧之介「とにかく少し休みましょう。」
志乃「そうだな。磯女は泳げないとはいえ海底を移動できて何処でもよじ登れる。さっきの妖怪も出てくるかもしれないから作戦を考えないと。」
雫「磯女が影に攻撃出来るなんて知らなかったものね。」
志乃「黒丸から聞いてなかったのか?」
樹霧之介「父さんからは髪の毛で血を吸うくらいしか聞いてません。」
志乃「忘れていたのか?初見の時あれだけ苦労したのに。」
樹霧之介「まあ、一度集まりましょう。」
志乃達は焔達がいる砂浜へ移動する。
志乃「焔、怪我は大丈夫か?」
焔「志乃こそ溺れたって聞いたぞ。大丈夫なのか?」
志乃「溺れたわけじゃないんだけどな。まあ、元気そうでよかったよ。」
焔「もう痛くないぞ。」
志乃「痛み止めが効いてるだけだから無理はするなよ。」
焔「だけど俺泳げないし、炎も使えないんじゃ今回も役に立たないだろ。」
志乃「えっと。」
雫「こら焔。浜名瀬さんを困らせないの。」
焔「だけど、、」
志乃「今回は怪我もしているんだから無理はするな。」
焔「志乃には言われたくない。」
雫「それはそう。」
真琴「同感ね。」
志乃「私はすぐに治るから。」
風見「でも今はいつもより呼吸が早いぞ。」
樹霧之介「志乃さん、まだ回復してないんじゃないですか。」
志乃「流石鳴釜、空気の動きに敏感だな。」
志乃はボソッと呟く。
樹霧之介「志乃さんは完全に回復するまで戦闘に参加させませんからね。」
志乃「だが大体の攻撃は髪の毛で防がれる。どう攻撃するつもりだ?」
樹霧之介「髪の毛を無効化する方法が必要ですね。」
真琴「髪の毛自体が武器だから私の紙で覆ってもすぐ破られそうね。」
雫「浜名瀬さんは昔退治したのよね。その時はどうしたの?」
志乃「あの時は霊力があったから普通に髪の毛を切る事ができたんだ。」
樹霧之介「それくらい今の志乃さんは力を失っているんですね。」
志乃「そうだが今でも条件が揃えば切れるぞ。」
真琴「そう言えば切る事はできてたよね。どうやったの?」
志乃「まずは髪をしっかりと伸ばしてそこに霊力を纏わせた刀を当てて引くように切ると切れる。」
雫「それって浜名瀬さんしかできないわね。」
樹霧之介「僕達の中で刃物を扱えるの志乃さんくらいですからね。」
志乃「武器、、そう言えば最近見ないが焔の車輪ってどうなっているんだ?」
焔「あれ出すと小回りが効かないんだ。」
志乃「だが妖力で具現化しているなら妖力がある間は直せるから攻撃を受けたりとか出来るだろ?」
雫「こいつは攻撃と防御を同時にできないの。防御は真琴がしてくれるから攻撃を中心にしているわ。」
志乃「確かに仲間がいるならそれが一番いい方法か。」
焔「だけど役に立てるなら何でもするぜ。」
志乃「なら磯女の髪の毛を車輪で絡めとる事は出来そうか?」
焔「出来るとは思うが髪の毛が車輪の方に来てくれないと難しいぞ。」
樹霧之介「それなら僕達の方でフォローします。」
志乃「私が囮になって誘導するぞ。」
樹霧之介「風見、志乃さんの呼吸どうですか?」
風見「まだ戻ってないな。」
志乃「だが焔も怪我をしているぞ。」
樹霧之介「焔には後ろで車輪の操作に集中してもらいます。」
雫「絶対に前に出さないから安心して。」
茂蔵「おいらは今回戦えない。一緒に待とうぜ。」
志乃「、、分かったよ。」
樹霧之介「それじゃ作戦考えましょう。」
志乃「なら一応これ渡しておくか。」
志乃がそう言うと9号が剃刀を2丁持って来た。
樹霧之介「何ですか?これ。」
志乃「髪切り虫の牙で作った剃刀だ。これなら磯女の髪の毛を切る事ができる。」
茂蔵「カミキリムシの牙で何でそんなものが作れるんだ?」
志乃「髪を切る妖怪の方の髪切り虫だ。」
樹霧之介「志乃さんは何で使わなかったんですか?」
志乃「小さくて戦闘には使えないんだ。でも髪による吸血は厄介だからもし刺された時の保険として持っておけ。」
樹霧之介「ありがとうございます。」
雫「本当色々持っているのね。」
志乃「これは普通に髪の毛を整えるのに使えるからな。切り味は良いのに髪以外は切れないから便利だぞ。」
真琴「へー。」
志乃「私は髪切ってもすぐ戻るから良ければ譲るよ。」
真琴「良いの?」
志乃「昔は保護した妖怪の髪の毛を整えていたが今は使わないからな。」
真琴「それなら、大事に使わせてもらうわね。」
志乃「ああ。」
それから樹霧之介達が作戦を考えていると風見が磯女の妖気を感じたので志乃と茂蔵を残して樹霧之介達はそちらへ向かって行った。
それからしばらく経つと志乃は立ち上がる。
茂蔵「おい。心配なのは分かるが行くなよ?」
志乃「作戦も立てたから大丈夫だろ。ある程度回復したから他にしたいことがあるんだ。」
茂蔵「危ない事じゃないよな。」
志乃「心配なら付いてくるか?」
茂蔵「もちろんだ。」
志乃は海岸線に沿って歩いていく。
歩けそうな足場がほとんどない場所とかも通るので茂蔵は志乃の肩に乗って一緒に行くと波が穏やかな岩の隙間に不自然な石が落ちているのに気づく。
その石は人の手で成形されたように四角く一部を除いてフジツボなどが付いている。
その石をひっくり返してみると中はくり抜かれていて中にはお地蔵様が掘られていた。
志乃はその辺りをもう少し探索すると岩場の少し上の方に何かの土台だったような四角い石が置いてあり、見てみると最近まで上に何かが置いてあったような跡がある。
茂蔵「お前が探していたのってこれか?」
志乃「ああ。」
志乃は茂蔵を降ろすとさっき見つけたお地蔵様が掘られた四角い石を持って来て土台の跡に載せると大きさがピッタリと合う。
茂蔵「これ、祠か?」
志乃「水死者を鎮めるための祠だろうな。後は屋根の部分もあるはずだ。」
茂蔵「それってあれじゃないか?」
茂蔵が指さす先には波が掛かって見にくいが祠と同じ質感の石が落ちている。
志乃「よく見つけたな。」
茂蔵「へへ、観察力には自信があるんだ。」
志乃は石を持って戻るとそれを乗せ、祠を元に戻す。
茂蔵「浜名瀬はここに祠がある事を知っていたのか?」
志乃「ここにある事は知らなかったが今まで現れなかった磯女が急に現れたからな。磯撫での事もあったから一応探してみたって感じだ。」
茂蔵「その時も不自然だって言っていたな。」
志乃「ああ。今回も穏やかな場所にあるはずの祠が崩れていた。直した感じ自然に崩れたとは思えないんだよな。」
茂蔵「誰かが意図的にやっているなら何のためにやってるんだ?」
志乃「分からない。」
その時志乃は妖気を感じてその方向を向くとさっき志乃の足を引っ張った魚顔の妖怪が海から上がっていた。
茂蔵「あいつ。さっき言ってた奴か?」
志乃「そうだ。」
その妖怪の腕は志乃が切ったはずなのに元に戻っている。
魚顔の妖怪は志乃達の方をギョロッとした目で見ると、くぐもった声で何かを呟いている。
魚顔の妖怪「似てる、、が、ち、がう、、大、きい、、違う、、小、さい、、は、獣、、」
そう言って魚顔の妖怪は海へと姿を消した。
茂蔵「何だったんだ。あいつ。」
志乃「分からない。」
茂蔵「祠壊したのもあいつじゃないのか?」
志乃「確証は無いな。」
茂蔵「追いかけなくてもいいのか?」
志乃「海の中をか?」
茂蔵「流石に無理か。」
志乃「無害とは言い切れないが深追いは危険だ。さっきの場所に戻ろう。」
茂蔵「そうだな。」
志乃達が砂浜へ戻ると樹霧之介達が志乃と茂蔵を探している。
無事に磯女を討伐できたようだ。
樹霧之介「あ!志乃さん、茂蔵。どこ行っていたんですか?」
志乃「探し物をしていただけだ。」
茂蔵「本当だぜ。壊れた祠を直して来たんだ。」
雫「祠?」
志乃「水死者を鎮めるための祠が壊れていた。直したからもう磯女みたいな妖怪は出てこないだろう。」
真琴「それってまた人為的に壊されていたの?」
志乃「自然に壊れた感じではないが詳しい事は分からない。」
茂蔵「だけど魚の顔した妖怪が出てきたぞ。」
真琴「魚の妖怪?」
志乃「私の足を引いた奴だ。変な事呟いて海の中に消えたからそのままにしてきた。」
真琴「浜名瀬さん、また姑獲鳥の時みたいに1人で追いかけたりしないわよね。」
志乃「流石に海の中じゃ私も手が出せない。」
真琴「そうよね。」
樹霧之介「志乃さん。一度妖ノ郷へ来てくれませんか?」
志乃「そろそろ眠いんだけど。」
樹霧之介「果物をご馳走したいんです。」
志乃「また酔うぞ。」
樹霧之介「真琴達で練習しました。もう大丈夫です。」
志乃「えっと、、」
樹霧之介「1人でどこかに行かないというのであれば食べてくれますよね。」
志乃「分かったよ。」
志乃は樹霧之介達と一緒に妖ノ郷へ行くことになった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




