29話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
春休みも終わり、クラスが発表される。
その結果志乃は陽葵と同じクラスになり、陽葵と仲の良いあの3人も同じクラスになった。
その他にも凛華も同じクラスだ。
そして入学式があり、翠嶺高校にも新入生が入ってきた。
入学式も終わってしばらく6限目の時間は部活の見学の時間なので帰宅部の人は早目に帰れるので志乃は帰ろうとしていたところだったが陽葵が他の友達から相談を受けている。
主な相談相手は土蜘蛛の時に別荘を貸してくれていた水守 澄花という人でその澄花の従兄弟がこの高校に入学予定だったが体調不良で来れなくなったんだそう。
しかもその従兄弟は春休み中に心霊スポット巡りをしていてから元気が無くなっていて変な痣ができ熱がでたが、病院でも原因不明で近くのお寺でお祓いをしてもらっても一向に良くならず陽葵に相談しに来ていた。
澄花「陽葵。どうだろう。陽葵の師匠に来てもらったりとかできない?」
陽葵「聞いてみないと分からないよ。」
澄花「今も苦しんでいるんだよ。」
陽葵「相談はしてみるよ。」
澄花「よろしく頼むよ。」
陽葵「分かったって。」
それから澄花は部活があるので学校に残り、志乃と陽葵は一緒に帰る。
陽葵「ねえ、浜名瀬さんも聞いてたでしょ。」
志乃「ああ。」
陽葵「どう思う?」
志乃「どうとは?」
陽葵「妖怪だと思う?」
志乃「まあ、大体の予想は付いている。」
陽葵「それは何?」
志乃「あの本の最初の方に書いてあったと思うんだが?」
陽葵「え。」
志乃「外道。」
陽葵「酷いよ浜名瀬さん。確かに本の内容あまり覚えてないかもしれないけどそこまで言わなくてもいいじゃん。」
志乃「妖怪の方の外道だ。」
陽葵「妖怪に外道っているの?」
志乃「再度写本した方が良いな。」
陽葵「待ってよ、あんなに多いのに覚えられないって。種類というより固有名詞の様なのもあるじゃん。」
志乃「ああ。そう言えばそういうのも一緒に書いたな。」
陽葵「覚えきれないって。」
志乃「分かったよ。そういうのを減らしてもう一度渡す。」
陽葵「良かった。」
志乃「話を戻すが今回は蛇外道という低級霊や動物霊が集まり蛇の形になって取り憑いているんだと思う。」
陽葵「何でそう思うの?」
志乃「心霊スポットへ行ったという事と痣が出ているっていう点だな。蛇系の妖怪の特徴として取り憑いてじわじわと締め付けて獲物が弱るのを待つものがある。」
陽葵「もしも弱り切ったらどうなるの?」
志乃「大体は自分の一部にする。つまり同じく霊となってこの世をあてもなく彷徨う事になる。」
陽葵「それ、早く退治しなきゃいけないんじゃないの?」
志乃「だから明日お前の師匠として付いて行く。」
陽葵「分かった。」
志乃「それと、書き直すから本を取りに今からお前の家行ってもいいか?」
陽葵「うん。いいよ。」
志乃は陽葵の家に寄ってから帰り、次の日の朝のホームルーム前。
澄花「どうだった?」
陽葵「あ。師匠は今日の放課後に来てくれるって。」
澄花「やった。」
陽葵「やった?」
澄花「いや。良かった。で、何処で待っているの?」
陽葵「池のある公園で待ち合わせだから澄花も学校終わったらすぐ来て。」
澄花「うん。」
そして学校が終わるとそれぞれ帰って公園に集まった。
志乃は土蜘蛛の時と同じように男性の姿に8号に変えてもらっている。
澄花「陽葵のお師匠さんですね。私は水守澄花といいます。この前は助けていただきありがとうございました。」
志乃「ああ。」
澄花「それで何てお呼びすればいいですか?」
志乃「何でもいい。それより取り憑かれたという従兄弟はどこにいる。」
澄花「はい。今は自宅で療養しています。ここから歩いて行けるので一緒に行きましょう。」
志乃「ああ。」
澄花に案内されて移動中。
澄花「ねえ、陽葵。師匠の名前って分からないの?」
陽葵「私も教えてもらってないの。」
男性姿の志乃の名前は陽葵も分からないので嘘ではない。
澄花「何で。陽葵のお師匠さんとか呼びにくいよ。何も聞いてないの?」
陽葵「私は師匠って呼んでいるから思ったことないよ。」
澄花「ならどうやって知り合ったの?」
陽葵「知り合った理由?」
陽葵は勘違いで真琴に学校から帰っている途中の志乃の管狐を攻撃してもらった事を思い出す。
陽葵「妖怪関係でちょっと、、」
澄花「やっぱりそうなんだね。私も弟子にしてくれないかな。」
陽葵「さ、さあ。」
志乃「おい。ここか?」
志乃は5号が反応している家の前で止まる。
澄花「はい。よくわかりましたね。」
志乃「さっさと終わらせるぞ。」
志乃がインターホンを鳴らすと女性が出てきた。
女性「はい。どちら様ですか?」
澄花「おばさん。直人君どうですか?」
女性「澄花ちゃん?この人は?」
澄花「妖怪とかに詳しい人です。一度直人君を診てもらおうと思って連れてきました。」
女性「そうなの。まあ、澄花ちゃんの知り合いなら。直人は2階で寝ているので入って頂戴。」
澄花「お邪魔します。」
志乃「失礼します。」
陽葵「お邪魔します。」
取り憑かれているという従兄弟の部屋に入るとベッドには男の子が寝ていて息が荒くグッタリとしていてそこに長い蛇が巻き付いてこっちを睨んでいる。
陽葵「はま、師匠。あれって。」
志乃「ああ。あれが蛇外道だ。」
志乃「春休みにあげた数珠持ってきたか?」
陽葵「うん。え。まさか。」
志乃「俺が動きを止めるからお前がそれで止めを刺せ。」
陽葵「むやみに使うなって言ったの師匠だよ。」
志乃「俺が許可したときは別だ。」
陽葵「分かったよ。」
志乃は霊縛符を取り出し蛇外道に近づくと蛇外道は警戒し志乃に嚙みつこうと飛び掛かって来た。
志乃はそれを腕で受け止めて霊縛符を貼り付ける。
陽葵「ちょ。何してるの!?」
志乃「牙は避けているさっさとやれ。」
陽葵「分かったよ。」
志乃「親玉はちゃんと付けろよ。」
陽葵「焦らせないで。」
陽葵は数珠を使い親玉を蛇外道に付けて電撃を浴びせるが蛇外道は怯んだが消えず、霊縛符を剥がそうと暴れようとしたので志乃はすぐに9号に短刀を持って来てもらい蛇外道に突き刺し止めを刺すと蛇邪道は煙となって消えた。
陽葵「私、何か間違えてた?」
志乃「いや、やり方は間違っていないし、ちゃんと威力も出ていた。今の蛇外道、妖力だけじゃ無かったな。」
澄花「何が起こっていたの?大丈夫?」
陽葵「もう大丈夫だよ。」
そんな時志乃のスマホに真琴から電話が掛かる。
志乃「真琴からだ。すまん。ちょっと出てくる。」
陽葵「まこ姉?」
志乃が電話をするために部屋を出ていくと寝ていた直人が起きたので澄花が直人の母親を呼びに行った。
志乃「どうした?」
真琴「あ、浜名瀬さん。また声変だけど大丈夫?」
志乃「気にするな。それでそっちの要件は?」
真琴「それが廃村に風見が妖気を感じるって言うから見に来たんだけど人が何人かいて様子が変だから解呪が必要だと思って電話したわ。」
志乃「どんな風に?」
真琴「地面を這っていたり木に登ってボーッとしていたり、とにかく正気ではないわね。」
志乃「そこで1番妖気の強いところはどこだ?」
真琴「今風見が探してくれている。」
志乃「今確認できる人間は何人だ?」
真琴「3人よ。全員体に痣があるの。」
志乃「鱗の様な痣か?」
真琴「ええ。よくわかったわね。」
志乃「蛇外道は取り憑いていないか?」
真琴「蛇外道?何も見えないわよ。」
志乃「そいつらはどこかへ向かっているとかあるか?」
真琴「そう言えばゆっくりだけどどこかへ進んでいる感じがするわ。」
志乃「分かった。私もこっちで野暮用を片付けたらそっちに向かう。」
真琴「場所は分かる?」
志乃「地図を送っておいてくれ。」
真琴「分かったわ。」
志乃は電話を切って部屋に入る。
陽葵「まこ姉は何て?」
志乃「ちょっと気になる事を言っていた。それでお前にも聞きたいことがある。」
志乃は直人の方を向く。
直人「何ですか?あなたは誰なんですか?」
陽葵「この人は私の師匠で怪しい人じゃ無いよ。」
志乃「お前、廃村に行ったか?」
直人「廃村?行ったけど、、」
志乃「それはここか?」
志乃は真琴から送られた地図を見せる。
直人「え?うん。ここだよ。」
その時バタバタと部屋に澄花と直人の母親が入って来る。
直人母「直人。大丈夫?」
直人「今は楽になったよ。」
直人母「そうだ。さっきしょう君のお母さんから電話がきてしょう君居なくなったって。直人何か知らない?」
直人「知らないよ。僕、今起きたばかりだよ。」
志乃「そのしょう君とやらはこいつと同じく痣があったのか?」
直人母「何でそんな事を聞くんです?」
澄花「おばさん。直人君を治したのはこの人だよ。答えた方が良いよ。」
直人母「、、痣はあったけど数日前から元気になったって聞きました。」
志乃「好みが変わったとかはあったか?」
直人母「聞いていないので分かりません。何故そんな事を?」
志乃「そうか。それで直人だったか?廃村には何人で行った?」
直人「僕を合わせて6人だよ。」
志乃「6、2人足りないな。」
直人「どういう事?」
志乃「お前、廃村で祠や井戸に触らなかったか?」
直人「祠は知らないけど井戸ならあったよ。」
志乃「触ったか?」
直人「僕は触ってない。だけど僕が別の所を見ている時に井戸の方で騒いでいた奴がいたよ。呼んでも無視されたから僕は途中で帰ったけど。」
志乃「それは誰だった?」
直人「分からない。だけど僕はしょうといたからそれ以外の人だよ。」
志乃「だがそのしょうって奴も居なくなったのであればお前以外全員いなくなっていてもおかしくないな。」
陽葵「ねえ。何で直人君だけ無事、と言うかいなくならなかったのかな。」
志乃「真琴は蛇外道が見えないと言っていた。多分中に入って体を操っているんだろうな。直人が無事なのはお祓いをしたからだろう。」
陽葵「お祓いは一応効いていたんだ。それで何で操るの?」
志乃「大体は取り憑いたらそのまま取り殺す事が多いが、他に目的があれば別だ。」
陽葵「目的?」
志乃「何かをさせたいとか特定の場所で殺したいとかだな。」
陽葵「なら何させたいんだろ。」
志乃「今の話しで大体の予想は付くが行ってみてだな。」
陽葵「行くの?」
志乃「ああ。解呪は必要だろうから。」
直人「だけどその廃村、そこそこ遠いよ。」
志乃「知ってる。」
陽葵「私も行く。」
志乃「お前の歩幅に合わせる余裕はない。」
陽葵「、、分かったよ。」
志乃「それじゃ俺は行く。遊び半分でいわくつきの場所にはもう行くなよ。」
直人「はい、、」
澄花「あ、あの。」
志乃「なんだ?」
澄花「あ、えと。ありがとうございました。」
志乃「ああ。」
志乃は買い物をしてから廃村へ急いだ。
志乃が廃村へ着くと、3人の人間が倒れていてその奥で大蛇と白い大蛇が格闘している。
周りを見てみると真琴が倒れていてそれを雫が介抱し、焔と風見は木の陰に隠れていてそこには真琴の紙で拘束している2人の人間もいる。
樹霧之介は白蛇の動きを止めようと木の根を伸ばしているが白蛇が大きいのと暴れているために上手くいっていない。
志乃「何でこんなことになっているんだ?」
雫「浜名瀬さんこそ何で男性の姿なの?」
志乃「ここに同じ学校の生徒がいる可能性があるから8号に変えてもらっている。こっちはいいから何があったかを教えてくれ。」
雫「風見が妖気が出ている井戸を見つけたんだけどそこに飛び込みそうな人も見つけてそれを真琴が止めたのよ。」
志乃「それがあの2人か?」
志乃は真琴の紙で拘束されている人を指さす。
雫「ええ。」
志乃「それで真琴は不意を突かれて、雫と焔は水を操られて戦力外。樹霧之介と茂蔵が応戦中って感じか?」
雫「よくわかるわね。」
志乃「多分あの白蛇はここの村で祀られていた水神だったんだろう。」
雫「え。神様?なら何で妖気が出ているの?」
志乃「放置されて神力が無くなり妖力に頼らざる負えなくなったんだろ。そして静かに寝ているところをこいつらに起こされたんだと思う。」
雫「それで復讐のために操って井戸に落とそうとしたの?」
志乃「あそこに新しい土が付いた古いシャベルとバケツがあるだろ。復讐とは少し違うかもしれないな。」
雫「違うとしても危害を加えているのよ。どうするの?」
志乃「まだ憶測だからな。井戸を見てみたい何処だ?」
雫「それならあの暴れている蛇達の向こう側よ。」
志乃「なら一度止めた方が良いな。」
志乃は9号に打刀を取り出してもらい、それを持って白蛇から見える場所まで出ていくと踊り始める。
しばらくすると段々と白蛇の動きが鈍ってきた。
白蛇「それを止めろ!」
志乃に気付いた白蛇は志乃に飛び掛かり、志乃はそれを飛んで避けると白蛇の頭が地面に着いたのでそのまま白蛇の頭に乗って霊縛符を貼る。
志乃「樹霧之介。今ならいけるか?」
樹霧之介「はい。」
動きが鈍った隙に樹霧之介が木の根を使い白蛇の動きを止める。
一度木の根が絡まってしまえば振りほどくことは難しく、白蛇はしばらく暴れるが無駄だと悟ると静かになった。
志乃「すまないな。私は巫女じゃない。これしかできないんだ。」
志乃は白蛇の上から頭を撫でながらそう言う。
樹霧之介「志乃さん。来てくれてたんですね。」
志乃「ああ。真琴から連絡来たからな。」
樹霧之介「それで何で男性の姿なんですか?」
志乃「ここに同じ学校の生徒がいる可能性があったからだ。」
樹霧之介「あの人たちと知り合いなんですか?」
志乃はここに来る経緯を話した。
土蜘蛛の時に助けた同級生が陽葵を通して蛇外道に取り憑かれた従兄弟を助けてほしいと頼んできたこと。
その時に真琴から電話が来て関係性があると思いその従兄弟から話を聞いてここに来たこと。
樹霧之介「そうだったんですね。それでここからどうするんですか?」
志乃「先ずは井戸を見よう。何するかはそれからだな。」
樹霧之介「井戸ですか。ただの古い空井戸にしか見えませんでした。」
志乃「空井戸?水は無かったのか?」
樹霧之介「はい。」
白蛇「空井戸じゃない。」
その話を聞いて白蛇が話し出す。
白蛇「あいつらが水を止めたんだ。数人で水が出なくなるまで土を入れやがった。住処を荒らされたから元に戻してもらおうと思って周りの動物霊に頼んであいつらを連れてきてもらったんだ。」
樹霧之介「だけどあなたは真琴、僕の仲間を攻撃しましたよね。」
白蛇「だって土を退けてもらおうと思っていたら邪魔するんだもん。」
真琴「あんな深い場所に飛び込んだら危ないでしょ。」
真琴が目を覚まして雫達と共に出てくる。
樹霧之介「大丈夫ですか?」
真琴「まだ背中が痛いけど大丈夫よ。」
白蛇「だって。他に方法が思いつかなかったんだもん。」
志乃「だが、お前が操った人間の中には井戸に触っていない奴も居たんだぞ。」
白蛇「誰がやったなんて分からないよ。だから村に入った人間に取り憑いてもらったんだ。」
真琴「やり方って物があるでしょ。」
白蛇「これ以外の方法が無かった。よそ者の悪ふざけで住処を追い出されてたまるか。」
白蛇がまた暴れはじめたので志乃は白蛇の頭から降りて、買ってきたものを取りに行き、ワンカップのお酒の蓋を開けると白蛇は大人しくなった。
白蛇「酒の匂い。」
白蛇は小さくなって樹霧之介の拘束から外れると志乃に駆け寄っていく。
志乃「これは井戸にお供えするやつだ。」
白蛇「その井戸の神が俺なんだ。今くれたっていいだろ。」
小さくなった白蛇は1mも無く、志乃の足元をウロチョロしている。
志乃「ならまずはお前が操っている人間を解放してくれ。」
白蛇「駄目だ。それをしてしまえばもう井戸は戻らない。」
志乃「井戸は私が何とかする。」
白蛇「俺を封印しようとした奴の言葉なんて信じない。」
志乃「さっきも言ったが私は巫女じゃない。」
白蛇「お前みたいな男が巫女であってたまるか。」
真琴「そう言えば何で浜名瀬さん男性の姿なの?」
志乃「3回目はもういいだろ。」
白蛇「なんださっきからこいつは男だろ?」
志乃「知り合いにバレたくないから姿を変えているんだ。」
樹霧之介「それで志乃さんが封印しようとしたって何の話ですか?」
志乃「舞で神を鎮めるのは巫女しかできない。さっき私がしたのは神を封印するための剣舞だ。」
樹霧之介「それで動きが鈍ったんですね。」
志乃「封印する気は無かった。ちゃんと途中で止めただろ。」
白蛇「だけど、、」
志乃「酒のつまみに卵も用意したんだけどな。」
志乃が買い物袋から卵のパックを取り出すと白蛇は目の色を変える。
白蛇「解放します。」
茂蔵「ちょろいなこいつ。」
志乃「それで解放する前に全員をここに集めてくれないか?」
白蛇「いいが、何するんだ?」
志乃「ここに来る前に色々と用意してきた。」
志乃が作戦を話すと白蛇は操った人を1ヶ所に集めて蛇外道から解放すると次々と目を覚ますが目の前には大きな白蛇がいる。
逃げ出そうとする者もいるが志乃の張った結界で外に出ることはできない。
白蛇「お前らよくも俺の住処を荒らしてくれたな。」
さっきまで取り憑かれていたので繋がりができていて白蛇の姿は全員に見えている。
白蛇「お前らには井戸を掃除してもらう。終わるまで帰れると思うなよ。」
井戸には縄梯子が掛けられており、安全に下に降りれるようになっていた。
その他にも樹霧之介が木を操り柱を立て、そこに滑車が付いていてそこに紐を付けたバケツが付いているので中の土を外に出せるようにしてある。
箒や雑巾などの掃除用具も置いてあり準備は万端だ。
1人が恐る恐る降りるとそこそこ深いにも関わらず風が吹いている。
10号に風を操ってもらって井戸のそこまで空気が循環するようにしてもらっているのだ。
もう1人も降りて2人で井戸のそこの土を攫い、2人がかりで土を滑車で上げて捨てる。
残りの1人は周りの草むしりやゴミ拾いをしている。
途中で役割を交代しながら続けて終わったのは深夜で、全員が疲労で動けそうになさそうだ。
取り憑いていた動物霊達に住んでいた場所を聞いた白蛇はその人達を自宅へ送り届ける。
白蛇が戻るころには志乃達が道具を片付けて井戸の周りに柵を作り井戸に触れられないようにしていた。
志乃「おかえり。」
白蛇「お前誰だ?」
志乃はもう見られる可能性がないため元の姿に戻っていた。
樹霧之介「志乃さん。こっちは終わりました。あ。白蛇さんおかえりなさい。」
白蛇「おい。小僧、こいつがさっきの男なのか?」
樹霧之介「志乃さんは女性ですよ。」
志乃「道具やごみは私が処分するからもう帰るな。」
白蛇「ちょっと待ってくれよ。」
志乃「何だ?」
白蛇「お前巫女をする気は無いか?」
志乃「無い。」
白蛇「少しくらい考えてもいいだろ。」
志乃「お前の神力が無くなってきているのは分かるが巫女がいたからって増えるのもではないぞ。」
白蛇「そのくらい俺だって分かる。」
志乃「なら何でだ?」
白蛇「この村が栄えていた時は度々祭りで踊っていたんだ。また見たい。」
志乃「だから私は巫女でないと、、」
白蛇「お前他に踊れるものは無いのか?」
志乃「さっきの剣舞以外か?」
白蛇「ああ。真似事で良いから他に踊れたり見たことあるものはあるか?」
志乃「それなら昔、雨乞いの儀式を見た事がある。」
白蛇「覚えているのか?」
志乃「うろ覚えだが良いのか?」
白蛇「いいぞ。例え振付間違えたりしても笑ったりしないからな。」
茶化す白蛇を無視して志乃は準備を始める。
志乃「確か扇を使っていたな。場所はここで良いか?」
白蛇「いいぞ。」
志乃が準備していると真琴達も集まって来る。
真琴「何?何か始まるの?」
樹霧之介「志乃さんが踊るらしいです。」
茂蔵「楽しそうじゃないかおいらも踊りたい。」
焔「なら俺も俺も。」
白蛇「それも楽しそうだな。なら次に踊ってくれよ。」
志乃「うろ覚えだから期待するなよ。」
志乃は3号に照らしてもらい舞を始める。
雫「これ、懐かしいわね。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。