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27話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

先頭の野々香(ののか)が安全を確認して外に出ると少し遠くに立派な木製の建物が見える。

だが侵入がバレていることもあり、烏と烏天狗(からすてんぐ)による監視が厳しくなっていてより慎重に動かないといけない。

もう少しで屋敷の裏口に着くという時に陽葵(ひまり)が音を立ててしまい見張りの烏天狗(からすてんぐ)に気付かれてしまった。

錫杖(しゃくじょう)で殴り掛かって来たところを野々香(ののか)が同じく錫杖(しゃくじょう)で応戦するが大人の烏天狗(からすてんぐ)野々香(ののか)よりも力が強く押し負けている。

陽葵(ひまり)野々香(ののか)こっち!」

陽葵(ひまり)の声に野々香(ののか)は相手の錫杖(しゃくじょう)を受け流し陽葵(ひまり)の方に駆け寄る。

陽葵(ひまり)野々香(ののか)を追いかけてきた烏天狗(からすてんぐ)が来た時に仕掛けていた結界符(けっかいふ)で結界を張ると、止まれなかった烏天狗(からすてんぐ)がそれにぶつかって気絶した。

周りにいた烏天狗(からすてんぐ)達も気付き、2人に襲い掛かるがすぐに裏口から入ると中からつっかえ棒をして扉を塞ぎ時間を稼ぐ。

中にも烏天狗(からすてんぐ)が巡回していたが野々香(ののか)が屋敷の構造を知っていたので屋根裏など狭い場所も通ったが安全に地下へ続く入口へ到着できた。

地下の構造は複雑で、巡回の烏天狗(からすてんぐ)もいないが迷って出れなくなることもある危険な場所だ。

野々香(ののか)「ここから先は私もあまり知らない。陽葵(ひまり)の式神だけが頼りだよ。」

陽葵(ひまり)「うん。任せて。」

陽葵(ひまり)は式神に霊力を流すと飛んで行くので2人はそれを追いかける。

地下は暗く、所々鬼火の明かりが点いているくらいなので陽葵(ひまり)は持ってきた懐中電灯を頼りに歩いていく。

式神は直線的に動くので所々行き止まりや違う部屋に出たが方向だけは常に分かるので通路を探しながら進むと最奥だろうか、他に行ける場所も無さそうな通路の奥にある部屋を見つける。

式神もその部屋を示しているので扉を開くと少し大きめの暗い部屋の真ん中に人1人入りそうな大きさの鳥籠型の檻が置いてあり、中に人影が見える。

近付くと中に拘束された志乃(しの)が足を組んで座っていて、眠っているのか目を瞑り俯いている。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。」

陽葵(ひまり)は檻に駆け寄るが志乃(しの)の反応は無い。

野々香(ののか)陽葵(ひまり)。先に鍵を先に探さないと。」

陽葵(ひまり)「何処にあるの?」

野々香(ののか)「大体は扉近くの壁に、、キャッ。」

野々香(ののか)が扉に近づくとそこにいつの間にか居た人影に外に追い出されて扉を閉められると部屋は暗闇となり陽葵(ひまり)の懐中電灯の光だけが光っている。

陽葵(ひまり)野々香(ののか)?」

???「初めましてね。陽葵(ひまり)さん。」

陽葵(ひまり)「誰ですか?」

???「私?私は篁音(たかね)と申します。」

篁音(たかね)が指を鳴らすと鬼火が集まってきて部屋を照らす。

見えるようになるとそこには上品そうな女性の烏天狗(からすてんぐ)が団扇を持って立っている。

陽葵(ひまり)野々香(ののか)を何処にやったの?」

篁音(たかね)「外に追い出しただけですよ。扉は開かなくしてありますので入る事も出る事も出来ませんが。」

陽葵(ひまり)「何しに来たの?」

篁音(たかね)「侵入者を仕留めるためですよ。」

そう言って篁音(たかね)が団扇で仰ぐと風が刃のように飛び出し陽葵(ひまり)の横を掠めて後ろの壁にあたり風の形に抉れる。

陽葵(ひまり)「待って。殺さなくても良いんじゃないの?」

篁音(たかね)「あなたが野々香(ののか)を唆してここに入ったんじゃないんですか?」

陽葵(ひまり)「それはあなた達が浜名瀬(はまなせ)さんを閉じ込めるから。」

篁音(たかね)「この人間ですか。本当は殺したかったのですが死なないのでこうするしかないのです。」

陽葵(ひまり)「何でそんなことするの?浜名瀬(はまなせ)さんは野々香(ののか)を助けたんじゃないの?」

篁音(たかね)「そうですね。だけどそのせいで野々香(ののか)は1つのものに執着してしまった。あの子は将来、長の補助をする立場になるのに全体を見れなくなってしまえば組織を維持するための能力が足りないと皆から責められるでしょう。」

陽葵(ひまり)「だから浜名瀬(はまなせ)さんを閉じ込めたの?」

篁音(たかね)「ええ。そしてそれはあなたもです。」

陽葵(ひまり)「え?」

篁音(たかね)「あなたもあの子にとって害悪な存在なんですよ。」

篁音(たかね)はまた団扇を仰いで風の刃を出す。

陽葵(ひまり)はそれを避けるが避けなければ当たっていただろう。

篁音(たかね)「いつまで避けていられるか試してみましょうか。」

陽葵(ひまり)「や、待って。」

篁音(たかね)は風の刃を陽葵(ひまり)に飛ばして追い詰める。

篁音(たかね)「さっきからあなた、檻の方を見ていますね。」

陽葵(ひまり)「そ、そんな事、、」

篁音(たかね)「この人間の助けを待っているのでしょうが、無理ですよ。」

篁音(たかね)志乃(しの)の入った檻の方に行き、外から腕を入れて志乃(しの)の首を持ち上げると、篁音(たかね)は爪を尖った烏の爪に変え、志乃(しの)の首に当てる。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。」

篁音(たかね)「こんな事をしても起きないのにどうやってお前を助けるんですか?」

篁音(たかね)の爪が志乃(しの)の首を引き裂くと血が垂れ、しばらくすると志乃(しの)の咥えている猿轡が赤く染まる。

陽葵(ひまり)「止めて!」

篁音(たかね)「こんな事をしても死なないなんて面倒ですよね。」

志乃(しの)の首には血は付いてるが傷はもう無い。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんを離して。」

篁音(たかね)「人の心配をしてていいんですか?」

篁音(たかね)はまた陽葵(ひまり)に向かって風の刃を飛ばすがそれは陽葵(ひまり)に当たらず後ろの壁に当たる。

篁音(たかね)「あなたはこれに当たれば死ぬんだから精々抗ってください。」

陽葵(ひまり)は危険を感じて篁音(たかね)が離れている間に結界符(けっかいふ)を準備する。

篁音(たかね)「もう良いですか?」

篁音(たかね)が団扇を構えたので陽葵(ひまり)は結界を張るが風の刃は一撃で結界を破壊し、後ろの壁まで傷つける。

陽葵(ひまり)はそれを見て腰を抜かし、立てずにいると篁音(たかね)が近づく。

篁音(たかね)「これで終わりです。」

篁音(たかね)は団扇を陽葵(ひまり)に向けた後、ゆっくり上にあげる。

風の刃が来ることが分かってはいるが動けない陽葵(ひまり)は目に涙を浮かべながらそれを見ている事しかできなかった。

篁音(たかね)の団扇から風の刃が放たれそれは陽葵(ひまり)の頭を掠めて今までで一番大きな傷を後ろの壁に付ける。

篁音(たかね)「ふう。これくらいでしょうか。」

陽葵(ひまり)「へ?」

篁音(たかね)志乃(しの)さん。終わりましたよいつまで寝てるんですか?」

篁音(たかね)志乃(しの)の檻の方に近づくが志乃(しの)は何の反応も無い。

篁音(たかね)「これ、本当に寝てます?仕方のない人ですね。」

篁音(たかね)は懐から取り出した鍵で檻を開けて志乃(しの)を中から出し、しばらくすると志乃(しの)は目を覚ます。

陽葵(ひまり)は腰が抜けているのと何が起こっているのか分からず、ポカンとその光景を見ている事しかできなかった。

目を覚ました志乃(しの)はゴホゴホと咳き込んでいる。

篁音(たかね)「昔のあなたなら夢籠(むかご)の術くらい跳ね返していませんでした?」

志乃(しの)「ん、んん。」

篁音(たかね)「あら、それじゃ喋れませんね。ごめんなさい。」

篁音(たかね)志乃(しの)の猿轡を外し、拘束も解いていく。

志乃(しの)「今の私には対抗できるほどの霊力は無い。」

篁音(たかね)「なら今度からあなたを閉じ込めたい時には夢籠(むかご)が使えるのですね。」

志乃(しの)「できるならな。それで頼んでいた事は?」

篁音(たかね)「あそこにいますよ。」

志乃(しの)篁音(たかね)が指さす方を見ると壁には複数の傷が付いていてその前に陽葵(ひまり)が座り込んでいる。

志乃(しの)「派手にやったんだな。」

篁音(たかね)「怪我させないなら遠慮はいらないと言われましたので。」

志乃(しの)「ここまでするとは思っていなかったよ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)に近づき顔を覗き込む。

志乃(しの)陽葵(ひまり)。大丈夫か?」

陽葵(ひまり)「は、浜名瀬(はまなせ)さん?私生きてる?」

志乃(しの)「ああ。お前は生きてるぞ。怖かったか?」

陽葵(ひまり)「怖かった。死ぬかと思った。」

志乃(しの)「分かったか。妖怪は軽く扱っていいものじゃない。」

陽葵(ひまり)「ごめんなさい。ごめんなさい。」

陽葵(ひまり)は起きた志乃(しの)を見て安心したようで志乃(しの)に抱きついて泣いている。

篁音(たかね)は扉を開けて野々香(ののか)も中に入れた。

野々香(ののか)「大きな音が聞こえたけど大丈夫なの?って何これ。」

野々香(ののか)は傷が付いた壁に驚いている。

篁音(たかね)野々香(ののか)。」

野々香(ののか)「母上。これ母上の術ですよね。何したんですか?」

篁音(たかね)「最近陽葵(ひまり)さんが妖怪を式神にしたいと言っているので妖怪の怖さを教えて欲しいと志乃(しの)さんから頼まれたんですよ。」

野々香(ののか)「式神、、」

篁音(たかね)「あなたにとってもあまりいい思い出の無い事なので少し本気を出させてもらいました。」

陽葵(ひまり)「どういうこと?」

篁音(たかね)「落ち着きましたか?」

陽葵(ひまり)「は、はい。」

陽葵(ひまり)篁音(たかね)にトラウマができて志乃(しの)にくっ付いたままだ。

篁音(たかね)「場所を移動しましょうか。」

志乃(しの)達は篁音(たかね)に案内されて客間に通される。

篁音(たかね)「さて、どこから話しましょう?」

陽葵(ひまり)「あなたは野々香(ののか)のお母さんなんですか?」

陽葵(ひまり)志乃(しの)の腕を掴んみながら恐る恐る聞いている。

篁音(たかね)「ええ。野々香(ののか)は私の娘で、娘の友達を殺したりしないので安心なさい。」

陽葵(ひまり)「あの時言っていたのは?」

篁音(たかね)「殺す理由が無いと嘘だってバレるでしょ?」

陽葵(ひまり)「だけど嘘には思えなかったよ。」

篁音(たかね)「攻撃は本気でしたよ。」

陽葵(ひまり)「ひっ。」

野々香(ののか)「母上。本題に入ってください。何でこんなことをしたんですか?」

篁音(たかね)「初めは野々香(ののか)の成長を見ようと思い志乃(しの)さんを呼んだんですよ。」

野々香(ののか)「私?」

篁音(たかね)「ええ。あなたが執着している志乃(しの)さんを連れてくれば何かしら行動すると思ったので。」

野々香(ののか)陽葵(ひまり)巻き込むのも計算済み?」

志乃(しの)「それは私が頼んだんだ。」

陽葵(ひまり)「それは私が式神が欲しいって言ったから?」

志乃(しの)「分かっているじゃないか。式神は契約が全てではない。実力が伴わなければこちらに牙をむく。」

陽葵(ひまり)「だけど風狸(ふうり)雷獣(らいじゅう)を連れていたあの人は?」

志乃(しの)「そいつらは式神ではなくあの人の傍が気に入っているだけだ。お前の場合は式神にして自分を手伝ってほしいんだろ。」

陽葵(ひまり)「うん。」

志乃(しの)「私は今まで式神に対しての問題をたくさん見てきた。野々香(ののか)と出会ったのもそれ関係だった。」

陽葵(ひまり)「何があったの?」

志乃(しの)野々香(ののか)は私が陰陽師の屋敷に忍び込んで見つけたんだが、その時は檻に入れられて瀕死の状態だった。」

野々香(ののか)「私はあの時はまだ雛で戦力にならないからって契約だけして放置されてたんだ。」

陽葵(ひまり)「何それ酷い。」

志乃(しの)「妖怪にも世話がいる。あの頃は契約したから自分のものになるなんて考えている奴が多かったんだよな。」

野々香(ののか)「自分勝手な人間多かったよね。」

志乃(しの)「その他にも管理や知識が不十分で式神が暴れて周りにも被害を出す奴もいた。」

陽葵(ひまり)「そうなんだ。」

志乃(しの)「その他にも世話をしていた人間にご飯が足りなくて不満に思い、取り憑いた妖怪もいた。」

陽葵(ひまり)「世話しててもそんなことになるの?」

志乃(しの)「妖怪の気分次第で悪さをする奴もいる。ちなみに今の話は私の管狐(くだぎつね)達の親の話だ。」

陽葵(ひまり)管狐(くだぎつね)って取り憑くの?」

志乃(しの)「今は私が管理しているが扱いを間違えればドンドン増えて、不満があれば取り憑くこともある。」

陽葵(ひまり)「そうなんだ。」

志乃(しの)「妖怪の扱いには知識がいる。妖怪の種類も分からない奴が出来る事ではない。」

陽葵(ひまり)「ごめんなさい。もう言いません。紙の式神を練習します。」

志乃(しの)「分かったようで良かったよ。まだ妖怪の怖さが分かっていないようなら次はどうしようかと思っていたんだ。」

陽葵(ひまり)「もう、浜名瀬(はまなせ)さんの首切られるのは見たくないよ。」

野々香(ののか)「え。何それ聞いてない。」

志乃(しの)「口の中血の味すると思っていたらそんな事されていたのか。」

陽葵(ひまり)「気付いてなかったの?」

志乃(しの)「あの時は本当に寝ていたからな。」

野々香(ののか)「母上。何でそんなことしたんですか!」

篁音(たかね)志乃(しの)さんから陽葵(ひまり)さんを脅すのに自分を使っても構わないと言われていましたから。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん何を約束してるの!?」

志乃(しの)「そこまでやるとは思ってなかった。」

篁音(たかね)「あら。脅しっていうのは生半可な事じゃ気付かれて失敗するんですよ。」

そういう篁音(たかね)の顔は笑っているが何か怖い。

志乃(しの)「まあ、成功はしているから私は構わないが。」

陽葵(ひまり)「私は首切られているのを見て平気じゃない。」

志乃(しの)「お前がもう少し危機感持っていればこんなことはしなかった。」

陽葵(ひまり)「本当に怖かった。」

志乃(しの)「もう、妖怪と関わるのはやめるか?」

陽葵(ひまり)「それは嫌。」

志乃(しの)「そうか。」

野々香(ののか)「それで志乃(しの)はあの事母上から聞いたの?」

志乃(しの)「聞いたよ。何でお前が私を気にかけるのかが分かった。」

野々香(ののか)「、、危ない事はしないよね?」

志乃(しの)「お前の思っている事は分かった。だがそれは約束できない。」

野々香(ののか)「分かってたけど、やっぱりそうなるよね。」

志乃(しの)「だが流石に無策で突っ込みはしない。だから先に解決策を探すよ。」

野々香(ののか)「解決策が見つからなかったら?」

志乃(しの)「見つかるまで探す。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。また危ない事しようとしているの?私との約束覚えているよね。」

志乃(しの)「覚えている。」

陽葵(ひまり)「なら消えないよね?」

志乃(しの)「ああ。ずっとお前の心の中にいる。」

陽葵(ひまり)「違う!」

志乃(しの)「分かってる。」

陽葵(ひまり)「こんな時に意地悪言わないで。」

志乃(しの)「お前がいつもやっているだろ。」

陽葵(ひまり)「こんな事私は言わない。」

志乃(しの)「いつも何かあった後に冗談言っているだろ。」

陽葵(ひまり)「そんなダークジョークは言わないよ。」

志乃(しの)「そうか。」

篁音(たかね)「今日陽葵(ひまり)さんを見て思ったんですが志乃(しの)さんは陽葵(ひまり)さんに修行をつけているんですよね?」

志乃(しの)「ああ。」

篁音(たかね)「何で攻撃のすべを教えてないんですか?」

志乃(しの)「必要ない。」

篁音(たかね)「まあ、何かに突っ込みそうな性格の人に教えるのは心配かもしれませんが防御だけだと今日みたいに動けなくなります。あなたは助けも無く絶望的な状況で妖怪の恐ろしさを教えて欲しいと言っていましたが、あれでは助けがある前提で時間を稼ぐことしかできませんよ。」

志乃(しの)「分かってはいるが今の陽葵(ひまり)の霊力量では私が教えられる物が無いんだ。」

篁音(たかね)「なら武器を持たせればいいじゃないですか。」

志乃(しの)「下手な物を持たせて逆に刺激したらどうする?」

篁音(たかね)「あなたが作ったあの数珠とかなら霊力での攻撃ですし大物でなければ大体の妖怪に通じると思いますよ。今使ってないのであれば渡してもいいのではないですか?」

志乃(しの)「あれか、、」

陽葵(ひまり)「何かあるの?」

篁音(たかね)「今回の事でどうしようもない力の差がある事が分かったんです。そうでしょ陽葵(ひまり)さん。」

陽葵(ひまり)「はい。」

陽葵(ひまり)篁音(たかね)と目が合っただけでも涙目になっている。

それを見て志乃(しの)陽葵(ひまり)がちゃんと妖怪の怖さを知ったんだろうと判断した。

志乃(しの)「そうだな。私に危ないことをするなと言うくらいだし、自分から危ない事はしないだろう。巻き込まれた時のお守りとしてならいいか。」

陽葵(ひまり)「なになに?何貰えるの?」

志乃(しの)「お前にあげる前に少し調整が必要だからすぐには渡せないが終われば渡しに行く。」

陽葵(ひまり)「私にも攻撃できるの?」

志乃(しの)「写本も進んでいないお前は妖怪の事を知らずに無害な妖怪を傷つける可能性もある。確実に自身に危害が及ぶ時のみにしか使わないと約束できるか?」

陽葵(ひまり)「うん。分かった。」

志乃(しの)「使ったらその場所が私に伝わるようにしておく。むやみに使うなよ。」

陽葵(ひまり)「いざという時しか使わないよ。」

志乃(しの)「本当に?」

陽葵(ひまり)「何でそんなに信用無いの?」

志乃(しの)「いや、反省したようでしてない時があるからな。」

陽葵(ひまり)「今回は、本当に反省したよ。」

志乃(しの)「ならいい。」

篁音(たかね)「それでせっかく来たんですし志乃(しの)さん。手合わせしていきませんか?」

志乃(しの)「遠慮する。」

篁音(たかね)「あら昔は楽しそうにしていたじゃありませんか。」

志乃(しの)「娯楽が無かったからな。体を動かすためにもしていたんだ。」

篁音(たかね)烏天狗(からすてんぐ)達の修行にもなって良かったんですが。」

野々香(ののか)「ねえ志乃(しの)。私として。」

志乃(しの)「何でだ?」

野々香(ののか)「あの時私は雛で参加できなかったからずっと羨ましいと思ってたの。」

志乃(しの)「それだけか?」

野々香(ののか)「私が勝ったら大人しくこの山で保護されて。」

陽葵(ひまり)「え?ちょっと。」

志乃(しの)「そうだな。野々香(ののか)にも負けるようなら私は保護されないといけないかもしれない。だが私が勝てばお前の助けはいらないということだ。私を烏で監視するのと付き纏うのを止めてもらうぞ。」

野々香(ののか)「分かった。だけど私の助けがいらないことは無いと思うの。」

志乃(しの)「その時はこちらから言うよ。」

野々香(ののか)「絶対だからね。」

志乃(しの)「ああ。篁音(たかね)場所借りていいか?」

篁音(たかね)「ええ、使って頂戴。」

志乃(しの)達は外へ移動する。

そこは少し開けて一部の地面は砂で動きやすくはなっているが周りには草木が生えていて山そのものだった。

野々香(ののか)「あの舞台のようにはいかないよ。本気で行くからね。」

野々香(ののか)烏天狗(からすてんぐ)の姿になって錫杖(しゃくじょう)を構えている。

志乃(しの)「そうか。私は今回式神を使わない。錫杖(しゃくじょう)を貸してくれないか?」

篁音(たかね)志乃(しの)錫杖(しゃくじょう)を投げて渡す。

野々香(ののか)「なめてるの?」

志乃(しの)「いや。お前の本気に答えたいんだ。」

志乃(しの)錫杖(しゃくじょう)を構えると先に野々香(ののか)が動くが志乃(しの)はそれを全て受け流す。

正面からだと攻撃が入らないと分かると野々香(ののか)は飛んで木々に隠れた。

陽葵(ひまり)「あれありなの?」

篁音(たかね)「ここら全てを使っての手合わせです。地形を利用するのは志乃(しの)さんも知っていますよ。」

陽葵(ひまり)「そうなんですね。」

篁音(たかね)「それで、陽葵(ひまり)さん。そんなに離れなくても良いんじゃないんですか?」

陽葵(ひまり)「すみません。無理です。」

陽葵(ひまり)篁音(たかね)から5mは離れて近づこうとしない。

志乃(しの)の方は野々香(ののか)がどこから来るか分からない中、神経を集中させている。

野々香(ののか)志乃(しの)の後ろから現れて攻撃を仕掛けるが志乃(しの)が振り向きその攻撃を止める。

志乃(しの)「速さは良いが殺気をもう少し隠せ。」

野々香(ののか)「駄目か。」

野々香(ののか)はもう一度隠れて同じような攻撃を繰り返す。

志乃(しの)はそれらを全て受け止めるが野々香(ののか)の殺気は徐々に消えて志乃(しの)の反応が遅れるようになった。

そしてガサッと音のした方を志乃(しの)が見るが誰も居らずその反対方向から野々香(ののか)が攻撃を仕掛ける。

志乃(しの)は横に跳んでその攻撃をかわし、錫杖(しゃくじょう)野々香(ののか)の背中を突いてその勢いで野々香(ののか)を地面へ押し倒した。

そして志乃(しの)は立ち上がろうとした野々香(ののか)の首に錫杖(しゃくじょう)を当てる。

篁音(たかね)「勝負ありです。」

志乃(しの)「お前の得意な風はどこかで使うとは思っていたがまさか囮で使うとは思ってなかったよ。」

野々香(ののか)「何で分かったの!」

志乃(しの)「引っ掛かりはしたが直線的な攻撃で躱しやすかった。」

野々香(ののか)「悔しい。」

志乃(しの)「約束は守れよ。」

野々香(ののか)「分かってる。」

篁音(たかね)志乃(しの)さん申し訳ないんだけど。」

志乃(しの)「何でお前らは血の気が多いんだ?」

見えはしないがいつの間にか複数の烏天狗(からすてんぐ)が集まっているのを感じる。

野々香(ののか)「私もまだやりたい。」

志乃(しの)「ならここからは式神を使わせてもらうぞ。」

篁音(たかね)「ええ。ですが炎と大百足(おおむかで)だけはやめてくださいね。」

志乃(しの)「分かってる。11号。」

志乃(しの)は11号で煙を出して辺りを見えないようにすると隠れている烏天狗(からすてんぐ)を1人ずつ叩き落としていく。

烏天狗(からすてんぐ)「音だ音を聞け。」

そんなことを言っていた烏天狗(からすてんぐ)は6号の操る偽の音に騙され倒されてしまう。

この烏天狗(からすてんぐ)の山は妖気に満ちていて妖気での探知は難しいが5号は気配察知も得意なので志乃(しの)は見えなくても5号に烏天狗(からすてんぐ)達の居場所を教えてもらっている。

野々香(ののか)が風で煙を払いやっと志乃(しの)の姿が見えるが複数人いる。

2号が幻を使い志乃(しの)を増やして見せているのだ。

混乱している烏天狗(からすてんぐ)志乃(しの)錫杖(しゃくじょう)を使い倒していく。

本体が分かったのでそれ以外を無視しようとしたが1人に実態があって転ばされる。

幻の中に8号が志乃(しの)変化(へんげ)して紛れているのだ。

攻撃力は無いが幻に紛れて妨害してくるので厄介だ。

そうやって志乃(しの)烏天狗(からすてんぐ)達を少人数に分断して1人ずつ倒していく。

まだ木々の中に潜んでいる烏天狗(からすてんぐ)もいるが5号が探知し、7号が後ろから不意を突いて落とし、9号も素早く撹乱しながら体当たりして落としてくれている。

志乃(しの)が見れない所は1号が指示を出してまとめてくれている。

このままではいけないと思った一部の烏天狗(からすてんぐ)は羽を飛ばして攻撃しようとするがそれは10号の風に阻まれ志乃(しの)にも管狐(くだぎつね)達にも届かない。

野々香(ののか)はせめて10号の妨害をしようとするがそれに気づいた志乃(しの)に倒され、残った最後の1人も志乃(しの)に倒された。

志乃(しの)野々香(ののか)。これでもまだ心配か?」

野々香(ののか)志乃(しの)が強い事なんて昔から知ってるよ。」

篁音(たかね)「お疲れ様でした。」

志乃(しの)「満足か?」

篁音(たかね)「ええ。不意打ち、乱戦、飛び道具を管狐(くだぎつね)達で潰し自分は目の前の敵に集中する。前回も似たような感じでしたね。」

志乃(しの)「なら何で対策をしない。」

篁音(たかね)「今回いるのは初見の者達なので。」

志乃(しの)「確かに見たことない奴らだったな。」

篁音(たかね)「前回お世話になった者達もいますが呼んできましょうか?」

志乃(しの)「勘弁してくれ。」

篁音(たかね)「あら。残念ですね。」

志乃(しの)「もう用は終わったんだろ。そろそろ帰してくれ。」

篁音(たかね)「もう少しゆっくりしていっても良いのですよ。陽葵(ひまり)さんもまだ疲れているでしょ。」

陽葵(ひまり)「そんな事無いよ。」

篁音(たかね)志乃(しの)に近づいて耳打ちをする。

篁音(たかね)「あなた無理をしましたね。」

志乃(しの)「何の話だ?」

篁音(たかね)「昔と同じ戦い方をしたのは野々香(ののか)に安心してもらうためなのでしょう。」

志乃(しの)「...。」

篁音(たかね)「今のあなたなら私1人で抑えれますよ。」

志乃(しの)「、、分かった。少し休ませてもらう。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。私は大丈夫だよ。」

志乃(しの)「いや。篁音(たかね)と話す事ができた。もう少し待ってくれ。」

陽葵(ひまり)「分かった。」

篁音(たかね)野々香(ののか)陽葵(ひまり)さんに屋敷を案内してあげなさい。私は志乃(しの)さんと奥の部屋で話をします。」

野々香(ののか)「分かった。陽葵(ひまり)行こ。」

陽葵(ひまり)「え、、うん。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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