27話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
先頭の野々香が安全を確認して外に出ると少し遠くに立派な木製の建物が見える。
だが侵入がバレていることもあり、烏と烏天狗による監視が厳しくなっていてより慎重に動かないといけない。
もう少しで屋敷の裏口に着くという時に陽葵が音を立ててしまい見張りの烏天狗に気付かれてしまった。
錫杖で殴り掛かって来たところを野々香が同じく錫杖で応戦するが大人の烏天狗は野々香よりも力が強く押し負けている。
陽葵「野々香こっち!」
陽葵の声に野々香は相手の錫杖を受け流し陽葵の方に駆け寄る。
陽葵は野々香を追いかけてきた烏天狗が来た時に仕掛けていた結界符で結界を張ると、止まれなかった烏天狗がそれにぶつかって気絶した。
周りにいた烏天狗達も気付き、2人に襲い掛かるがすぐに裏口から入ると中からつっかえ棒をして扉を塞ぎ時間を稼ぐ。
中にも烏天狗が巡回していたが野々香が屋敷の構造を知っていたので屋根裏など狭い場所も通ったが安全に地下へ続く入口へ到着できた。
地下の構造は複雑で、巡回の烏天狗もいないが迷って出れなくなることもある危険な場所だ。
野々香「ここから先は私もあまり知らない。陽葵の式神だけが頼りだよ。」
陽葵「うん。任せて。」
陽葵は式神に霊力を流すと飛んで行くので2人はそれを追いかける。
地下は暗く、所々鬼火の明かりが点いているくらいなので陽葵は持ってきた懐中電灯を頼りに歩いていく。
式神は直線的に動くので所々行き止まりや違う部屋に出たが方向だけは常に分かるので通路を探しながら進むと最奥だろうか、他に行ける場所も無さそうな通路の奥にある部屋を見つける。
式神もその部屋を示しているので扉を開くと少し大きめの暗い部屋の真ん中に人1人入りそうな大きさの鳥籠型の檻が置いてあり、中に人影が見える。
近付くと中に拘束された志乃が足を組んで座っていて、眠っているのか目を瞑り俯いている。
陽葵「浜名瀬さん。」
陽葵は檻に駆け寄るが志乃の反応は無い。
野々香「陽葵。先に鍵を先に探さないと。」
陽葵「何処にあるの?」
野々香「大体は扉近くの壁に、、キャッ。」
野々香が扉に近づくとそこにいつの間にか居た人影に外に追い出されて扉を閉められると部屋は暗闇となり陽葵の懐中電灯の光だけが光っている。
陽葵「野々香?」
???「初めましてね。陽葵さん。」
陽葵「誰ですか?」
???「私?私は篁音と申します。」
篁音が指を鳴らすと鬼火が集まってきて部屋を照らす。
見えるようになるとそこには上品そうな女性の烏天狗が団扇を持って立っている。
陽葵「野々香を何処にやったの?」
篁音「外に追い出しただけですよ。扉は開かなくしてありますので入る事も出る事も出来ませんが。」
陽葵「何しに来たの?」
篁音「侵入者を仕留めるためですよ。」
そう言って篁音が団扇で仰ぐと風が刃のように飛び出し陽葵の横を掠めて後ろの壁にあたり風の形に抉れる。
陽葵「待って。殺さなくても良いんじゃないの?」
篁音「あなたが野々香を唆してここに入ったんじゃないんですか?」
陽葵「それはあなた達が浜名瀬さんを閉じ込めるから。」
篁音「この人間ですか。本当は殺したかったのですが死なないのでこうするしかないのです。」
陽葵「何でそんなことするの?浜名瀬さんは野々香を助けたんじゃないの?」
篁音「そうですね。だけどそのせいで野々香は1つのものに執着してしまった。あの子は将来、長の補助をする立場になるのに全体を見れなくなってしまえば組織を維持するための能力が足りないと皆から責められるでしょう。」
陽葵「だから浜名瀬さんを閉じ込めたの?」
篁音「ええ。そしてそれはあなたもです。」
陽葵「え?」
篁音「あなたもあの子にとって害悪な存在なんですよ。」
篁音はまた団扇を仰いで風の刃を出す。
陽葵はそれを避けるが避けなければ当たっていただろう。
篁音「いつまで避けていられるか試してみましょうか。」
陽葵「や、待って。」
篁音は風の刃を陽葵に飛ばして追い詰める。
篁音「さっきからあなた、檻の方を見ていますね。」
陽葵「そ、そんな事、、」
篁音「この人間の助けを待っているのでしょうが、無理ですよ。」
篁音は志乃の入った檻の方に行き、外から腕を入れて志乃の首を持ち上げると、篁音は爪を尖った烏の爪に変え、志乃の首に当てる。
陽葵「浜名瀬さん。」
篁音「こんな事をしても起きないのにどうやってお前を助けるんですか?」
篁音の爪が志乃の首を引き裂くと血が垂れ、しばらくすると志乃の咥えている猿轡が赤く染まる。
陽葵「止めて!」
篁音「こんな事をしても死なないなんて面倒ですよね。」
志乃の首には血は付いてるが傷はもう無い。
陽葵「浜名瀬さんを離して。」
篁音「人の心配をしてていいんですか?」
篁音はまた陽葵に向かって風の刃を飛ばすがそれは陽葵に当たらず後ろの壁に当たる。
篁音「あなたはこれに当たれば死ぬんだから精々抗ってください。」
陽葵は危険を感じて篁音が離れている間に結界符を準備する。
篁音「もう良いですか?」
篁音が団扇を構えたので陽葵は結界を張るが風の刃は一撃で結界を破壊し、後ろの壁まで傷つける。
陽葵はそれを見て腰を抜かし、立てずにいると篁音が近づく。
篁音「これで終わりです。」
篁音は団扇を陽葵に向けた後、ゆっくり上にあげる。
風の刃が来ることが分かってはいるが動けない陽葵は目に涙を浮かべながらそれを見ている事しかできなかった。
篁音の団扇から風の刃が放たれそれは陽葵の頭を掠めて今までで一番大きな傷を後ろの壁に付ける。
篁音「ふう。これくらいでしょうか。」
陽葵「へ?」
篁音「志乃さん。終わりましたよいつまで寝てるんですか?」
篁音は志乃の檻の方に近づくが志乃は何の反応も無い。
篁音「これ、本当に寝てます?仕方のない人ですね。」
篁音は懐から取り出した鍵で檻を開けて志乃を中から出し、しばらくすると志乃は目を覚ます。
陽葵は腰が抜けているのと何が起こっているのか分からず、ポカンとその光景を見ている事しかできなかった。
目を覚ました志乃はゴホゴホと咳き込んでいる。
篁音「昔のあなたなら夢籠の術くらい跳ね返していませんでした?」
志乃「ん、んん。」
篁音「あら、それじゃ喋れませんね。ごめんなさい。」
篁音は志乃の猿轡を外し、拘束も解いていく。
志乃「今の私には対抗できるほどの霊力は無い。」
篁音「なら今度からあなたを閉じ込めたい時には夢籠が使えるのですね。」
志乃「できるならな。それで頼んでいた事は?」
篁音「あそこにいますよ。」
志乃は篁音が指さす方を見ると壁には複数の傷が付いていてその前に陽葵が座り込んでいる。
志乃「派手にやったんだな。」
篁音「怪我させないなら遠慮はいらないと言われましたので。」
志乃「ここまでするとは思っていなかったよ。」
志乃は陽葵に近づき顔を覗き込む。
志乃「陽葵。大丈夫か?」
陽葵「は、浜名瀬さん?私生きてる?」
志乃「ああ。お前は生きてるぞ。怖かったか?」
陽葵「怖かった。死ぬかと思った。」
志乃「分かったか。妖怪は軽く扱っていいものじゃない。」
陽葵「ごめんなさい。ごめんなさい。」
陽葵は起きた志乃を見て安心したようで志乃に抱きついて泣いている。
篁音は扉を開けて野々香も中に入れた。
野々香「大きな音が聞こえたけど大丈夫なの?って何これ。」
野々香は傷が付いた壁に驚いている。
篁音「野々香。」
野々香「母上。これ母上の術ですよね。何したんですか?」
篁音「最近陽葵さんが妖怪を式神にしたいと言っているので妖怪の怖さを教えて欲しいと志乃さんから頼まれたんですよ。」
野々香「式神、、」
篁音「あなたにとってもあまりいい思い出の無い事なので少し本気を出させてもらいました。」
陽葵「どういうこと?」
篁音「落ち着きましたか?」
陽葵「は、はい。」
陽葵は篁音にトラウマができて志乃にくっ付いたままだ。
篁音「場所を移動しましょうか。」
志乃達は篁音に案内されて客間に通される。
篁音「さて、どこから話しましょう?」
陽葵「あなたは野々香のお母さんなんですか?」
陽葵は志乃の腕を掴んみながら恐る恐る聞いている。
篁音「ええ。野々香は私の娘で、娘の友達を殺したりしないので安心なさい。」
陽葵「あの時言っていたのは?」
篁音「殺す理由が無いと嘘だってバレるでしょ?」
陽葵「だけど嘘には思えなかったよ。」
篁音「攻撃は本気でしたよ。」
陽葵「ひっ。」
野々香「母上。本題に入ってください。何でこんなことをしたんですか?」
篁音「初めは野々香の成長を見ようと思い志乃さんを呼んだんですよ。」
野々香「私?」
篁音「ええ。あなたが執着している志乃さんを連れてくれば何かしら行動すると思ったので。」
野々香「陽葵巻き込むのも計算済み?」
志乃「それは私が頼んだんだ。」
陽葵「それは私が式神が欲しいって言ったから?」
志乃「分かっているじゃないか。式神は契約が全てではない。実力が伴わなければこちらに牙をむく。」
陽葵「だけど風狸と雷獣を連れていたあの人は?」
志乃「そいつらは式神ではなくあの人の傍が気に入っているだけだ。お前の場合は式神にして自分を手伝ってほしいんだろ。」
陽葵「うん。」
志乃「私は今まで式神に対しての問題をたくさん見てきた。野々香と出会ったのもそれ関係だった。」
陽葵「何があったの?」
志乃「野々香は私が陰陽師の屋敷に忍び込んで見つけたんだが、その時は檻に入れられて瀕死の状態だった。」
野々香「私はあの時はまだ雛で戦力にならないからって契約だけして放置されてたんだ。」
陽葵「何それ酷い。」
志乃「妖怪にも世話がいる。あの頃は契約したから自分のものになるなんて考えている奴が多かったんだよな。」
野々香「自分勝手な人間多かったよね。」
志乃「その他にも管理や知識が不十分で式神が暴れて周りにも被害を出す奴もいた。」
陽葵「そうなんだ。」
志乃「その他にも世話をしていた人間にご飯が足りなくて不満に思い、取り憑いた妖怪もいた。」
陽葵「世話しててもそんなことになるの?」
志乃「妖怪の気分次第で悪さをする奴もいる。ちなみに今の話は私の管狐達の親の話だ。」
陽葵「管狐って取り憑くの?」
志乃「今は私が管理しているが扱いを間違えればドンドン増えて、不満があれば取り憑くこともある。」
陽葵「そうなんだ。」
志乃「妖怪の扱いには知識がいる。妖怪の種類も分からない奴が出来る事ではない。」
陽葵「ごめんなさい。もう言いません。紙の式神を練習します。」
志乃「分かったようで良かったよ。まだ妖怪の怖さが分かっていないようなら次はどうしようかと思っていたんだ。」
陽葵「もう、浜名瀬さんの首切られるのは見たくないよ。」
野々香「え。何それ聞いてない。」
志乃「口の中血の味すると思っていたらそんな事されていたのか。」
陽葵「気付いてなかったの?」
志乃「あの時は本当に寝ていたからな。」
野々香「母上。何でそんなことしたんですか!」
篁音「志乃さんから陽葵さんを脅すのに自分を使っても構わないと言われていましたから。」
陽葵「浜名瀬さん何を約束してるの!?」
志乃「そこまでやるとは思ってなかった。」
篁音「あら。脅しっていうのは生半可な事じゃ気付かれて失敗するんですよ。」
そういう篁音の顔は笑っているが何か怖い。
志乃「まあ、成功はしているから私は構わないが。」
陽葵「私は首切られているのを見て平気じゃない。」
志乃「お前がもう少し危機感持っていればこんなことはしなかった。」
陽葵「本当に怖かった。」
志乃「もう、妖怪と関わるのはやめるか?」
陽葵「それは嫌。」
志乃「そうか。」
野々香「それで志乃はあの事母上から聞いたの?」
志乃「聞いたよ。何でお前が私を気にかけるのかが分かった。」
野々香「、、危ない事はしないよね?」
志乃「お前の思っている事は分かった。だがそれは約束できない。」
野々香「分かってたけど、やっぱりそうなるよね。」
志乃「だが流石に無策で突っ込みはしない。だから先に解決策を探すよ。」
野々香「解決策が見つからなかったら?」
志乃「見つかるまで探す。」
陽葵「浜名瀬さん。また危ない事しようとしているの?私との約束覚えているよね。」
志乃「覚えている。」
陽葵「なら消えないよね?」
志乃「ああ。ずっとお前の心の中にいる。」
陽葵「違う!」
志乃「分かってる。」
陽葵「こんな時に意地悪言わないで。」
志乃「お前がいつもやっているだろ。」
陽葵「こんな事私は言わない。」
志乃「いつも何かあった後に冗談言っているだろ。」
陽葵「そんなダークジョークは言わないよ。」
志乃「そうか。」
篁音「今日陽葵さんを見て思ったんですが志乃さんは陽葵さんに修行をつけているんですよね?」
志乃「ああ。」
篁音「何で攻撃のすべを教えてないんですか?」
志乃「必要ない。」
篁音「まあ、何かに突っ込みそうな性格の人に教えるのは心配かもしれませんが防御だけだと今日みたいに動けなくなります。あなたは助けも無く絶望的な状況で妖怪の恐ろしさを教えて欲しいと言っていましたが、あれでは助けがある前提で時間を稼ぐことしかできませんよ。」
志乃「分かってはいるが今の陽葵の霊力量では私が教えられる物が無いんだ。」
篁音「なら武器を持たせればいいじゃないですか。」
志乃「下手な物を持たせて逆に刺激したらどうする?」
篁音「あなたが作ったあの数珠とかなら霊力での攻撃ですし大物でなければ大体の妖怪に通じると思いますよ。今使ってないのであれば渡してもいいのではないですか?」
志乃「あれか、、」
陽葵「何かあるの?」
篁音「今回の事でどうしようもない力の差がある事が分かったんです。そうでしょ陽葵さん。」
陽葵「はい。」
陽葵は篁音と目が合っただけでも涙目になっている。
それを見て志乃は陽葵がちゃんと妖怪の怖さを知ったんだろうと判断した。
志乃「そうだな。私に危ないことをするなと言うくらいだし、自分から危ない事はしないだろう。巻き込まれた時のお守りとしてならいいか。」
陽葵「なになに?何貰えるの?」
志乃「お前にあげる前に少し調整が必要だからすぐには渡せないが終われば渡しに行く。」
陽葵「私にも攻撃できるの?」
志乃「写本も進んでいないお前は妖怪の事を知らずに無害な妖怪を傷つける可能性もある。確実に自身に危害が及ぶ時のみにしか使わないと約束できるか?」
陽葵「うん。分かった。」
志乃「使ったらその場所が私に伝わるようにしておく。むやみに使うなよ。」
陽葵「いざという時しか使わないよ。」
志乃「本当に?」
陽葵「何でそんなに信用無いの?」
志乃「いや、反省したようでしてない時があるからな。」
陽葵「今回は、本当に反省したよ。」
志乃「ならいい。」
篁音「それでせっかく来たんですし志乃さん。手合わせしていきませんか?」
志乃「遠慮する。」
篁音「あら昔は楽しそうにしていたじゃありませんか。」
志乃「娯楽が無かったからな。体を動かすためにもしていたんだ。」
篁音「烏天狗達の修行にもなって良かったんですが。」
野々香「ねえ志乃。私として。」
志乃「何でだ?」
野々香「あの時私は雛で参加できなかったからずっと羨ましいと思ってたの。」
志乃「それだけか?」
野々香「私が勝ったら大人しくこの山で保護されて。」
陽葵「え?ちょっと。」
志乃「そうだな。野々香にも負けるようなら私は保護されないといけないかもしれない。だが私が勝てばお前の助けはいらないということだ。私を烏で監視するのと付き纏うのを止めてもらうぞ。」
野々香「分かった。だけど私の助けがいらないことは無いと思うの。」
志乃「その時はこちらから言うよ。」
野々香「絶対だからね。」
志乃「ああ。篁音場所借りていいか?」
篁音「ええ、使って頂戴。」
志乃達は外へ移動する。
そこは少し開けて一部の地面は砂で動きやすくはなっているが周りには草木が生えていて山そのものだった。
野々香「あの舞台のようにはいかないよ。本気で行くからね。」
野々香は烏天狗の姿になって錫杖を構えている。
志乃「そうか。私は今回式神を使わない。錫杖を貸してくれないか?」
篁音は志乃に錫杖を投げて渡す。
野々香「なめてるの?」
志乃「いや。お前の本気に答えたいんだ。」
志乃も錫杖を構えると先に野々香が動くが志乃はそれを全て受け流す。
正面からだと攻撃が入らないと分かると野々香は飛んで木々に隠れた。
陽葵「あれありなの?」
篁音「ここら全てを使っての手合わせです。地形を利用するのは志乃さんも知っていますよ。」
陽葵「そうなんですね。」
篁音「それで、陽葵さん。そんなに離れなくても良いんじゃないんですか?」
陽葵「すみません。無理です。」
陽葵は篁音から5mは離れて近づこうとしない。
志乃の方は野々香がどこから来るか分からない中、神経を集中させている。
野々香は志乃の後ろから現れて攻撃を仕掛けるが志乃が振り向きその攻撃を止める。
志乃「速さは良いが殺気をもう少し隠せ。」
野々香「駄目か。」
野々香はもう一度隠れて同じような攻撃を繰り返す。
志乃はそれらを全て受け止めるが野々香の殺気は徐々に消えて志乃の反応が遅れるようになった。
そしてガサッと音のした方を志乃が見るが誰も居らずその反対方向から野々香が攻撃を仕掛ける。
志乃は横に跳んでその攻撃をかわし、錫杖で野々香の背中を突いてその勢いで野々香を地面へ押し倒した。
そして志乃は立ち上がろうとした野々香の首に錫杖を当てる。
篁音「勝負ありです。」
志乃「お前の得意な風はどこかで使うとは思っていたがまさか囮で使うとは思ってなかったよ。」
野々香「何で分かったの!」
志乃「引っ掛かりはしたが直線的な攻撃で躱しやすかった。」
野々香「悔しい。」
志乃「約束は守れよ。」
野々香「分かってる。」
篁音「志乃さん申し訳ないんだけど。」
志乃「何でお前らは血の気が多いんだ?」
見えはしないがいつの間にか複数の烏天狗が集まっているのを感じる。
野々香「私もまだやりたい。」
志乃「ならここからは式神を使わせてもらうぞ。」
篁音「ええ。ですが炎と大百足だけはやめてくださいね。」
志乃「分かってる。11号。」
志乃は11号で煙を出して辺りを見えないようにすると隠れている烏天狗を1人ずつ叩き落としていく。
烏天狗「音だ音を聞け。」
そんなことを言っていた烏天狗は6号の操る偽の音に騙され倒されてしまう。
この烏天狗の山は妖気に満ちていて妖気での探知は難しいが5号は気配察知も得意なので志乃は見えなくても5号に烏天狗達の居場所を教えてもらっている。
野々香が風で煙を払いやっと志乃の姿が見えるが複数人いる。
2号が幻を使い志乃を増やして見せているのだ。
混乱している烏天狗を志乃は錫杖を使い倒していく。
本体が分かったのでそれ以外を無視しようとしたが1人に実態があって転ばされる。
幻の中に8号が志乃に変化して紛れているのだ。
攻撃力は無いが幻に紛れて妨害してくるので厄介だ。
そうやって志乃は烏天狗達を少人数に分断して1人ずつ倒していく。
まだ木々の中に潜んでいる烏天狗もいるが5号が探知し、7号が後ろから不意を突いて落とし、9号も素早く撹乱しながら体当たりして落としてくれている。
志乃が見れない所は1号が指示を出してまとめてくれている。
このままではいけないと思った一部の烏天狗は羽を飛ばして攻撃しようとするがそれは10号の風に阻まれ志乃にも管狐達にも届かない。
野々香はせめて10号の妨害をしようとするがそれに気づいた志乃に倒され、残った最後の1人も志乃に倒された。
志乃「野々香。これでもまだ心配か?」
野々香「志乃が強い事なんて昔から知ってるよ。」
篁音「お疲れ様でした。」
志乃「満足か?」
篁音「ええ。不意打ち、乱戦、飛び道具を管狐達で潰し自分は目の前の敵に集中する。前回も似たような感じでしたね。」
志乃「なら何で対策をしない。」
篁音「今回いるのは初見の者達なので。」
志乃「確かに見たことない奴らだったな。」
篁音「前回お世話になった者達もいますが呼んできましょうか?」
志乃「勘弁してくれ。」
篁音「あら。残念ですね。」
志乃「もう用は終わったんだろ。そろそろ帰してくれ。」
篁音「もう少しゆっくりしていっても良いのですよ。陽葵さんもまだ疲れているでしょ。」
陽葵「そんな事無いよ。」
篁音は志乃に近づいて耳打ちをする。
篁音「あなた無理をしましたね。」
志乃「何の話だ?」
篁音「昔と同じ戦い方をしたのは野々香に安心してもらうためなのでしょう。」
志乃「...。」
篁音「今のあなたなら私1人で抑えれますよ。」
志乃「、、分かった。少し休ませてもらう。」
陽葵「浜名瀬さん。私は大丈夫だよ。」
志乃「いや。篁音と話す事ができた。もう少し待ってくれ。」
陽葵「分かった。」
篁音「野々香。陽葵さんに屋敷を案内してあげなさい。私は志乃さんと奥の部屋で話をします。」
野々香「分かった。陽葵行こ。」
陽葵「え、、うん。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。