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22話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

休み明けに志乃(しの)が登校すると転校生が来るという話をしていたが別のクラスなので特に気にしてはいなかった。

最近休み時間になると声をかけられるので移動しようとするとドタドタと足音がする。

陽葵(ひまり)とは違う騒がしい足音が近付いてくる事に嫌な予感がした志乃(しの)は急いで外に出ようとするが教室の外に出ると見つかってしまった。

野々香(ののか)「あ。志乃(しの)見つけた!」

志乃(しの)「何でここにいる。」

野々香(ののか)「転校してきたんだよ。」

志乃(しの)「何故?」

野々香(ののか)「もちろん。志乃(しの)と一緒にいたいから。なのに何で志乃(しの)は1年生なの?」

前の学校の制服の時は分からなかったが、今野々香(ののか)が着ている制服は2年生の物なので志乃(しの)とは学年が違うみたいだ。

野々香(ののか)「しかも演劇部にいると思って入ったらいないし!」

志乃(しの)「助っ人だったからな。」

野々香(ののか)「だったらもう志乃(しの)を監禁するしかない。」

志乃(しの)「できると思っているのか?」

野々香(ののか)「母上に頼んだけど何もしていない人を監禁することはできないって。」

志乃(しの)「お前の親は常識あるんだよな。」

野々香(ののか)「逆に言えば何かがあればしてくれるってことだから。」

志乃(しの)「諦めろ。」

野々香(ののか)「やだやだ。一緒にいてくれなきゃやだ。」

志乃(しの)「こんなところで駄々をこねるな。」

廊下で言い争っていると陽葵(ひまり)も教室から出てきた。

陽葵(ひまり)「あれ?野々香(ののか)?」

野々香(ののか)陽葵(ひまり)。」

野々香(ののか)はライバルを見るような目で陽葵(ひまり)を見ている。

陽葵(ひまり)野々香(ののか)聞いたよ。あなた本書いているんだって?」

野々香(ののか)「え?」

陽葵(ひまり)のキラキラとした眼差しに野々香(ののか)は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

陽葵(ひまり)「私集中力無いからさ。書くどころか読むこともできなくて、そういうことできる人に憧れるんだ。」

野々香(ののか)「そ、そうなの。」

騒がしいもの同士意外と相性が良いのか2人で話が盛り上がっていたので志乃(しの)は静かにいつものベンチへ移動する。

修一(しゅういち)「あ、浜名瀬(はまなせ)さん。やっと見つけました。」

志乃(しの)「どうした?」

修一(しゅういち)「シナリオができたので浜名瀬(はまなせ)さんに見せようと思っていたら風牙(ふうが)さんが呼びに行くと言って走って行ったんです。」

志乃(しの)「何で野々香(ののか)がそんな事言い出したんだ?」

修一(しゅういち)風牙(ふうが)さんは私と同じクラスなんです。それで私の話を聞いてたみたいで。」

志乃(しの)「そうだったのか、だがシナリオの事なんて聞いてないぞ。」

修一(しゅういち)「でしょうね。心配で見に行ったら桜庭(さくらば)さんと談笑してました。」

志乃(しの)「舞台は野々香(ののか)が入ったのなら私がいなくても良いんじゃないのか?」

修一(しゅういち)「はい。風牙(ふうが)さんはアクションも演技も申し分ないです。」

志乃(しの)「良かったじゃないか。」

修一(しゅういち)「だけど何か違うんです。」

志乃(しの)「何かって何だ。」

修一(しゅういち)「なので出演はしなくていいんですがここの部分ちょっと演じてみてくれませんか?」

志乃(しの)「めんどくさい。」

修一(しゅういち)「1回、1回だけで良いんです。」

志乃(しの)「はぁ、シナリオ見ても良いか?」

修一(しゅういち)「はい。」

志乃(しの)はシナリオを読んで指定された場所の演技をする。

修一(しゅういち)浜名瀬(はまなせ)さんイメージして書いたのでやっぱりこっちがしっくりきますね。」

志乃(しの)野々香(ののか)は軽い動きが得意だからな。」

修一(しゅういち)「はい。浜名瀬(はまなせ)さんの力強い感じとは違うので少しシナリオを変えてみます。」

志乃(しの)「そうか。」

修一(しゅういち)「別に登場人物増やしても大丈夫ですよ。」

志乃(しの)「止めとく。」

修一(しゅういち)「そうですか。」

志乃(しの)「他に何かあるか?」

修一(しゅういち)「いえ、大丈夫です。ありがとうございました。」

修一(しゅういち)が戻り時間を見ると休み時間も終わりそうだったので志乃(しの)も教室に戻る。

その時には陽葵(ひまり)野々香(ののか)もすでにいなくなっていた。

帰りの時間になって志乃(しの)はいつも通り待ち構えている陽葵(ひまり)と一緒に帰る。

陽葵(ひまり)「今日ね野々香(ののか)と話したんだけど結構楽しかったよ。」

志乃(しの)「良かったな。」

陽葵(ひまり)「それでね。これ浜名瀬(はまなせ)さんに見せてって言ってた。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)に封筒に入った1枚の紙を渡される。

それは烏天狗(からすてんぐ)の文字で書かれた物だった。

陽葵(ひまり)「これ読んでって言っていたけど。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)まで利用するか。」

陽葵(ひまり)「え?私この文字自体読めないんだけど。」

志乃(しの)はその紙を少しだけ見ると封筒ごと3号に焼いてもらう。

陽葵(ひまり)「何で焼いちゃうの?」

志乃(しの)「これから野々香(ののか)に何か渡されても断ってくれ。」

陽葵(ひまり)「何で!」

志乃(しの)「罠だからな。」

陽葵(ひまり)「さっきのは何が書かれてたの?」

志乃(しの)「多分読んだら危ないやつだ。」

陽葵(ひまり)「多分なのに読まずに焼いちゃうの?」

志乃(しの)「読んで欲しいなら人の字で書くだろ。」

陽葵(ひまり)「そうか。」

志乃(しの)「本当に懲りない奴だよ。」

陽葵(ひまり)「何でそんなもの浜名瀬(はまなせ)さんに渡すの?」

志乃(しの)「、、さあな。」

それからしばらく志乃(しの)は休み時間は2号で姿を隠していたが野々香(ののか)は何故か見つけてきて突撃してくる。

放課後は野々香(ののか)は部活があるからいないが陽葵(ひまり)が待ち構えているので中々静かな時間が作れていない。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。最近そっけないよね。」

志乃(しの)「お前らがうるさくて1人の時間が作れないんだよ。休みもお前の修行に付き合ってるからな。」

最近では陽葵(ひまり)は式神の扱いに慣れてきていて人の霊力がこもっている式神だったらその人の元に飛ばすことができるようになったが式神を作るのに苦労しているので付き合っている。

陽葵(ひまり)「それなら今度の連休に友達の別荘に招待されているやつ浜名瀬(はまなせ)さんも行く?」

志乃(しの)「いや。その日は1人で休みたい。」

陽葵(ひまり)「初めに言った時もそう言ってたもんね。だけど綺麗な紅葉の見える場所が近くにあるから気分転換に良いんじゃない?」

志乃(しの)「お前がいる時点でできないぞ。」

陽葵(ひまり)「またそんなこと言う。」

志乃(しの)「事実だ。気を付けて行って来い。」

陽葵(ひまり)「分かったよ。」

それからも変わらない日を過ごして連休の日。

陽葵(ひまり)は1泊2日の旅行へ行く。

その場所までは企画した友達の親が車を出してくれて2時間ほどで到着する場所にあった。

この旅行に参加しているのは陽葵(ひまり)と友達3人、それから企画した友達の両親の合計6人で目的地に着くと木製のコテージがあり、キャンプできそうな広い庭もある。

少し歩けば紅葉が楽しめる山もあり、着いて早々陽葵(ひまり)は友達達と一緒に探索に出たりと楽しんでいた。

友達1「ねえ、この近くで人が消えるって噂の山があるんだよ。」

友達2「えー何それ。もう肌寒いんだし怪談はもう遅いよ。」

陽葵(ひまり)「そうだよ。あんまり面白がることじゃないって。」

友達1「最近では道が整備されて話聞かなくなったから大丈夫だよ。紅葉も綺麗だし夕飯前に行ってみない?」

友達3「面白そうだし私は行きたいな。」

友達2「少しくらいならいいよね。ねえ、陽葵(ひまり)はどう思う?」

陽葵(ひまり)「うーん。紅葉の写真も撮りたいし行こうかな。」

その時陽葵(ひまり)は妖気も感じないし、整備前に足を滑らせたり事故で死者が出たからそんな噂が出たんだと思っていた。

大人2人は夕飯のバーベキューの準備で忙しそうだったのですぐ戻る予定で声もかけずに子供達だけでその山へ入って行く。

友達1が言ったように道は整備されていて歩きやすく、紅葉も綺麗で写真を撮りながら奥へと進む。

夢中になって歩いているといつの間にか薄暗くなってきたので急いで戻ろうとすると声が聞こえた。

???「おや、こんなところにおいしそうな獲物がいるじゃないか。」

陽葵(ひまり)「え。何で?」

さっきまで何も無かったのに急に妖気が出てきたのだ。

友達2「どうしたの?」

あの声も陽葵(ひまり)以外には聞こえていないようだ。

陽葵(ひまり)「ううん。何でもない。早く帰ろ。」

陽葵(ひまり)は友達2の手を引いて早足で進んできた道を引き返す。

???「逃がすわけないじゃん。」

友達1「きゃ。何で?動けない。」

友達3「私も何で?」

そういう友達の足には糸が絡まっている。

陽葵(ひまり)はポケットに入っていた式神に霊力を流す。

???「ねえ。あなただけ私の声聞こえているみたいだけどもしかして見える?」

陽葵(ひまり)はその声の方を見ると大きな蜘蛛がいてそれからの記憶はなく、気が付いたらどこかに閉じ込められていた。

持ち物を確認するとスマホがあったので確認するが圏外だ。

周りは暗かったのでスマホのライトを使い辺りを確認する。

横には友達3人が寝ていて脱出しようと周りを確認すると全方向土で囲まれており、出口は見えないが壁に触れてみると1ヵ所だけ少しぶよぶよしている壁があったのでそれに力を込めてみるがビクともしない。

陽葵(ひまり)は念のためポケットに入れていた結界符(けっかいふ)を土壁に貼っていく。

そうこうしていると他の友達も起きてパニックになっている。

友達1「何ここ。何処なの?」

友達3「暗いよ。」

陽葵(ひまり)「起きた?」

友達2「陽葵(ひまり)?ここは?」

陽葵(ひまり)「私にも分からないけど助けは来るはずだから大丈夫だよ。」

陽葵(ひまり)が落ち着かせようとしていると声が聞こえる。

???「あら、保存食が起きちゃった。」

友達2「何?この声。」

何が原因で繋がりができたのか分からないが他の人にもこの声が聞こえているようだ。

するとぶよぶよしていた壁が開いてあの時の大蜘蛛がこちらを覗く。

友達1「化け物!」

友達3「やだ、こっち来ないで!」

???「うるさいわね。冬を越すために残そうと思ったけど1匹くらい食べても良いかしら。」

そう言って入って来ようとしたので陽葵(ひまり)結界符(けっかいふ)を発動させて結界を張る。

???「何これ。最近は食べやすかったのにめんどくさいわね。」

陽葵(ひまり)「あなたは誰?何のためにこんなことするの?」

???「お前か?これしてるのは。」

陽葵(ひまり)「答えて。」

???「ふん。雑魚に言う事はない。どうせ逃げられないんだから諦めなさいよ。」

大蜘蛛は結界に力を入れるが中々壊れない。

???「チッ。だけどいつまでもつかね。」

そう言い捨てて出て行った。

陽葵(ひまり)は結界を解いてその場でしゃがみ込む。

友達2「陽葵(ひまり)。大丈夫?」

陽葵(ひまり)「大丈夫。初めてで緊張しただけ。」

友達1「今の何?陽葵(ひまり)は何か知ってるの?」

陽葵(ひまり)「あれが妖怪って事しか分からない。」

友達3「ねえ。私たち帰れるの?」

陽葵(ひまり)「ここに来る前に助けを呼んでおいたから。きっと大丈夫。」

友達3「それはいつ来るの?」

陽葵(ひまり)「分からないけど。すぐ来てくれるよ。」

友達3「帰して。怖いよ。」

友達1「私も帰りたいよ。」

陽葵(ひまり)「落ち着いて。」

一方で志乃(しの)は久しぶりの休みでアパートでゆっくりしていると窓に式神が貼り付く。

気になって手に取ってみるとそれは前に陽葵(ひまり)にあげたはずの式神だった。

そこから奇妙な妖気も感じてすぐに陽葵(ひまり)に電話を掛けるが圏外で繋がらない。

嫌な予感がしたので急いでその式神を来た方向へ向かうように設定してそれを追いかける。

2号で姿を消して身体強化を最大で掛けると結界を足場に空中を駆けて急ぐ。

陽葵(ひまり)達は助けを待っているとまた大蜘蛛がやって来た。

陽葵(ひまり)はもう1度結界を張るが結界符(けっかいふ)に込めていた霊力が足りなかったのか今度は破られてしまう。

だけど2重に貼っていたのでさっきより小さいがもう1度結界を張って大蜘蛛を拒む。

???「ああもう。こんなことして無駄だって分からないの!」

その時大蜘蛛の後ろに管狐(くだぎつね)が現れてすぐにどこかへ消えてしまった。

???「何?今の。」

それからすぐに誰かの足音がして人影が見える。

志乃(しの)「いた。よくやった5号。」

???「誰よ。」

志乃(しの)「そいつらを返せ土蜘蛛(つちぐも)!」

土蜘蛛(つちぐも)「何?こいつら助けに来たの?だけど残念。」

土蜘蛛(つちぐも)が力を込めると最後の結界が破られ土蜘蛛(つちぐも)の足が陽葵(ひまり)に届きそうな時、結界符(けっかいふ)を持った9号がそれを阻止する。

土蜘蛛(つちぐも)「何よ。こいつら。」

志乃(しの)土蜘蛛(つちぐも)の腹部を狙い短刀で突き刺そうとするが素早い動きで避けられる。

そのおかげで陽葵(ひまり)達との距離が空いたので志乃(しの)はすぐに陽葵(ひまり)達の前に立つ。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん、だよね?」

陽葵(ひまり)は小さい声で志乃(しの)に尋ねる。

志乃(しの)「大声でその名前を呼ばなかった事を褒めてやる。」

陽葵(ひまり)の友達もいるということで今志乃(しの)は大人の男性に8号で姿を変えていた。

陽葵(ひまり)「他に褒めるとこあるんじゃないの。」

志乃(しの)「結界は2重以上で準備しておくこと。よく覚えていたな。」

陽葵(ひまり)「えへへ。」

そんな事を話していると土蜘蛛(つちぐも)がまた襲って来たので志乃(しの)霊縛符(れいばくふ)を付けた棒手裏剣を投げて足に当てると土蜘蛛(つちぐも)の動きが少し鈍る。

土蜘蛛(つちぐも)「何よ。厄介ね。」

そう言って土蜘蛛(つちぐも)はどこかへ行ってしまった。

陽葵(ひまり)「蜘蛛が逃げるよ。」

志乃(しの)「今はいい。この中罠だらけで危ないんだ。お前らを送る方が先だ。」

陽葵(ひまり)「分かった。」

友達2「あの。あなたは誰ですか?」

志乃(しの)「それより今はここを出よう。5号もう一回頼む。」

友達1「その、細長いのは(いたち)ですか?」

志乃(しの)管狐(くだぎつね)だ。細かい説明は避けるが、今はこいつにお前らと罠を探知してもらってここに来た。帰りも同じように進むから付いて来い。」

友達1「は、はい。」

暗い中、3号が出してくれている火の玉の灯りを頼りに後ろは1号が警戒して先頭を志乃(しの)が5号と進む。

友達2「熱くない火の玉って不思議。」

友達3「デカくて喋る蜘蛛も不思議よ。」

志乃(しの)「静かに付いて来い。」

友達2「はい。」

友達3「はい。」

出口が見えて無事に外へ出てこれたが上から土蜘蛛(つちぐも)が襲って来たのでそれを志乃(しの)が短刀で受ける。

だがそれを見た1人がパニックになって走り出してしまった。

志乃(しの)「1号止めろ!」

手が離せない志乃(しの)は1号に命令するが既に遅く外にも仕掛けられていた罠が発動し木が倒れる。

それを庇って陽葵(ひまり)が飛び出し木の下敷きになってしまった。

志乃(しの)陽葵(ひまり)。くそ。大百足(おおむかで)!」

志乃(しの)に呼ばれて出てきた大百足(おおむかで)土蜘蛛(つちぐも)に巻き付いて動きを止めると、志乃(しの)土蜘蛛(つちぐも)の頭に短刀を刺す。

土蜘蛛(つちぐも)が煙になるとすぐに志乃(しの)陽葵(ひまり)に駆け寄るが、陽葵(ひまり)の腹部には尖らせた木の枝が刺さっていた。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん?」

志乃(しの)「しゃべるな。4号、痛み止めと止血剤急いで!」

友達1「あの。私、、」

志乃(しの)「1号、3号、5号。こいつらを付けるからお前らは先に山を降りろ。」

友達1「でも、、」

志乃(しの)「お前らがいても出来る事は無い!さっさと行け!」

友達3「行こう、、」

志乃(しの)「無事に降りたかったらそいつらの指示は守れよ。」

友達1「はい、、」

友達2「あの、陽葵(ひまり)は?」

志乃(しの)「助ける。早く行け。」

志乃(しの)に言われて3人は先に山を降りて行った。

陽葵(ひまり)「ねえ、今どうなってるの?」

志乃(しの)「見るな。12号こいつの目を塞いどけ。大百足(おおむかで)。」

大百足(おおむかで)は倒れた木を支えて、志乃(しの)は刺さっている枝が抜けないように短刀で切ると大百足(おおむかで)は木を退ける。

陽葵(ひまり)「何の音?んぐ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)の口に葉っぱを突っ込む。

志乃(しの)「痛み止めだ。咥えとけ。」

志乃(しの)は目を霊力で強化して暗闇でも見えるようにすると陽葵(ひまり)の状態を確かめるが枝は太く、止血できたとしても内臓が傷ついているので病院まで持たないだろう。

もう助ける為には人魚の呪いを陽葵(ひまり)に移すしかない。

志乃(しの)は呪文を唱え始める。

志乃(しの)「何で。手順は間違っていないはずなのに!」

呪文を唱え終わっても陽葵(ひまり)の傷は塞がらない。

いくら唱えても人魚の呪いは移動せず陽葵(ひまり)の意識は無くなり呼吸は浅くなるばかりだ。

志乃(しの)「何が違う。これで移せない呪いなんて、あれしか、、」

呪いには必ず本体があり、それには大きく分けて3種類ある。

本体から離れて他に取り憑いている呪いと本体が取り込まれている呪い。

そして本体に憑いている呪い。

志乃(しの)が唱えている呪文で移せない呪いは本体に憑いている呪いのみ。

そして志乃(しの)が最初人魚が呪いだと気づかなかった理由も解呪が上手くいかなかった理由も本体の場所が分からなかったからだ。

志乃(しの)「こいつの本体は、私?」

そして誤解を深めた原因は本体に憑いている呪いは他の呪いと干渉はしないからだ。

赫妖(かくよう)の時の呪いで効果が薄まったのは本体である志乃(しの)が弱っていたから人魚の呪いも弱まっただけで上書きはされていなかった。

そして今は志乃(しの)が他の呪いがあると効果が弱まると思ったことにより効果が弱くなっているだけである。

志乃(しの)「なら、私が陽葵(ひまり)に呪いを掛ければ良いだけ、、なんだけど、、」

だが志乃(しの)はこれまで解呪の方しかしてこなかった為、呪い方は知識として知ってはいるが実践は初めてだった。

それでも自分が本体だと認識した事により少しだけ呪いを制御出来るようになっている。

試行錯誤していると呪いの一部が移り、陽葵(ひまり)は徐々に回復している。

それを確認して止血のためにそのままにしていた枝をゆっくりと抜き、回復を待っていると呼吸が戻り、意識も取り戻した。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん?」

志乃(しの)陽葵(ひまり)、良かった。」

陽葵(ひまり)「どうなっ、、痛っ。」

志乃(しの)「動くな。まだ回復している途中だ。」

陽葵(ひまり)「動かなくても痛い。」

志乃(しの)「治ってきている証拠だ。もう少し我慢しろ。」

陽葵(ひまり)「無理。」

志乃(しの)「ならこれ咥えてろ。」

志乃(しの)はまた痛み止めの葉を陽葵(ひまり)の口に突っ込むと陽葵(ひまり)はそれを食べようとしてしまう。

志乃(しの)「こら。それは噛むだけで良い。食べるな。」

陽葵(ひまり)「むぐむむぐ。」

志乃(しの)「何言ってるか分からん。」

陽葵(ひまり)「むぐぐ。」

志乃(しの)「まだ痛いのか?」

そう聞くと陽葵(ひまり)は首を縦に振ったり横に振ったりする。

志乃(しの)「どっちか分からん。1度それ離せ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)の口から葉っぱを出す。

陽葵(ひまり)「何これ滅茶苦茶苦い。」

志乃(しの)「食べようとするからだ。」

陽葵(ひまり)「でも少し楽になった。」

志乃(しの)「そうか。」

陽葵(ひまり)「それで浜名瀬(はまなせ)さんその手ずっと握ってたの?」

志乃(しの)「今お前に私の中の人魚の効果を移している。慣れてないから触れ合って無いと維持できないんだ。」

陽葵(ひまり)「そんな事できたの?すごい。」

志乃(しの)「お前のおかげで気づけたよ。」

陽葵(ひまり)「今まで試した事ないの?」

志乃(しの)「実行したのは初めてだ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんの初めて。」

志乃(しの)「別の意味にも聞こえるから止めろ。」

くだらない話をしながら陽葵(ひまり)の傷の回復を待っていると、朝日が昇り始める。

志乃(しの)「そろそろ痛み止めも切れる頃だが痛みはあるか?」

陽葵(ひまり)「痛みは無いし、傷も塞がっているみたい。ほら。」

陽葵(ひまり)は服を捲って志乃(しの)に見せる。

志乃(しの)「跡も無いな。良かった。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんが前に火傷した時跡残ってたもんね。」

志乃(しの)「あの時は本調子じゃ無かったんだ。」

陽葵(ひまり)「なら今は?」

志乃(しの)「多分、少しくらいなら一瞬で治る。試してみるか。」

人魚の呪いについての勘違いが分かり効果は元に戻っているはずなので試してみようと志乃(しの)は短刀を取り出す。

陽葵(ひまり)「やらなくていいよ。それ片付けて。」

志乃(しの)「分かったよ。」

志乃(しの)はボロボロの陽葵(ひまり)の服を見て自分の上着をかける。

志乃(しの)「そろそろお前の友達の別荘に行くか。立てるか?」

陽葵(ひまり)「うん。だけど今罠探知してくれる管狐(くだぎつね)いないんじゃないの?」

志乃(しの)「なら確実に無い場所を通れば良い。」

陽葵(ひまり)「どこ?」

志乃(しの)は結界で足場を作って上へ移動する。

陽葵(ひまり)「なるほど。空中なら罠は無いよね。」

陽葵(ひまり)も結界に乗って志乃(しの)の後を追う。

すると朝日に照らされた紅葉を上から見る事ができた。

志乃(しの)「綺麗だな。」

陽葵(ひまり)「うん。しばらく居ても良いかも。」

志乃(しの)「いや、心配しているだろうから早めに戻るぞ。」

陽葵(ひまり)「えー。」

志乃(しの)「ほら、早く移動しないと足場の結界消すぞ。」

陽葵(ひまり)「待って。」

土蜘蛛(つちぐも)の縄張りから出ると下に降りて歩いて別荘へ向かおうとした時、捜索に出ていた警察の人を見つける。

服だけがボロボロの女子高生を連れた大人の男性がいるこの状況を妖怪が見えない人に説明出来ないので2号で姿を消して別荘へ向かう事にする。

友達3人は無事に別荘へ着いていて、陽葵(ひまり)を心配して外で待っている。

案内した管狐(くだぎつね)達は3人の周りを回っていたがもう見えていないみたいで管狐(くだぎつね)が目の前にいても無反応だ。

そこに陽葵(ひまり)だけ姿を現し近づくと泣いて迎えてくれた。

陽葵(ひまり)「皆。今戻ったよ。」

友達2「生きてる?幽霊じゃないよね。」

友達1「私のせいで、ごめん。」

陽葵(ひまり)「この通り治ってるから心配しないで。」

友達3「え。本当に?」

友達2「ねえ、助けてくれたあの人は?」

友達1「そうだよ。知り合いなんだよね。何処の誰なの?」

陽葵(ひまり)「えっと、、」

友達2「陽葵(ひまり)もなんか、壁張って守ってくれたよね。もしかしてあの人が師匠とか?」

陽葵(ひまり)「あ、うん。そんな感じ。」

友達1「ねえねえ、他にどんな事習ったの?その師匠ってまた会える?」

陽葵(ひまり)「えっと、、」

質問攻めにあっている陽葵(ひまり)を無視して志乃(しの)管狐(くだぎつね)を回収する。

陽葵(ひまり)「あ。はまな、、師匠。そこにいるなら助けてよ。」

姿は消しているが管狐(くだぎつね)の動きでバレたらしい。

志乃(しの)「これ以上の面倒事はごめんだ。俺は帰る。」

友達3「何も無い所から声がした。」

友達2「あの管狐(くだぎつね)も途中で見えなくなったんだけど陽葵(ひまり)は何か見えてるの?」

見えていたのは土蜘蛛(つちぐも)の縄張りの中にいたからみたいだ。

陽葵(ひまり)「そうだったの?よく別荘まで帰れたね。」

友達2「火の玉は見えてたから。」

友達1「それでその師匠って何者なの?まだ居る?お礼言いたいんだけど。」

友達2「私も。」

陽葵(ひまり)「師匠。私も上着返したいから少し待って。」

だが返事は無い。

陽葵(ひまり)「もう帰ったみたい。」

友達1「えー。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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