22話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
休み明けに志乃が登校すると転校生が来るという話をしていたが別のクラスなので特に気にしてはいなかった。
最近休み時間になると声をかけられるので移動しようとするとドタドタと足音がする。
陽葵とは違う騒がしい足音が近付いてくる事に嫌な予感がした志乃は急いで外に出ようとするが教室の外に出ると見つかってしまった。
野々香「あ。志乃見つけた!」
志乃「何でここにいる。」
野々香「転校してきたんだよ。」
志乃「何故?」
野々香「もちろん。志乃と一緒にいたいから。なのに何で志乃は1年生なの?」
前の学校の制服の時は分からなかったが、今野々香が着ている制服は2年生の物なので志乃とは学年が違うみたいだ。
野々香「しかも演劇部にいると思って入ったらいないし!」
志乃「助っ人だったからな。」
野々香「だったらもう志乃を監禁するしかない。」
志乃「できると思っているのか?」
野々香「母上に頼んだけど何もしていない人を監禁することはできないって。」
志乃「お前の親は常識あるんだよな。」
野々香「逆に言えば何かがあればしてくれるってことだから。」
志乃「諦めろ。」
野々香「やだやだ。一緒にいてくれなきゃやだ。」
志乃「こんなところで駄々をこねるな。」
廊下で言い争っていると陽葵も教室から出てきた。
陽葵「あれ?野々香?」
野々香「陽葵。」
野々香はライバルを見るような目で陽葵を見ている。
陽葵「野々香聞いたよ。あなた本書いているんだって?」
野々香「え?」
陽葵のキラキラとした眼差しに野々香は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
陽葵「私集中力無いからさ。書くどころか読むこともできなくて、そういうことできる人に憧れるんだ。」
野々香「そ、そうなの。」
騒がしいもの同士意外と相性が良いのか2人で話が盛り上がっていたので志乃は静かにいつものベンチへ移動する。
修一「あ、浜名瀬さん。やっと見つけました。」
志乃「どうした?」
修一「シナリオができたので浜名瀬さんに見せようと思っていたら風牙さんが呼びに行くと言って走って行ったんです。」
志乃「何で野々香がそんな事言い出したんだ?」
修一「風牙さんは私と同じクラスなんです。それで私の話を聞いてたみたいで。」
志乃「そうだったのか、だがシナリオの事なんて聞いてないぞ。」
修一「でしょうね。心配で見に行ったら桜庭さんと談笑してました。」
志乃「舞台は野々香が入ったのなら私がいなくても良いんじゃないのか?」
修一「はい。風牙さんはアクションも演技も申し分ないです。」
志乃「良かったじゃないか。」
修一「だけど何か違うんです。」
志乃「何かって何だ。」
修一「なので出演はしなくていいんですがここの部分ちょっと演じてみてくれませんか?」
志乃「めんどくさい。」
修一「1回、1回だけで良いんです。」
志乃「はぁ、シナリオ見ても良いか?」
修一「はい。」
志乃はシナリオを読んで指定された場所の演技をする。
修一「浜名瀬さんイメージして書いたのでやっぱりこっちがしっくりきますね。」
志乃「野々香は軽い動きが得意だからな。」
修一「はい。浜名瀬さんの力強い感じとは違うので少しシナリオを変えてみます。」
志乃「そうか。」
修一「別に登場人物増やしても大丈夫ですよ。」
志乃「止めとく。」
修一「そうですか。」
志乃「他に何かあるか?」
修一「いえ、大丈夫です。ありがとうございました。」
修一が戻り時間を見ると休み時間も終わりそうだったので志乃も教室に戻る。
その時には陽葵も野々香もすでにいなくなっていた。
帰りの時間になって志乃はいつも通り待ち構えている陽葵と一緒に帰る。
陽葵「今日ね野々香と話したんだけど結構楽しかったよ。」
志乃「良かったな。」
陽葵「それでね。これ浜名瀬さんに見せてって言ってた。」
志乃は陽葵に封筒に入った1枚の紙を渡される。
それは烏天狗の文字で書かれた物だった。
陽葵「これ読んでって言っていたけど。」
志乃「陽葵まで利用するか。」
陽葵「え?私この文字自体読めないんだけど。」
志乃はその紙を少しだけ見ると封筒ごと3号に焼いてもらう。
陽葵「何で焼いちゃうの?」
志乃「これから野々香に何か渡されても断ってくれ。」
陽葵「何で!」
志乃「罠だからな。」
陽葵「さっきのは何が書かれてたの?」
志乃「多分読んだら危ないやつだ。」
陽葵「多分なのに読まずに焼いちゃうの?」
志乃「読んで欲しいなら人の字で書くだろ。」
陽葵「そうか。」
志乃「本当に懲りない奴だよ。」
陽葵「何でそんなもの浜名瀬さんに渡すの?」
志乃「、、さあな。」
それからしばらく志乃は休み時間は2号で姿を隠していたが野々香は何故か見つけてきて突撃してくる。
放課後は野々香は部活があるからいないが陽葵が待ち構えているので中々静かな時間が作れていない。
陽葵「浜名瀬さん。最近そっけないよね。」
志乃「お前らがうるさくて1人の時間が作れないんだよ。休みもお前の修行に付き合ってるからな。」
最近では陽葵は式神の扱いに慣れてきていて人の霊力がこもっている式神だったらその人の元に飛ばすことができるようになったが式神を作るのに苦労しているので付き合っている。
陽葵「それなら今度の連休に友達の別荘に招待されているやつ浜名瀬さんも行く?」
志乃「いや。その日は1人で休みたい。」
陽葵「初めに言った時もそう言ってたもんね。だけど綺麗な紅葉の見える場所が近くにあるから気分転換に良いんじゃない?」
志乃「お前がいる時点でできないぞ。」
陽葵「またそんなこと言う。」
志乃「事実だ。気を付けて行って来い。」
陽葵「分かったよ。」
それからも変わらない日を過ごして連休の日。
陽葵は1泊2日の旅行へ行く。
その場所までは企画した友達の親が車を出してくれて2時間ほどで到着する場所にあった。
この旅行に参加しているのは陽葵と友達3人、それから企画した友達の両親の合計6人で目的地に着くと木製のコテージがあり、キャンプできそうな広い庭もある。
少し歩けば紅葉が楽しめる山もあり、着いて早々陽葵は友達達と一緒に探索に出たりと楽しんでいた。
友達1「ねえ、この近くで人が消えるって噂の山があるんだよ。」
友達2「えー何それ。もう肌寒いんだし怪談はもう遅いよ。」
陽葵「そうだよ。あんまり面白がることじゃないって。」
友達1「最近では道が整備されて話聞かなくなったから大丈夫だよ。紅葉も綺麗だし夕飯前に行ってみない?」
友達3「面白そうだし私は行きたいな。」
友達2「少しくらいならいいよね。ねえ、陽葵はどう思う?」
陽葵「うーん。紅葉の写真も撮りたいし行こうかな。」
その時陽葵は妖気も感じないし、整備前に足を滑らせたり事故で死者が出たからそんな噂が出たんだと思っていた。
大人2人は夕飯のバーベキューの準備で忙しそうだったのですぐ戻る予定で声もかけずに子供達だけでその山へ入って行く。
友達1が言ったように道は整備されていて歩きやすく、紅葉も綺麗で写真を撮りながら奥へと進む。
夢中になって歩いているといつの間にか薄暗くなってきたので急いで戻ろうとすると声が聞こえた。
???「おや、こんなところにおいしそうな獲物がいるじゃないか。」
陽葵「え。何で?」
さっきまで何も無かったのに急に妖気が出てきたのだ。
友達2「どうしたの?」
あの声も陽葵以外には聞こえていないようだ。
陽葵「ううん。何でもない。早く帰ろ。」
陽葵は友達2の手を引いて早足で進んできた道を引き返す。
???「逃がすわけないじゃん。」
友達1「きゃ。何で?動けない。」
友達3「私も何で?」
そういう友達の足には糸が絡まっている。
陽葵はポケットに入っていた式神に霊力を流す。
???「ねえ。あなただけ私の声聞こえているみたいだけどもしかして見える?」
陽葵はその声の方を見ると大きな蜘蛛がいてそれからの記憶はなく、気が付いたらどこかに閉じ込められていた。
持ち物を確認するとスマホがあったので確認するが圏外だ。
周りは暗かったのでスマホのライトを使い辺りを確認する。
横には友達3人が寝ていて脱出しようと周りを確認すると全方向土で囲まれており、出口は見えないが壁に触れてみると1ヵ所だけ少しぶよぶよしている壁があったのでそれに力を込めてみるがビクともしない。
陽葵は念のためポケットに入れていた結界符を土壁に貼っていく。
そうこうしていると他の友達も起きてパニックになっている。
友達1「何ここ。何処なの?」
友達3「暗いよ。」
陽葵「起きた?」
友達2「陽葵?ここは?」
陽葵「私にも分からないけど助けは来るはずだから大丈夫だよ。」
陽葵が落ち着かせようとしていると声が聞こえる。
???「あら、保存食が起きちゃった。」
友達2「何?この声。」
何が原因で繋がりができたのか分からないが他の人にもこの声が聞こえているようだ。
するとぶよぶよしていた壁が開いてあの時の大蜘蛛がこちらを覗く。
友達1「化け物!」
友達3「やだ、こっち来ないで!」
???「うるさいわね。冬を越すために残そうと思ったけど1匹くらい食べても良いかしら。」
そう言って入って来ようとしたので陽葵は結界符を発動させて結界を張る。
???「何これ。最近は食べやすかったのにめんどくさいわね。」
陽葵「あなたは誰?何のためにこんなことするの?」
???「お前か?これしてるのは。」
陽葵「答えて。」
???「ふん。雑魚に言う事はない。どうせ逃げられないんだから諦めなさいよ。」
大蜘蛛は結界に力を入れるが中々壊れない。
???「チッ。だけどいつまでもつかね。」
そう言い捨てて出て行った。
陽葵は結界を解いてその場でしゃがみ込む。
友達2「陽葵。大丈夫?」
陽葵「大丈夫。初めてで緊張しただけ。」
友達1「今の何?陽葵は何か知ってるの?」
陽葵「あれが妖怪って事しか分からない。」
友達3「ねえ。私たち帰れるの?」
陽葵「ここに来る前に助けを呼んでおいたから。きっと大丈夫。」
友達3「それはいつ来るの?」
陽葵「分からないけど。すぐ来てくれるよ。」
友達3「帰して。怖いよ。」
友達1「私も帰りたいよ。」
陽葵「落ち着いて。」
一方で志乃は久しぶりの休みでアパートでゆっくりしていると窓に式神が貼り付く。
気になって手に取ってみるとそれは前に陽葵にあげたはずの式神だった。
そこから奇妙な妖気も感じてすぐに陽葵に電話を掛けるが圏外で繋がらない。
嫌な予感がしたので急いでその式神を来た方向へ向かうように設定してそれを追いかける。
2号で姿を消して身体強化を最大で掛けると結界を足場に空中を駆けて急ぐ。
陽葵達は助けを待っているとまた大蜘蛛がやって来た。
陽葵はもう1度結界を張るが結界符に込めていた霊力が足りなかったのか今度は破られてしまう。
だけど2重に貼っていたのでさっきより小さいがもう1度結界を張って大蜘蛛を拒む。
???「ああもう。こんなことして無駄だって分からないの!」
その時大蜘蛛の後ろに管狐が現れてすぐにどこかへ消えてしまった。
???「何?今の。」
それからすぐに誰かの足音がして人影が見える。
志乃「いた。よくやった5号。」
???「誰よ。」
志乃「そいつらを返せ土蜘蛛!」
土蜘蛛「何?こいつら助けに来たの?だけど残念。」
土蜘蛛が力を込めると最後の結界が破られ土蜘蛛の足が陽葵に届きそうな時、結界符を持った9号がそれを阻止する。
土蜘蛛「何よ。こいつら。」
志乃は土蜘蛛の腹部を狙い短刀で突き刺そうとするが素早い動きで避けられる。
そのおかげで陽葵達との距離が空いたので志乃はすぐに陽葵達の前に立つ。
陽葵「浜名瀬さん、だよね?」
陽葵は小さい声で志乃に尋ねる。
志乃「大声でその名前を呼ばなかった事を褒めてやる。」
陽葵の友達もいるということで今志乃は大人の男性に8号で姿を変えていた。
陽葵「他に褒めるとこあるんじゃないの。」
志乃「結界は2重以上で準備しておくこと。よく覚えていたな。」
陽葵「えへへ。」
そんな事を話していると土蜘蛛がまた襲って来たので志乃は霊縛符を付けた棒手裏剣を投げて足に当てると土蜘蛛の動きが少し鈍る。
土蜘蛛「何よ。厄介ね。」
そう言って土蜘蛛はどこかへ行ってしまった。
陽葵「蜘蛛が逃げるよ。」
志乃「今はいい。この中罠だらけで危ないんだ。お前らを送る方が先だ。」
陽葵「分かった。」
友達2「あの。あなたは誰ですか?」
志乃「それより今はここを出よう。5号もう一回頼む。」
友達1「その、細長いのは鼬ですか?」
志乃「管狐だ。細かい説明は避けるが、今はこいつにお前らと罠を探知してもらってここに来た。帰りも同じように進むから付いて来い。」
友達1「は、はい。」
暗い中、3号が出してくれている火の玉の灯りを頼りに後ろは1号が警戒して先頭を志乃が5号と進む。
友達2「熱くない火の玉って不思議。」
友達3「デカくて喋る蜘蛛も不思議よ。」
志乃「静かに付いて来い。」
友達2「はい。」
友達3「はい。」
出口が見えて無事に外へ出てこれたが上から土蜘蛛が襲って来たのでそれを志乃が短刀で受ける。
だがそれを見た1人がパニックになって走り出してしまった。
志乃「1号止めろ!」
手が離せない志乃は1号に命令するが既に遅く外にも仕掛けられていた罠が発動し木が倒れる。
それを庇って陽葵が飛び出し木の下敷きになってしまった。
志乃「陽葵。くそ。大百足!」
志乃に呼ばれて出てきた大百足は土蜘蛛に巻き付いて動きを止めると、志乃は土蜘蛛の頭に短刀を刺す。
土蜘蛛が煙になるとすぐに志乃は陽葵に駆け寄るが、陽葵の腹部には尖らせた木の枝が刺さっていた。
陽葵「浜名瀬さん?」
志乃「しゃべるな。4号、痛み止めと止血剤急いで!」
友達1「あの。私、、」
志乃「1号、3号、5号。こいつらを付けるからお前らは先に山を降りろ。」
友達1「でも、、」
志乃「お前らがいても出来る事は無い!さっさと行け!」
友達3「行こう、、」
志乃「無事に降りたかったらそいつらの指示は守れよ。」
友達1「はい、、」
友達2「あの、陽葵は?」
志乃「助ける。早く行け。」
志乃に言われて3人は先に山を降りて行った。
陽葵「ねえ、今どうなってるの?」
志乃「見るな。12号こいつの目を塞いどけ。大百足。」
大百足は倒れた木を支えて、志乃は刺さっている枝が抜けないように短刀で切ると大百足は木を退ける。
陽葵「何の音?んぐ。」
志乃は陽葵の口に葉っぱを突っ込む。
志乃「痛み止めだ。咥えとけ。」
志乃は目を霊力で強化して暗闇でも見えるようにすると陽葵の状態を確かめるが枝は太く、止血できたとしても内臓が傷ついているので病院まで持たないだろう。
もう助ける為には人魚の呪いを陽葵に移すしかない。
志乃は呪文を唱え始める。
志乃「何で。手順は間違っていないはずなのに!」
呪文を唱え終わっても陽葵の傷は塞がらない。
いくら唱えても人魚の呪いは移動せず陽葵の意識は無くなり呼吸は浅くなるばかりだ。
志乃「何が違う。これで移せない呪いなんて、あれしか、、」
呪いには必ず本体があり、それには大きく分けて3種類ある。
本体から離れて他に取り憑いている呪いと本体が取り込まれている呪い。
そして本体に憑いている呪い。
今志乃が唱えている呪文で移せない呪いは本体に憑いている呪いのみ。
そして志乃が最初人魚が呪いだと気づかなかった理由も解呪が上手くいかなかった理由も本体の場所が分からなかったからだ。
志乃「こいつの本体は、私?」
そして誤解を深めた原因は本体に憑いている呪いは他の呪いと干渉はしないからだ。
赫妖の時の呪いで効果が薄まったのは本体である志乃が弱っていたから人魚の呪いも弱まっただけで上書きはされていなかった。
そして今は志乃が他の呪いがあると効果が弱まると思ったことにより効果が弱くなっているだけである。
志乃「なら、私が陽葵に呪いを掛ければ良いだけ、、なんだけど、、」
だが志乃はこれまで解呪の方しかしてこなかった為、呪い方は知識として知ってはいるが実践は初めてだった。
それでも自分が本体だと認識した事により少しだけ呪いを制御出来るようになっている。
試行錯誤していると呪いの一部が移り、陽葵は徐々に回復している。
それを確認して止血のためにそのままにしていた枝をゆっくりと抜き、回復を待っていると呼吸が戻り、意識も取り戻した。
陽葵「浜名瀬さん?」
志乃「陽葵、良かった。」
陽葵「どうなっ、、痛っ。」
志乃「動くな。まだ回復している途中だ。」
陽葵「動かなくても痛い。」
志乃「治ってきている証拠だ。もう少し我慢しろ。」
陽葵「無理。」
志乃「ならこれ咥えてろ。」
志乃はまた痛み止めの葉を陽葵の口に突っ込むと陽葵はそれを食べようとしてしまう。
志乃「こら。それは噛むだけで良い。食べるな。」
陽葵「むぐむむぐ。」
志乃「何言ってるか分からん。」
陽葵「むぐぐ。」
志乃「まだ痛いのか?」
そう聞くと陽葵は首を縦に振ったり横に振ったりする。
志乃「どっちか分からん。1度それ離せ。」
志乃は陽葵の口から葉っぱを出す。
陽葵「何これ滅茶苦茶苦い。」
志乃「食べようとするからだ。」
陽葵「でも少し楽になった。」
志乃「そうか。」
陽葵「それで浜名瀬さんその手ずっと握ってたの?」
志乃「今お前に私の中の人魚の効果を移している。慣れてないから触れ合って無いと維持できないんだ。」
陽葵「そんな事できたの?すごい。」
志乃「お前のおかげで気づけたよ。」
陽葵「今まで試した事ないの?」
志乃「実行したのは初めてだ。」
陽葵「浜名瀬さんの初めて。」
志乃「別の意味にも聞こえるから止めろ。」
くだらない話をしながら陽葵の傷の回復を待っていると、朝日が昇り始める。
志乃「そろそろ痛み止めも切れる頃だが痛みはあるか?」
陽葵「痛みは無いし、傷も塞がっているみたい。ほら。」
陽葵は服を捲って志乃に見せる。
志乃「跡も無いな。良かった。」
陽葵「浜名瀬さんが前に火傷した時跡残ってたもんね。」
志乃「あの時は本調子じゃ無かったんだ。」
陽葵「なら今は?」
志乃「多分、少しくらいなら一瞬で治る。試してみるか。」
人魚の呪いについての勘違いが分かり効果は元に戻っているはずなので試してみようと志乃は短刀を取り出す。
陽葵「やらなくていいよ。それ片付けて。」
志乃「分かったよ。」
志乃はボロボロの陽葵の服を見て自分の上着をかける。
志乃「そろそろお前の友達の別荘に行くか。立てるか?」
陽葵「うん。だけど今罠探知してくれる管狐いないんじゃないの?」
志乃「なら確実に無い場所を通れば良い。」
陽葵「どこ?」
志乃は結界で足場を作って上へ移動する。
陽葵「なるほど。空中なら罠は無いよね。」
陽葵も結界に乗って志乃の後を追う。
すると朝日に照らされた紅葉を上から見る事ができた。
志乃「綺麗だな。」
陽葵「うん。しばらく居ても良いかも。」
志乃「いや、心配しているだろうから早めに戻るぞ。」
陽葵「えー。」
志乃「ほら、早く移動しないと足場の結界消すぞ。」
陽葵「待って。」
土蜘蛛の縄張りから出ると下に降りて歩いて別荘へ向かおうとした時、捜索に出ていた警察の人を見つける。
服だけがボロボロの女子高生を連れた大人の男性がいるこの状況を妖怪が見えない人に説明出来ないので2号で姿を消して別荘へ向かう事にする。
友達3人は無事に別荘へ着いていて、陽葵を心配して外で待っている。
案内した管狐達は3人の周りを回っていたがもう見えていないみたいで管狐が目の前にいても無反応だ。
そこに陽葵だけ姿を現し近づくと泣いて迎えてくれた。
陽葵「皆。今戻ったよ。」
友達2「生きてる?幽霊じゃないよね。」
友達1「私のせいで、ごめん。」
陽葵「この通り治ってるから心配しないで。」
友達3「え。本当に?」
友達2「ねえ、助けてくれたあの人は?」
友達1「そうだよ。知り合いなんだよね。何処の誰なの?」
陽葵「えっと、、」
友達2「陽葵もなんか、壁張って守ってくれたよね。もしかしてあの人が師匠とか?」
陽葵「あ、うん。そんな感じ。」
友達1「ねえねえ、他にどんな事習ったの?その師匠ってまた会える?」
陽葵「えっと、、」
質問攻めにあっている陽葵を無視して志乃は管狐を回収する。
陽葵「あ。はまな、、師匠。そこにいるなら助けてよ。」
姿は消しているが管狐の動きでバレたらしい。
志乃「これ以上の面倒事はごめんだ。俺は帰る。」
友達3「何も無い所から声がした。」
友達2「あの管狐も途中で見えなくなったんだけど陽葵は何か見えてるの?」
見えていたのは土蜘蛛の縄張りの中にいたからみたいだ。
陽葵「そうだったの?よく別荘まで帰れたね。」
友達2「火の玉は見えてたから。」
友達1「それでその師匠って何者なの?まだ居る?お礼言いたいんだけど。」
友達2「私も。」
陽葵「師匠。私も上着返したいから少し待って。」
だが返事は無い。
陽葵「もう帰ったみたい。」
友達1「えー。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。