20話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
文化祭2日目は昼過ぎに終わり、残りは片付けの時間になる。
今日の舞台はお昼前だが志乃は朝から演劇部の部室にいる。
修一「浜名瀬さん昨日言っていたことだけど、提案しておいてあれだけど本当に良いんですか?」
志乃「そのために今いるんだろ。」
修一「そうですね。」
椿役「早く行こ!ファンの人達がもう待ってるよ。」
志乃達は舞台の衣装で文化祭を回ることになったのだ。
翠幹役「浜名瀬さんが一番負担だろうけどできるだけフォローするから。」
志乃「ありがとう。」
拓海「変な奴は僕が成敗するかなら。」
修一「お前は成敗される側だけどな。」
拓海は悪役の格好で一緒に回る。
志乃「準備は良いぞ。」
修一「それじゃ。舞台の宣伝の為にもお願いします。」
椿役「宣伝って普通1日目にしない?」
修一「細かいことは良いから。」
ドアを開けると待ち構えていた人達がいる。
志乃も部員の人達もポーズや写真撮影を求められる。
それも一通り終わり、学校内を回っていると椿役の人が焼き菓子を買ってきて志乃に差し出す。
椿役「ほら、これ美味しいんだよ。」
志乃「あ、いや、、」
椿役「嫌いだった?」
志乃「これ、部費じゃないのか?」
宣伝中の飲食は部費で補っていてそれを払っていない志乃は遠慮する。
修一「後で写真も売るつもりだからその収入もあるので遠慮しないでください。」
そういう修一の手にはカメラが握られている。
志乃「抜かりないんだな。」
椿役「それに。これもファンサだよ。ほらアーン。」
周りには見ている人がいて彩月と椿は仲が良い設定だ。
これも仕事の内だと思い、志乃はそれを食べて表情を作る。
志乃「うん。美味しいな。、、どうした?」
周りの人は志乃を見て固まっている。
椿役「そんな表情もできるんで、、だね。」
志乃「これもファンサだろ?」
椿役「それでも不意打ちは駄目です。」
翠幹役「なあ、こっちも旨いが食べてみないか?」
翠幹役の人はたこ焼きを持っている。
志乃「服が汚れそうなのはいい。」
椿役「翠幹は分かってないね。」
翠幹役「何だよ。」
志乃「飲み物買いに行かないか?」
椿役「そうだね。」
志乃は椿役の人と手を握る。
志乃「翠幹も行くぞ。」
志乃は翠幹役の人に手を差し出す。
翠幹役「あ、ああ。」
そのまま仲良し3人組を演じて校内を回る。
知り合いに絡まれたり、的当てで志乃と拓海と翠幹役の人が競ってみたり、カフェで休んでみたりしているうちに劇の方の準備に行かなくてはいけない時間になった。
体育館に移動して慌ただしく準備をして開演する。
模擬戦も予定通り拓海が出て来て簡単に蹴散らされる。
順調に最後まで終わり、いつの間にか印刷された写真を修一が持って来て部室前で販売する。
部員たちは片付けや販売員をしているが午前中に宣伝していた人達はそれが免除されていて志乃も含めて部室で休憩している。
そして宣伝メンバーは志乃以外疲れて動けそうになく、椿役の人は机に伏せて寝てしまっている。
志乃はもったいないという理由で冷めたたこ焼きを食べながらその人達を眺めている。
拓海「冷めたタコ焼きなんて旨いか?」
志乃「不味くは無いぞ。」
翠幹役「新しいの買ってこようか?」
志乃「いいよ。疲れているだろう。それにここ出て行ったら写真買いに来た人達がいる。」
写真販売は急遽決まったため、場所が部室前しか確保できなかったのだ。
それでも人気があり、人が多く部室から出る事自体が難しい。
翠幹役「それでも飲み物くらいはいるだろ?」
志乃「、、なら私が買って来るよ。」
部員「今彩月役の人が出たら騒ぎになるので私が買ってきます。」
写真の在庫を取りに来た部員がそう言ってくれる。
翠幹役「なら頼んでも良いか?」
部員「はい。必要なものはありますか?」
翠幹役「腹にたまるものと飲み物。炭酸買ってきてくれないか?他には?」
拓海「焼きそば食べたいな。ソース系が食べたくなった。浜名瀬は何かいるか?」
志乃「お茶。」
拓海「それだけか?」
志乃「、、なら3年の教室で売ってた焼き菓子も。」
部員「はい。えっと佐々木さん(椿役の人)の分はどうしましょう?」
拓海「適当に飲み物買ってきてくれ。食べたいって言ったら僕らの分を分けるから。」
部員「分かりました。」
部員は急いで部室から出て行った。
拓海「おい。写真忘れてるぞ。」
急いで出て行ったので取りに来たはずの在庫を置いて行く。
その一枚を志乃は見てみる。
志乃「これ、1枚いくらで売っているんだ?」
翠幹役「300円で売ってたな。」
拓海「自分の写真が売られているのは嫌か?」
志乃「いや、私も1枚買おうと思って。」
拓海「それなら持って行っても良いんじゃないか?あいつなら功労者から金をとったりしないって。」
修一「浜名瀬さんも欲しいのあれば行ってください。部員達にも言いますが後で印刷して渡しますので。」
さっきの部員の代わりに在庫を取りに来た修一が部室に入って来ていた。
志乃「わかったが忙しそうだな。手伝うか?」
修一「私は出演していないので大丈夫です。休んでいてください。」
そう言ってバタバタと出て行った。
しばらくして買い出しに行っていた部員が戻って来た。
部員「すみません。焼き菓子売り切れていたので代わりに他の甘い系の物買ってきました。」
志乃「無かったら無かったで良かったんだが。ありがとう。」
拓海「忙しい時に悪いな。ありがとう。」
部員「それでは私は戻りますね。」
翠幹役「ありがとう。」
翠幹役と拓海の2人がお腹にたまるものと言っていたのでそこそこの量の食べ物を買ってきてくれていた。
その匂いで椿役の人も起きる。
椿役「良い匂い。」
拓海「食べるか?」
椿役「うん。」
椿役の人はまだ眠そうだ。
椿役「そのドーナツ貰っても良い?」
拓海「それ浜名瀬さんが頼んだ奴じゃないか?」
志乃「私はいい。代わりにそのおにぎり貰ってもいいか?」
翠幹役「いいよ。はい。」
そのおにぎりは味噌を塗った焼きおにぎりで、さっきから管狐達がそわそわしている。
そしてこの時に志乃は劇の練習で最近管狐達に構ってあげられていない事に気づいたのだ。
1パックに2個入っていたので箸で1個を6分割にして膝に乗せると管狐達は一切れづつ仲良く食べていく。
拓海「もう食べたのか?」
翠幹役「意外とお腹空いてたのか?沢山あるから好きなの選べよ。」
志乃「あ。いや、、」
椿役「もう。男性陣はデリカシーないよね。」
翠幹役「俺はただ遠慮してたら悪いなと思って。」
志乃「たこ焼きも食べたから大丈夫だ。」
拓海「遠慮はするなよ。」
志乃「いや、してな、、」
志乃は拓海にたこ焼きを口に入れられる。
拓海「冷めた物より美味しいだろ。」
椿役「何熱い物口に入れてるの!」
志乃「おいひい。」
拓海「だろ。」
椿役「ちょ。そうじゃないでしょ。口の中火傷してない?」
志乃「大丈夫。」
拓海「残りも食べるか?」
志乃「なら貰おうかな。」
拓海「ほら、お前も食べたい物あるか?」
椿役「今回は大丈夫だったけど。危ないことはやめてよね。」
志乃は空腹を感じないし、食べなくても体に影響は無いので基本食事はしていない。
人として馴染むために食べるという行動をするかたまに嗜好品として食べるくらいだ。
昔はあまり食べなかった温かい食べ物も人の中で生活してからちょくちょく食べるようになったし、この雰囲気も嫌いではないので修一がお願いをしに来たときは少し嬉しく人の中で暮らすのも悪くないとは思っていた。
だけどその為に責任をもって管理しようと思っていた管狐達の事を疎かにしてしまってもいるし、普通の人には言えないことも沢山ある。
妖怪が見える人が多かった昔だって頑張っても人と妖怪が相容れる事は無く、均衡が保たれるようにするので精一杯で選択を迫られる事なんて沢山あった。
昔の自分はどちらかと言えば妖怪の方を優先することが多かったが、今は人か妖怪どちらを取ってしまうんだろうか。
そんなことを考えながら貰った温かいたこ焼きを食べながら他の人のやり取りを見ていると写真も完売し、片付けが終わった他の部員達が部室へ戻って来た。
他の部員も食べるために数人が買い出しに行っていてちょっとしたパーティーみたいになる。
修一「あ。浜名瀬さん欲しい写真ありますか?」
志乃「少ししか見ていないがどんなのがあるんだ?」
修一「それなら一通り印刷して渡しましょうか?」
志乃「そうだな、そうしてもらえるか?」
選ぶのも面倒だしその方が早いかなと思い返事をする。
椿役「それなら私も一通り欲しい。」
部員1「私も欲しい。」
部員2「それなら僕も。」
部員3「データで貰うことは可能ですか?」
修一「わかった。メモ取るから順番に言ってくれ。放課後にここで渡すから。」
時間が来てクラスの片付けも終わり、帰る時間となった。
志乃はホームルームが終わるとさっさと演劇部の部室へ行く。
写真を予約した部員が集まっていて、しばらく待つと修一が写真を印刷して持ってきてくれた。
労いの言葉を交わしながら解散して下駄箱を見ると手紙が入っていた。
そこに待ち構えていた陽葵が話しかける。
陽葵「浜名瀬さん。」
志乃「何だ?」
陽葵「それラブレター?」
志乃「中は読んでないから分からない。」
陽葵「浜名瀬さんの演技、人気があったから私のクラスではその話で盛り上がってたんだよ。」
志乃「演技は演技だ。本物じゃないのに良いのか?」
陽葵「それでもすごくかっこよかったよ。最後のギャップも良かったもん。」
志乃「よくわからないな。」
志乃は手紙を開けて読んでみるとそれは純粋なファンレターの手紙だった。
陽葵「ファンレター?」
志乃「人の手紙を読むな。」
志乃はその手紙を鞄に入れる。
陽葵「持って帰るの?」
志乃「こういうのは無下に扱うと妖怪が生まれるからな。」
陽葵「へー。」
志乃「それより言っておいたものはできているのか?」
陽葵「あー。ちょっと準備が忙しかったというか、何と言うか、、」
陽葵は目を逸らす。
志乃「どのくらい残っているんだ?」
陽葵「えっと、、半分くらい?」
志乃「明日の休み、式神の事教えに行こうと思っていたんだが、お前の明日の予定が決まったな。」
陽葵「えー。あんな大量のお札なんて書けないよ。」
志乃「あれの半分なら一日で書ける。」
陽葵「私の集中力の無さ知ってるくせに。」
志乃「全部書けたら次の休みに教えてやるから。」
陽葵「分かった。頑張る。だけど次の休みまでで良い?」
志乃「ちゃんと書けていたらな。」
陽葵「約束だからね。」
志乃「先に破ったのはお前だろ。」
志乃は陽葵と別れて帰るとアパートの部屋に鞄を置いて写真を見てみる。
そこには笑顔の自分と椿役の人、翠幹役の人が写ってる。
志乃「私がもっと早く起きていればこんな今もあったのかな。」
椿役の人も翠幹役の人も柚子や黒根にまったく似てはいないがそれでもたまに考えてしまう。
そこに管狐達が志乃の様子を見に来る。
志乃「なあ。昔の私はどんな顔していた?」
作った表情を写した写真を見せて管狐達に聞いてみるが管狐達は首をかしげる。
志乃「何でもないよ。構えなくてごめん。明日の予定は無くなったからどこか行こうか。」
管狐達は嬉しそうに志乃の周りを回っている。
志乃は押入れの方から視線を感じて押入れを開けると大百足が待っていた。
志乃「お前の事を忘れたわけじゃないぞ。」
しょげている大百足に精気を分けて明日の予定を立てる。
大百足も出せて1日で行って来れる場所を考えて次の日、志乃達は工場跡地に来ていた。
式神を出して自由にさせていると樹霧之介と風見と出会う。
樹霧之介「志乃さん何しているんですか?」
志乃「最近外に出てない式神がいたからちょっと運動させに来てたんだけど樹霧之介達はどうしたんだ?」
樹霧之介「風見が志乃さんの式神の妖気がするって言っていたので何かあったのかなと見に来たんです。」
志乃「見ての通り遊んでいるだけだ。見てるし、変なことはさせないよ。」
樹霧之介「そこは心配してませんよ。元気そうで何よりです。」
志乃「もしかして私に何かがあって式神達に異変があったとか思った?」
樹霧之介「、、はい。」
志乃「大丈夫だよ。もしも私に何かあればこいつらは休眠状態に入る。」
樹霧之介「え?」
志乃「今こいつらは私の精気を分ける事で生きているがそれが無くなれば私が戻るまで寝るんだ。その前に妖力が尽きれば消えてしまうからそれは避けたいな。」
樹霧之介「そんな事言わないでください。」
志乃「安全な場所にいれば500年は大丈夫だから。」
樹霧之介「そうじゃなくて志乃さんは居てください。」
志乃「もしもの話だから大丈夫だって。」
樹霧之介「本当に?」
志乃「それより風見は風護石を使えるようになったか?」
風見「おう。見てみるか?」
志乃「やる気だね。試してみても良い?」
風見「嵐だろうが何だろうがどんと来い!」
志乃「、、嵐か。」
風見「例えだぞ。本物とか言わないよな?」
志乃「大百足。10号。ちょっと来て。」
大百足が砂を巻き上げると10号が風を操り竜巻を起こして砂を巻き込み砂嵐を起こす。
志乃「即興の砂嵐、どう?」
風見「どうって言われても、防ぐ前に吹っ飛びそうだぞこれ!」
志乃「風も防げはいける。」
樹霧之介「えっと。志乃さんを信用していないわけでは無いんですが本当に大丈夫なんですか?」
志乃「死にはしないし、何かあっても4号の薬があるから。」
風見「怪我する前提じゃないか!」
志乃「成長に怪我は付きもの。」
そう言って風見を砂嵐の前に連れて行く。
風見「あわわ。」
風見が風護石を発動させると風が風見を包み込み砂嵐が通っても無事だった。
風見「防げたのか?」
志乃「もう少し強くても良かったか。」
樹霧之介「もう止めてあげてください。」
志乃「冗談だよ。」
風見「いや。ワイはまだいけるで。」
樹霧之介「風見。」
志乃「やる気だね。なら次は何が良い?」
風見「流石に雷とかは無理だろ。」
志乃「雷か。呪滅符で電撃の様な攻撃できるけど。最悪消滅させるからな。」
風見「貼られたら意味ないだろ。」
志乃「貼らなくても大丈夫だよ。」
志乃は呪滅符を取り出し、電撃を何もないところに向かって飛ばす。
樹霧之介「初めて見ました。こんなこともできるんですね。」
志乃「威力は弱くなるし、射程も短いから貼った方が早いんだよね。」
風見「次はそれで試すのか?」
志乃「しないよ。霊力での攻撃は風護石を無効化するから。」
風見「それじゃワイはその時は役に立てないのか?」
志乃「今霊力を使える人間なんてほとんどいないんだから大丈夫でしょ。」
風見「そうだよな。」
志乃「この辺で使えるのは私と陽葵くらいなんだから。操られたり体を乗っ取られたりしなければ大丈夫。」
風見は狂骨の事件を思い出す。
風見「一気に不安になったぞ。」
志乃「同じ失敗はしないさ。多分。」
風見「安心させるか心配させるかどちらかにしろ。」
志乃「だけどこういう事は知っておいた方が良い。」
風見「それはそうだが。」
志乃「それでそれを盾のようにすることはできるか?」
風見「そんな事できるのか!?」
志乃「うん。他にも自分以外に風を纏わせたりとかもできる。」
風見「教えてくれ。」
志乃「まずは盾の作り方からかな。ちょっと貸して貰っていい?」
風見「良いが、浜名瀬は使えないんだろ。」
志乃「私はね。1号ちょっと来て。」
志乃は1号を呼ぶと風護石を持たせる。
1号は志乃の指示通りに妖力を流すと前方に風の盾を作り出す。
風見「おお。」
志乃「1号は風を使うことができない。つまりこれは風護石の力だという事は分かるな。」
風見「ワイにもできるか?」
志乃「練習次第だな。しばらく私はここで式神達を遊ばせるつもりだからその間見ることはできるけど練習するか?」
風見「する。」
樹霧之介「良いんですか?」
志乃「特にやる事も無かったからな。」
風見「なあ、なあ。どうすればできるんだ?」
志乃「1号に言っていたことは聞いてたか?」
風見「ああ。」
志乃「それなら、、」
志乃は風見に盾の作り方と他の人に風を纏わせる方法も説明してその練習に付き合う。
一通り終わったところで樹霧之介は志乃に声を掛ける。
樹霧之介「志乃さん。最近何かありました?」
志乃「急に何だ?」
樹霧之介「あの。今日来たのは式神の事もあったんですが、最近志乃さん妖ノ郷の方に顔出してくれてませんでしたし、もしかしたら僕達の事が嫌になったのかと。」
志乃「それは学校行事で忙しかったからだ。嫌になったのなら風見の練習に付き合ったりしないさ。」
樹霧之介「なら、何か悩みとかありませんか?」
志乃「特に無いよ。」
樹霧之介「嘘です。志乃さん嘘つくときいつも掌を見せてくるんです。」
志乃「、、それはいつのこと?」
樹霧之介「え?あれ?何で僕そんな事知ってるんでしょう?」
志乃「隠し事はしても嘘はあんまりついてないはずだ。」
樹霧之介「え?何隠しているんですか?」
志乃「あ。そろそろ帰ろうかな。」
樹霧之介「逃げないでください。話した方がスッキリすることだってありますよ。」
志乃「もう少し整理したいんだ。ごめん。」
そう言って志乃は走って行き、式神達もいつの間にか居なくなっていた。
次の日、志乃が登校すると下駄箱に何通か手紙が入っていた。
無下にもできないので家に帰ってから確認しようと思い鞄に入れてから教室に向かう。
席に座ると机の中にも手紙が入っているのを見つける。
そんな時に陽葵が教室に入ってくる。
陽葵「浜名瀬さん。また手紙貰ってるんだね。」
志乃「ああ。何故直接渡さないんだか。」
陽葵「浜名瀬さん。部活の勧誘とか全部断ってたから渡しても断られると思ったんじゃない?」
志乃「手紙は書くのにか?」
陽葵「憧れの人に自分の事を知ってほしいんだよ。」
志乃「そうとは思えない物も混じっているんだよな。」
陽葵「え?まだ開けてないのに分かるの?」
志乃「妖怪と関わっているとこういうのに敏感になるんだよ。」
陽葵「妖怪の元だもんね。」
志乃「それで、お前の方にも来たんだろ?」
陽葵「え。何で分かるの?」
志乃「それは手に持っている物隠してから言え。」
陽葵は手紙を何通か持っている。
陽葵「これ、浜名瀬さん宛て、嫌だったら私も断るけど。」
志乃「これが続くようなら考えないといけないが陽葵は断らなくても良いぞ。」
陽葵「考えって?」
志乃「その時、お前も来るか?」
陽葵「良いの?行く!」
そして数日後。
手紙は溜まり続ける一方だった。
今日の帰りも下駄箱に手紙が入っている。
志乃は真琴にメッセージを送って返信を待つ。
陽葵「誰に連絡してるの?」
志乃「真琴。」
陽葵「まこ姉。何で?」
志乃「今日行っても良いか聞いた。」
陽葵「妖ノ郷行くの?」
志乃「一緒に行くか?」
陽葵「良いの?」
志乃「約束もしたからな。」
陽葵「じゃあ、手紙の考えって。」
志乃「自分で処理しても良いがあいつの方がこの手の事には詳しいからな。」
陽葵「じゃあこのまま行くの?」
志乃「真琴の連絡待ちだが、妖ノ郷の入り口の場所は知ってるよな。」
陽葵「うん。」
志乃「私は一度家に帰って手紙を持って来る。お前も一度帰って鞄置いて来い。」
陽葵「手紙取りに行くだけなら付き合うよ。」
志乃「家がばれるのは嫌だから妖ノ郷の入り口前に集合な。」
陽葵「ちぇ。駄目か。」
志乃「お前な、、」
その時志乃のスマホが鳴る。
相手は真琴だったので志乃はそれに出る。
真琴「あ。浜名瀬さん。お願いって何かな?」
志乃「学校で手紙をもらってその処理を手伝ってもらいたいんが都合の良い時で良いぞ。」
真琴「え。それなら今すぐにでも来てほしい!」
志乃「ならこれから家によってから行くが良いか?」
真琴「うん。それで、樹霧之介もいても良いかな?」
志乃「こちらも陽葵が来るんだが良いか?」
真琴「ええ。それで浜名瀬さん、樹霧之介と何かあった?」
志乃「、、ちょっとだけ。行ったら私から説明する。」
真琴「お願いね。樹霧之介、私に浜名瀬さんから頼みがあるって知った時何故かすごく落ち込んでたから。」
志乃「そうか。」
志乃は電話を切る。
陽葵「まこ姉?何て?」
志乃「来ても良いってさ。」
陽葵「それじゃあ。」
志乃「妖ノ郷に行くから準備して来い。」
陽葵「分かった。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。