17話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
真琴「狂骨は消えたわ。後は帰るだけだから電話切るね。」
志乃?「お疲れ。ありがとう。」
真琴が電話を切った事を確認し、皆が喋りだす。
雫「焔は何で最後にあんな大技を出すの?山を燃やす気?」
焔「燃やしはしなかったんだから良いだろ。」
雫「だからって当てることは無かったんじゃない?」
焔「避けると思ったんだ。まさかあんなところで管狐が出てくるなんて思わない。」
狂骨?「痛みは無かったから落ち着いて。」
雫「その格好で言われてもね。」
そこには爆発で真っ黒になり、真琴の紙で動きを封じられた狂骨がいる。
真琴「それにしてもその管狐の懐き具合からして浜名瀬さんなのよね?」
12号は真っ黒になった狂骨にべったりくっ付いて離れようとしない。
そのため爆発の時は志乃が庇って汚れなかったのに今は真っ黒になっている。
志乃「体は狂骨だけどね。」
雫「私も樹霧之介のお父さんのメールを見た時は半信半疑だったけど、管狐の名前を一発で言い当てたし、電話の浜名瀬さん黒根って言ってたからね。」
真琴「それで何があったの?」
志乃「...。」
真琴「焔の炎の威力が弱い時点で私達が狂骨が浜名瀬さんだと気づいてた事は分かっていたのよね。」
志乃「...。」
真琴「何でまだ逃げようとしたの?」
志乃「これは私の問題だから巻き込めないと思って。」
雫「今更ね。」
志乃「ごめん。」
真琴「それで狂骨の正体に心当たりは?」
志乃「私が壺に閉じ込められていた時、ペラペラ喋ってくれたよ。」
それは昔、鬼渡が受けた依頼が始まりだった。
お偉いさんの依頼で断れず参加した陰陽師同士で技を競い合う大会という名の金持ちの道楽に駆り出され、乗り気でなかったため適当に相手してさっさと帰ろうとしていた所、1人の陰陽師が式神の制御ができずに暴れさせてしまい誰も手を付けれなかったところを志乃が制圧したことがあった。
志乃「後からその家の信頼は地に落ちて没落したと聞かされたが、まさかこんなに長い間恨まれているとは。」
真琴「いや、完全に逆恨みじゃない!」
雫「思い込みって怖いのね。」
志乃「しかもその時、暴れていた式神に腕食べられちゃったんだよね。」
真琴「さらっと怖いこと言うのね。」
志乃「しかも治るところをその陰陽師に見られたから私が特殊な体ということは知られている。私の体を狙ったのはそのためかも。」
真琴「あいつの狙いは分かったけど、これからどうするの?剝魂の鏡は?」
志乃「鏡はもう戻れないように割られていた。」
雫「え。ならどうやって戻るの?」
焔「志乃、ずっとこのままなのか?」
志乃「あまり気は進まないが一応方法はある。」
真琴「良かった。戻れるのね。」
志乃「転魂ノ儀をしようと思う。」
真琴「それって陰陽師の術でしょ?その体でできるの?」
志乃「今この体は妖力しか使えないけど妖力でも霊力のように扱うことはできる。」
真琴「いやいや。妖力と霊力じゃ根本が違うわよ。」
志乃「だけど同じように変換はできる。慣れていないから消費量は多くなるがこいつなら転魂ノ儀を1回ぐらいはすることができそうだ。」
真琴「浜名瀬さんが言うなら信じるわ。何か手伝うことはある?」
志乃「私の体を動かないようにしてほしい。」
真琴「分かったわ。」
志乃「それと儀式中はできればあまり見ないでくれると助かる。」
真琴「理由は分からないけど分かった。樹霧之介達にも伝える?」
志乃「ああ。できれば周りにいるやつらは少ない方が良い。」
真琴「なら、安全に拘束できる私と樹霧之介だけが残るわ。」
志乃「助かる。逃げられたら面倒になるから一回で決めたい。」
志乃達は志乃の体に入っている狂骨に気付かれないよう計画を進める。
部屋の中は志乃の体に入っている狂骨と樹霧之介と真琴だけの状態になり、志乃が飛び込むと同時に樹霧之介は壁と床から木の枝を生やすと志乃の体を拘束してその上から真琴が紙で固めようとしたが手の拘束が間に合わず印を結ばれ結界を張られる。
志乃は何とか結界内に入ったが、狂骨は次の印を結んでいる。
印を止めるには片手だけでも完全に固定しなくてはいけないが結界で真琴の紙は届かず、樹霧之介の枝は動きが遅い。
だが幸いなことに結界内には竹筒が落ちていた。
志乃「9号短刀。」
志乃は短刀を受け取ると右手を短刀で壁に刺して固定し、印を止める。
そのまま顔を近づけて口と口を付けると結界は無くなり、志乃と狂骨は共に動かなくなった。
先に動いたのは志乃の方だった。
志乃「戻れた?」
樹霧之介「志乃さん!何てことするんですか!?」
志乃「え?あ。壁に穴開けてごめんね。」
志乃は右手の短刀を抜いて右手を隠す。
樹霧之介「違います。右手を見せてください!真琴、救急箱持ってきて下さい。」
真琴「ここにあるわ。」
いつの間にか真琴が用意していた救急箱で志乃は樹霧之介に右手の手当を受けている。
樹霧之介「何でこんなことするんですか。」
志乃「あれ以上術をこの体で使われたくなかった。」
真琴「だからって自分の体にも容赦ないのね。」
狂骨「これは。転魂ノ儀か?」
狂骨も起きるが真琴の紙で動けないようにしている。
焔「終わったか?」
静かになったので他の皆も部屋を覗いている。
志乃「終わったよ。」
特に心配そうな顔をしている陽葵に向かって志乃は左手で手招きをする。
陽葵「浜名瀬さん。ごめんなさい。」
陽葵は志乃に抱きつき泣いている。
それを皮切りに次々に部屋に入って来た。
黒根「おい、志乃。何で怪我が増えているんだ?」
志乃「黒丸うるさい。これは必要なものだった。」
黒根「必要な傷何てあるのか?」
志乃「あいつはこの体で印の結界を張ったうえに火球まで出そうとしていたんだ。」
黒根「それくらいお前は避けれただろ。」
志乃「そんな大量の霊力を使えば私の体は持たない。」
黒根「初耳だぞ。」
陽葵「嘘だよね。浜名瀬さん。」
志乃「、、私の中に呪いが封じてある。」
陽葵「そんな、、静寂の闇の奥で、我が内なる呪いが存在し続けるなんて。」
志乃「どういう意味だ?」
陽葵「何でもない。」
志乃「黒丸は予想できていたんじゃないか?今は呪いを霊力で抑えているがその霊力が足りなくなった時のこと。」
黒根「封印時と同じように灰になるのか?」
志乃「そう。霊力で抑えられないなら体で抑えるしかない。」
黒根「そのまま外に出すことは、お主の性格じゃできんか。」
志乃「ごめん。」
黒根「そこらへんはもう諦めとる。」
狂骨「おい!それよりもお前。何でこの体で転魂ノ儀が使える。」
志乃「陰陽師ならできて当然だろ。」
狂骨「妖力を霊力の様に変換するとかどうやったらできるんだ?」
志乃「訓練でしなかったのか?」
狂骨「妖怪と体を移し替える訓練なんて聞いたことないわ!」
志乃「断霊丹を呑んで体内に妖力を取り込めば感覚は掴めるだろ?」
狂骨「あれは妖力がどんなものか感じ取る訓練でそんなことはしないはずだ。」
志乃「そうだっけ?」
狂骨「お前が規格外なのは分かった。だが俺は諦めないぞ。」
志乃「ここまできてお前を逃がすと?」
狂骨「お前が人間を殺せないのは知っている。だから通り名も破魔凪だったんだろ。人を殺すような奴は鬼や死神が付くからな。どんなに悪さしようが黙らせるだけの奴が元人間の俺を殺せるわけがない。」
その時棒手裏剣が狂骨の横を通り抜け後ろの壁に突き刺さる。
志乃「遺言はそれだけか?」
狂骨「お、脅しなら効かないぞ。」
志乃「ここだと家を傷つける。外に出ようか。」
志乃は狂骨を連れて家から出て行ってしまった。
黒根「うるさかった奴が一生黙っておるんじゃ。死ぬより怖いことを知らん様じゃの。」
真琴「だけど、大丈夫なの?浜名瀬さん、怪我もしてるし霊力もなさそうだったけど。」
陽葵「そうだよ。追わないと。」
黒根「狂骨も妖力は残っとらん。今は好きにさせてやれ。」
何があったかは分からないがしばらくして静かになった狂骨と共に志乃が帰ってきた。
黒根「久しぶりだったがまだ腕は落ちておらんようじゃな。」
志乃「うるさい。」
陽葵「何があったの?」
黒根「聞いてやるな。黒歴史を掘り起こされて不機嫌なんじゃ。」
陽葵「浜名瀬さんにもあるんだ黒歴史。」
志乃「黒丸。余計なことは言うな。」
黒根「おお。怖い、怖い。」
志乃「陽葵も忘れろ。」
陽葵「どうしよっかな。」
志乃「そう言えば修行の事だが。」
陽葵「忘れます。忘れるから中断しないで。」
志乃「いや。続ける。」
陽葵「え?」
志乃「今言っていた断霊丹のものをしようと思う。」
陽葵「妖力を感じとるってやつ?」
志乃「ああ。初めは管狐を使おうと思っていたが協力者ができたからな。」
陽葵「それって?」
志乃「人型でそれも元陰陽師の妖怪だからうまくいきやすいだろう。協力してくれるよな。」
狂骨「あ、はい。させていただきます。」
真琴「本当に何があったの。」
狂骨はすっかり素直になっている。
志乃「樹霧之介、しばらく場所借りても大丈夫?」
樹霧之介「はい。大丈夫です。使って下さい。」
志乃「ありがとう。それじゃ、4号。断霊丹あったよね。持ってきてくれる?」
4号が持ってきた小瓶にはいくつかの丸薬が入っている。
その一つを志乃は取り出し陽葵に渡す。
陽葵「あの。これ本当に吞むの。」
それは前に志乃が玲香に吞まされた物と同じ物で、独特のにおいがする。
志乃「呑まないと始まらないぞ。」
陽葵は恐る恐る丸薬を口に含むとすぐに独特のにおいと苦みが口と鼻いっぱいに広がる。
志乃「出したらもう一回だぞ。」
その言葉に陽葵は頑張って呑みこむ。
志乃「今どんな感じ?」
陽葵「すごく。嫌な臭いと味がします。」
志乃「だろうね。私もこれだけは嫌いだった。」
陽葵「そんなの何で今するの!」
志乃「危険察知のためにも妖力がどんなものか感じておく必要がある。それに狂骨と1つ約束したからチャンスは今しかないんだ。」
陽葵「約束?」
志乃「訓練の手伝いをしたら成仏させてあげるって。ね。」
志乃は狂骨の方を見る。
狂骨「はい。できるだけ早く終わらせるんで送ってください。」
志乃「早さはいらない。丁寧にお願いね。」
狂骨「はいぃ。」
あれだけ現世に残ろうとしていた狂骨の変わりように全員が志乃を怒らせないようにしようと思った瞬間だった。
志乃「それじゃ、陽葵と狂骨は向かい合って座って。」
陽葵と狂骨は志乃の指示に従い座る。
志乃「陽葵は両手を前に、掌を上に向けてね。そうそう。狂骨はその上に手を置いて妖力を流して。」
しばらく陽葵と狂骨はそのまま静止する。
陽葵「あ、何か霊力とは違うもの感じる。」
志乃「いいね。それ自分で動かせる?」
陽葵「難しい。いつもとは何かが違う。」
志乃「それが霊力と妖力の違いだね。言葉にはできないから感覚で覚えて。」
狂骨「体内に入ったからって自分とは別の力だ。動かすことなんてできないだろ。」
陽葵「あ。動いた。」
狂骨「はあ?」
志乃「陽葵には基本をずっと練習させてたからね。結果を考えずに簡単で派手な術を使おうとした人との違いだよ。」
狂骨「すみませんでした。」
陽葵「浜名瀬さんそれ私にも言ってます?」
志乃「当たり前だろ。」
陽葵「すみません。これからはもっと精進します。」
志乃「これからは私の指示を無視しするなよ。」
陽葵「はい。」
志乃「後、知らない人には付いて行かない。」
陽葵「はい。」
志乃「嘘はつかない。」
陽葵「はい。」
志乃「まあ、今回は催眠に掛かっていたみたいだからな。これ渡しておく。」
志乃は陽葵に9号が持って来たお守りを渡す。
陽葵「お守り?」
志乃「簡単なものだけだが精神系の術を弾く。肌身離さず持っていてくれ。」
陽葵「ありがとう。」
志乃「それで旅行前に言っていた結界符はできてる?」
陽葵「あ。」
志乃「陽葵?」
陽葵「いや、あの。印結んで作る結界ができれば大丈夫かなと思って、、」
志乃「お前に札は早すぎたか。感覚を使う方があっているみたいだからしばらくはそっちメインで考えよう。」
陽葵「それって。」
志乃「断霊丹の出番もあるかもな。」
陽葵「やだー!」
狂骨「えっと私はどうしたら?」
志乃「ああ。コツは掴んだみたいだから後は管狐達でもできる。」
狂骨「なら。」
志乃「送ってやる。来世では努力しろよ。」
狂骨「はい。」
志乃が何かを唱えてから狂骨の額に触ると狂骨は徐々に薄くなって煙となって消えた。
志乃「樹霧之介ありがとう。場所貸してくれて。」
樹霧之介「あ。どういたしまして。」
志乃「あとみんなには私の過去の事で迷惑をかけてしまってすまなかった。」
そう言って志乃は頭を下げる。
雫「今更よね。」
焔「もっと頼って良いんだぞ。」
茂蔵「おいらはいただけだけどな。」
真琴「今度はもっと早く知らせてよ。」
風見「ワイもワイも、今回使えなかったけど風護石練習してるんだ。」
樹霧之介「僕も志乃さんを頼りますので志乃さんも気兼ねなく僕達を頼ってください。」
志乃「ありがとう。」
陽葵「ねえ、浜名瀬さん。」
志乃「何?」
陽葵「浜名瀬さんは消えないよね?」
志乃「どういうことだ?」
陽葵「私、浜名瀬さんが動かないの見た時、本当に怖くて、不安で、、」
志乃「ごめん、ごめん。」
志乃は陽葵を抱きしめて頭を撫でる。
志乃「だけど消えるな、か。」
陽葵「え?」
志乃「保証はできないな。」
陽葵「そんなの。浜名瀬さんなら大丈夫でしょ?」
志乃「今回みたいなこともあるから。」
陽葵「今度は言う事聞くから。」
黒根「陽葵。こいつは一度わしらの前から消えておる。」
陽葵「だけど今はいるよ。」
黒根「いつ何が起きるか分からない以上それは約束できんのだろ。」
陽葵「どうして。」
志乃「お前を安心させる嘘は付けるぞ。」
陽葵「嘘じゃ駄目じゃん。」
志乃「だけど守れるか分からない約束はもうしたくないんだ。ごめん。」
陽葵「、、私もごめん。」
志乃「だけどできる限りの事はする。」
陽葵「わかった。それでいい。」
志乃「ありがとう。」
陽葵「私も強くなる。浜名瀬さんほどではないにしても自分の身と周りの人くらいは守れるようになりたい。」
志乃「それじゃ私は基礎からみっちりと教えないとな。」
陽葵「基礎はできてるでしょ?」
志乃「札も作れないのにか?」
陽葵「う。」
志乃「心身ともに疲れただろ。次の修行は1週間後にするからそれまで休め。」
陽葵「うん。結界符も作っておくね。」
志乃「それはしばらく使わないって言ったはずだが。」
陽葵「あの、なら何をするの?」
志乃「言ったよな。しばらく感覚を使う修行をするって。」
陽葵「やっぱり。無くならないよね。」
志乃「当たり前だ。1週間後に行くから覚悟しておけよ。」
樹霧之介「あの。断霊丹ってそんなに不味いんですか?」
志乃「呑んでみる?」
樹霧之介「え。」
陽葵「止めといたほうが良いよ。」
志乃「妖怪には効果ないし、呑んでも影響は無いけど。」
黒根「樹霧之介。わしも呑まん方が良いと思うぞ。」
樹霧之介「父さんは呑んだことあるんですか?」
黒根「一度志乃に無理矢理な。」
志乃「そう言えばそんなこともあったな。」
陽葵「どうしてそんな酷いことを!?」
黒根「志乃が酷い顔してたことがあって、それをからかったんじゃ。」
志乃「1度吞んだ後効かなくなって訓練にならないからって師匠に何度も呑まされた時だな。」
陽葵「もしかして私もそうなる?」
志乃「お前は大丈夫だろ。」
陽葵「良かった。」
志乃「それじゃそろそろ帰ろうかな。」
樹霧之介「あ、志乃さん。ちゃんと休んでくださいよ。」
志乃「分かってる。」
陽葵「じゃあね。」
志乃は陽葵を家まで送って自分も帰路に着く。
いつも寝るときはアパートの方を使っているが今日は屋敷の中にある昔使っていた自室の部屋に布団を敷いてそこで寝る。
志乃「消えるな、か。」
落ち込んでいる志乃を心配した式神達が周りに集まってくる。
志乃「昔は消えたいと思っていたのにな。」
キュウキュウ聞こえるが相変わらず式神達の言っていることはわからない。
志乃「柚子に拾われて、師匠に出会って、黒丸と出会って、それから随分変わった。時間が経てば変わっていくのは分かってた。だから安心するために変わらない場所を作ったはずなのに。何で今こんなに不安なんだろうね。」
久しぶりに懐かしい顔を見たせいなのか昔の記憶が蘇り色々と考え込んでしまい、志乃はそのままいつの間にか眠りについていた。
1週間後、志乃は陽葵の家に来ていた。
志乃「おはよう。よく休めた?」
陽葵「浜名瀬さん。おはよう。」
志乃「元気ないな。」
陽葵「また呑むの?」
志乃「妖力がどんなものかは分かっただろ?」
陽葵「うん。」
志乃「今日は霊力を使って妖力を探るから断霊丹は使わないよ。」
陽葵「良かった。」
志乃「使いたいなら別だけど。」
陽葵「いえ。大丈夫です。」
志乃「広い場所に行きたいからこの近くの公園まで行こうか。」
陽葵「うん。」
志乃と陽葵が公園に移動すると夏休み中ということもあり子供たちがたくさん遊んでいた。
陽葵「この中でやるの?」
志乃「他の人がいてもできないといけないからな。」
陽葵「分かった。何すればいいの?」
志乃「2号と6号で鈴を持った管狐を隠すから感だけを頼りにその鈴を取って来い。これなら少し大きい子供が宝探ししているように見えるだろ。」
陽葵「子供、、」
志乃「私から見ればみんな子供だ。もう隠れたから12匹全員見つけろよ。」
陽葵「公園内だけだよね。」
志乃「ああ。頑張れ。」
2時間後。
陽葵「浜名瀬さん。」
志乃「何?」
ベンチに座って本を読んでいる志乃に陽葵が1つ目の鈴を持って来る。
陽葵「鈴も見えないなんて聞いてないよ。」
志乃「鈴が見えるとも言ってない。」
陽葵「ぬぬ。あ、ここにもいた。」
志乃「正解。ちなみに12号はずっと私の肩にいたぞ。」
陽葵「これで2個目。」
志乃「あと10個頑張れ。見つからなくても昼には戻って来いよ。」
お昼になって陽葵が鈴を3個追加で持ってきたのでお弁当を食べることにする。
志乃「4時間で5個か。」
陽葵「これでも頑張ったんだよ。」
志乃「そうだな。初めてにしてはなかなかいいんじゃないか?」
陽葵「やった。」
志乃「次はもう少し大きい公園でもいいかな。」
陽葵「まだやるの?」
志乃「午後からも探してもらうぞ。」
陽葵「それはやるけど他の修行は?」
志乃「今できるのはこれと札を書くことと断霊丹を使うやつだな。」
陽葵「しばらくこれで良いです。」
志乃「そうか。」
陽葵「それで、聞きたいことがあるんだけど。」
志乃「何だ?」
陽葵「浜名瀬さんって人間が消えたとこ見たことある?」
志乃「神隠しか?」
陽葵「分からないけど。この前の狂骨が消えた時みたいに徐々に薄くなってこうサーっと消えるの。」
志乃「煙は出たか?」
陽葵「そういうのは、無かった、、はず。」
志乃「霧が出ていたりとか。」
陽葵「何もないところだったと思う。」
志乃「突風が吹いたりも無い?」
陽葵「うん。」
志乃「、、誰が消えたんだ。」
陽葵「私の、、お父さん。」
志乃「そう言えば前にいないって言っていたな。」
陽葵「ねえ、心当たりない?」
志乃「いきなり消えるならともかく薄くなって消えるのは知らないな。」
陽葵「そっか。」
志乃「何で今聞くんだ?」
陽葵「狂骨の消え方がお父さんの消え方と似てたから。思い出して。」
志乃「いつの話だ?」
陽葵「12年前、今みたいに暑い日に一緒に散歩していたらいきなり消えたの。」
志乃「どこで消えたとかは覚えているか?」
陽葵「あ。だけどもう昔の事だから。」
志乃「前の消えるなって言ったのはそれがあったからか?」
陽葵「、、うん。」
志乃「幼少期の恐怖は中々治らない。悪かったなトラウマを呼び起こして。」
陽葵「浜名瀬さんは悪くないよ。」
志乃「それなら約束する。私は消えない。」
陽葵「え?」
志乃「たとえ消えても戻ってくるから。」
陽葵「いいよ。もう。」
志乃「それじゃ。午後も頑張ろうか。」
陽葵「うん。行ってくる。」
志乃「全員見つけて来いよ。」
陽葵「、、できるだけやる。」
日が暮れて来た頃、陽葵は12個すべて見つけて泥だけで志乃の所に戻って来た。
陽葵「動き回っているなんて聞いてない。」
志乃「全員止まっているなんて言ってない。」
陽葵「意地悪。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




