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16話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

夏休みに入り1週間が経過した。

志乃(しの)陽葵(ひまり)の家に行き、陽葵(ひまり)を呼び出す。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。1週間で夏休みの宿題全てしろは無理があるって。」

志乃(しの)「何だ?私は終わったぞ。宿題は終わらせとかないと他の事ができないだろ。」

陽葵(ひまり)「それでも集中力が持たないんだよ。」

志乃(しの)「これからすることはもっと集中力がいるぞ。」

陽葵(ひまり)「むう。座学じゃないよね?」

志乃(しの)「宿題と一緒にできる事だ。」

陽葵(ひまり)「いやな予感しかしない。」

志乃(しの)「私がお(ふだ)を使っているところは何回か見せたよな。」

陽葵(ひまり)「見た見た。もしかして使い方を教えてくれるの?」

志乃(しの)「それがどうやってできているか知っているか?」

陽葵(ひまり)「印刷しているとか?」

志乃(しの)「すべて手書きだ。」

陽葵(ひまり)「なんで?」

志乃(しの)「特殊な紙と墨を使っているから機械が使えないんだ。」

陽葵(ひまり)「なら版画とかは使えないの?」

志乃(しの)「使っていたところもあったが効果は薄いぞ。命を預けるものなんだから妥協はできない。」

陽葵(ひまり)「えー。」

志乃(しの)「お前は自分の身を守る為に私から陰陽師としての術を習いたいんじゃなかったのか?」

陽葵(ひまり)「そうです。」

志乃(しの)「なら私がいなくても一から全てできるようになれ。」

陽葵(ひまり)「でも、助けてはくれるよね?」

志乃(しの)「助けられる時だけな。ほら、紙と墨、それから今回は結界符(けっかいふ)の写しを持って来た。書け。」

陽葵(ひまり)「これに書いたら使えるの?」

志乃(しの)「練習用だから普通の紙と墨だ。効力は持たない。」

陽葵(ひまり)「えー。」

志乃(しの)「書けるようになったら本番用を渡す。それまではこれで練習しろ。」

陽葵(ひまり)「つまらない。」

志乃(しの)「修行につまらないも楽しいも無い。宿題もまだならさっさと終わらせろ。」

陽葵(ひまり)「むー。」

志乃(しの)「また1週間後に様子を見にくるからサボるなよ。」

陽葵(ひまり)「はーい。」

志乃(しの)が帰ると陽葵(ひまり)はつまらなそうに机と睨めっこを始める。

1週間後、学校の宿題が終わったがお(ふだ)の写しはぐちゃぐちゃで見れたものじゃ無かった。

志乃(しの)「ちゃんと見て書いているのか?」

陽葵(ひまり)「だけどどこに何が書いてあるのかわからないよ。」

志乃(しの)「読んでおけと言っておいた本はあるか?」

陽葵(ひまり)「うん。」

志乃(しの)「あれに文字の意味は書いてあったはずだが。」

陽葵(ひまり)「それでも癖が強くて読みにくいんだよ。」

志乃(しの)「あー。その癖は私の師匠のものだな。私も苦労した。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんも苦労した事を私ができるわけないじゃん。」

志乃(しの)「これでも直せるところは直したんだぞ。何故か直したら発動しなくなるところもあったから一部そのままだけど。」

陽葵(ひまり)「それじゃこのまま写さないといけないの?」

志乃(しの)「言い出したのはお前だ。頑張れ。」

陽葵(ひまり)「じゃあ、お見本見せてよ。」

志乃(しの)「わかった。ちゃんと見ておけよ。」

この日は志乃(しの)陽葵(ひまり)に付きっきりで書き方を教えた。

志乃(しの)「今日はこのくらいにするか。」

時間はもう18時を回っている。

陽葵(ひまり)「泊まっていっても良いんだよ。」

志乃(しの)「遠慮しとく。」

陽葵(ひまり)「じゃあまた明日教えてよ。」

志乃(しの)「悪いが私もやりたいことがある。次は3日後に来る。」

陽葵(ひまり)「えー。またこれ1人でやるの?」

志乃(しの)「お前の修行に関わる事だ。我慢しろ。」

陽葵(ひまり)「ならもっと早く準備してくれれば良いのに。」

志乃(しの)「とにかく、これが書けなければ次に移る事はできない。」

そう言って志乃(しの)は出て行った。

陽葵(ひまり)志乃(しの)の言う通り何枚かお(ふだ)を写すと志乃(しの)が直接お手本を見せてくれた事により最初よりも上手く書けたが、集中力が切れたので気晴らしに散歩をしようと外に出ると少し薄暗く、涼しい風が吹いている。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんもケチだよ。もっとバーンってできるような術教えてくれればもっとやる気が出るのにさ。」

陽葵(ひまり)はブツブツと独り言を言いながら歩いて少しスッキリしたのか帰ろうとすると人影が見える。

???「そこの娘さん。」

陽葵(ひまり)「うわっ。話しかけられた。」

見るからに怪しい風貌をしている中年男性に話しかけられ陽葵(ひまり)は心の声を口に出してしまう。

???「いや、自分でも怪しいのは分かってるけどちょっと話聞いて?」

陽葵(ひまり)「あ、結構です。」

???「いや、おじさんも陰陽師なんだよ。」

陽葵(ひまり)「人の独り言を聞くような人の事は信じられません。」

???「これでも?」

そのおじさんは何か手で形を作るとそこに結界ができる。

陽葵(ひまり)「すごい。お(ふだ)も使わずに結界ができた。」

???「(ふだ)か。術者から遠いところに張ったり霊力を変換する際の補助とかに使うけど大体は印を結べばできるよ。教えようか?」

陽葵(ひまり)「私にも使えるの?」

???「ああ。君には才能がありそうだ。」

陽葵(ひまり)「本当?今教えてくれてる人には霊力はあるって言われてるけど全然教えてくれないんだ。」

???「そうみたいだね。お(ふだ)の書き方しか教えてくれないってさっき聞こえてたからさ。勿体無いと思って声をかけたんだ。」

陽葵(ひまり)「そうなんだよ。修行をつけてくれるって言ってたのに期限を延ばされた上にお(ふだ)の書き方って、もっと他に教えてくれる事あるでしょって感じだよ。」

???「なるほどね。今度修行場に招待するから来なよ。」

陽葵(ひまり)「どこなの?」

???「山の中の方だからここからだと電車と徒歩で4,5時間ほどの距離だね。そこで数日修行すれば君なら使えるようになるんじゃないかな?」

陽葵(ひまり)「1人で遠出なんて許してくれないよ。」

???「学校の人と行くって言っても?」

陽葵(ひまり)「口裏合わせてくれる人もいないし、その人が家に居ればすぐバレるよ。」

???「人の記憶を変える事くらいできるさ。こっちも準備するから1週間後の朝に待ってるよ。」

陽葵(ひまり)「あ。だけど浜名瀬(はまなせ)さんに何て言えば?」

???「ならそいつも呼ばないか?」

陽葵(ひまり)「え?」

???「術を覚えた時に呼んで成長したお前を見せてやろうぜ。」

陽葵(ひまり)「いいですね。」

それから3日後、志乃(しの)陽葵(ひまり)の家に来ていた。

志乃(しの)「あれからどうだ?進んだか?」

陽葵(ひまり)「あ、うん。ここまで書けたよ。」

陽葵(ひまり)が見せてくれたお(ふだ)は少し歪ではあるが書けてはいた。

志乃(しの)「へー。これなら霊力を注ぐところまで進めても良さそうだな。」

陽葵(ひまり)「本当?」

志乃(しの)「ああ。お前にしては頑張って練習したんじゃないか?」

陽葵(ひまり)「やった。褒められた。」

志乃(しの)「じゃあ、本番用渡すからそれを結界符(けっかいふ)にしてくれ。また3日後に来るから。」

陽葵(ひまり)「あ。ごめん浜名瀬(はまなせ)さん。」

志乃(しの)「どうした?」

陽葵(ひまり)「その日から友達と旅行に行く約束しちゃったんだ。」

志乃(しの)「そうなのか。まあ、夏休みだから息抜きも必要か。」

陽葵(ひまり)「うん。断れなくてさ。ごめん。」

志乃(しの)「いや、いい。戻るのはいつだ?帰ってから始めよう。」

陽葵(ひまり)「あー。予定もまだ決まって無くて。」

志乃(しの)「3日後なのに?」

陽葵(ひまり)「うん。だけど行く場所だけは決めてあるんだよ。」

志乃(しの)「そうなのか、、なら戻ったらスマホで連絡してくれ。」

陽葵(ひまり)「連絡しても良いの?」

志乃(しの)「今回は仕方ないだろ。個人的な事まで踏み込むつもりは無いからな。」

陽葵(ひまり)「わかった。」

志乃(しの)結界符(けっかいふ)は旅行に行く前に作っておけよ。」

陽葵(ひまり)「はい。」

翌朝、志乃(しの)が解呪を進めていると真琴(まこと)からメッセージが送られてきた。

内容は風見(かざみ)が不審な妖気を感じたけれど正体が分からなかったので志乃(しの)の方で何か気付いたことは無いかとのことだった。

そう言えば5号が何かに反応したが短い時間だったのであまり気にしなかった事を伝えた。

それから特に何もなく6日後、志乃(しの)のスマホにメッセージが届いた。

陽葵(ひまり)から送られた物で志乃(しの)に見てほしいものがあるから来てほしいと住所が送られてきた。

志乃(しの)は初め行かないと返信しようと思ったがその住所に心当たりがあったので行ってみると駅で陽葵(ひまり)が迎えに来た。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんいらっしゃい。」

志乃(しの)「見せたいものって?」

陽葵(ひまり)「ふふん。浜名瀬(はまなせ)さん驚くと思うよ。」

志乃(しの)「お前の驚かせる発言は嫌な予感しかしないんだ。」

陽葵(ひまり)「今回は大丈夫。ちゃんと専門の人に習ったんだから。」

志乃(しの)「専門?」

陽葵(ひまり)「そう。浜名瀬(はまなせ)さんと同じ陰陽師の人。」

志乃(しの)「この時代に?」

陽葵(ひまり)「それ浜名瀬(はまなせ)さんが言う?」

志乃(しの)「と言うか友達と旅行じゃなかったのか?」

陽葵(ひまり)「一応その人も友達だもん。」

志乃(しの)「いつ出会ったんだ?」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんがお(ふだ)の書き方教えてくれた日に散歩してたら出会った。」

志乃(しの)「お前、高校生が出会ってすぐの人に付いて行くって危なすぎるだろ!よく親が許してくれたな。」

陽葵(ひまり)「大丈夫だったよ。」

志乃(しの)「どんな人なんだ?」

陽葵(ひまり)「優しい人だよ。」

志乃(しの)「余計に怪しい。そいつはどこにいるんだ?」

陽葵(ひまり)「こっちの修行場にいるよ。案内するね。」

陽葵(ひまり)志乃(しの)の手を握って山の中を登って行く。

その山は昔とは所々変わっているが志乃(しの)にとって馴染みのある山だった。

少し開けた場所に出ると1人の男性が待っていた。

陽葵(ひまり)「この人。名前は鬼渡(きわたり)だって変わってるよね。」

そこには300年以上前に亡くなった志乃(しの)の師匠である鬼渡(きわたり)の姿があった。

鬼渡(きわたり)?「おや?陽葵(ひまり)くんの師匠というから大人の人が来ると思っていたんだけど、君も高校生?」

志乃(しの)陽葵(ひまり)が友達といると聞いていたので高校生の姿で来ていた。

志乃(しの)陽葵(ひまり)、逃げるぞ!」

陽葵(ひまり)「え。何で?」

志乃(しの)「あいつは人間じゃない。正体が分かるまで下手に手を出せない。」

鬼渡(きわたり)?「上手く隠しているはずなんだけど。何で分かった?」

志乃(しの)「答える必要はない。」

そして志乃(しの)陽葵(ひまり)の手を引いて山を登る。

所々変わってはいるが志乃(しの)達が元々拠点としていた山なのである程度分かる。

ここにも妖ノ郷(あやかしのさと)に繋がる入り口があるはずなのでその場所へ向かうが繋がっているはずの木が切り倒されていて切り株しか残っていなかった。

志乃(しの)「ここの出入り口無くなっていたのか。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん?」

志乃(しの)「ごめん。もう少し走れるか?」

陽葵(ひまり)「それは大丈夫だけど。私だって強くなったんだよ。見て。」

陽葵(ひまり)は手で印を結び結界を張るがすぐに解けてしまう。

もう一回試したが結界は張れず、何度しても結果は同じだった。

志乃(しの)「印を結ぶのは霊力の消費が激しい、お前じゃそれが限界だろう。」

陽葵(ひまり)「修行中はもっと張れてたのに。」

志乃(しの)「騙されたな。」

陽葵(ひまり)「どうやって。」

志乃(しの)「修行中の結界はお前が張ったものじゃないということだ。」

その時足音が近付いてきたので志乃(しの)陽葵(ひまり)を連れて木の陰に隠れる。

鬼渡(きわたり)?「ここに来るってことは破魔凪(はまなぎ)の関係者。いや、本人か?」

陽葵(ひまり)破魔凪(はまなぎ)?」

志乃(しの)「聞かなくていい。案内に1号を付ける。お前は先に山を降りろ。」

陽葵(ひまり)「何で?」

志乃(しの)「今回は私の問題に巻き込んだみたいだ。」

陽葵(ひまり)「え。待って。」

志乃(しの)は1号と8号を呼び陽葵(ひまり)に1号を付け、8号で変化を解いて出て行った。

志乃(しの)「何の用だ?」

鬼渡(きわたり)?「ああ。最初に高校生が来たときは驚いたが良かったよ。」

鬼渡(きわたり)の姿をした何かは1つの(かがみ)を持っていてその光を志乃(しの)に向かって放ってくるが志乃(しの)は避けて木の裏に隠れる。

志乃(しの)剝魂(はっこん)(かがみ)なんて何処から持ってきた。」

鬼渡(きわたり)?「相変わらず素早いな。」

志乃(しの)「師匠の姿で何を考えている。」

鬼渡(きわたり)?「お前に言うことは何もない。さっさと出て来い。」

志乃(しの)「そんな物向けられて出ていくと?」

鬼渡(きわたり)?「なら。陽葵(ひまり)くんいるんだろ?出てきなさい。」

そう言われた陽葵(ひまり)は木の陰から出てきてしまう。

志乃(しの)陽葵(ひまり)!」

鬼渡(きわたり)の姿をした何かは出てきた陽葵(ひまり)(かがみ)を向けていたので志乃(しの)は飛び出し、陽葵(ひまり)を抱えて地面へ伏せるが光は志乃(しの)に当たりそのまま力なく崩れ落ちる。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん?」

正気に戻った陽葵(ひまり)は動かなくなった志乃(しの)の体をゆする。

鬼渡(きわたり)?「友達が倒れたショックで洗脳は解けたか。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん不死身なんだよね?何で起きないの?」

どれだけゆすろうと志乃(しの)はピクリとも動かない。

鬼渡(きわたり)の姿をした何かは陽葵(ひまり)を振り払って志乃(しの)を担ぐ。

陽葵(ひまり)「待って。浜名瀬(はまなせ)さんを何処に連れて行くの!?」

鬼渡(きわたり)?「お前にはもう用は無いさっさと消えろ。」

しつこい陽葵(ひまり)鬼渡(きわたり)の姿をした何かが手を伸ばそうとした時、陽葵(ひまり)は後ろに引っ張られる。

陽葵(ひまり)が確認すると1号が陽葵(ひまり)の襟首を噛んで引っ張っていてその間に鬼渡(きわたり)の姿をした何かは志乃(しの)と共に消えていた。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんの式神なのに何で邪魔したの?」

1号は首を横に振り、山の下を見る。

陽葵(ひまり)「降りろって、浜名瀬(はまなせ)さんが言ってたから?」

1号はその問いに頷く。

陽葵(ひまり)「でも、浜名瀬(はまなせ)さんが、、そうだ。まこ姉に連絡。」

陽葵(ひまり)はスマホで真琴(まこと)に電話を掛ける。

真琴(まこと)陽葵(ひまり)どうし、、」

陽葵(ひまり)「まこ姉。助けて!浜名瀬(はまなせ)さんが!浜名瀬(はまなせ)さんが。」

真琴(まこと)「落ち着いて。今どこにいるの?」

陽葵(ひまり)「ここ?確か隠狐山(いんこざん)って名前の山。」

真琴(まこと)隠狐山(いんこざん)ね。調べてすぐ行くわ。」

黒根(くろね)真琴(まこと)隠狐山(いんこざん)と言ったか?」

真琴(まこと)「ええ。なんか浜名瀬(はまなせ)さんが大変なことになってるみたい近くに出入り口無い?」

黒根(くろね)「昔はあったんじゃが今は塞いでいる。出入り口の木が切り倒されたからな。」

陽葵(ひまり)「多分、今その切り株の前にいる。」

黒根(くろね)「そこに志乃(しの)は居らんのか?」

陽葵(ひまり)「攫われたの。私のせいなの。助けて。」

黒根(くろね)「近くに他の出入り口はある。樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)、全員集めて一緒に行ってくれ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

真琴(まこと)「わかったわ。」

黒根(くろね)真琴(まこと)、スマホはこのままでもいいか?」

真琴(まこと)陽葵(ひまり)のがあるから大丈夫だと思うわ。」

真琴(まこと)達が陽葵(ひまり)の所に行くと陽葵(ひまり)は塞ぎこんでいた。

真琴(まこと)陽葵(ひまり)、詳しい話を話して。」

陽葵(ひまり)「それが、、」

陽葵(ひまり)はこれまでにあったことを話した。

鬼渡(きわたり)と名乗る知らない人になぜか安心感があり修行を付けてもらうことになったこと。

その人を志乃(しの)が警戒し、陽葵(ひまり)を逃がそうとしたこと。

志乃(しの)が逃げてきた場所の出入口が無くて鬼渡(きわたり)と名乗った人に追いつかれ、その人が持っていた鏡の光から陽葵(ひまり)を庇ったことにより志乃(しの)が動かなくなった事。

そのまま鬼渡(きわたり)と名乗った人は志乃(しの)を担いで陽葵(ひまり)と1号を残していなくなったこと。

黒根(くろね)剝魂(はっこん)(かがみ)か面倒なものが出てきたものじゃ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんも警戒していたけどそれは何なの?」

黒根(くろね)「詳しいことを省くと魂を抜き取る道具じゃな。」

真琴(まこと)「え。じゃあそれに当たった浜名瀬(はまなせ)さんって。」

黒根(くろね)「魂を抜かれた。だから動かなくなったんじゃな。」

真琴(まこと)「それって大丈夫なの?」

黒根(くろね)「いくらあやつが不死でも魂の状態だと関係ないからな。」

陽葵(ひまり)「そんな、私のせいで、、」

黒根(くろね)「元々志乃(しの)を狙っておったようじゃ、お主が気にすることじゃない。」

陽葵(ひまり)「でも、、」

真琴(まこと)「それで、その修行をしてくれた人ってどんな人?」

陽葵(ひまり)「あ。写真があるよ。あれ?」

陽葵(ひまり)が出した写真にはその人の代わりに白い衣を纏った骸骨が写っていた。

その写真を真琴(まこと)のスマホに送って黒根(くろね)にも見てもらう。

黒根(くろね)「こいつは狂骨(きょうこつ)だな。」

真琴(まこと)狂骨(きょうこつ)?」

黒根(くろね)「ああ、恨みを持って死んだ人間がなる妖怪じゃ。それでそいつは本当に鬼渡(きわたり)と名乗っておったのか?」

陽葵(ひまり)「うん。変な名前だけど何かあるの?」

黒根(くろね)鬼渡(きわたり)志乃(しの)の陰陽師としての師匠で300年以上前に亡くなっておる。」

陽葵(ひまり)「え。」

黒根(くろね)「しかもその山は妖ノ郷(あやかしのさと)ができる前に拠点にしていた山じゃ。」

陽葵(ひまり)「それで浜名瀬(はまなせ)さん、迷わずに走っていたの?」

真琴(まこと)「ちょっと待って浜名瀬(はまなせ)さんの師匠が浜名瀬(はまなせ)さんを誘拐したって言うの?」

黒根(くろね)「いや、志乃(しの)達を知っているものの仕業じゃろう。鬼渡(きわたり)は老衰で何の恨みも持たずに逝ったからな。」

樹霧之介(きりのすけ)「それが誰か心当たりは無いんですか?」

黒根(くろね)「恨みは所々で買ったからなわしもあいつも。目的が分からん今、断定はできんが鬼渡(きわたり)の姿と名前を知っておったんなら志乃(しの)鬼渡(きわたり)が担当した案件関係じゃろし、わしには分からんな。」

陽葵(ひまり)樹霧之介(きりのすけ)のお父さんは鬼渡(きわたり)って人と行動したことは無いんですか?」

黒根(くろね)志乃(しの)以外の陰陽師と仕事をしたことは無い。」

真琴(まこと)「ねえ、それより今浜名瀬(はまなせ)さんはどこにいると思う?」

陽葵(ひまり)「それなら修行中に泊まった山小屋があるんだけどそこかな?」

茂蔵(もぞう)「まだいるのかね。」

樹霧之介(きりのすけ)「だけど他に思い当たる場所も無いんですよね。」

黒根(くろね)「その近くに開けた場所があるがそこにはなにも無いんじゃろ?」

陽葵(ひまり)「うん。何かあったの?」

黒根(くろね)「そこが昔拠点があった場所じゃ。」

陽葵(ひまり)「そうだったんだ。」

真琴(まこと)陽葵(ひまり)。案内お願い。」

陽葵(ひまり)「あ。うん。」

陽葵(ひまり)の案内でついた場所には朽ちた山小屋があった。

陽葵(ひまり)「あれ?私が来たときはもっと新しかったのに。」

黒根(くろね)「洗脳を受けてたおったみたいだから幻を見せられていたんじゃろ。風見(かざみ)、近くに妖気はあるか?」

風見(かざみ)「いや、何にも感じない。」

真琴(まこと)「なら狂骨(きょうこつ)はいないのかしら。」

陽葵(ひまり)「だけど妖力を隠すのが上手いみたいだったよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「なら、油断はせずに探索しましょう。」

(ほむら)「おい、中に誰かいる。」

(ほむら)は山小屋に人影を見つけて駆け寄る。

そこには意識の無い志乃(しの)がいた。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。良かった。」

(しずく)「ねえ、(ほむら)。この浜名瀬(はまなせ)さん、魂入ってる?」

(ほむら)「ああ抜け殻ではないぞ。」

真琴(まこと)「だけどわざわざ魂を抜いたのにまた入れて放置って何したかったの?」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さんが何かしたのかもしれないですし、ここで放置するのも可哀そうなので一度拠点に運びましょう。」

(しずく)「そうね。(ほむら)お願い。」

(ほむら)「また俺?良いけど。」

(しずく)「死体は運びなれてるでしょ。」

陽葵(ひまり)「また?死体?」

真琴(まこと)「気にしなくていいよ。」

志乃(しの)は運ばれている間もピクリとも動かない。

陽葵(ひまり)「ねえ、浜名瀬(はまなせ)さん本当に大丈夫?」

真琴(まこと)「魂もあるみたいだし時間が経てば起きると思うけど、、心配よね。」

陽葵(ひまり)は移動中ずっと真琴(まこと)の袖を掴んでいる。

樹霧之介(きりのすけ)の家に着くと布団を出して志乃(しの)を寝かす。

黒根(くろね)陽葵(ひまり)よ。もう遅いからお前は帰らんか?」

陽葵(ひまり)真琴(まこと)の腕を掴みながら横に首を振る。

真琴(まこと)「私の家、場所はあるから泊まらせてもいい?」

黒根(くろね)「お主は陽葵(ひまり)に甘いの。まあ、真琴(まこと)が良いならわしは構わんが。」

真琴(まこと)「ありがとう。陽葵(ひまり)、私の家行こう。」

だが陽葵(ひまり)は首を横に振る。

真琴(まこと)「しばらくここにいる?」

陽葵(ひまり)は黙って頷く。

黒根(くろね)「仕方ないの。じゃが狂骨(きょうこつ)をこのままにしておくことはできんから真琴(まこと)はまた山に行ってもらうぞ。」

陽葵(ひまり)は俯いたまま真琴(まこと)の腕から手を離した。

黒根(くろね)陽葵(ひまり)。ここ居いるならスマホを貸してくれるか?」

陽葵(ひまり)「うん。」

陽葵(ひまり)はスマホを取り出しロックを外す。

黒根(くろね)「それじゃ。真琴(まこと)(しずく)(ほむら)風見(かざみ)の4人で行ってきてくれんか?」

真琴(まこと)「ええ。」

(しずく)「わかったわ。」

(ほむら)「行ってくる。」

風見(かざみ)「任せろ。」

真琴(まこと)達はまた山に探索に出かけ、山小屋に手がかりがないかもう一度探しに来た。

辺りはすっかり暗くなっていたので(ほむら)が灯り用の火の玉をいくつか出して周りを照らす。

探索を始めてすぐに真琴(まこと)のスマホが鳴る。

黒根(くろね)「お、繋がったか。真琴(まこと)スピーカーにしてくれ()()に聞かせたい。」

電話は黒根(くろね)からで真琴(まこと)は言われた通りスピーカーにして周りに聞かせる。

真琴(まこと)「スピーカーにしたわ。」

黒根(くろね)「ありがとう。それで志乃(しの)が起きた。」

(しずく)「良かった。」

真琴(まこと)「それで浜名瀬(はまなせ)さんは何て言っているの?」

黒根(くろね)狂骨(きょうこつ)に連れ去られた後の事じゃが、、」

志乃(しの)?「黒根(くろね)。私から説明しても良い?」

黒根(くろね)「わかった。じゃがまだ無理をするなよ。」

志乃(しの)?「うん。ありがとう。」

真琴(まこと)「それで浜名瀬(はまなせ)さん。何があったの?」

志乃(しの)?「あの後、魂の状態で壺に入れられてたんだけど声は聞こえていたから狂骨(きょうこつ)の独り言が聞こえてたの。そこで狂骨(きょうこつ)は妖怪達を洗脳して人間界を襲うという計画を立てていた。」

真琴(まこと)「何でそんなこと。」

志乃(しの)?「あの狂骨(きょうこつ)は昔、私と鬼渡(きわたり)が一緒に潰した陰陽師の家の者だった。その恨みで私が今まで積み上げた妖怪と人間の均衡を崩したいと思っている。それだけ聞いて私はあいつの隙を見て体に戻ったの。」

ガサッ

音のした方を向くと人影が動くのが見えた。

真琴(まこと)「あれ、狂骨(きょうこつ)じゃない?」

志乃(しの)?「ほっといたらまた犠牲者が出るかもしれない。早めに退治して。」

真琴(まこと)「わかった。追いかけるから電話切るね。」

志乃(しの)?「駄目。そのままでお願い。」

真琴(まこと)「え?なら手使いたいから風見(かざみ)持ってて。」

風見(かざみ)「わかった。」

真琴(まこと)は人影の前に紙を飛ばして前に壁を作り、逃げ場を塞ぐ。

逃げ場のなくなった人影を(ほむら)の炎で照らすと白い衣を着た骸骨がいる。

真琴(まこと)狂骨(きょうこつ)!もう逃げられないわよ。」

狂骨(きょうこつ)は何も言わずに横に逃げようとしたので(ほむら)がそこに火球を放つが、軽く避けられた。

続いて小さい火球を複数投げるがその一つを狂骨(きょうこつ)は弾き、真琴(まこと)が作った壁に当てて焼き、逃げ道を作る。

(しずく)「ちょっと。(ほむら)、もっと考えて炎投げてよ。」

(ほむら)「何もしてないやつに言われたくない。」

(しずく)「もう少しで準備できるの。ほら。」

(しずく)は状態異常を付与する雨を降らせると狂骨(きょうこつ)の動きが鈍くなる。

(しずく)「さっさと仕留めて。」

(ほむら)「わかった。」

その時真琴(まこと)達の後ろから何かが飛んできて狂骨(きょうこつ)へ体当たりする。

狂骨(きょうこつ)?「12号!?」

(しずく)(ほむら)ストップ。管狐(くだぎつね)にも当たる!」

だが(ほむら)の攻撃は既に手から離れていて止められない。

大きな爆音とともに静かになった。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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