16話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
夏休みに入り1週間が経過した。
志乃は陽葵の家に行き、陽葵を呼び出す。
陽葵「浜名瀬さん。1週間で夏休みの宿題全てしろは無理があるって。」
志乃「何だ?私は終わったぞ。宿題は終わらせとかないと他の事ができないだろ。」
陽葵「それでも集中力が持たないんだよ。」
志乃「これからすることはもっと集中力がいるぞ。」
陽葵「むう。座学じゃないよね?」
志乃「宿題と一緒にできる事だ。」
陽葵「いやな予感しかしない。」
志乃「私がお札を使っているところは何回か見せたよな。」
陽葵「見た見た。もしかして使い方を教えてくれるの?」
志乃「それがどうやってできているか知っているか?」
陽葵「印刷しているとか?」
志乃「すべて手書きだ。」
陽葵「なんで?」
志乃「特殊な紙と墨を使っているから機械が使えないんだ。」
陽葵「なら版画とかは使えないの?」
志乃「使っていたところもあったが効果は薄いぞ。命を預けるものなんだから妥協はできない。」
陽葵「えー。」
志乃「お前は自分の身を守る為に私から陰陽師としての術を習いたいんじゃなかったのか?」
陽葵「そうです。」
志乃「なら私がいなくても一から全てできるようになれ。」
陽葵「でも、助けてはくれるよね?」
志乃「助けられる時だけな。ほら、紙と墨、それから今回は結界符の写しを持って来た。書け。」
陽葵「これに書いたら使えるの?」
志乃「練習用だから普通の紙と墨だ。効力は持たない。」
陽葵「えー。」
志乃「書けるようになったら本番用を渡す。それまではこれで練習しろ。」
陽葵「つまらない。」
志乃「修行につまらないも楽しいも無い。宿題もまだならさっさと終わらせろ。」
陽葵「むー。」
志乃「また1週間後に様子を見にくるからサボるなよ。」
陽葵「はーい。」
志乃が帰ると陽葵はつまらなそうに机と睨めっこを始める。
1週間後、学校の宿題が終わったがお札の写しはぐちゃぐちゃで見れたものじゃ無かった。
志乃「ちゃんと見て書いているのか?」
陽葵「だけどどこに何が書いてあるのかわからないよ。」
志乃「読んでおけと言っておいた本はあるか?」
陽葵「うん。」
志乃「あれに文字の意味は書いてあったはずだが。」
陽葵「それでも癖が強くて読みにくいんだよ。」
志乃「あー。その癖は私の師匠のものだな。私も苦労した。」
陽葵「浜名瀬さんも苦労した事を私ができるわけないじゃん。」
志乃「これでも直せるところは直したんだぞ。何故か直したら発動しなくなるところもあったから一部そのままだけど。」
陽葵「それじゃこのまま写さないといけないの?」
志乃「言い出したのはお前だ。頑張れ。」
陽葵「じゃあ、お見本見せてよ。」
志乃「わかった。ちゃんと見ておけよ。」
この日は志乃は陽葵に付きっきりで書き方を教えた。
志乃「今日はこのくらいにするか。」
時間はもう18時を回っている。
陽葵「泊まっていっても良いんだよ。」
志乃「遠慮しとく。」
陽葵「じゃあまた明日教えてよ。」
志乃「悪いが私もやりたいことがある。次は3日後に来る。」
陽葵「えー。またこれ1人でやるの?」
志乃「お前の修行に関わる事だ。我慢しろ。」
陽葵「ならもっと早く準備してくれれば良いのに。」
志乃「とにかく、これが書けなければ次に移る事はできない。」
そう言って志乃は出て行った。
陽葵は志乃の言う通り何枚かお札を写すと志乃が直接お手本を見せてくれた事により最初よりも上手く書けたが、集中力が切れたので気晴らしに散歩をしようと外に出ると少し薄暗く、涼しい風が吹いている。
陽葵「浜名瀬さんもケチだよ。もっとバーンってできるような術教えてくれればもっとやる気が出るのにさ。」
陽葵はブツブツと独り言を言いながら歩いて少しスッキリしたのか帰ろうとすると人影が見える。
???「そこの娘さん。」
陽葵「うわっ。話しかけられた。」
見るからに怪しい風貌をしている中年男性に話しかけられ陽葵は心の声を口に出してしまう。
???「いや、自分でも怪しいのは分かってるけどちょっと話聞いて?」
陽葵「あ、結構です。」
???「いや、おじさんも陰陽師なんだよ。」
陽葵「人の独り言を聞くような人の事は信じられません。」
???「これでも?」
そのおじさんは何か手で形を作るとそこに結界ができる。
陽葵「すごい。お札も使わずに結界ができた。」
???「札か。術者から遠いところに張ったり霊力を変換する際の補助とかに使うけど大体は印を結べばできるよ。教えようか?」
陽葵「私にも使えるの?」
???「ああ。君には才能がありそうだ。」
陽葵「本当?今教えてくれてる人には霊力はあるって言われてるけど全然教えてくれないんだ。」
???「そうみたいだね。お札の書き方しか教えてくれないってさっき聞こえてたからさ。勿体無いと思って声をかけたんだ。」
陽葵「そうなんだよ。修行をつけてくれるって言ってたのに期限を延ばされた上にお札の書き方って、もっと他に教えてくれる事あるでしょって感じだよ。」
???「なるほどね。今度修行場に招待するから来なよ。」
陽葵「どこなの?」
???「山の中の方だからここからだと電車と徒歩で4,5時間ほどの距離だね。そこで数日修行すれば君なら使えるようになるんじゃないかな?」
陽葵「1人で遠出なんて許してくれないよ。」
???「学校の人と行くって言っても?」
陽葵「口裏合わせてくれる人もいないし、その人が家に居ればすぐバレるよ。」
???「人の記憶を変える事くらいできるさ。こっちも準備するから1週間後の朝に待ってるよ。」
陽葵「あ。だけど浜名瀬さんに何て言えば?」
???「ならそいつも呼ばないか?」
陽葵「え?」
???「術を覚えた時に呼んで成長したお前を見せてやろうぜ。」
陽葵「いいですね。」
それから3日後、志乃は陽葵の家に来ていた。
志乃「あれからどうだ?進んだか?」
陽葵「あ、うん。ここまで書けたよ。」
陽葵が見せてくれたお札は少し歪ではあるが書けてはいた。
志乃「へー。これなら霊力を注ぐところまで進めても良さそうだな。」
陽葵「本当?」
志乃「ああ。お前にしては頑張って練習したんじゃないか?」
陽葵「やった。褒められた。」
志乃「じゃあ、本番用渡すからそれを結界符にしてくれ。また3日後に来るから。」
陽葵「あ。ごめん浜名瀬さん。」
志乃「どうした?」
陽葵「その日から友達と旅行に行く約束しちゃったんだ。」
志乃「そうなのか。まあ、夏休みだから息抜きも必要か。」
陽葵「うん。断れなくてさ。ごめん。」
志乃「いや、いい。戻るのはいつだ?帰ってから始めよう。」
陽葵「あー。予定もまだ決まって無くて。」
志乃「3日後なのに?」
陽葵「うん。だけど行く場所だけは決めてあるんだよ。」
志乃「そうなのか、、なら戻ったらスマホで連絡してくれ。」
陽葵「連絡しても良いの?」
志乃「今回は仕方ないだろ。個人的な事まで踏み込むつもりは無いからな。」
陽葵「わかった。」
志乃「結界符は旅行に行く前に作っておけよ。」
陽葵「はい。」
翌朝、志乃が解呪を進めていると真琴からメッセージが送られてきた。
内容は風見が不審な妖気を感じたけれど正体が分からなかったので志乃の方で何か気付いたことは無いかとのことだった。
そう言えば5号が何かに反応したが短い時間だったのであまり気にしなかった事を伝えた。
それから特に何もなく6日後、志乃のスマホにメッセージが届いた。
陽葵から送られた物で志乃に見てほしいものがあるから来てほしいと住所が送られてきた。
志乃は初め行かないと返信しようと思ったがその住所に心当たりがあったので行ってみると駅で陽葵が迎えに来た。
陽葵「浜名瀬さんいらっしゃい。」
志乃「見せたいものって?」
陽葵「ふふん。浜名瀬さん驚くと思うよ。」
志乃「お前の驚かせる発言は嫌な予感しかしないんだ。」
陽葵「今回は大丈夫。ちゃんと専門の人に習ったんだから。」
志乃「専門?」
陽葵「そう。浜名瀬さんと同じ陰陽師の人。」
志乃「この時代に?」
陽葵「それ浜名瀬さんが言う?」
志乃「と言うか友達と旅行じゃなかったのか?」
陽葵「一応その人も友達だもん。」
志乃「いつ出会ったんだ?」
陽葵「浜名瀬さんがお札の書き方教えてくれた日に散歩してたら出会った。」
志乃「お前、高校生が出会ってすぐの人に付いて行くって危なすぎるだろ!よく親が許してくれたな。」
陽葵「大丈夫だったよ。」
志乃「どんな人なんだ?」
陽葵「優しい人だよ。」
志乃「余計に怪しい。そいつはどこにいるんだ?」
陽葵「こっちの修行場にいるよ。案内するね。」
陽葵は志乃の手を握って山の中を登って行く。
その山は昔とは所々変わっているが志乃にとって馴染みのある山だった。
少し開けた場所に出ると1人の男性が待っていた。
陽葵「この人。名前は鬼渡だって変わってるよね。」
そこには300年以上前に亡くなった志乃の師匠である鬼渡の姿があった。
鬼渡?「おや?陽葵くんの師匠というから大人の人が来ると思っていたんだけど、君も高校生?」
志乃は陽葵が友達といると聞いていたので高校生の姿で来ていた。
志乃「陽葵、逃げるぞ!」
陽葵「え。何で?」
志乃「あいつは人間じゃない。正体が分かるまで下手に手を出せない。」
鬼渡?「上手く隠しているはずなんだけど。何で分かった?」
志乃「答える必要はない。」
そして志乃は陽葵の手を引いて山を登る。
所々変わってはいるが志乃達が元々拠点としていた山なのである程度分かる。
ここにも妖ノ郷に繋がる入り口があるはずなのでその場所へ向かうが繋がっているはずの木が切り倒されていて切り株しか残っていなかった。
志乃「ここの出入り口無くなっていたのか。」
陽葵「浜名瀬さん?」
志乃「ごめん。もう少し走れるか?」
陽葵「それは大丈夫だけど。私だって強くなったんだよ。見て。」
陽葵は手で印を結び結界を張るがすぐに解けてしまう。
もう一回試したが結界は張れず、何度しても結果は同じだった。
志乃「印を結ぶのは霊力の消費が激しい、お前じゃそれが限界だろう。」
陽葵「修行中はもっと張れてたのに。」
志乃「騙されたな。」
陽葵「どうやって。」
志乃「修行中の結界はお前が張ったものじゃないということだ。」
その時足音が近付いてきたので志乃は陽葵を連れて木の陰に隠れる。
鬼渡?「ここに来るってことは破魔凪の関係者。いや、本人か?」
陽葵「破魔凪?」
志乃「聞かなくていい。案内に1号を付ける。お前は先に山を降りろ。」
陽葵「何で?」
志乃「今回は私の問題に巻き込んだみたいだ。」
陽葵「え。待って。」
志乃は1号と8号を呼び陽葵に1号を付け、8号で変化を解いて出て行った。
志乃「何の用だ?」
鬼渡?「ああ。最初に高校生が来たときは驚いたが良かったよ。」
鬼渡の姿をした何かは1つの鏡を持っていてその光を志乃に向かって放ってくるが志乃は避けて木の裏に隠れる。
志乃「剝魂の鏡なんて何処から持ってきた。」
鬼渡?「相変わらず素早いな。」
志乃「師匠の姿で何を考えている。」
鬼渡?「お前に言うことは何もない。さっさと出て来い。」
志乃「そんな物向けられて出ていくと?」
鬼渡?「なら。陽葵くんいるんだろ?出てきなさい。」
そう言われた陽葵は木の陰から出てきてしまう。
志乃「陽葵!」
鬼渡の姿をした何かは出てきた陽葵に鏡を向けていたので志乃は飛び出し、陽葵を抱えて地面へ伏せるが光は志乃に当たりそのまま力なく崩れ落ちる。
陽葵「浜名瀬さん?」
正気に戻った陽葵は動かなくなった志乃の体をゆする。
鬼渡?「友達が倒れたショックで洗脳は解けたか。」
陽葵「浜名瀬さん不死身なんだよね?何で起きないの?」
どれだけゆすろうと志乃はピクリとも動かない。
鬼渡の姿をした何かは陽葵を振り払って志乃を担ぐ。
陽葵「待って。浜名瀬さんを何処に連れて行くの!?」
鬼渡?「お前にはもう用は無いさっさと消えろ。」
しつこい陽葵に鬼渡の姿をした何かが手を伸ばそうとした時、陽葵は後ろに引っ張られる。
陽葵が確認すると1号が陽葵の襟首を噛んで引っ張っていてその間に鬼渡の姿をした何かは志乃と共に消えていた。
陽葵「浜名瀬さんの式神なのに何で邪魔したの?」
1号は首を横に振り、山の下を見る。
陽葵「降りろって、浜名瀬さんが言ってたから?」
1号はその問いに頷く。
陽葵「でも、浜名瀬さんが、、そうだ。まこ姉に連絡。」
陽葵はスマホで真琴に電話を掛ける。
真琴「陽葵どうし、、」
陽葵「まこ姉。助けて!浜名瀬さんが!浜名瀬さんが。」
真琴「落ち着いて。今どこにいるの?」
陽葵「ここ?確か隠狐山って名前の山。」
真琴「隠狐山ね。調べてすぐ行くわ。」
黒根「真琴。隠狐山と言ったか?」
真琴「ええ。なんか浜名瀬さんが大変なことになってるみたい近くに出入り口無い?」
黒根「昔はあったんじゃが今は塞いでいる。出入り口の木が切り倒されたからな。」
陽葵「多分、今その切り株の前にいる。」
黒根「そこに志乃は居らんのか?」
陽葵「攫われたの。私のせいなの。助けて。」
黒根「近くに他の出入り口はある。樹霧之介、真琴、全員集めて一緒に行ってくれ。」
樹霧之介「はい。」
真琴「わかったわ。」
黒根「真琴、スマホはこのままでもいいか?」
真琴「陽葵のがあるから大丈夫だと思うわ。」
真琴達が陽葵の所に行くと陽葵は塞ぎこんでいた。
真琴「陽葵、詳しい話を話して。」
陽葵「それが、、」
陽葵はこれまでにあったことを話した。
鬼渡と名乗る知らない人になぜか安心感があり修行を付けてもらうことになったこと。
その人を志乃が警戒し、陽葵を逃がそうとしたこと。
志乃が逃げてきた場所の出入口が無くて鬼渡と名乗った人に追いつかれ、その人が持っていた鏡の光から陽葵を庇ったことにより志乃が動かなくなった事。
そのまま鬼渡と名乗った人は志乃を担いで陽葵と1号を残していなくなったこと。
黒根「剝魂の鏡か面倒なものが出てきたものじゃ。」
陽葵「浜名瀬さんも警戒していたけどそれは何なの?」
黒根「詳しいことを省くと魂を抜き取る道具じゃな。」
真琴「え。じゃあそれに当たった浜名瀬さんって。」
黒根「魂を抜かれた。だから動かなくなったんじゃな。」
真琴「それって大丈夫なの?」
黒根「いくらあやつが不死でも魂の状態だと関係ないからな。」
陽葵「そんな、私のせいで、、」
黒根「元々志乃を狙っておったようじゃ、お主が気にすることじゃない。」
陽葵「でも、、」
真琴「それで、その修行をしてくれた人ってどんな人?」
陽葵「あ。写真があるよ。あれ?」
陽葵が出した写真にはその人の代わりに白い衣を纏った骸骨が写っていた。
その写真を真琴のスマホに送って黒根にも見てもらう。
黒根「こいつは狂骨だな。」
真琴「狂骨?」
黒根「ああ、恨みを持って死んだ人間がなる妖怪じゃ。それでそいつは本当に鬼渡と名乗っておったのか?」
陽葵「うん。変な名前だけど何かあるの?」
黒根「鬼渡は志乃の陰陽師としての師匠で300年以上前に亡くなっておる。」
陽葵「え。」
黒根「しかもその山は妖ノ郷ができる前に拠点にしていた山じゃ。」
陽葵「それで浜名瀬さん、迷わずに走っていたの?」
真琴「ちょっと待って浜名瀬さんの師匠が浜名瀬さんを誘拐したって言うの?」
黒根「いや、志乃達を知っているものの仕業じゃろう。鬼渡は老衰で何の恨みも持たずに逝ったからな。」
樹霧之介「それが誰か心当たりは無いんですか?」
黒根「恨みは所々で買ったからなわしもあいつも。目的が分からん今、断定はできんが鬼渡の姿と名前を知っておったんなら志乃と鬼渡が担当した案件関係じゃろし、わしには分からんな。」
陽葵「樹霧之介のお父さんは鬼渡って人と行動したことは無いんですか?」
黒根「志乃以外の陰陽師と仕事をしたことは無い。」
真琴「ねえ、それより今浜名瀬さんはどこにいると思う?」
陽葵「それなら修行中に泊まった山小屋があるんだけどそこかな?」
茂蔵「まだいるのかね。」
樹霧之介「だけど他に思い当たる場所も無いんですよね。」
黒根「その近くに開けた場所があるがそこにはなにも無いんじゃろ?」
陽葵「うん。何かあったの?」
黒根「そこが昔拠点があった場所じゃ。」
陽葵「そうだったんだ。」
真琴「陽葵。案内お願い。」
陽葵「あ。うん。」
陽葵の案内でついた場所には朽ちた山小屋があった。
陽葵「あれ?私が来たときはもっと新しかったのに。」
黒根「洗脳を受けてたおったみたいだから幻を見せられていたんじゃろ。風見、近くに妖気はあるか?」
風見「いや、何にも感じない。」
真琴「なら狂骨はいないのかしら。」
陽葵「だけど妖力を隠すのが上手いみたいだったよ。」
樹霧之介「なら、油断はせずに探索しましょう。」
焔「おい、中に誰かいる。」
焔は山小屋に人影を見つけて駆け寄る。
そこには意識の無い志乃がいた。
陽葵「浜名瀬さん。良かった。」
雫「ねえ、焔。この浜名瀬さん、魂入ってる?」
焔「ああ抜け殻ではないぞ。」
真琴「だけどわざわざ魂を抜いたのにまた入れて放置って何したかったの?」
樹霧之介「志乃さんが何かしたのかもしれないですし、ここで放置するのも可哀そうなので一度拠点に運びましょう。」
雫「そうね。焔お願い。」
焔「また俺?良いけど。」
雫「死体は運びなれてるでしょ。」
陽葵「また?死体?」
真琴「気にしなくていいよ。」
志乃は運ばれている間もピクリとも動かない。
陽葵「ねえ、浜名瀬さん本当に大丈夫?」
真琴「魂もあるみたいだし時間が経てば起きると思うけど、、心配よね。」
陽葵は移動中ずっと真琴の袖を掴んでいる。
樹霧之介の家に着くと布団を出して志乃を寝かす。
黒根「陽葵よ。もう遅いからお前は帰らんか?」
陽葵は真琴の腕を掴みながら横に首を振る。
真琴「私の家、場所はあるから泊まらせてもいい?」
黒根「お主は陽葵に甘いの。まあ、真琴が良いならわしは構わんが。」
真琴「ありがとう。陽葵、私の家行こう。」
だが陽葵は首を横に振る。
真琴「しばらくここにいる?」
陽葵は黙って頷く。
黒根「仕方ないの。じゃが狂骨をこのままにしておくことはできんから真琴はまた山に行ってもらうぞ。」
陽葵は俯いたまま真琴の腕から手を離した。
黒根「陽葵。ここ居いるならスマホを貸してくれるか?」
陽葵「うん。」
陽葵はスマホを取り出しロックを外す。
黒根「それじゃ。真琴、雫、焔、風見の4人で行ってきてくれんか?」
真琴「ええ。」
雫「わかったわ。」
焔「行ってくる。」
風見「任せろ。」
真琴達はまた山に探索に出かけ、山小屋に手がかりがないかもう一度探しに来た。
辺りはすっかり暗くなっていたので焔が灯り用の火の玉をいくつか出して周りを照らす。
探索を始めてすぐに真琴のスマホが鳴る。
黒根「お、繋がったか。真琴スピーカーにしてくれ全員に聞かせたい。」
電話は黒根からで真琴は言われた通りスピーカーにして周りに聞かせる。
真琴「スピーカーにしたわ。」
黒根「ありがとう。それで志乃が起きた。」
雫「良かった。」
真琴「それで浜名瀬さんは何て言っているの?」
黒根「狂骨に連れ去られた後の事じゃが、、」
志乃?「黒根。私から説明しても良い?」
黒根「わかった。じゃがまだ無理をするなよ。」
志乃?「うん。ありがとう。」
真琴「それで浜名瀬さん。何があったの?」
志乃?「あの後、魂の状態で壺に入れられてたんだけど声は聞こえていたから狂骨の独り言が聞こえてたの。そこで狂骨は妖怪達を洗脳して人間界を襲うという計画を立てていた。」
真琴「何でそんなこと。」
志乃?「あの狂骨は昔、私と鬼渡が一緒に潰した陰陽師の家の者だった。その恨みで私が今まで積み上げた妖怪と人間の均衡を崩したいと思っている。それだけ聞いて私はあいつの隙を見て体に戻ったの。」
ガサッ
音のした方を向くと人影が動くのが見えた。
真琴「あれ、狂骨じゃない?」
志乃?「ほっといたらまた犠牲者が出るかもしれない。早めに退治して。」
真琴「わかった。追いかけるから電話切るね。」
志乃?「駄目。そのままでお願い。」
真琴「え?なら手使いたいから風見持ってて。」
風見「わかった。」
真琴は人影の前に紙を飛ばして前に壁を作り、逃げ場を塞ぐ。
逃げ場のなくなった人影を焔の炎で照らすと白い衣を着た骸骨がいる。
真琴「狂骨!もう逃げられないわよ。」
狂骨は何も言わずに横に逃げようとしたので焔がそこに火球を放つが、軽く避けられた。
続いて小さい火球を複数投げるがその一つを狂骨は弾き、真琴が作った壁に当てて焼き、逃げ道を作る。
雫「ちょっと。焔、もっと考えて炎投げてよ。」
焔「何もしてないやつに言われたくない。」
雫「もう少しで準備できるの。ほら。」
雫は状態異常を付与する雨を降らせると狂骨の動きが鈍くなる。
雫「さっさと仕留めて。」
焔「わかった。」
その時真琴達の後ろから何かが飛んできて狂骨へ体当たりする。
狂骨?「12号!?」
雫「焔ストップ。管狐にも当たる!」
だが焔の攻撃は既に手から離れていて止められない。
大きな爆音とともに静かになった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




