15話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
放課後、志乃は体育服に着替えてからバスケ部の所に顔を出す。
途中、陽葵がいたが隠れてやり過ごすとバスケ部が練習をしている体育館へ行くことができた。
志乃「蓮見さんはいますか?」
志乃が体育館へ入ると体育館内が騒然となった。
凛華「私に何の用?」
初めは無視されたが他の部員が呼んでくれて渋々出てきてくれた。
志乃「試合まで時間もないし、同じチームなのにこのままじゃいけないと思って試合を申し込みにきた。」
凛華「はあ?あんたなんかのために時間と場所を使うと思ってんの?」
部長「聞いてるよ。凛華、お前この人に嫌がらせしたんだって?」
凛華「部長。別にそんなんじゃないですよ。練習の邪魔なんで追い出そうと思っただけです。」
部長「バスケで勝負するなら練習になるしバスケ部以外の人との試合なんてあんまりできないんだからお前にとってもいい経験だと思うぞ。」
凛華「それでも場所は?審判はどうすればいいんですか?いきなり来てこんなの非常識ですよ。」
部長「はあ、審判は私がやる。場所は隅のゴールを1つ使えばいい。えーと、浜名瀬さんだっけ?この人はお前が一方的に嫌っているのを気遣って来てくれているんだ。非常識なことをしたお前が言えたことではない。黙って勝負を受けろ!」
凛華「それでも、、」
志乃「逃げるのか?」
凛華「あ?」
志乃「授業中も私を避けていた。何か怖い事でもあったか?」
凛華「そんなわけないだろ。」
志乃「なら、部長さんもこう言ってくれているんだから勝負しないか?」
凛華「いいさ。バスケ部員に勝負仕掛けたこと後悔させてやる。」
凛華は部長の指定したバスケゴールの方へ行く。
志乃「急に来てしまってすみません。部長さん、審判よろしくお願いします。」
部長「ああ、うちの部員が迷惑かけたんだ遠慮なくやってくれ。」
志乃「ありがとうございます。」
志乃は部長に向かって礼をしてから凛華の後を追った。
部長「ルールは5本先取、先にオフェンスとディフェンスをフリースローで決める。」
先に志乃にボールが渡され投げるがバックボードに当たって跳ね返りゴールには入らなかった。
凛華は慣れた様子で一発で入れて凛華が先にオフェンスとなってディフェンスは志乃になった。
凛華はドリブルで志乃を躱し、ゴールに近づき点を入れる。
2点目を入れられたところで志乃がボールを奪い、オフェンスとディフェンスが入れ替わる。
オフェンスの志乃は移動せずボールを投げるとゴールへと入れる。
凛華「フリースローより遠いのに何で入れられる!?」
志乃「別に投擲は得意でさっきのでコツ掴めたから?」
凛華「ふざけんな。手抜いていたんなら怒るぞ。」
志乃「さっきも今も本気だ。」
志乃はまだ怪力で動き続ける事に慣れていないので普通の人間である凛華を怪我させないかとハラハラしている。
次が始まり志乃はもう一度ゴールを狙うがそれを凛華が邪魔をしに来たのでドリブルに替えて躱してゴールを決める。
さっきと合わせて3点目なので志乃がこれでリードする。
凛華「何でそんなに動ける!」
志乃「負けるのが怖いなら言葉ではなく行動しろ。」
凛華「うるさい。お前なんかに言われたくない!」
志乃「次いってもいいか?」
凛華「次は止めてやるからな。」
だが凛華は志乃を止められずにもう1点入れられてしまった。
あとが無くなった凛華に焦りが見え始め、志乃を睨みつけたその時、凛華が叫びだした。
凛華「うわああ。鳥。でかい鳥が壁を通り抜けて!」
凛華の目の前には禍々しいオーラを纏った鷺のような鳥が立っている。
人よりも大きく、赤い目を輝かせ凛華を見ている。
他の人には見えていないので凛華が錯乱しているようにしか見えていない。
部長「どうした?鳥なんていないぞ。落ち着け。」
凛華「見えていないんですか?ここに大きな鳥がいるんですよ!?」
部長が凛華に駆け寄り落ち着かせようとするが凛華は取り乱し、暴れている。
そんな時に志乃はその鳥の首を掴み体育館の出入り口へ向かう。
志乃「すみません。急用ができたのでお暇します。不戦勝ってことで良いので私はこれで。」
部長「いや、凛華が取り乱したから勝ちはそっちで良い。」
志乃「なら引き分けって事で。あと、この後保健室行くと思いますが蓮見さん。手首を捻っているのでそこも診てもらってください。」
部長「そうなのか?」
部長が凛華の手首を見てみると腫れては無いが凛華は痛がっていた。
試合の途中に捻っていたが負けたくなくて我慢して続けていたみたいだ。
志乃は途中で手首を庇う凛華を見て気付き、妖怪が出なくてもいいから早めに終わらせようと思っていたが妖怪が出てきて凛華が異常に怖がったので退治するのは他の場所でしようと妖怪の首を掴み、引きずっていつものベンチの所に来ていた。
ここは人通りも少なく、近くで部活動をするところもない。
???「あんた誰よ。私の食事を邪魔しないで!」
志乃「負の感情が好物の妬喰を見逃すと?」
妬喰「あんた、私達の事を知っているの?負の感情なんて無くて良いじゃない。」
志乃「他の感情も食べているだろ。」
妬喰「良いじゃない。あなたあの子に嫉妬されて嫌がらせ受けていたんでしょ?」
志乃「お前が糸潜なんて取り憑かせなかったらこんな事にはなってない。」
妬喰「あらー。それも知っているのね。」
志乃「遺言はそれだけか?」
志乃は短刀を振り上げる。
妬喰「待って待って。今気づいたけどあなたの中の感情もおいしそうだわ。食べてあげようか?」
志乃「お前は呪いも食べるのか?」
妬喰「呪い!?いや、噓でしょ。人の中に呪いを封印するなんて、、」
志乃は短刀で妬喰を突くと妬喰は煙となって消える。
志乃「次は糸潜の方だけどどうやって凛華に近付くか。」
そう独り言を言っていると後ろから声を掛けられる。
陽葵「浜名瀬さん。こんな所で何してるんですか?」
志乃「帰ったんじゃないのか?」
陽葵「浜名瀬さん探してたら変な鳥見かけて体育館へ行ったらこの人に出会って、浜名瀬さんに謝りたいって言ってたから話を聞いてここかなと推理して来ました。」
志乃「保健室には行ったのか?」
凛華「え、あ。このくらい大丈夫、、」
さっきのショックからか元気がない。
志乃「まあ、丁度いいか。」
凛華「ヒャイッ!」
志乃はいきなり凛華の背中の方から服の中に手を入れて蜘蛛のようなものを取り出す。
陽葵「え。なにこれ。」
志乃「こいつは糸潜と言って人の一番強い感情をより強くし、それを糸として吐き出す妖怪だ。そして厄介な事に妖気も姿も隠す事が上手い。」
陽葵「それで首に糸が巻きついていたの?」
凛華「え?え?」
凛華はすぐに首に手を当てる。
志乃「糸潜はとったからしばらくすれば元に戻る。詳しいことを話す前に保健室に行こうか。」
志乃が糸潜を握りつぶすと糸潜は煙となって消えた。
保健室に行き凛華の手当が済んだ後、3人で教室へ行き話をする。
志乃「何から聞きたい?」
陽葵「はい。あの妖怪は何ですか?」
志乃「お前には聞いてない。」
凛華「妖怪?」
志乃「そう。さっきの鳥の方は妬喰っていう妖怪で人の感情を食べるんだ。」
凛華「私の感情を食べに来たの?」
志乃「そのためにさっきの糸潜を標的に取り憑かせて感情の糸を吐かせて食べやすくする。」
凛華「その、さっきの鳥も蜘蛛みたいに潰したんですか?」
志乃「いやいや、あんな大きいのは無理だ。潰してはいないが祓ってあるからそこは安心して。」
凛華「浜名瀬さんはあんなのといつも戦っているんですか?」
陽葵「浜名瀬さんは戦うっていうか無双しているんだよ。この前も、、」
志乃「お前は口を出すな。」
陽葵「何で?」
志乃「余計なことまで言いそうだ。」
陽葵「大丈夫大丈夫。考えてから喋るから。」
志乃「考えてから行動したことなんてないだろ。」
陽葵「信用がない。」
志乃「当たり前だ。」
凛華「浜名瀬さんっていつも冷たい印象だったのにこんな一面があったなんて。」
志乃「誰かに言っても、、」
凛華「はい。信じる人はいないでしょうね。あの鳥も誰にも見えていなかったみたいですし。」
志乃「分かっているならいい。」
凛華「でも何で私には見えたんですか?」
志乃「凛華の感情を何回も食べに来ていて繋がりが強くなっていたみたいだな。」
凛華「何回も来てたんですか?あんなのが?」
志乃「そして今回私が試合で感情を引き出したことにより我慢できなくなって姿を表したみたいだ。」
凛華「あの試合って妖怪を呼び寄せるためだったんですか?」
志乃「ああ、お前が鳥が苦手だと知っていたなら別の手段を考えていた。怖い思いをさせたみたいですまないな。」
凛華「あ、いえ。私、幼いころにおばあちゃんの家の鶏小屋に入って鶏達に襲われてから鳥が怖くて、、」
志乃「幼少期の恐怖は中々治らない。仕方ないだろう。」
凛華「だけど今回、浜名瀬さんが倒してくれて、少し自信がついたんです。怖いものでも倒せる人がいるんだって。」
陽葵「ん?」
凛華「なので私とお友達になってください。」
志乃「断る。」
凛華「友達も駄目なんですか?陽葵さんとは付き合っているみたいですが?」
志乃「こいつは、付きまとって来ているんだ。それにお前の場合は憑いていた妖怪も取ったからしばらくすれば妖怪は見えなくなる。」
陽葵「そうだよ。浜名瀬さんは私の友達なんだからこの場は譲らないよ。」
凛華「なら陽葵さんは妖怪が見えるんですか?何で?」
陽葵「私には霊力があるからね。」
志乃「困ったことがあれば相談くらいは聞くが、纏わりつかれるのはこいつだけで十分だ。」
凛華「そうですか。」
凛華は残念そうだ。
志乃「それで、手首は大丈夫か?」
凛華「はい。冷やしてもらって痛みはもうありません。」
志乃「この間ちょっと、事故で怪力を手に入れてしまったせいで力加減ができなくてな。」
陽葵「怪力って事故で手に入るものなの?私も事故りたい!」
凛華「たしかに、たまに男性と戦っているみたいでした。」
志乃「やっぱりまだできてなかったか。もう少し練習が必要だな。」
凛華「なら、大会までバスケ部に来ませんか?部長には私から言っておくので一緒に練習すれば力加減も覚えれるかもしれないですよ。」
志乃「怪力だから練習させてくれとは言えなくないか?」
凛華「大会の練習でって言えば浜名瀬さんなら歓迎されると思いますよ。」
志乃「いや、遠慮しておく。力が強い事のを知られたくないから。」
凛華「そうですよね。すみません。忘れてください。」
志乃「いや、ありがとう。それについては自分でなんとかする。」
凛華「わかりました。」
陽葵「ねえ、そろそろ帰ろうよ。」
志乃「もうそんな時間か。」
いつの間にか部活動が終わりそうな時間になっている。
志乃「そう言えば凛華、部活は良かったのか?」
凛華「はい。怪我もしたので今日はもう大丈夫だと言われました。」
志乃「じゃあ、そろそろ帰るか。」
3人は帰り支度をして門まで行く。
陽葵「それじゃあ、私と浜名瀬さんはこっちの道なので。」
志乃「今日は寄るところあるから1人で帰る。」
陽葵「え。もしかしてまこ姉のとこ?私も行く。」
志乃「違う。欲しい材料があるから取りに行くんだ。」
陽葵「私も行く。」
志乃「来るな。」
凛華「浜名瀬さん、また明日教室で。」
志乃「ああ、また明日。」
陽葵「むむむ。」
志乃は陽葵を撒いて妖ノ郷へ入ると真琴と出会う。
真琴「あれ?浜名瀬さん。樹霧之介の所ですか?」
志乃「いや、今回は行きたい場所があって通らせてもらっている。」
真琴「何しに行くんですか?」
志乃「姑獲鳥の事は話しただろ。」
真琴「ええ。まさか1人で行ってるとは思っていませんでした。」
真琴は刺のある言い方をする。
志乃「う。それでまだ力の微調整ができなくてちょっと取りに行きたい物があるんだ。」
真琴「取りに行く物?」
志乃「体の力を抜く道具があるんだけどその材料を取りに。」
真琴「道具を使わないといけないくらいの力なの?」
志乃「今度学校で球技大会があってそこで本気を出したいんだけど周りに怪我はさせたくないからな。」
真琴「ああ、陽葵も言ってたわね。選手になったんだ。浜名瀬さん断りそうなのに。」
志乃「休んでいた間に決まってたんだ。」
真琴「そうだったの。タイミング悪かったのね。」
志乃「決まったからには責任持ってやらないとな。」
真琴「気を付けてね。」
志乃「ああ。」
志乃は1つの出入り口に入ると霧の深い森に出る。
この森では植物が育ちにくく、そこに自生している綿の様な植物は様々なものを吸収し自身の養分にする性質を持つ。
それを素材に模様を織り込む事で様々な効力を持つ織物を織ることが出来るのだ。
前に使った禍避の織物もこれを瘴気を吸い取るように調整した物だ。
志乃は使う分を採取して持って帰ると下準備だけして今日の分を終える。
完成するのは数日後になるだろうが大会には間に合いそうだ。
練習の時間も凛華は協力的でチームの結束も深まり、大会への準備は着々と進む。
大会当日、志乃はリストバンドを着けて参加している。
それは力を吸い取るように調整した布で作った物だ。
志乃達のチームは順調に勝ち上がり決勝まで来ていた。
決勝の相手はバスケ部の部長もいる3年生のチームで、陽葵のチームはこのチームに負けている。
緊張の中、試合が始まる。
前半が終わり、3年生のチームが少しリードしている状態だったが、後半戦の始まりと共に志乃がシュートを決めて1点差まで追いついたがそれ以降は3年生のチームが守りを強めて中々点が入らない。
そんな時、凛華がボールを奪うがディフェンスされてゴールの方に行くことができない。
ボールを取られまいと後ろを向けばノーマークの志乃がいたのでパスを回す。
少し遠いが邪魔の無いこのチャンスに志乃はゴールを狙うが1on1を見ていたバスケ部の部長が叫ぶ。
部長「打たせるな!」
その言葉にディフェンスが間に合い軌道がずらされてゴールには入らなかったが代わりにマークを外された凛華がゴール下まで移動していてボールを取ることに成功し、そのままゴールを決める。
2点が入って逆転し、そのまま時間が来て試合が終了する。
凛華が志乃に手を差し出したので、それに応えてハイタッチした。
人との距離を取っていた志乃にとってあまり感じたことがない感覚だった。
終了の挨拶の後、凛華は部長に話掛けられる。
部長「いいチームワークだったじゃないか。」
凛華「いえ、部長の方も部長以外バスケ部がいないチームだったのに強かったです。」
部長「それでどうしたんだ?あれから仲良くなったみたいじゃないか。」
凛華「浜名瀬さんの事ですか?」
部長「そうだ。最初はあんなに敬遠していたじゃないか。」
凛華「最初はあの人の事よく知らなくて勝手に嫉妬してましたが、考えてた人とは違っていたので。」
部長「そうか。吹っ切れたようで良かったよ。」
凛華「はい。」
部長「それでバスケ部に誘えないかな?」
凛華「無理だと思います。」
部長「そうか。残念だな。」
3位決定戦が行われた後に結果発表と表彰式が行われた。
男女それぞれの1〜3位までのチームにメダルが送られて、女子の方のMVP選手にはバスケ部部長が選ばれ、男子の方のMVP選手にもバスケ部の人が選ばれていた。
どちらも試合中に活躍していたので納得の結果だった。
閉会式も終わり、着替えて教室へ戻るとホームルームが行われ先生から労いの言葉が贈られ、試合の振り返りとしてクラス内で話し合いの時間が設けられた。
1年で優勝することはほとんどないので女子の方は盛り上がり、試合に出た選手達の周りにはたくさんの人が集まっている。
残念な結果に終わった男子達は女子の試合を見に来ていたのでその話の和に入っている。
志乃の元にも何人か来たが無視していると凛華が来て今回出場した選手で記念写真を撮ることになり、並んでほしいと言われて渋々教室の後ろに並んでメダルを首にかけて写真を撮る。
帰りの時間になってやっと解放されると思っていた志乃は陽葵に絡まれる。
陽葵「浜名瀬さん。優勝おめでとう!」
志乃「私だけの優勝じゃないぞ。」
陽葵「それでも活躍はしたでしょ。」
志乃「選ばれたからには責任はあるからな。」
陽葵「それにしてはいつもより動き鈍くなかった?」
志乃「周りに怪我させるわけにはいかないからな。人との距離が近い競技は苦手だ。」
陽葵「そう言えば怪力は大丈夫なの?」
志乃「ああ、道具の作成が間に合ってよかったよ。」
陽葵「もしかしてそのリストバンド?」
志乃「、、着けてみるか?」
陽葵「良いの?」
凛華「あ、いた!」
ゆっくり歩いていると後ろから凛華が走って来ていた。
志乃「どうした?帰り道は違う方向だっただろ?」
凛華「いつの間にかいなくなっててびっくりしましたよ。」
陽葵「浜名瀬さんは気配を消すのが上手いからね。私も最初は待ち伏せするのに苦労したよ。」
志乃「お前に対してはもうあきらめてる。それで凛華の方は何の用だ?」
凛華「あ、いや。打ち上げの話出ていたけど聞いていませんでした?」
志乃「強制参加だったか?」
凛華「まあ、出ないんだなとは予想してましたけど。浜名瀬さんがいないとこっちに全部話が振られるんですよ。」
志乃「最後のシュート入れた本人だからな。」
凛華「それでも浜名瀬さんがいなければ優勝はできませんでした。」
志乃「だが入らないと分かっているシュートを打てたのはお前がゴール下に移動していたからだぞ。」
陽葵「あれ、入らないって分かっていたの?」
志乃「さすがにあの状態では打てない。」
凛華「私を信用してくれてたんですね。」
志乃「まあ。入れてくれるとは思ってた。」
凛華「嬉しいです!」
陽葵「そう言えば浜名瀬さんとハイタッチしてたしずるいよ。」
凛華「あなたが持っているそれは貰ったんじゃないの?」
凛華は陽葵の持っているリストバンドを指さしている。
陽葵「そ、、」
志乃「うるさいから貸しただけだ満足したら返せ。」
陽葵「ええー。ケチ。」
志乃「しばらく使うし、作るのに手間がかかるんだ。」
凛華「浜名瀬さんの手作りなんですか?」
志乃「着けてみれば分かる。」
陽葵「それなら。」
陽葵はリストバンドを付けてみると体中の力が抜けて座り込む。
陽葵「え?立てない。」
志乃「分かっただろ。返せ。」
志乃は陽葵の腕からリストバンドを外して自分に着け直す。
凛華「今のは?」
志乃「こいつは力を吸い取ってくれるんだ。力を自身で制御していたら全力を出せないからな。」
陽葵「何か中二病のような話だけど本当なんだよね。」
凛華「へー。」
志乃「着けてみる?」
凛華「いいえ。止めときます。今の見たらちょっと怖いです。」
志乃「そうか。」
凛華「だけど効果の無い物なら欲しいです。」
陽葵「あ。それなら私も欲しい!」
志乃「頑張ったらな。」
陽葵「いつも頑張ってるよ。」
志乃「もうすぐ夏休みだろ。」
陽葵「そうだった。楽しみにしてるんだからこれ以上期限を延ばさないでよ。」
志乃「問題を起こさなかったらな。」
凛華「何の話ですか?」
陽葵「蓮見さんには関係ない事だよ。」
凛華「な。」
志乃「すまないがこれは陽葵の言う通りだ。」
凛華「わかりました。」
陽葵「浜名瀬さんの言うことなら素直なんだ。」
凛華「あなたには関係ないでしょ。」
陽葵「関係あるもん。」
凛華「どうして。」
陽葵「私は夏休み浜名瀬さんに、、」
陽葵の話の途中で志乃が口を塞ぐ。
志乃「考えてから行動しろと何度言わせる気だ。」
陽葵「ほめんなはい。」
志乃「凛華、私の肩を見て何か思うことはあるか?」
志乃の肩には12号が乗っている。
凛華「え?何かあるんですか?」
志乃「そう言うことだ。悪いがお前をこれ以上巻き込むわけにはいかない。」
凛華「、、わかりました。」
陽葵「私には見えてるんだよ。浜名瀬さんの肩にいるの。」
志乃「これ以上問題のある発言するなら、、」
陽葵「ごめんなさい。」
凛華「浜名瀬さん大変ですね。」
志乃「本当に何でこいつなんだか。」
陽葵「それって私を悪く言ってる?」
志乃「そうだ。」
陽葵「酷い。」
志乃「もう帰るか。」
凛華「あ。じゃあ、私もこれで。」
志乃「ああ、またな。」
凛華「はい。」
そして凛華と別れそれぞれの帰路に着く。
しばらく歩くと志乃と陽葵も別れて家に帰った。
次の登校日、志乃が登校すると凛華がいたので志乃は凛華の机に1つのリストバンドを置く。
凛華「これって?」
志乃「欲しいと言っていたから作ってきたが、いらなかったか?」
凛華「いえ、ありがとうございます。」
志乃「なら良かった。」
凛華「ちなみに着けても大丈夫ですか?」
志乃「普通の素材で作っているから大丈夫だぞ。」
凛華「本当に貰っても良いんですか?」
志乃「そのために作ったからな。」
凛華「頑張ったらとか言ってませんでしたか?」
志乃「球技大会で頑張っただろ?」
凛華「それならありがたく着けさせてもらいます。」
志乃「ああ。」
凛華は早速着けて嬉しそうだ。
それからしばらく学校では必勝祈願としてリストバンドが流行り、志乃にリストバンドの作成依頼が来たが全て断った。
さて、そろそろ夏休みだ。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




