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14話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

志乃(しの)は8号と入れ替わるために2号と6号に姿と音を消してもらいこっそりと部屋に入ると後ろから声をかけられる。

黒根(くろね)志乃(しの)。お主は縛りつけんと休めんのか。」

そこには樹霧之介(きりのすけ)黒根(くろね)がいた。

志乃(しの)「何でわかった。」

志乃(しの)は2号と6号の術を解いて姿を現す。

黒根(くろね)「同じ手が2度通じると思っていたのか?」

志乃(しの)「悪かったと思う。けど1人で行きたかったんだ。」

黒根(くろね)「わざと相手の攻撃を受けたり無茶しおって。」

志乃(しの)「どこまで知っているんだ?」

黒根(くろね)「お主は病み上がりなんじゃぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「父さん、そろそろ、、」

黒根(くろね)「すまん。説教は後だ。」

志乃(しの)「なんで?って樹霧之介(きりのすけ)どうした?」

樹霧之介(きりのすけ)の顔色が悪く少しふらふらしている。

黒根(くろね)志乃(しの)、今はわしの言う通りにしてくれ。」

志乃(しの)「良いけど。後で説明はしてくれよ。」

志乃(しの)黒根(くろね)の言う通りに部屋の隅へ座り、樹霧之介(きりのすけ)を抱えて目を閉じる。

志乃(しの)「これで良いのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。少し楽になりました。」

志乃(しの)「それで、樹霧之介(きりのすけ)はどうしたんだ?」

黒根(くろね)「正直お前には話したく無いが仕方ない。」

志乃(しの)「瘴気の中にいた事と関係あるのか?」

黒根(くろね)「それは関係無い。志乃(しの)、お前は樹霧之介(きりのすけ)の木の実を食べたじゃろう?」

志乃(しの)「ああ。美味しかったな。」

黒根(くろね)「わしには使えんが、柚子(ゆず)樹霧之介(きりのすけ)は木の実を食べさせた相手と感覚を共有できるんじゃ。」

志乃(しの)「え、じゃあ。さっきの姑獲鳥(うぶめ)とのやりとりって全部、、」

黒根(くろね)「見ていた。正確には樹霧之介(きりのすけ)が、じゃが。」

志乃(しの)柚子(ゆず)がたまに鋭い時あったのも?」

黒根(くろね)「この能力じゃろうな。」

志乃(しの)「それはまあ、わかったが何で樹霧之介(きりのすけ)はこんなに気分が悪そうなんだ?」

黒根(くろね)「今回初めて使ったからか制御が上手くいかんようじゃ。」

志乃(しの)「感覚って言ったら視覚とかだよな。2つ見えるとかそうゆうのか?」

黒根(くろね)「そうみたいじゃ。それで酔ってしまっての。木の実を食べた相手と距離が近いと制御しやすいらしくて今こうしているというわけじゃ。」

志乃(しの)「目を閉じるのも入る情報を少なくしているんだな。それでいつまでこうしていれば良いんだ?」

黒根(くろね)「分からん。」

志乃(しの)「え?」

黒根(くろね)「この能力についてはわしも柚子(ゆず)から詳しい事は聞いとらん。樹霧之介(きりのすけ)も初めてじゃからいつ効力が切れるか正直わからん。」

樹霧之介(きりのすけ)「すみません。騙すような事をしたうえにこんな事になってしまって、、」

黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)謝るな。こいつはわしらを騙すつもりで8号を置いて行ってるんじゃぞ。」

志乃(しの)「ごめんって。」

黒根(くろね)「悪いと思うならしばらく樹霧之介(きりのすけ)に付き合ってくれ。」

志乃(しの)「元はと言えば私のせいだからな。」

黒根(くろね)「わかっているなら良い。今回のような事はあまりやらんでくれ。」

志乃(しの)「それでも、、」

黒根(くろね)「わかっとる。1人の親として放っておけんだのじゃろ?」

志乃(しの)「自分の子との別れなんてどんな形であれ寂しいのに、もうすぐ会えると思っていた我が子のと別れとか考えただけで苦しいよ。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)を抱えた腕に力が入る。

樹霧之介(きりのすけ)「痛い痛い。志乃(しの)さん。痛いです。」

志乃(しの)「え、ごめん。そんなに力入れて無いと思ったんだけど、、」

志乃(しの)は直ぐに樹霧之介(きりのすけ)から手を離す。

黒根(くろね)志乃(しの)姑獲鳥(うぶめ)が成仏する時赤ん坊を持ったじゃろ。」

志乃(しの)「そうだった。忘れてた。」

樹霧之介(きりのすけ)「どうしたんですか?」

黒根(くろね)姑獲鳥(うぶめ)から赤ん坊を渡されてそれを持つとどんどん重くなっていくんじゃ。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。けろっとしてましたよね。」

志乃(しの)「霊力で筋力を強化してたからな。」

黒根(くろね)「それで最後まで耐えると怪力になるんじゃ。」

樹霧之介(きりのすけ)「重い赤ん坊を持てる時点で既に怪力では?」

志乃(しの)「こう言う話はたまに嘘が混じっているからな。私も信じていなかったんだが。」

黒根(くろね)「怪力が手に入ってしまったと。」

志乃(しの)「霊力を使わずに力を使えるのは良いが、力加減を覚えないと。」

樹霧之介(きりのすけ)「なら僕と同じですね。」

志乃(しの)「あれ?そう言えば私、目を開けてたけど樹霧之介(きりのすけ)は大丈夫か?」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)から手を離すときに目も開けてしまっていた。

樹霧之介(きりのすけ)「あ、本当です。効果切れましたね。」

志乃(しの)「大体一晩くらいの効果時間か。」

黒根(くろね)「良かった。それで志乃(しの)よ。姑獲鳥(うぶめ)と話していた内容は全て本当の事か?」

志乃(しの)「どんな話したか覚えてないな。」

黒根(くろね)「、、もう、新しい呪いを封印せんでくれ。」

志乃(しの)「あれも聞いてたのか。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。辛い事を1人で抱え込まないで下さい。」

志乃(しの)「だけどあくまでも他人の記憶であって自分に起こった事ではないよ。」

黒根(くろね)「それでも感情までわかるんじゃろ?」

志乃(しの)「、、ごめん。こんな事なんて言えば良いかわからなくて。」

黒根(くろね)「あの規模の呪いの記憶を全て見たのか?」

志乃(しの)「そうしないと解呪もできないくらい暴れるから。」

黒根(くろね)「わしはそれをお前1人にこの長い間押しつけたのか。」

志乃(しの)「違う。私が勝手にした事だ。覚悟はしていた。」

黒根(くろね)「それで、よく無事に戻ってきてくれた。」

志乃(しの)「約束したから。」

黒根(くろね)は静かに涙を流している。

志乃(しの)黒丸(くろまる)。お前は涙脆くなったな。」

黒根(くろね)柚子(ゆず)にも言われた。この姿になってから涙脆くなったなと。」

志乃(しの)「昔より強がるなと思っていたらそういう事か。」

黒根(くろね)「うるさい。お前も何か隠していそうだったからわしも隠してたんじゃ。」

志乃(しの)「私は逆だな。泣けなくなった。感情はあるが、それを顔に出す事ができない。わざとそういう顔にする事はできるけど、、あと今は痛みも感じてない。」

黒根(くろね)「今最後にさらっと恐ろしい事を言わんだか?」

志乃(しの)「別にすぐ治るからいいでしょ。」

黒根(くろね)「だが攻撃を受けた場所が分からんと危ないぞ。治りも遅くなっとる。」

志乃(しの)「感触はあるから大丈夫だって。」

黒根(くろね)「怪我の心配をしとるんじゃ。」

志乃(しの)「だから治るんだってば。」

黒根(くろね)「怪我に対する恐怖心が無くなればまた無茶するだろう。」

志乃(しの)「それは、、」

黒根(くろね)「図星か?」

志乃(しの)「あ、そろそろ朝だよな。学校に今日も休むって電話しないと。」

黒根(くろね)「逃げるな。」

志乃(しの)「その時はお前らに止めてもらうさ。」

黒根(くろね)「だったら止めたら止まれ。」

志乃(しの)「時と場合による。」

黒根(くろね)「それが駄目じゃと言っておるじゃろ。」

樹霧之介(きりのすけ)「仲良いんですね。」

志乃(しの)「そうだな。吐き出したらスッキリした。」

黒根(くろね)「わしはまだ言いたい事がある。」

志乃(しの)「歳取ると話が長いと聞くがお前も歳取ったんだな。」

黒根(くろね)「お前に言われとう無い。」

志乃(しの)「あ、先生。すみません。まだ熱が下がらなくて、、」

志乃(しの)黒根(くろね)を無視して学校へ電話をかける。

先生「今日もお休みですね。1人暮らしは大変だろうけれど無理せずに寝ていてください。」

志乃(しの)「はい。よろしくお願いします。失礼します。」

黒根(くろね)「お前は演技が上手くなったな。」

志乃(しの)は電話では病人らしく弱々しい話し方だった。

志乃(しの)「人間の中で暮らす為にも必要なスキルだからな。」

黒根(くろね)「今日はどうするつもりじゃ?」

志乃(しの)「力加減の確認と風見(かざみ)の道具を見繕わないと。」

黒根(くろね)「休む気がない事はわかった。」

樹霧之介(きりのすけ)風見(かざみ)には僕から言っておくので今日は休んでください。」

志乃(しの)「別に疲れてないから大丈夫だよ。今日が駄目なら明日も休むことになる。そうなると煩いのがいるからあまりしたくない。それに練習も必要だから早めに渡したいんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「でも、、」

志乃(しの)「道具の相性をみて、使い方を教えるだけだ。直ぐ終わるよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「わかりました。よろしくお願いします。」

志乃(しの)「それじゃ私は帰る。」

樹霧之介(きりのすけ)「送りましょうか?」

志乃(しの)「1人で帰れるよ。ありがとう。」

そして志乃(しの)はアパートへ帰る。

大人の姿なので他の人に見られてもズル休みとはわからない。

力加減に関しては霊力で強化している時と同じ感じだったのですぐに感覚はつかめたが、意識しないと力を出してしまうのでまだ危なそうだ。

しばらく体育は休みにしてもう少し様子を見る事にした。

お昼を過ぎた頃、樹霧之介(きりのすけ)風見(かざみ)を連れて志乃(しの)の元に訪れる。

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。来ましたよ。」

志乃(しの)「いらっしゃい。」

風見(かざみ)浜名瀬(はまなせ)。今日はよろしくな。」

志乃(しの)「うん。それじゃ屋敷の方に行こうか。」

風見(かざみ)「屋敷?」

志乃(しの)は押し入れを開けて中に入り、それに続いて樹霧之介(きりのすけ)風見(かざみ)も入る。

風見(かざみ)「すごい。初めはボロアパートだと思っていたけどこんなところに繋がってたんだな。」

志乃(しの)「それじゃ、早速試してみて欲しい道具がいくつかあるんだけど良いか?」

風見(かざみ)「いつでも良いぜ。」

志乃(しの)は道場の方に樹霧之介(きりのすけ)風見(かざみ)を案内する。

志乃(しの)「風系の道具をいくつか用意した。まずはここから選んでみてくれ。」

そこにはスカーフのような物や鈴の形をしている物が並んでいる。

風見(かざみ)「これ、かな。」

風見(かざみ)が選んだのは何かが彫られた地味な丸っぽい石だった。

志乃(しの)「やっぱそれか。」

樹霧之介(きりのすけ)「この石は何ですか?」

志乃(しの)「それは風護石(ふうごせき)。風で使用者を包み防御してくれる。使ってみてくれ。」

風見(かざみ)「どうやって?」

志乃(しの)「妖力を込めれば良い。」

風見(かざみ)「こうか?」

すると風見(かざみ)の周りに風が起きる。

風見(かざみ)「うわわ。」

志乃(しの)「もう少し抑えてみて。」

風見(かざみ)「や、やってみる。」

風は見えなくなったが風見(かざみ)の周りに力は感じる。

志乃(しの)「いいね。妖力の消費はどんな感じ?」

風見(かざみ)「このままなら1日は持ちそうだ。」

志乃(しの)「ちょっと石投げてみても良い?」

風見(かざみ)「良いぞ。」

志乃(しの)は小石を投げると風見(かざみ)に当たる前に弾かれる。

志乃(しの)「へー。これなら相手の攻撃を反射して反撃できそうだな。」

風見(かざみ)「あんたが持っていたのに何で知らないんだ?」

志乃(しの)「昔助けた天狗から貰ったんだが妖力でしか使えないし、私には10号がいるから使う事が無かったんだ。細かいことは知らないが何ができるかは分かるから安心してくれ。」

風見(かざみ)「そうなのか。」

志乃(しの)「次は11号出てきて。」

風見(かざみ)「何するんだ?」

志乃(しの)「瘴気のような空気に混じったものを防げるか見てみたいから11号の煙を使う。」

風見(かざみ)「わかった。」

志乃(しの)「よし。11号、この煤を煙に混ぜて撒いてくれ。」

樹霧之介(きりのすけ)「こんな部屋の中でしても大丈夫なんですか?」

志乃(しの)「そうだな。風見(かざみ)と11号はこの結界の中に入ってくれ。」

風見(かざみ)と11号が志乃(しの)が張った結界に入ると11号は結界の中を真っ黒にするが、風見(かざみ)には煤が付いていない。

その代わり11号は真っ黒になっていた。

風見(かざみ)「すごい。防げたぞ。」

志乃(しの)「だが今使ったのは煤だ。本物の瘴気では違うかもしれないからもし少しでも気分が悪くなればすぐに退避しろよ。」

風見(かざみ)「わかった。」

志乃(しの)「あとは味方を区別できるかだけど、、」

樹霧之介(きりのすけ)「手、入れないで下さいね。」

志乃(しの)「なら、この枝で触るか。」

風見(かざみ)「さっきの石もだがその竹筒、何入っているんだ?」

志乃(しの)が何かを取り出す時、大体は竹筒から9号が持ってきてくれている。

志乃(しの)「細かい事は気にしない。触ってみるぞ。風は解くなよ。」

風見(かざみ)「ああ。」

志乃(しの)が枝を優しく近づけるが枝はパキンと折れてしまう。

志乃(しの)「うーん。味方も弾いてしまうか。」

樹霧之介(きりのすけ)「だけど防御力はありますよ。」

志乃(しの)風見(かざみ)、ちょっと風護石(ふうごせき)を見せてくれ。」

風見(かざみ)「ああ。」

志乃(しの)風護石(ふうごせき)を受け取り何かを掘る。

志乃(しの)「これでもう一回試してみよう。妖力を注いでくれ。」

風見(かざみ)「わかった。」

また風見(かざみ)に枝を近づけると今度は風見(かざみ)に触る事ができる。

志乃(しの)「いい感じだな。」

そう言って志乃(しの)風見(かざみ)の頭を撫でる。

樹霧之介(きりのすけ)「あ。急に危ない事しないでください。」

志乃(しの)「安全は枝で確認しただろ?」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですけど。」

風見(かざみ)「ワイも少し驚いたぞ。」

志乃(しの)「ごめん、ごめん。今度はこの触っている枝を風見(かざみ)の意思で拒否してみて。」

風見(かざみ)「こうか?」

さっきまで風見(かざみ)に触っていても大丈夫だった枝はパキンと折れた。

志乃(しの)「次はこのまま探知能力が使えるかだな。」

風見(かざみ)「どうすれば良い?」

志乃(しの)「しばらく隣の部屋で待機してくれ。」

風見(かざみ)「わかった。」

志乃(しの)は2号で管狐(くだぎつね)の姿を消して部屋に配置する。

志乃(しの)「さて、見えない管狐(くだぎつね)を3匹見つけてくれ。」

風見(かざみ)「それは良いが、5匹分の妖力を感じるぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「え。すごい。」

風見(かざみ)「何だ?」

志乃(しの)「まあ、私は隠れているのは3匹だとは言ってないからな。」

風見(かざみ)「意地悪だな。」

志乃(しの)「さて、探知能力も大丈夫そうだな。あとは練習次第か。どの強さでどのくらい防げるかとかそこら辺は感覚と慣れだからな。」

樹霧之介(きりのすけ)「なら後は僕達の方でやります。」

風見(かざみ)「使いこなしてみせるぜ。」

志乃(しの)「わかった。何かあればすぐに連絡してくれ。」

風見(かざみ)「ああ。ありがとな。」

志乃(しの)「それとこれも。」

志乃(しの)は石が入る大きさの巾着袋を差し出す。

志乃(しの)「丈夫な布で作った巾着だ。これに入れると良い。」

風見(かざみ)「ありがとう。」

風見(かざみ)は巾着に石を入れて紐を首にかける。

樹霧之介(きりのすけ)「これなら落としませんね。何から何までありがとうございます。」

志乃(しの)「これで風見(かざみ)も活躍できるな。頑張れ。」

風見(かざみ)「ああ。ありがとう。ワイ、みんなの役に立てるよう頑張る。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)風見(かざみ)を見送り、11号を洗ったり明日の準備をしたりした後休む事にする。

次の日、志乃(しの)は念の為マスクをして登校する。

登校してしばらくすると案の定、陽葵(ひまり)に絡まれた。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。何で休んだの?」

志乃(しの)「インフルだと学校側には伝えた筈だが?」

陽葵(ひまり)「知ってるよ。本当の理由を聞いてるの。」

志乃(しの)「何で別クラスのお前が知っているんだ。」

陽葵(ひまり)「休み明けに来たらそう言ってたよ。」

志乃(しの)「ならインフルなんだろ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんがインフルになるわけないじゃん。本当の事教えてよ。」

志乃(しの)「私だって人間なんだ。体調が悪くなる事だってある。」

陽葵(ひまり)「私のせいじゃないよね?」

志乃(しの)「半分はそうかもな。」

陽葵(ひまり)「それなら私にできることやる。」

志乃(しの)「なら大人しくしていろ。」

陽葵(ひまり)「そうじゃなくて手伝える事とか何かないの?」

志乃(しの)「私に体力を使わせるな。」

陽葵(ひまり)「だけど休んでいたんだから球技大会の事も知らないよね。」

志乃(しの)「球技大会?」

陽葵(ひまり)「そう、夏休み前にやるんだよ。」

志乃(しの)「後で先生にでも聞く。」

陽葵(ひまり)「1クラスから男女それぞれの代表者を決めてやるんだって。」

志乃(しの)「そうなのか。」

陽葵(ひまり)「うん。このクラスでももう決まっていると思うけど浜名瀬(はまなせ)さんは聞いてない?」

志乃(しの)「お前がいると聞けないんだが。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんはチーム入ってるのかな?」

志乃(しの)「お前が知る必要は無いだろ。」

陽葵(ひまり)「今日私のクラスと合同練習あるからそこでわかると思うからいいか。」

志乃(しの)「今日は体調不良を理由に体育は休むぞ。」

陽葵(ひまり)「本当にどうしたの?」

志乃(しの)「ほらさっさと戻れ。そろそろチャイムが鳴るぞ。」

陽葵(ひまり)は渋々自分の教室へと戻って行った。

朝礼が終わると個別に先生から球技大会の説明をされる。

今年の種目はバスケで浜名瀬(はまなせ)さんは代表者として他生徒からの強い推薦もあり、本人不在だが決まってしまったとの事。

球技大会当日は全学年がトーナメント方式で優勝チームを決める。

長期連休前に学校内での親睦を深める為に行われているものだそうだ。

そして合同練習の時間がきて体育館へ移動するが志乃(しの)は見学したいと予め相談していたので着替えずに体育館の隅に座って見学をしている。

大人しく練習中のクラスメイトを見ていると何回もボールが飛んでくる。

ぶつかりはしないので無視していると模擬戦が始まり、それに参加しない生徒と見ていると少し離れた場所で見ていた生徒にボールが当たりそうになったのでそれを反射的にキャッチする。

ボールを取りに来たのか1人の女子生徒が志乃(しの)に近づく。

女子1「そんなに動けるのに見学か?仮病でも使ってんじゃないの?」

ある意味仮病なので話を変える為にも他の話に持っていきたいと思い話す。

志乃(しの)「お前はさっきから壁にボールを当てているがコントロールが苦手なのか?」

さっきから飛んできていたボールのほとんどはこの女子生徒が投げたものだった。

女子1「あ?少し運動神経が良いからって調子にのるなよ。」

女子生徒は志乃(しの)からボールを引ったくり試合に戻ろうとする。

志乃(しの)「わざとでないにしろ当てそうになったんだ。この人に謝ってから戻っても良いだろ?」

女子1「すみませんでした。」

振り向きもせず言葉だけの謝罪を残し試合に戻って行った。

女子2「何あの態度。」

当てられそうになっていた女子生徒が話しかけてくる。

志乃(しの)「何であんなに機嫌が悪いんだ?」

女子2「知らない。嫉妬じゃない?」

志乃(しの)「嫉妬?」

女子3「そうそう、今回の代表者の殆どはバスケ部の人なんだけど推薦でバスケ部以外の人が選ばれたのが気に食わないらしいよ。」

志乃(しの)の周りには野次馬が増えてきていた。

女子2「しかも浜名瀬(はまなせ)さん選んだ人結構いたからね。」

女子4「仕方ないよ。浜名瀬(はまなせ)さんなんでもそつなくこなすし運動神経良いしさ。」

女子3「私も選んだ1人だけどね。」

女子2「それでさ。浜名瀬(はまなせ)さん。助けてくれたお礼したいんだけど放課後空いてない?」

志乃(しの)「悪いけど体調がまだ戻らない。うつすといけないしお礼はいいよ。」

女子2「そうだよね。ごめんね。だけどありがとうね。」

志乃(しの)「ああ、こちらも情報をありがとう。」

志乃(しの)は元の場所に戻るが、話せるチャンスだと思われたのか他の生徒が次々話しかけてくる。

そこに模擬戦に参加していた陽葵(ひまり)も加わり余計にうるさくなったので場所を移動しようと考えていたところに先生が注意してくれたおかげでなんとか場は収まった。

また見学していると絡まれるかもしれないので次からは練習に参加する事にする。

それから2日後に体育の授業があった。

今回は陽葵(ひまり)のクラスとは別のクラスとの合同練習だ。

その時は志乃(しの)も参加して模擬戦に参加する。

あの時の女子生徒はまだ志乃(しの)の事を敵視していて同じチームであるにも関わらずパスを回す事もせずに無視をしている。

それでも志乃(しの)は相手のボールを取ったりシュートを入れたりして活躍するがその度に視線を感じる。

その女子生徒以外のバスケ部員は別に志乃(しの)を避ける事はせずに逆に部活への勧誘もしてくる。

その為休憩の時はその女子生徒は1人で体育館の隅にいる事が多かった。

志乃(しの)は気になる事があったので他のバスケ部からその女子生徒について聞いてみた。

女子生徒の名前は蓮見(はすみ) 凛華(りんか)、努力家で情熱的なのは良いがバスケ以外は平凡で他でも優秀な志乃(しの)にバスケでも追い抜かされないか対抗心を抱いているそう。

多少感情的になる事はあったが、あんなに敵意を向けたり誰かを攻撃するような事は無く、正直自分達も困惑していると言う。

休憩も終わり試合が再開される。

味方からのパスが志乃(しの)に回されるがそれを凛華(りんか)が隣から奪いそのままドリブルでゴールを決める。

他の人からブーイングが起きたが、ゴールしたから悪くないと凛華(りんか)は主張する。

だが志乃(しの)はパスを取られた事よりもその時に見えた凛華(りんか)の首筋から見えた糸の方が気になった。

ただの糸くずを見間違えただけならそれで良いが、心当たりのある妖怪がいる。

すぐに影響の出るものではないし、志乃(しの)に敵対心を抱いている相手に近付くのは逆に神経を逆なでしてしまうので良くないと思い様子を見ることにする。

学校は休みに入り、休み明けに凛華(りんか)の様子を見ると元気がないというか、無表情でどこか空を見つめている。

そしてその凛華(りんか)の首には細い糸の様な物が巻き付いていた。

授業が始まるが集中できていない様で先生に声を掛けられればいつもと変わらない返事をするが何もないと空を見つめてボーとしている。

この日も体育があり、バスケの練習をする。

練習中は変わったところはあまり見られないが明らかに志乃(しの)への嫌がらせは無くなり、練習に集中している。

少し元気は無いがこれがいつもの凛華(りんか)みたいで、志乃(しの)への嫉妬が無くなって凛華(りんか)を知っている人たちはホッとしている。

だが志乃(しの)から見れば嫉妬が無くなったというよりかは志乃(しの)に無関心になったような感じだった。

そして志乃(しの)が思っている妖怪だとすればいつあいつが襲ってくるかが分からない。

ずっと見張るわけにもいかないので志乃(しの)は自分から仕掛けてみる事にしてみる。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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