14話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃は8号と入れ替わるために2号と6号に姿と音を消してもらいこっそりと部屋に入ると後ろから声をかけられる。
黒根「志乃。お主は縛りつけんと休めんのか。」
そこには樹霧之介と黒根がいた。
志乃「何でわかった。」
志乃は2号と6号の術を解いて姿を現す。
黒根「同じ手が2度通じると思っていたのか?」
志乃「悪かったと思う。けど1人で行きたかったんだ。」
黒根「わざと相手の攻撃を受けたり無茶しおって。」
志乃「どこまで知っているんだ?」
黒根「お主は病み上がりなんじゃぞ。」
樹霧之介「父さん、そろそろ、、」
黒根「すまん。説教は後だ。」
志乃「なんで?って樹霧之介どうした?」
樹霧之介の顔色が悪く少しふらふらしている。
黒根「志乃、今はわしの言う通りにしてくれ。」
志乃「良いけど。後で説明はしてくれよ。」
志乃は黒根の言う通りに部屋の隅へ座り、樹霧之介を抱えて目を閉じる。
志乃「これで良いのか?」
樹霧之介「はい。少し楽になりました。」
志乃「それで、樹霧之介はどうしたんだ?」
黒根「正直お前には話したく無いが仕方ない。」
志乃「瘴気の中にいた事と関係あるのか?」
黒根「それは関係無い。志乃、お前は樹霧之介の木の実を食べたじゃろう?」
志乃「ああ。美味しかったな。」
黒根「わしには使えんが、柚子と樹霧之介は木の実を食べさせた相手と感覚を共有できるんじゃ。」
志乃「え、じゃあ。さっきの姑獲鳥とのやりとりって全部、、」
黒根「見ていた。正確には樹霧之介が、じゃが。」
志乃「柚子がたまに鋭い時あったのも?」
黒根「この能力じゃろうな。」
志乃「それはまあ、わかったが何で樹霧之介はこんなに気分が悪そうなんだ?」
黒根「今回初めて使ったからか制御が上手くいかんようじゃ。」
志乃「感覚って言ったら視覚とかだよな。2つ見えるとかそうゆうのか?」
黒根「そうみたいじゃ。それで酔ってしまっての。木の実を食べた相手と距離が近いと制御しやすいらしくて今こうしているというわけじゃ。」
志乃「目を閉じるのも入る情報を少なくしているんだな。それでいつまでこうしていれば良いんだ?」
黒根「分からん。」
志乃「え?」
黒根「この能力についてはわしも柚子から詳しい事は聞いとらん。樹霧之介も初めてじゃからいつ効力が切れるか正直わからん。」
樹霧之介「すみません。騙すような事をしたうえにこんな事になってしまって、、」
黒根「樹霧之介謝るな。こいつはわしらを騙すつもりで8号を置いて行ってるんじゃぞ。」
志乃「ごめんって。」
黒根「悪いと思うならしばらく樹霧之介に付き合ってくれ。」
志乃「元はと言えば私のせいだからな。」
黒根「わかっているなら良い。今回のような事はあまりやらんでくれ。」
志乃「それでも、、」
黒根「わかっとる。1人の親として放っておけんだのじゃろ?」
志乃「自分の子との別れなんてどんな形であれ寂しいのに、もうすぐ会えると思っていた我が子のと別れとか考えただけで苦しいよ。」
志乃は樹霧之介を抱えた腕に力が入る。
樹霧之介「痛い痛い。志乃さん。痛いです。」
志乃「え、ごめん。そんなに力入れて無いと思ったんだけど、、」
志乃は直ぐに樹霧之介から手を離す。
黒根「志乃。姑獲鳥が成仏する時赤ん坊を持ったじゃろ。」
志乃「そうだった。忘れてた。」
樹霧之介「どうしたんですか?」
黒根「姑獲鳥から赤ん坊を渡されてそれを持つとどんどん重くなっていくんじゃ。」
樹霧之介「志乃さん。けろっとしてましたよね。」
志乃「霊力で筋力を強化してたからな。」
黒根「それで最後まで耐えると怪力になるんじゃ。」
樹霧之介「重い赤ん坊を持てる時点で既に怪力では?」
志乃「こう言う話はたまに嘘が混じっているからな。私も信じていなかったんだが。」
黒根「怪力が手に入ってしまったと。」
志乃「霊力を使わずに力を使えるのは良いが、力加減を覚えないと。」
樹霧之介「なら僕と同じですね。」
志乃「あれ?そう言えば私、目を開けてたけど樹霧之介は大丈夫か?」
志乃は樹霧之介から手を離すときに目も開けてしまっていた。
樹霧之介「あ、本当です。効果切れましたね。」
志乃「大体一晩くらいの効果時間か。」
黒根「良かった。それで志乃よ。姑獲鳥と話していた内容は全て本当の事か?」
志乃「どんな話したか覚えてないな。」
黒根「、、もう、新しい呪いを封印せんでくれ。」
志乃「あれも聞いてたのか。」
樹霧之介「志乃さん。辛い事を1人で抱え込まないで下さい。」
志乃「だけどあくまでも他人の記憶であって自分に起こった事ではないよ。」
黒根「それでも感情までわかるんじゃろ?」
志乃「、、ごめん。こんな事なんて言えば良いかわからなくて。」
黒根「あの規模の呪いの記憶を全て見たのか?」
志乃「そうしないと解呪もできないくらい暴れるから。」
黒根「わしはそれをお前1人にこの長い間押しつけたのか。」
志乃「違う。私が勝手にした事だ。覚悟はしていた。」
黒根「それで、よく無事に戻ってきてくれた。」
志乃「約束したから。」
黒根は静かに涙を流している。
志乃「黒丸。お前は涙脆くなったな。」
黒根「柚子にも言われた。この姿になってから涙脆くなったなと。」
志乃「昔より強がるなと思っていたらそういう事か。」
黒根「うるさい。お前も何か隠していそうだったからわしも隠してたんじゃ。」
志乃「私は逆だな。泣けなくなった。感情はあるが、それを顔に出す事ができない。わざとそういう顔にする事はできるけど、、あと今は痛みも感じてない。」
黒根「今最後にさらっと恐ろしい事を言わんだか?」
志乃「別にすぐ治るからいいでしょ。」
黒根「だが攻撃を受けた場所が分からんと危ないぞ。治りも遅くなっとる。」
志乃「感触はあるから大丈夫だって。」
黒根「怪我の心配をしとるんじゃ。」
志乃「だから治るんだってば。」
黒根「怪我に対する恐怖心が無くなればまた無茶するだろう。」
志乃「それは、、」
黒根「図星か?」
志乃「あ、そろそろ朝だよな。学校に今日も休むって電話しないと。」
黒根「逃げるな。」
志乃「その時はお前らに止めてもらうさ。」
黒根「だったら止めたら止まれ。」
志乃「時と場合による。」
黒根「それが駄目じゃと言っておるじゃろ。」
樹霧之介「仲良いんですね。」
志乃「そうだな。吐き出したらスッキリした。」
黒根「わしはまだ言いたい事がある。」
志乃「歳取ると話が長いと聞くがお前も歳取ったんだな。」
黒根「お前に言われとう無い。」
志乃「あ、先生。すみません。まだ熱が下がらなくて、、」
志乃は黒根を無視して学校へ電話をかける。
先生「今日もお休みですね。1人暮らしは大変だろうけれど無理せずに寝ていてください。」
志乃「はい。よろしくお願いします。失礼します。」
黒根「お前は演技が上手くなったな。」
志乃は電話では病人らしく弱々しい話し方だった。
志乃「人間の中で暮らす為にも必要なスキルだからな。」
黒根「今日はどうするつもりじゃ?」
志乃「力加減の確認と風見の道具を見繕わないと。」
黒根「休む気がない事はわかった。」
樹霧之介「風見には僕から言っておくので今日は休んでください。」
志乃「別に疲れてないから大丈夫だよ。今日が駄目なら明日も休むことになる。そうなると煩いのがいるからあまりしたくない。それに練習も必要だから早めに渡したいんだ。」
樹霧之介「でも、、」
志乃「道具の相性をみて、使い方を教えるだけだ。直ぐ終わるよ。」
樹霧之介「わかりました。よろしくお願いします。」
志乃「それじゃ私は帰る。」
樹霧之介「送りましょうか?」
志乃「1人で帰れるよ。ありがとう。」
そして志乃はアパートへ帰る。
大人の姿なので他の人に見られてもズル休みとはわからない。
力加減に関しては霊力で強化している時と同じ感じだったのですぐに感覚はつかめたが、意識しないと力を出してしまうのでまだ危なそうだ。
しばらく体育は休みにしてもう少し様子を見る事にした。
お昼を過ぎた頃、樹霧之介が風見を連れて志乃の元に訪れる。
樹霧之介「志乃さん。来ましたよ。」
志乃「いらっしゃい。」
風見「浜名瀬。今日はよろしくな。」
志乃「うん。それじゃ屋敷の方に行こうか。」
風見「屋敷?」
志乃は押し入れを開けて中に入り、それに続いて樹霧之介と風見も入る。
風見「すごい。初めはボロアパートだと思っていたけどこんなところに繋がってたんだな。」
志乃「それじゃ、早速試してみて欲しい道具がいくつかあるんだけど良いか?」
風見「いつでも良いぜ。」
志乃は道場の方に樹霧之介と風見を案内する。
志乃「風系の道具をいくつか用意した。まずはここから選んでみてくれ。」
そこにはスカーフのような物や鈴の形をしている物が並んでいる。
風見「これ、かな。」
風見が選んだのは何かが彫られた地味な丸っぽい石だった。
志乃「やっぱそれか。」
樹霧之介「この石は何ですか?」
志乃「それは風護石。風で使用者を包み防御してくれる。使ってみてくれ。」
風見「どうやって?」
志乃「妖力を込めれば良い。」
風見「こうか?」
すると風見の周りに風が起きる。
風見「うわわ。」
志乃「もう少し抑えてみて。」
風見「や、やってみる。」
風は見えなくなったが風見の周りに力は感じる。
志乃「いいね。妖力の消費はどんな感じ?」
風見「このままなら1日は持ちそうだ。」
志乃「ちょっと石投げてみても良い?」
風見「良いぞ。」
志乃は小石を投げると風見に当たる前に弾かれる。
志乃「へー。これなら相手の攻撃を反射して反撃できそうだな。」
風見「あんたが持っていたのに何で知らないんだ?」
志乃「昔助けた天狗から貰ったんだが妖力でしか使えないし、私には10号がいるから使う事が無かったんだ。細かいことは知らないが何ができるかは分かるから安心してくれ。」
風見「そうなのか。」
志乃「次は11号出てきて。」
風見「何するんだ?」
志乃「瘴気のような空気に混じったものを防げるか見てみたいから11号の煙を使う。」
風見「わかった。」
志乃「よし。11号、この煤を煙に混ぜて撒いてくれ。」
樹霧之介「こんな部屋の中でしても大丈夫なんですか?」
志乃「そうだな。風見と11号はこの結界の中に入ってくれ。」
風見と11号が志乃が張った結界に入ると11号は結界の中を真っ黒にするが、風見には煤が付いていない。
その代わり11号は真っ黒になっていた。
風見「すごい。防げたぞ。」
志乃「だが今使ったのは煤だ。本物の瘴気では違うかもしれないからもし少しでも気分が悪くなればすぐに退避しろよ。」
風見「わかった。」
志乃「あとは味方を区別できるかだけど、、」
樹霧之介「手、入れないで下さいね。」
志乃「なら、この枝で触るか。」
風見「さっきの石もだがその竹筒、何入っているんだ?」
志乃が何かを取り出す時、大体は竹筒から9号が持ってきてくれている。
志乃「細かい事は気にしない。触ってみるぞ。風は解くなよ。」
風見「ああ。」
志乃が枝を優しく近づけるが枝はパキンと折れてしまう。
志乃「うーん。味方も弾いてしまうか。」
樹霧之介「だけど防御力はありますよ。」
志乃「風見、ちょっと風護石を見せてくれ。」
風見「ああ。」
志乃は風護石を受け取り何かを掘る。
志乃「これでもう一回試してみよう。妖力を注いでくれ。」
風見「わかった。」
また風見に枝を近づけると今度は風見に触る事ができる。
志乃「いい感じだな。」
そう言って志乃は風見の頭を撫でる。
樹霧之介「あ。急に危ない事しないでください。」
志乃「安全は枝で確認しただろ?」
樹霧之介「そうですけど。」
風見「ワイも少し驚いたぞ。」
志乃「ごめん、ごめん。今度はこの触っている枝を風見の意思で拒否してみて。」
風見「こうか?」
さっきまで風見に触っていても大丈夫だった枝はパキンと折れた。
志乃「次はこのまま探知能力が使えるかだな。」
風見「どうすれば良い?」
志乃「しばらく隣の部屋で待機してくれ。」
風見「わかった。」
志乃は2号で管狐の姿を消して部屋に配置する。
志乃「さて、見えない管狐を3匹見つけてくれ。」
風見「それは良いが、5匹分の妖力を感じるぞ。」
樹霧之介「え。すごい。」
風見「何だ?」
志乃「まあ、私は隠れているのは3匹だとは言ってないからな。」
風見「意地悪だな。」
志乃「さて、探知能力も大丈夫そうだな。あとは練習次第か。どの強さでどのくらい防げるかとかそこら辺は感覚と慣れだからな。」
樹霧之介「なら後は僕達の方でやります。」
風見「使いこなしてみせるぜ。」
志乃「わかった。何かあればすぐに連絡してくれ。」
風見「ああ。ありがとな。」
志乃「それとこれも。」
志乃は石が入る大きさの巾着袋を差し出す。
志乃「丈夫な布で作った巾着だ。これに入れると良い。」
風見「ありがとう。」
風見は巾着に石を入れて紐を首にかける。
樹霧之介「これなら落としませんね。何から何までありがとうございます。」
志乃「これで風見も活躍できるな。頑張れ。」
風見「ああ。ありがとう。ワイ、みんなの役に立てるよう頑張る。」
志乃は樹霧之介と風見を見送り、11号を洗ったり明日の準備をしたりした後休む事にする。
次の日、志乃は念の為マスクをして登校する。
登校してしばらくすると案の定、陽葵に絡まれた。
陽葵「浜名瀬さん。何で休んだの?」
志乃「インフルだと学校側には伝えた筈だが?」
陽葵「知ってるよ。本当の理由を聞いてるの。」
志乃「何で別クラスのお前が知っているんだ。」
陽葵「休み明けに来たらそう言ってたよ。」
志乃「ならインフルなんだろ。」
陽葵「浜名瀬さんがインフルになるわけないじゃん。本当の事教えてよ。」
志乃「私だって人間なんだ。体調が悪くなる事だってある。」
陽葵「私のせいじゃないよね?」
志乃「半分はそうかもな。」
陽葵「それなら私にできることやる。」
志乃「なら大人しくしていろ。」
陽葵「そうじゃなくて手伝える事とか何かないの?」
志乃「私に体力を使わせるな。」
陽葵「だけど休んでいたんだから球技大会の事も知らないよね。」
志乃「球技大会?」
陽葵「そう、夏休み前にやるんだよ。」
志乃「後で先生にでも聞く。」
陽葵「1クラスから男女それぞれの代表者を決めてやるんだって。」
志乃「そうなのか。」
陽葵「うん。このクラスでももう決まっていると思うけど浜名瀬さんは聞いてない?」
志乃「お前がいると聞けないんだが。」
陽葵「浜名瀬さんはチーム入ってるのかな?」
志乃「お前が知る必要は無いだろ。」
陽葵「今日私のクラスと合同練習あるからそこでわかると思うからいいか。」
志乃「今日は体調不良を理由に体育は休むぞ。」
陽葵「本当にどうしたの?」
志乃「ほらさっさと戻れ。そろそろチャイムが鳴るぞ。」
陽葵は渋々自分の教室へと戻って行った。
朝礼が終わると個別に先生から球技大会の説明をされる。
今年の種目はバスケで浜名瀬さんは代表者として他生徒からの強い推薦もあり、本人不在だが決まってしまったとの事。
球技大会当日は全学年がトーナメント方式で優勝チームを決める。
長期連休前に学校内での親睦を深める為に行われているものだそうだ。
そして合同練習の時間がきて体育館へ移動するが志乃は見学したいと予め相談していたので着替えずに体育館の隅に座って見学をしている。
大人しく練習中のクラスメイトを見ていると何回もボールが飛んでくる。
ぶつかりはしないので無視していると模擬戦が始まり、それに参加しない生徒と見ていると少し離れた場所で見ていた生徒にボールが当たりそうになったのでそれを反射的にキャッチする。
ボールを取りに来たのか1人の女子生徒が志乃に近づく。
女子1「そんなに動けるのに見学か?仮病でも使ってんじゃないの?」
ある意味仮病なので話を変える為にも他の話に持っていきたいと思い話す。
志乃「お前はさっきから壁にボールを当てているがコントロールが苦手なのか?」
さっきから飛んできていたボールのほとんどはこの女子生徒が投げたものだった。
女子1「あ?少し運動神経が良いからって調子にのるなよ。」
女子生徒は志乃からボールを引ったくり試合に戻ろうとする。
志乃「わざとでないにしろ当てそうになったんだ。この人に謝ってから戻っても良いだろ?」
女子1「すみませんでした。」
振り向きもせず言葉だけの謝罪を残し試合に戻って行った。
女子2「何あの態度。」
当てられそうになっていた女子生徒が話しかけてくる。
志乃「何であんなに機嫌が悪いんだ?」
女子2「知らない。嫉妬じゃない?」
志乃「嫉妬?」
女子3「そうそう、今回の代表者の殆どはバスケ部の人なんだけど推薦でバスケ部以外の人が選ばれたのが気に食わないらしいよ。」
志乃の周りには野次馬が増えてきていた。
女子2「しかも浜名瀬さん選んだ人結構いたからね。」
女子4「仕方ないよ。浜名瀬さんなんでもそつなくこなすし運動神経良いしさ。」
女子3「私も選んだ1人だけどね。」
女子2「それでさ。浜名瀬さん。助けてくれたお礼したいんだけど放課後空いてない?」
志乃「悪いけど体調がまだ戻らない。うつすといけないしお礼はいいよ。」
女子2「そうだよね。ごめんね。だけどありがとうね。」
志乃「ああ、こちらも情報をありがとう。」
志乃は元の場所に戻るが、話せるチャンスだと思われたのか他の生徒が次々話しかけてくる。
そこに模擬戦に参加していた陽葵も加わり余計にうるさくなったので場所を移動しようと考えていたところに先生が注意してくれたおかげでなんとか場は収まった。
また見学していると絡まれるかもしれないので次からは練習に参加する事にする。
それから2日後に体育の授業があった。
今回は陽葵のクラスとは別のクラスとの合同練習だ。
その時は志乃も参加して模擬戦に参加する。
あの時の女子生徒はまだ志乃の事を敵視していて同じチームであるにも関わらずパスを回す事もせずに無視をしている。
それでも志乃は相手のボールを取ったりシュートを入れたりして活躍するがその度に視線を感じる。
その女子生徒以外のバスケ部員は別に志乃を避ける事はせずに逆に部活への勧誘もしてくる。
その為休憩の時はその女子生徒は1人で体育館の隅にいる事が多かった。
志乃は気になる事があったので他のバスケ部からその女子生徒について聞いてみた。
女子生徒の名前は蓮見 凛華、努力家で情熱的なのは良いがバスケ以外は平凡で他でも優秀な志乃にバスケでも追い抜かされないか対抗心を抱いているそう。
多少感情的になる事はあったが、あんなに敵意を向けたり誰かを攻撃するような事は無く、正直自分達も困惑していると言う。
休憩も終わり試合が再開される。
味方からのパスが志乃に回されるがそれを凛華が隣から奪いそのままドリブルでゴールを決める。
他の人からブーイングが起きたが、ゴールしたから悪くないと凛華は主張する。
だが志乃はパスを取られた事よりもその時に見えた凛華の首筋から見えた糸の方が気になった。
ただの糸くずを見間違えただけならそれで良いが、心当たりのある妖怪がいる。
すぐに影響の出るものではないし、志乃に敵対心を抱いている相手に近付くのは逆に神経を逆なでしてしまうので良くないと思い様子を見ることにする。
学校は休みに入り、休み明けに凛華の様子を見ると元気がないというか、無表情でどこか空を見つめている。
そしてその凛華の首には細い糸の様な物が巻き付いていた。
授業が始まるが集中できていない様で先生に声を掛けられればいつもと変わらない返事をするが何もないと空を見つめてボーとしている。
この日も体育があり、バスケの練習をする。
練習中は変わったところはあまり見られないが明らかに志乃への嫌がらせは無くなり、練習に集中している。
少し元気は無いがこれがいつもの凛華みたいで、志乃への嫉妬が無くなって凛華を知っている人たちはホッとしている。
だが志乃から見れば嫉妬が無くなったというよりかは志乃に無関心になったような感じだった。
そして志乃が思っている妖怪だとすればいつあいつが襲ってくるかが分からない。
ずっと見張るわけにもいかないので志乃は自分から仕掛けてみる事にしてみる。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




