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9話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

玲香(れいか)は手法を変えて志乃(しの)を苦しめる。

部屋には窓は無く、時間は分からない。

玲香(れいか)「ねえ、そろそろ話してくれない?」

志乃(しの)「何を?」

玲香(れいか)「呪いを大人しくした方法。」

志乃(しの)「聞いても何もならないぞ。」

玲香(れいか)「それは聞いた。だけどあなた私の拷問に反応示さないんだもの。」

志乃(しの)「なら、大体分かってんだろ。」

玲香(れいか)「だけど、そんなは事あり得ない。」

志乃(しの)「時間はあったんだ。」

玲香(れいか)「まさか、全て見たの?あの大量の呪いの記憶を?」

呪いが暴れる原因は知ってほしいから、だから自身に起きたことや苦しみを誰かに共有すればほとんどの呪いは大人しくなる。

その為ただの記憶というよりかはその時感じた痛みや感情も共有される。

志乃(しの)「...。」

玲香(れいか)「あり得ない。何であなた生きてるの?人魚の呪いだって体を治すだけ。廃人になっていてもおかしくないのに。」

志乃(しの)柚子(ゆず)達と会う前だったら私もそうなっていたと思う。まあ、会って無かったらこんな事もしなかっただろうけど。」

玲香(れいか)「最初は無くなった力を少しでも補充できればと思ってたんだけど。あなたを呪いに変えられればもっと強くなれそうね。」

志乃(しの)「できると思うか?」

玲香(れいか)「時間をかけても良いけど、、」

玲香(れいか)は人質の方を見る。

玲香(れいか)「外にはまだまだいるのよ。ねえ、何人くらいであなたは壊れる?」

志乃(しの)「関係ない人達だろ。」

玲香(れいか)「関係ない人間だからこそあなたは苦しむんでしょ。」

志乃(しの)「お前は何で力を欲しがる。」

玲香(れいか)「話変えるの?」

志乃(しの)「...。」

玲香(れいか)「まあいいわ。自由になるためよ。」

志乃(しの)「自由?」

玲香(れいか)「そうよ。あの家に生まれて私は結界の中から出られなかった。」

志乃(しの)「だがその原因を作った当主を助けようとしていたじゃないか。」

玲香(れいか)「助けようとしたわけじゃない。」

志乃(しの)「どういう事だ?」

玲香(れいか)「そうね。昔話する前にそろそろ効果消える時間だし、また吞んでもらおうか?」

玲香(れいか)は丸薬を取り出し、それを見て志乃(しの)は嫌な顔をする。

玲香(れいか)「何で拷問の時よりも嫌な顔するのよ。」

志乃(しの)「、、呑めば分かる。」

玲香(れいか)「今の私には霊力が無いから呑んでも呑まなくても変わらない。いいから口を開けなさい。」

嫌がる志乃(しの)玲香(れいか)は無理矢理丸薬を口に押し込む。

丸薬を呑んだ志乃(しの)のどんよりした顔を見て不思議に思った玲香(れいか)は丸薬を1つ口に入れてみる。

すると独特のにおいと苦みが口と鼻いっぱいに広がり、すぐに口から出したとしても何とも言えない感じがなかなか抜けない。

玲香(れいか)「う、これ。よくこんなの呑みこめるわね。」

志乃(しの)「お前が呑ませたんだ。」

玲香(れいか)「まあいいわ。私がじじいにあんたの人魚の呪いを移そうとした理由よね。」

玲香(れいか)が話すには斎守(さいもり)家は呪術師として力を付けた家だったが、相手を呪えなかった呪いは術者の方に行く、一々解呪していれば切りがないので影響がないからと無視していたら積み重なって呪いは大きくなっていった。

しだいに体調に支障を及ぼすようになり、気付けば解呪が難しくなっていたうえに他の行き先の無い呪いも吸収し大きくなる。

呪いを恐れるようになった当主は山の中腹に屋敷を立てて結界を張りその中に籠り、他にも保険として変わり身の術をかけたりと様々な術を重ね掛けしていた。

その頃には人からの目にも怯えるようになり周りの目を気にしてまた呪いを増やす。

呪いで富を築いていたので辞めるわけにもいかず、呪いは大きくなるばかり。

しまいには血縁である玲香(れいか)の父親は呪いに狂わされて玲香(れいか)が小さい頃に亡くなった。

母親もそれで怖くなり夜逃げしていなくなった。

玲香(れいか)はその頃から当主を恨んでいたが自分も結界の中にいるか、たまに厳重に準備して数時間ほど、それも近場にしか外出できなかった。

そして玲香(れいか)は人魚の呪いを使い当主を死なない人柱にして呪いを抑える道具にしようとしていたということだった。

玲香(れいか)「結果は私が怨霊(おんりょう)になってあんなに怯えていた呪いを欲するようになったとか笑えるよね。」

志乃(しの)「それでお前は何で私の封印から逃れられたんだ?」

玲香(れいか)「それが知りたくてこんなつまんない話静かに聞いてくれてたの?」

志乃(しの)「そうだな。」

玲香(れいか)「少しくらい否定しなさいよ。まあ、私もあなたが私の目の前に来て手を伸ばしてきた事までしか覚えてないけど。」

志乃(しの)「逃げる意思は無かったのか?」

玲香(れいか)「逃げた覚えはない。」

志乃(しの)「なら何でお前は私の封印から逃れて怨霊(おんりょう)になるまで恨みを溜めた?」

玲香(れいか)「そう言えば何で?」

志乃(しの)「お前の協力者は誰だ?」

玲香(れいか)「協力?私は1人で、、あれ?」

玲香(れいか)の動きが止まる。

志乃(しの)玲香(れいか)?おい、しっかりしろ。」

???「気付かれてたか。」

玲香(れいか)の中から玲香(れいか)とは別の声が聞こえる。

志乃(しの)「お前が玲香(れいか)を連れ出したのか?」

???「そうさ。」

志乃(しの)「目的は?」

???「俺は一目ぼれしたんだ。」

志乃(しの)「一目ぼれ?」

???「そうだ。大きくて強くて荒々しい。あれが自分のものになれば神を超えれるって思ったね。」

志乃(しの)「お前。(たた)(がみ)か。」

(たた)(がみ)「そうだ。」

玲香(れいか)の体を黒い靄が包み込み、そこに目と口と思わしきものが現れる。

志乃(しの)「何で今更出てきたんだ?」

(たた)(がみ)「あの時はお前に勝てそうになかったからな。封印で弱ったところを狙おうと思ったが地中に埋まったせいで場所が分からなくなった。探すのにもあの辺の恨みはほとんどお前が封印してしまって俺はあの娘を掛け軸に隠すことで精一杯だった。」

志乃(しの)「そこで玲香(れいか)の恨みを増やしていたのか。」

(たた)(がみ)「そうだ。最初はお前の封印を解かせるために連れて行ったが、心地の良い恨みを持っていたからな。依り代として十分だった。」

志乃(しの)「それで、今復活したのは私が起きたからか?それとも掛け軸が神社の外に出たからか?」

(たた)(がみ)「両方だな。俺は度々外に出ていたんだ。活動時間は長くなかったがな。そして今回外に出たらお前がいた。運命だと思ったよ。」

志乃(しの)「だったらなぜ怯えていたんだ?」

(たた)(がみ)「ああ、俺は(たた)(がみ)、人に恐怖を与える事しかできないからお前の事を考えたら勝手に怯えだしたんだ。」

志乃(しの)「それからそいつを操り私の中の呪いを狙った?」

(たた)(がみ)「だが最初にお前に触れた時驚いたよ。てっきり呪いに飲み込まれていると思ったのに解呪に成功しているとは。」

志乃(しの)「ご期待に沿えなかったようで。」

(たた)(がみ)「今からでも遅くない。時間かけてでもお前を呪いに変えてやる。」

志乃(しの)「できると思っているのか?」

(たた)(がみ)「はっ。霊力も無く、柱に繋がれたお前に何ができる?」

志乃(しの)「本当にそう思っているのか?」

(たた)(がみ)「俺は玲香(れいか)より甘くないぞ。」

(たた)(がみ)志乃(しの)に手を伸ばそうとしたその時。

???「火鼠(ひねずみ)!」

鼠のように床を走る火の玉が(たた)(がみ)に飛び掛かる。

(たた)(がみ)がそれを払っていると火の玉の1つが志乃(しの)の縄を焼き切る。

樹霧之介(きりのすけ)「大丈夫ですか志乃(しの)さん!」

声がした方を見ると樹霧之介(きりのすけ)達がいる。

さっきの火の玉は(ほむら)の技だったらしい。

志乃(しの)「どうしてここに?」

(ほむら)「2日も見つからなくて心配したんだぞ。」

(しずく)「だから風見(かざみ)に探してもらったの。」

志乃(しの)「もうそんなに経っていたのか。」

真琴(まこと)「あれ、管狐(くだぎつね)の竹筒?壊れされたの?」

真琴(まこと)は部屋の隅に転がっている竹筒を指さす。

志乃(しの)「ああ、あの出入り口はもう使えない。」

(たた)(がみ)は火の玉を払って志乃(しの)達の方を向く。

(たた)(がみ)「やってくれたな。」

真琴(まこと)「式神が使えないなら危ないわ。浜名瀬(はまなせ)さんは下がってて。」

志乃(しの)「あ、それは、、」

樹霧之介(きりのすけ)「それに今霊力使えないんですよね。ここは僕達に任せてください。」

さっきの会話を聞かれていたらしい。

樹霧之介(きりのすけ)(しずく)はあそこに倒れている女性を保護してから茂蔵(もぞう)と一緒に志乃(しの)さんと風見(かざみ)を守ってください。(ほむら)真琴(まこと)は一緒に攻撃してください。」

茂蔵(もぞう)「こっちだ。」

志乃(しの)「あ、うん。」

志乃(しの)茂蔵(もぞう)に押されて扉近くの部屋の隅に連れて行かれる。

(しずく)も女性を担いで同じところに避難する。

その間にも(たた)(がみ)は黒い霧を放ち攻撃するがそれは(ほむら)の炎に阻まれる。

炎の向きや温度の調節ができるようになり、木製の建物にも関わらず周りを焼かずに攻撃できている。

樹霧之介(きりのすけ)が建物の床から木を生やし(たた)(がみ)を包み込もうとする。

草木が生えていないと操れなかったが、木材でも操れるようになっている。

だが(たた)(がみ)は木の間をすり抜けて樹霧之介(きりのすけ)達の背後に回り、今度は霧を針のようにして素早く飛ばす。

そこを真琴(まこと)が紙でガードし、紙を槍のように丸めて(たた)(がみ)に飛ばすが、(たた)(がみ)に実態はないのでそれは通り抜けて後ろの壁に刺さる。

真琴(まこと)は紙の形状を変える事はあったが攻撃時にはそのまま飛ばすことの方が多かった。

形状を変えて殺傷能力を上げることはしていなかったので成長を感じる。

たが相手は実態の無い(たた)(がみ)

ダメージの入る攻撃ができそうなのはあの中では(ほむら)だけだろう。

思った通りじわじわと追い詰められていく。

そんな時、(たた)(がみ)が黒い霧を刀に変えて真琴(まこと)の紙の盾を斬り裂いてしまった。

このままでは真琴(まこと)にも刃が届いてしまう。

樹霧之介(きりのすけ)「しまった。真琴(まこと)!」

その時志乃(しの)が飛び出して(たた)(がみ)に蹴りを入れると壁まで吹っ飛ぶ。

(たた)(がみ)「何で物理攻撃が効くんだ!?」

志乃(しの)真琴(まこと)。紙を1枚くれないか。」

真琴(まこと)「え?はい。」

志乃(しの)真琴(まこと)から貰った紙を丸めて筒を作る。

志乃(しの)「1号ここだ繋げてくれ。」

志乃(しの)がそう言うと紙でできた筒の中に空間が繋がり管狐(くだぎつね)が出てくる。

1号「ご主人。お久しぶりです。こうやってお話できる日がまた来るとは感激です。」

真琴(まこと)「え、管狐(くだぎつね)が出てきた上に喋った?え?」

12号「ご主人ご主人ご主人。やっと喋れるよ。待ってたよ。」

幼くて喋れなかった12号は成長しても志乃(しの)の霊力が足りずに喋れなかったが、今回喋れてすごく嬉しそうだ。

(たた)(がみ)「お前、まだ薬が効いているはずだ。何故式神が使える。」

志乃(しの)「あれ、私に効かないぞ。」

(たた)(がみ)「は?なら何で抵抗しなかった。」

志乃(しの)「お前を表に出すためだ。」

(たた)(がみ)「そんなことして何になる。」

志乃(しの)「お前を逃がしたくなかった。」

(たた)(がみ)「なめやがって。」

志乃(しの)「9号、打刀をお願い。」

9号「出番だ!俺はやるぜ風になるぜ。」

志乃(しの)は刀を受け取り刀を振ると(たた)(がみ)が縦に2つに分かれる。

(たた)(がみ)「さっきもそうだが実体のない俺に何故触れる。」

志乃(しの)「霊力纏わせればそんなの関係ない。」

(たた)(がみ)は全身を霧に変えると合わさって1つになる。

志乃(しの)「2号、3号手伝って。」

2号「面倒くさいの。何で呼ぶの?」

3号「何でもするぜ。何を焼けばいい?」

志乃(しの)「封印術を準備するから手伝って。1号と9号もお願い。」

2号「早く終わらせて休むの。」

3号「焼かないのは残念だが任された!」

1号「微力ながらお手伝いいたしましょう。」

9号「また俺が1番多く(ふだ)貼るもんね。」

管狐(くだぎつね)達は一斉に喋っているので聞き取るのが難しい。

だが動きは俊敏であっという間に部屋中にお(ふだ)を貼り付け、志乃(しの)は結界を張って(たた)(がみ)を閉じ込める。

志乃(しの)「危ないからみんな戻って。」

9号「戻るのも1番!」

2号「やっと休める。」

3号「また呼べよ。次は燃やす。」

1号「それでは失礼します。」

12号「ヤダヤダ、やっと喋れたのに戻るのヤダ。次絶対喋れなくなってるからもっといーたーい。」

志乃(しの)「、、4号頼む。」

4号「ほら、一緒に封印されたいの?戻りなさい。」

12号「やー。」

12号も4号に引っ張られ半ば強引に紙筒の中に入っていった。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)これ持ってて。後、隣の部屋にも人質いるみたいだからお願い。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)に空間を繋げた紙筒を渡す。

樹霧之介(きりのすけ)「は、はい。」

志乃(しの)「あと、結界の中には絶対に入らないでね。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

そして結界の中には志乃(しの)(たた)(がみ)のみになる。

(たた)(がみ)は結界から出ようとするが出る事はできないうえに志乃(しの)へ攻撃を仕掛けても全て斬られ無効化されてしまう。

攻撃が当たってもすぐに治る志乃(しの)とは違い、(たた)(がみ)は斬られ続けると呪いが霧散し、それは貼られたお(ふだ)の中の封呪符(ふうじゅふ)に抑え込まれ元に戻る事は無く、(たた)(がみ)は少しずつ小さくなっていく。

(たた)(がみ)「悪かった。許してくれ。」

(たた)(がみ)はすっかり小さくなって攻撃する力も残って無さそうだ。

志乃(しの)は無言のまま取り出した呪滅符(じゅめつふ)を貼ると(たた)(がみ)は煙となって消え、その直後に呪いの渦が発生する。

呪いの渦ができると封呪符(ふうじゅふ)が外れそれに抑えられていた呪いが渦に合流し、渦は大きくなる。

全ての封呪符(ふうじゅふ)が外れると呪いの渦は部屋いっぱいに張られた結界の中を満たすくらいになり、それに志乃(しの)が触れる。

すると呪いは志乃(しの)に吸い込まれて無くなった。

志乃(しの)「封印完了。」

その言葉と共に結界も消え、お(ふだ)は全て剥がれ落ちる。

樹霧之介(きりのすけ)「すごい。これが志乃(しの)さんの全盛期の力。」

結界が無くなると紙筒から12号が飛び出しキュイキュイ鳴きながら志乃(しの)に飛びつく。

呪いが戻ったことによりまた使える霊力が減ったので喋ることができなくなったようだ。

人質達も(たた)(がみ)がいなくなった事で目が覚めて各々帰って行った。

志乃(しの)「えっと。心配かけてごめんね?」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)達に向かって謝る。

樹霧之介(きりのすけ)「あ、いえ。無事でよかったです。」

茂蔵(もぞう)「おいら達は何しに来たんだよ。」

(ほむら)「結局俺らは役立たず。」

(しずく)「次からは一言言ってから実行してほしい。」

志乃(しの)「だけど私はみんなの成長が見れて良かったと思うよ。」

(ほむら)「慰めの言葉なんていらない。志乃(しの)は意地悪だ!嫌い。」

(しずく)「言い過ぎかもしれないけど今回は私も同感。」

志乃(しの)「えー。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですよ。もう少し自分を大切にしてください。」

志乃(しの)「ごめんなさい。」

真琴(まこと)「それでいくつか聞いても良い?」

志乃(しの)「答えれる事なら。」

真琴(まこと)「何で私の紙から管狐(くだぎつね)達が出てこれたの?」

志乃(しの)「いつも使っている竹筒、あれは管狐(くだぎつね)達が住んでいる空間に繋がっているのは知ってる?」

真琴(まこと)「それなら陽葵(ひまり)に聞いたことあるわ。」

志乃(しの)「あの空間は1号に管理してもらってるんだ。」

真琴(まこと)「そんなこともできるの?」

志乃(しの)「あの空間を繋げてくれたのは妖怪で妖力でしか出入口を管理できなかったからね。」

真琴(まこと)「へー。」

志乃(しの)「ちなみに妖ノ郷(あやかしのさと)を作った妖怪にしてもらった。」

真琴(まこと)「えっ。結構貴重なものなのに壊されて大丈夫なの?」

志乃(しの)「大丈夫。オリジナルは取ってあるから。」

真琴(まこと)「それなら良いのか。」

志乃(しの)「それで真琴(まこと)から紙をもらった理由は1号は筒状のものにしか出入口を繋げられないからだね。」

真琴(まこと)「紙でも良いのは便利ね。」

志乃(しの)「意外と制約はあるけどね。」

真琴(まこと)「どんな?」

志乃(しの)「形とか、筒の大きさとか。前に土管を出入口にしようとしても駄目だった。」

真琴(まこと)「何のためにそんなことを?」

志乃(しの)管狐(くだぎつね)達の空間に入ってみたくて。」

真琴(まこと)「意外とチャレンジャーなのね。」

志乃(しの)「まあ、いいだろ。黒丸(くろまる)にも報告しとかないと後でうるさいだろうから、そろそろ出よう。」

戦いに参加した3名の休憩もかねて話していたが、外に出ることにする。

外に出ると日が昇っていて明るい。

志乃(しの)「あれ?そう言えば私がいなかったのって2日間だよね。」

(ほむら)「そうだぞ。」

志乃(しの)「今日って何曜日?」

(しずく)「月曜日ね。」

志乃(しの)「今何時?」

真琴(まこと)「えっと。7時くらいよ。」

真琴(まこと)はスマホを取り出し確認する。

志乃(しの)「じゃあ、学校あるし、報告は後でするから私はこれで。」

茂蔵(もぞう)「学校ならおいらが行ってやる。」

志乃(しの)「でも。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん。報連相は大事です。逃がしませんよ。」

志乃(しの)「、、はい。」

志乃(しの)茂蔵(もぞう)に学校での注意事項を伝え、茂蔵(もぞう)志乃(しの)に変化して学校に向かう。

それから志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)達に連行されて妖ノ郷(あやかしのさと)にある樹霧之介(きりのすけ)の家に来ていた。

黒根(くろね)「皆無事で何よりじゃ。それで志乃(しの)、言いたいことはあるか?」

志乃(しの)「ご心配をおかけしてまことに申し訳ございませんでした。」

志乃(しの)は正座をしているもののそっぽを向いて反省している顔では無い。

黒根(くろね)「ちゃんと顔を見て話さんか。いい年して不貞腐れおって。」

志乃(しの)「偽装工作できればよかったのに。」

黒根(くろね)「なんか言ったか?」

志乃(しの)「なにも。」

黒根(くろね)「はぁ、お前が霊力を使えなくなって良かったのは8号での偽装が難しくなったことくらいか?」

今は管狐(くだぎつね)と離れていると指示ができないので8号を別の所で動かす事ができないのだ。

志乃(しの)「それは、忘れないか?」

黒根(くろね)「忘れるものか。あの時はよくもぐるぐる巻きにしてくれたな。」

志乃(しの)は黙って目を逸らす。

黒根(くろね)「今度無理をしようとすればお前がそうなる事を忘れるな。」

志乃(しの)「はい。」

黒根(くろね)「それで、今回は何があった?」

志乃(しの)「それは。」

志乃(しの)は周りの樹霧之介(きりのすけ)達を見る。

黒根(くろね)「どうせ過去に関係することを1人で背負いこもうとしているんだろうが、樹霧之介(きりのすけ)達も巻き込まれたんだ。秘密にすることはないだろう。」

志乃(しの)「もしかしてこれを予想してこいつらを送り込んできたのか?」

黒根(くろね)「修行の成果も見れたじゃろ?」

志乃(しの)「、、わかったよ。」

志乃(しの)はこれまであったことを話した。

斎守(さいもり)家という呪術を扱う家があり、そこで呪いが発生したこと。

その呪いを封印、解呪するために志乃(しの)の中に呪いがあり、そのために霊力が制限されて全盛期の力が出せないこと。

今回の事件は(たた)(がみ)がその斎守(さいもり)家の娘を使って志乃(しの)の中の呪いを取り出し、自身の力にしようとしていた事。

(ほむら)「今回呪いが無かったからあんなに強かったのか?」

真琴(まこと)「昔樹霧之介(きりのすけ)のお父さんと一緒に戦っていたことは知ってたけど、そんなことがあったのね。」

樹霧之介(きりのすけ)「それにしても不思議ですよね。何で人魚の効果が呪いによって弱まってしまうんでしょうか?」

真琴(まこと)「確かに、呪いって精神を蝕むものよね。肉体に効果を及ぼすものに対して作用するなんて変ね。」

志乃(しの)「呪いには精神系が多いけど他にも効果があるからたまたまそれが干渉しているんじゃないかな?私の中にあるのは複数の呪いが集まったものだから。」

樹霧之介(きりのすけ)「そういうものなんでしょうか。」

志乃(しの)「もういい?管狐(くだぎつね)達の新しい竹も取りに行きたい。」

樹霧之介(きりのすけ)「紙のままだといつ潰れるか分からないですもんね。」

黒根(くろね)「そうじゃな。今日はこれくらいにしておこう。」

真琴(まこと)「あ、その前に浜名瀬(はまなせ)さん。スマホは持ってるの?」

志乃(しの)「ああ、学校に入る時に連絡先が必要だったから持ってる。」

真琴(まこと)「なら連絡先交換しない?直ぐに連絡取れる方法あった方が良いだろうから。」

志乃(しの)「、、わかった。スマホを持っているのは真琴(まこと)だけか?」

真琴(まこと)「そうよ。」

志乃(しの)「そうか。それで電話番号を言えば良いのか?」

真琴(まこと)「メッセージアプリ入れてないの?」

志乃(しの)「それは何だ?」

真琴(まこと)「え。」

真琴(まこと)志乃(しの)にアプリのダウンロード方法を教えてからアプリの連絡先を交換する。

志乃(しの)「これで良いか?」

真琴(まこと)「ええ。」

志乃(しの)「それじゃ私は行く。黒丸(くろまる)、あの出入口は残ってる?」

黒根(くろね)「ああ、残っとるよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「あの出入口?」

志乃(しの)「、、竹林の近くに繋がっている所だよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「ああ。」

志乃(しの)「それじゃあまたね。」

真琴(まこと)「気兼ねなく連絡してよね。」

黒根(くろね)「気をつけてな。」

志乃(しの)は1つの出入口から出る。

そこは志乃(しの)が初めて妖ノ郷(あやかしのさと)に入った所であり、管狐(くだぎつね)達と出会ったお寺がある場所に繋がる所だった。

頑丈な石造りの洞穴は荒れてはいたが壊れた所はほとんどない。

お寺があった場所を通り過ぎ少し歩くと竹林があり、そこから1本竹を拝借して持ち運びやすい大きさに切って帰る。

これで予備も大丈夫だろう。

1号に持ち帰った竹筒の1つに出入口を作ってもらった後、学校の準備をして茂蔵(もぞう)と入れ替わるために2号に姿を消してもらって学校へ潜入する。

丁度休み時間になる時間だったので7号に頼んで茂蔵(もぞう)を呼んでもらう。

休み時間、人目のない体育館裏で待っていると志乃(しの)の姿をした茂蔵(もぞう)が走って来て志乃(しの)の前で変化を解く。

茂蔵(もぞう)「遅いぞ。助けてくれ浜名瀬(はまなせ)。」

志乃(しの)「何があった?」

茂蔵(もぞう)陽葵(ひまり)に追われているんだ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)?無視するか休み時間は姿を隠せば良いって言わなかった?」

茂蔵(もぞう)「それが隠れても見つけてくるんだ。」

志乃(しの)「え?」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。どこですか?」

志乃(しの)「あいつの相手は私がするから帰って大丈夫だ。ありがとうな。」

茂蔵(もぞう)「ああ、後は頼んだ。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん。犯人を倒した時の話聞かせてください。」

志乃(しの)「何の話だ?」

志乃(しの)茂蔵(もぞう)を逃がした後、陽葵(ひまり)に話しかける。

陽葵(ひまり)「あ、浜名瀬(はまなせ)さん。今日は無口で目も合わせてくれないし、逃げるしでどうしたんですか?」

志乃(しの)「なぜ追ってくる。」

陽葵(ひまり)「なんか今日の浜名瀬(はまなせ)さん見つけやすいっていうか、ここかなって思ったところにいるんだよね。だけど今は少し違ったよ。なんで?」

陽葵(ひまり)も修行の成果が出ていて妖気が分かるようになっているんだろう。

本人は無自覚だが教えたらめんどくさそうだと思い志乃(しの)はしばらく黙っておくことにする。

陽葵(ひまり)「それで朝礼で言ってた犯人が一昨日捕まった話なんだけど。」

志乃(しの)「知らん。」

陽葵(ひまり)「だけど道端で気絶していたんだよ。何か知っているんじゃないの?」

志乃(しの)「何がぶつかったんじゃないのか?」

陽葵(ひまり)「不自然だよ。」

志乃(しの)「とにかくお前に話すことは無い。」

陽葵(ひまり)「むー。まこ姉に連絡しても分からないだったし、何で隠そうとするの。」

志乃(しの)「スマホか。」

陽葵(ひまり)「は、そう言えば浜名瀬(はまなせ)さんの連絡先聞いてない。浜名瀬(はまなせ)さんも持ってるよねスマホ。」

志乃(しの)「持っているがお前に教えたら煩くなりそうだから教えん。」

陽葵(ひまり)「何かあった時に役に立つよ。教えてよ。」

志乃(しの)「そうだな。教えたら大人しくするか?」

陽葵(ひまり)「え、なるなる。大人しくする。」

志乃(しの)「約束は守れるか?」

陽葵(ひまり)「約束?どんな?」

志乃(しの)「一つ、連絡はこちらからのみ。二つ、本当に危ない時以外連絡するな。三つ、私の連絡先を私の許可なく他人に教えるな。」

陽葵(ひまり)「えーそれじゃあ連絡先の交換の意味ないじゃん。」

志乃(しの)「もし破れば私はスマホを解約します。」

陽葵(ひまり)「うぐぐ。わかった。こっちから連絡はしません。教えてください。」

志乃(しの)「良いだろう。」

そしてアプリで連絡先を交換する。

陽葵(ひまり)「やったー。浜名瀬(はまなせ)さんの連絡先ゲット。」

志乃(しの)「約束。」

陽葵(ひまり)「わかってる。」

それから予鈴がなって2人は授業に戻る。

それからしばらくは平和な日が続いた。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。


⭐︎おまけ⭐︎ カットされたセリフ

※4号が12号を紙筒に戻すシーン。

12号「やーだー帰りたくないー。12匹全員の書き分けが難しいからって喋れない設定が追加されたのに、今帰ったら最終回まで絶対喋れないもん。何で過去編は僕だけ喋れないの。一番外に出てるのに!」

4号「まだ喋ってない管狐もいるのよ。これだけ喋ればいいでしょ。ほら戻りなさい。」

カット理由:メタいから。

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