9話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
玲香は手法を変えて志乃を苦しめる。
部屋には窓は無く、時間は分からない。
玲香「ねえ、そろそろ話してくれない?」
志乃「何を?」
玲香「呪いを大人しくした方法。」
志乃「聞いても何もならないぞ。」
玲香「それは聞いた。だけどあなた私の拷問に反応示さないんだもの。」
志乃「なら、大体分かってんだろ。」
玲香「だけど、そんなは事あり得ない。」
志乃「時間はあったんだ。」
玲香「まさか、全て見たの?あの大量の呪いの記憶を?」
呪いが暴れる原因は知ってほしいから、だから自身に起きたことや苦しみを誰かに共有すればほとんどの呪いは大人しくなる。
その為ただの記憶というよりかはその時感じた痛みや感情も共有される。
志乃「...。」
玲香「あり得ない。何であなた生きてるの?人魚の呪いだって体を治すだけ。廃人になっていてもおかしくないのに。」
志乃「柚子達と会う前だったら私もそうなっていたと思う。まあ、会って無かったらこんな事もしなかっただろうけど。」
玲香「最初は無くなった力を少しでも補充できればと思ってたんだけど。あなたを呪いに変えられればもっと強くなれそうね。」
志乃「できると思うか?」
玲香「時間をかけても良いけど、、」
玲香は人質の方を見る。
玲香「外にはまだまだいるのよ。ねえ、何人くらいであなたは壊れる?」
志乃「関係ない人達だろ。」
玲香「関係ない人間だからこそあなたは苦しむんでしょ。」
志乃「お前は何で力を欲しがる。」
玲香「話変えるの?」
志乃「...。」
玲香「まあいいわ。自由になるためよ。」
志乃「自由?」
玲香「そうよ。あの家に生まれて私は結界の中から出られなかった。」
志乃「だがその原因を作った当主を助けようとしていたじゃないか。」
玲香「助けようとしたわけじゃない。」
志乃「どういう事だ?」
玲香「そうね。昔話する前にそろそろ効果消える時間だし、また吞んでもらおうか?」
玲香は丸薬を取り出し、それを見て志乃は嫌な顔をする。
玲香「何で拷問の時よりも嫌な顔するのよ。」
志乃「、、呑めば分かる。」
玲香「今の私には霊力が無いから呑んでも呑まなくても変わらない。いいから口を開けなさい。」
嫌がる志乃に玲香は無理矢理丸薬を口に押し込む。
丸薬を呑んだ志乃のどんよりした顔を見て不思議に思った玲香は丸薬を1つ口に入れてみる。
すると独特のにおいと苦みが口と鼻いっぱいに広がり、すぐに口から出したとしても何とも言えない感じがなかなか抜けない。
玲香「う、これ。よくこんなの呑みこめるわね。」
志乃「お前が呑ませたんだ。」
玲香「まあいいわ。私がじじいにあんたの人魚の呪いを移そうとした理由よね。」
玲香が話すには斎守家は呪術師として力を付けた家だったが、相手を呪えなかった呪いは術者の方に行く、一々解呪していれば切りがないので影響がないからと無視していたら積み重なって呪いは大きくなっていった。
しだいに体調に支障を及ぼすようになり、気付けば解呪が難しくなっていたうえに他の行き先の無い呪いも吸収し大きくなる。
呪いを恐れるようになった当主は山の中腹に屋敷を立てて結界を張りその中に籠り、他にも保険として変わり身の術をかけたりと様々な術を重ね掛けしていた。
その頃には人からの目にも怯えるようになり周りの目を気にしてまた呪いを増やす。
呪いで富を築いていたので辞めるわけにもいかず、呪いは大きくなるばかり。
しまいには血縁である玲香の父親は呪いに狂わされて玲香が小さい頃に亡くなった。
母親もそれで怖くなり夜逃げしていなくなった。
玲香はその頃から当主を恨んでいたが自分も結界の中にいるか、たまに厳重に準備して数時間ほど、それも近場にしか外出できなかった。
そして玲香は人魚の呪いを使い当主を死なない人柱にして呪いを抑える道具にしようとしていたということだった。
玲香「結果は私が怨霊になってあんなに怯えていた呪いを欲するようになったとか笑えるよね。」
志乃「それでお前は何で私の封印から逃れられたんだ?」
玲香「それが知りたくてこんなつまんない話静かに聞いてくれてたの?」
志乃「そうだな。」
玲香「少しくらい否定しなさいよ。まあ、私もあなたが私の目の前に来て手を伸ばしてきた事までしか覚えてないけど。」
志乃「逃げる意思は無かったのか?」
玲香「逃げた覚えはない。」
志乃「なら何でお前は私の封印から逃れて怨霊になるまで恨みを溜めた?」
玲香「そう言えば何で?」
志乃「お前の協力者は誰だ?」
玲香「協力?私は1人で、、あれ?」
玲香の動きが止まる。
志乃「玲香?おい、しっかりしろ。」
???「気付かれてたか。」
玲香の中から玲香とは別の声が聞こえる。
志乃「お前が玲香を連れ出したのか?」
???「そうさ。」
志乃「目的は?」
???「俺は一目ぼれしたんだ。」
志乃「一目ぼれ?」
???「そうだ。大きくて強くて荒々しい。あれが自分のものになれば神を超えれるって思ったね。」
志乃「お前。祟り神か。」
祟り神「そうだ。」
玲香の体を黒い靄が包み込み、そこに目と口と思わしきものが現れる。
志乃「何で今更出てきたんだ?」
祟り神「あの時はお前に勝てそうになかったからな。封印で弱ったところを狙おうと思ったが地中に埋まったせいで場所が分からなくなった。探すのにもあの辺の恨みはほとんどお前が封印してしまって俺はあの娘を掛け軸に隠すことで精一杯だった。」
志乃「そこで玲香の恨みを増やしていたのか。」
祟り神「そうだ。最初はお前の封印を解かせるために連れて行ったが、心地の良い恨みを持っていたからな。依り代として十分だった。」
志乃「それで、今復活したのは私が起きたからか?それとも掛け軸が神社の外に出たからか?」
祟り神「両方だな。俺は度々外に出ていたんだ。活動時間は長くなかったがな。そして今回外に出たらお前がいた。運命だと思ったよ。」
志乃「だったらなぜ怯えていたんだ?」
祟り神「ああ、俺は祟り神、人に恐怖を与える事しかできないからお前の事を考えたら勝手に怯えだしたんだ。」
志乃「それからそいつを操り私の中の呪いを狙った?」
祟り神「だが最初にお前に触れた時驚いたよ。てっきり呪いに飲み込まれていると思ったのに解呪に成功しているとは。」
志乃「ご期待に沿えなかったようで。」
祟り神「今からでも遅くない。時間かけてでもお前を呪いに変えてやる。」
志乃「できると思っているのか?」
祟り神「はっ。霊力も無く、柱に繋がれたお前に何ができる?」
志乃「本当にそう思っているのか?」
祟り神「俺は玲香より甘くないぞ。」
祟り神が志乃に手を伸ばそうとしたその時。
???「火鼠!」
鼠のように床を走る火の玉が祟り神に飛び掛かる。
祟り神がそれを払っていると火の玉の1つが志乃の縄を焼き切る。
樹霧之介「大丈夫ですか志乃さん!」
声がした方を見ると樹霧之介達がいる。
さっきの火の玉は焔の技だったらしい。
志乃「どうしてここに?」
焔「2日も見つからなくて心配したんだぞ。」
雫「だから風見に探してもらったの。」
志乃「もうそんなに経っていたのか。」
真琴「あれ、管狐の竹筒?壊れされたの?」
真琴は部屋の隅に転がっている竹筒を指さす。
志乃「ああ、あの出入り口はもう使えない。」
祟り神は火の玉を払って志乃達の方を向く。
祟り神「やってくれたな。」
真琴「式神が使えないなら危ないわ。浜名瀬さんは下がってて。」
志乃「あ、それは、、」
樹霧之介「それに今霊力使えないんですよね。ここは僕達に任せてください。」
さっきの会話を聞かれていたらしい。
樹霧之介「雫はあそこに倒れている女性を保護してから茂蔵と一緒に志乃さんと風見を守ってください。焔と真琴は一緒に攻撃してください。」
茂蔵「こっちだ。」
志乃「あ、うん。」
志乃は茂蔵に押されて扉近くの部屋の隅に連れて行かれる。
雫も女性を担いで同じところに避難する。
その間にも祟り神は黒い霧を放ち攻撃するがそれは焔の炎に阻まれる。
炎の向きや温度の調節ができるようになり、木製の建物にも関わらず周りを焼かずに攻撃できている。
樹霧之介が建物の床から木を生やし祟り神を包み込もうとする。
草木が生えていないと操れなかったが、木材でも操れるようになっている。
だが祟り神は木の間をすり抜けて樹霧之介達の背後に回り、今度は霧を針のようにして素早く飛ばす。
そこを真琴が紙でガードし、紙を槍のように丸めて祟り神に飛ばすが、祟り神に実態はないのでそれは通り抜けて後ろの壁に刺さる。
真琴は紙の形状を変える事はあったが攻撃時にはそのまま飛ばすことの方が多かった。
形状を変えて殺傷能力を上げることはしていなかったので成長を感じる。
たが相手は実態の無い祟り神。
ダメージの入る攻撃ができそうなのはあの中では焔だけだろう。
思った通りじわじわと追い詰められていく。
そんな時、祟り神が黒い霧を刀に変えて真琴の紙の盾を斬り裂いてしまった。
このままでは真琴にも刃が届いてしまう。
樹霧之介「しまった。真琴!」
その時志乃が飛び出して祟り神に蹴りを入れると壁まで吹っ飛ぶ。
祟り神「何で物理攻撃が効くんだ!?」
志乃「真琴。紙を1枚くれないか。」
真琴「え?はい。」
志乃は真琴から貰った紙を丸めて筒を作る。
志乃「1号ここだ繋げてくれ。」
志乃がそう言うと紙でできた筒の中に空間が繋がり管狐が出てくる。
1号「ご主人。お久しぶりです。こうやってお話できる日がまた来るとは感激です。」
真琴「え、管狐が出てきた上に喋った?え?」
12号「ご主人ご主人ご主人。やっと喋れるよ。待ってたよ。」
幼くて喋れなかった12号は成長しても志乃の霊力が足りずに喋れなかったが、今回喋れてすごく嬉しそうだ。
祟り神「お前、まだ薬が効いているはずだ。何故式神が使える。」
志乃「あれ、私に効かないぞ。」
祟り神「は?なら何で抵抗しなかった。」
志乃「お前を表に出すためだ。」
祟り神「そんなことして何になる。」
志乃「お前を逃がしたくなかった。」
祟り神「なめやがって。」
志乃「9号、打刀をお願い。」
9号「出番だ!俺はやるぜ風になるぜ。」
志乃は刀を受け取り刀を振ると祟り神が縦に2つに分かれる。
祟り神「さっきもそうだが実体のない俺に何故触れる。」
志乃「霊力纏わせればそんなの関係ない。」
祟り神は全身を霧に変えると合わさって1つになる。
志乃「2号、3号手伝って。」
2号「面倒くさいの。何で呼ぶの?」
3号「何でもするぜ。何を焼けばいい?」
志乃「封印術を準備するから手伝って。1号と9号もお願い。」
2号「早く終わらせて休むの。」
3号「焼かないのは残念だが任された!」
1号「微力ながらお手伝いいたしましょう。」
9号「また俺が1番多く札貼るもんね。」
管狐達は一斉に喋っているので聞き取るのが難しい。
だが動きは俊敏であっという間に部屋中にお札を貼り付け、志乃は結界を張って祟り神を閉じ込める。
志乃「危ないからみんな戻って。」
9号「戻るのも1番!」
2号「やっと休める。」
3号「また呼べよ。次は燃やす。」
1号「それでは失礼します。」
12号「ヤダヤダ、やっと喋れたのに戻るのヤダ。次絶対喋れなくなってるからもっといーたーい。」
志乃「、、4号頼む。」
4号「ほら、一緒に封印されたいの?戻りなさい。」
12号「やー。」
12号も4号に引っ張られ半ば強引に紙筒の中に入っていった。
志乃「樹霧之介これ持ってて。後、隣の部屋にも人質いるみたいだからお願い。」
志乃は樹霧之介に空間を繋げた紙筒を渡す。
樹霧之介「は、はい。」
志乃「あと、結界の中には絶対に入らないでね。」
樹霧之介「はい。」
そして結界の中には志乃と祟り神のみになる。
祟り神は結界から出ようとするが出る事はできないうえに志乃へ攻撃を仕掛けても全て斬られ無効化されてしまう。
攻撃が当たってもすぐに治る志乃とは違い、祟り神は斬られ続けると呪いが霧散し、それは貼られたお札の中の封呪符に抑え込まれ元に戻る事は無く、祟り神は少しずつ小さくなっていく。
祟り神「悪かった。許してくれ。」
祟り神はすっかり小さくなって攻撃する力も残って無さそうだ。
志乃は無言のまま取り出した呪滅符を貼ると祟り神は煙となって消え、その直後に呪いの渦が発生する。
呪いの渦ができると封呪符が外れそれに抑えられていた呪いが渦に合流し、渦は大きくなる。
全ての封呪符が外れると呪いの渦は部屋いっぱいに張られた結界の中を満たすくらいになり、それに志乃が触れる。
すると呪いは志乃に吸い込まれて無くなった。
志乃「封印完了。」
その言葉と共に結界も消え、お札は全て剥がれ落ちる。
樹霧之介「すごい。これが志乃さんの全盛期の力。」
結界が無くなると紙筒から12号が飛び出しキュイキュイ鳴きながら志乃に飛びつく。
呪いが戻ったことによりまた使える霊力が減ったので喋ることができなくなったようだ。
人質達も祟り神がいなくなった事で目が覚めて各々帰って行った。
志乃「えっと。心配かけてごめんね?」
志乃は樹霧之介達に向かって謝る。
樹霧之介「あ、いえ。無事でよかったです。」
茂蔵「おいら達は何しに来たんだよ。」
焔「結局俺らは役立たず。」
雫「次からは一言言ってから実行してほしい。」
志乃「だけど私はみんなの成長が見れて良かったと思うよ。」
焔「慰めの言葉なんていらない。志乃は意地悪だ!嫌い。」
雫「言い過ぎかもしれないけど今回は私も同感。」
志乃「えー。」
樹霧之介「そうですよ。もう少し自分を大切にしてください。」
志乃「ごめんなさい。」
真琴「それでいくつか聞いても良い?」
志乃「答えれる事なら。」
真琴「何で私の紙から管狐達が出てこれたの?」
志乃「いつも使っている竹筒、あれは管狐達が住んでいる空間に繋がっているのは知ってる?」
真琴「それなら陽葵に聞いたことあるわ。」
志乃「あの空間は1号に管理してもらってるんだ。」
真琴「そんなこともできるの?」
志乃「あの空間を繋げてくれたのは妖怪で妖力でしか出入口を管理できなかったからね。」
真琴「へー。」
志乃「ちなみに妖ノ郷を作った妖怪にしてもらった。」
真琴「えっ。結構貴重なものなのに壊されて大丈夫なの?」
志乃「大丈夫。オリジナルは取ってあるから。」
真琴「それなら良いのか。」
志乃「それで真琴から紙をもらった理由は1号は筒状のものにしか出入口を繋げられないからだね。」
真琴「紙でも良いのは便利ね。」
志乃「意外と制約はあるけどね。」
真琴「どんな?」
志乃「形とか、筒の大きさとか。前に土管を出入口にしようとしても駄目だった。」
真琴「何のためにそんなことを?」
志乃「管狐達の空間に入ってみたくて。」
真琴「意外とチャレンジャーなのね。」
志乃「まあ、いいだろ。黒丸にも報告しとかないと後でうるさいだろうから、そろそろ出よう。」
戦いに参加した3名の休憩もかねて話していたが、外に出ることにする。
外に出ると日が昇っていて明るい。
志乃「あれ?そう言えば私がいなかったのって2日間だよね。」
焔「そうだぞ。」
志乃「今日って何曜日?」
雫「月曜日ね。」
志乃「今何時?」
真琴「えっと。7時くらいよ。」
真琴はスマホを取り出し確認する。
志乃「じゃあ、学校あるし、報告は後でするから私はこれで。」
茂蔵「学校ならおいらが行ってやる。」
志乃「でも。」
樹霧之介「志乃さん。報連相は大事です。逃がしませんよ。」
志乃「、、はい。」
志乃が茂蔵に学校での注意事項を伝え、茂蔵は志乃に変化して学校に向かう。
それから志乃は樹霧之介達に連行されて妖ノ郷にある樹霧之介の家に来ていた。
黒根「皆無事で何よりじゃ。それで志乃、言いたいことはあるか?」
志乃「ご心配をおかけしてまことに申し訳ございませんでした。」
志乃は正座をしているもののそっぽを向いて反省している顔では無い。
黒根「ちゃんと顔を見て話さんか。いい年して不貞腐れおって。」
志乃「偽装工作できればよかったのに。」
黒根「なんか言ったか?」
志乃「なにも。」
黒根「はぁ、お前が霊力を使えなくなって良かったのは8号での偽装が難しくなったことくらいか?」
今は管狐と離れていると指示ができないので8号を別の所で動かす事ができないのだ。
志乃「それは、忘れないか?」
黒根「忘れるものか。あの時はよくもぐるぐる巻きにしてくれたな。」
志乃は黙って目を逸らす。
黒根「今度無理をしようとすればお前がそうなる事を忘れるな。」
志乃「はい。」
黒根「それで、今回は何があった?」
志乃「それは。」
志乃は周りの樹霧之介達を見る。
黒根「どうせ過去に関係することを1人で背負いこもうとしているんだろうが、樹霧之介達も巻き込まれたんだ。秘密にすることはないだろう。」
志乃「もしかしてこれを予想してこいつらを送り込んできたのか?」
黒根「修行の成果も見れたじゃろ?」
志乃「、、わかったよ。」
志乃はこれまであったことを話した。
昔斎守家という呪術を扱う家があり、そこで呪いが発生したこと。
その呪いを封印、解呪するために志乃の中に呪いがあり、そのために霊力が制限されて全盛期の力が出せないこと。
今回の事件は祟り神がその斎守家の娘を使って志乃の中の呪いを取り出し、自身の力にしようとしていた事。
焔「今回呪いが無かったからあんなに強かったのか?」
真琴「昔樹霧之介のお父さんと一緒に戦っていたことは知ってたけど、そんなことがあったのね。」
樹霧之介「それにしても不思議ですよね。何で人魚の効果が呪いによって弱まってしまうんでしょうか?」
真琴「確かに、呪いって精神を蝕むものよね。肉体に効果を及ぼすものに対して作用するなんて変ね。」
志乃「呪いには精神系が多いけど他にも効果があるからたまたまそれが干渉しているんじゃないかな?私の中にあるのは複数の呪いが集まったものだから。」
樹霧之介「そういうものなんでしょうか。」
志乃「もういい?管狐達の新しい竹も取りに行きたい。」
樹霧之介「紙のままだといつ潰れるか分からないですもんね。」
黒根「そうじゃな。今日はこれくらいにしておこう。」
真琴「あ、その前に浜名瀬さん。スマホは持ってるの?」
志乃「ああ、学校に入る時に連絡先が必要だったから持ってる。」
真琴「なら連絡先交換しない?直ぐに連絡取れる方法あった方が良いだろうから。」
志乃「、、わかった。スマホを持っているのは真琴だけか?」
真琴「そうよ。」
志乃「そうか。それで電話番号を言えば良いのか?」
真琴「メッセージアプリ入れてないの?」
志乃「それは何だ?」
真琴「え。」
真琴は志乃にアプリのダウンロード方法を教えてからアプリの連絡先を交換する。
志乃「これで良いか?」
真琴「ええ。」
志乃「それじゃ私は行く。黒丸、あの出入口は残ってる?」
黒根「ああ、残っとるよ。」
樹霧之介「あの出入口?」
志乃「、、竹林の近くに繋がっている所だよ。」
樹霧之介「ああ。」
志乃「それじゃあまたね。」
真琴「気兼ねなく連絡してよね。」
黒根「気をつけてな。」
志乃は1つの出入口から出る。
そこは志乃が初めて妖ノ郷に入った所であり、管狐達と出会ったお寺がある場所に繋がる所だった。
頑丈な石造りの洞穴は荒れてはいたが壊れた所はほとんどない。
お寺があった場所を通り過ぎ少し歩くと竹林があり、そこから1本竹を拝借して持ち運びやすい大きさに切って帰る。
これで予備も大丈夫だろう。
1号に持ち帰った竹筒の1つに出入口を作ってもらった後、学校の準備をして茂蔵と入れ替わるために2号に姿を消してもらって学校へ潜入する。
丁度休み時間になる時間だったので7号に頼んで茂蔵を呼んでもらう。
休み時間、人目のない体育館裏で待っていると志乃の姿をした茂蔵が走って来て志乃の前で変化を解く。
茂蔵「遅いぞ。助けてくれ浜名瀬。」
志乃「何があった?」
茂蔵「陽葵に追われているんだ。」
志乃「陽葵?無視するか休み時間は姿を隠せば良いって言わなかった?」
茂蔵「それが隠れても見つけてくるんだ。」
志乃「え?」
陽葵「浜名瀬さん。どこですか?」
志乃「あいつの相手は私がするから帰って大丈夫だ。ありがとうな。」
茂蔵「ああ、後は頼んだ。」
陽葵「浜名瀬さん。犯人を倒した時の話聞かせてください。」
志乃「何の話だ?」
志乃は茂蔵を逃がした後、陽葵に話しかける。
陽葵「あ、浜名瀬さん。今日は無口で目も合わせてくれないし、逃げるしでどうしたんですか?」
志乃「なぜ追ってくる。」
陽葵「なんか今日の浜名瀬さん見つけやすいっていうか、ここかなって思ったところにいるんだよね。だけど今は少し違ったよ。なんで?」
陽葵も修行の成果が出ていて妖気が分かるようになっているんだろう。
本人は無自覚だが教えたらめんどくさそうだと思い志乃はしばらく黙っておくことにする。
陽葵「それで朝礼で言ってた犯人が一昨日捕まった話なんだけど。」
志乃「知らん。」
陽葵「だけど道端で気絶していたんだよ。何か知っているんじゃないの?」
志乃「何がぶつかったんじゃないのか?」
陽葵「不自然だよ。」
志乃「とにかくお前に話すことは無い。」
陽葵「むー。まこ姉に連絡しても分からないだったし、何で隠そうとするの。」
志乃「スマホか。」
陽葵「は、そう言えば浜名瀬さんの連絡先聞いてない。浜名瀬さんも持ってるよねスマホ。」
志乃「持っているがお前に教えたら煩くなりそうだから教えん。」
陽葵「何かあった時に役に立つよ。教えてよ。」
志乃「そうだな。教えたら大人しくするか?」
陽葵「え、なるなる。大人しくする。」
志乃「約束は守れるか?」
陽葵「約束?どんな?」
志乃「一つ、連絡はこちらからのみ。二つ、本当に危ない時以外連絡するな。三つ、私の連絡先を私の許可なく他人に教えるな。」
陽葵「えーそれじゃあ連絡先の交換の意味ないじゃん。」
志乃「もし破れば私はスマホを解約します。」
陽葵「うぐぐ。わかった。こっちから連絡はしません。教えてください。」
志乃「良いだろう。」
そしてアプリで連絡先を交換する。
陽葵「やったー。浜名瀬さんの連絡先ゲット。」
志乃「約束。」
陽葵「わかってる。」
それから予鈴がなって2人は授業に戻る。
それからしばらくは平和な日が続いた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
⭐︎おまけ⭐︎ カットされたセリフ
※4号が12号を紙筒に戻すシーン。
12号「やーだー帰りたくないー。12匹全員の書き分けが難しいからって喋れない設定が追加されたのに、今帰ったら最終回まで絶対喋れないもん。何で過去編は僕だけ喋れないの。一番外に出てるのに!」
4号「まだ喋ってない管狐もいるのよ。これだけ喋ればいいでしょ。ほら戻りなさい。」
カット理由:メタいから。




