過去編4/5
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
会議が終わり、柚子と黒根は名無しと妖ノ郷を視察するために行くことにするが、しのは連れ帰った管狐の様子を見るために残った。
しのは管狐達の封印を解いて外に出す。
管狐達は11匹いたが全員ぐったりとしている。
どの管狐も小さく、一番大きくても手のひらに収まるくらいで一番小さい管狐は小指くらいの大きさくらいしかない。
大きめの竹筒だったが11匹もいたので狭かっただろう。
早めに出してあげればと後悔していると1匹の管狐のお腹が鳴る。
そう言えば管狐は味噌を食べると聞いたことがあったので鬼渡から借りられないか相談しに行こうとすると管狐の1匹が足に吸い付いてくる。
その管狐はしのの精気を吸っているようでしばらく吸った後元気になった。
なら他の管狐にもと1匹ずつ腕に乗せてみると他の管狐達も元気になり、全員成長して大きくなっている。
すると2匹の管狐が竹筒に戻ってしばらくすると小さな管狐を連れて戻って来た。
食べすぎると数を増やしてしまうらしい。
このまま野に放したらあの姉妹みたいなことが起こるかもしれないので誰が管理しないといけない。
しのは妖ノ郷ができてから大百足以外の妖怪とは契約を解除してそちらへの移住を進めたため新しい式神を作ることも考えていた。
なのでしのは管狐達を式神として契約することを決め、魂銘ノ儀を行う準備をする。
魂銘ノ儀とは術者が妖怪に名前を付けて契約する儀式で妖怪側が拒否すれば攻撃される危険性もあるものだ。
だけど管狐達はすんなりと名前を受け入れてしのの式神となって喜んでいた。
名前と言っても生まれた順で1〜12の番号を付けただけのものだった。
しのの精気をたらふく吸ってから契約したことでそれぞれ特技があるようなのでこれからその特技を伸ばしたり、見つけたりすることとなるだろう。
そして管狐達が大きくなったことにより竹筒には2匹がギリギリ入れるくらいの大きさしかないので新しい竹筒を確保するために竹林に繋がる出入り口が無いか聞きに名無しの所に行きたいのだが、今は柚子と黒根が名無しと共に妖ノ郷に行って開けてくれるものがいない。
どうしようかと悩んでいると管狐達が目に入る。
しの「ねえ、1号。」
1号「何でしょう。」
しの「あなたが一番妖力の扱い上手かったよね。」
1号「はい。費用貧乏とでも申しましょうか。他の兄弟とは違い突飛な能力はありませんがそれでも良ければお手伝いしますよ。」
しの「あ、ありがとう。あの木の洞に妖力を使ってほしいんだけど。」
山小屋に入れなかったので妖ノ郷の出入り口は人が1人通れる大きさがある木の洞に移動されたのだ。
1号「はい。かしこまりました。」
そして1号が木の洞の前で短い前足を付けると入口が開く。
しの「おお、開いた。ありがとう。」
1号「恐縮です。」
しのと管狐達は中に入ると名無し達を探す。
しの「ちょっと暗いな。えっと3号。」
3号「おう!俺の出番か!」
そう言って3号は火の玉を浮かべ辺りを照らす。
しの「もう少し小さくして。」
火の玉は大きく、周りの妖怪達も照らしてしまい作業の邪魔をしてしまう。
足元を照らすくらいに火の玉を小さくさせて名無しの探索に戻ろうとするとさっきの火の玉を見たのだろう、名無し達がこちらに近づいてくるのが見える。
黒根「お前は誰だ?どうやって入った。」
しのの周りを11匹の管狐達が回っていてしのの姿が見えていないらしい。
12匹目はさっき生まれたばかりでしのの精気を吸ってもまだ小さくしのの肩に張り付いている。
しの「ちょっと名無しに用があって管狐に開けてもらったんだ。」
黒根「しのか、紛らわしいことをするな。」
名無し「私に用とはその管狐の事かな?」
しの「そうそう、話が早くて助かるよ。」
名無し「管狐は通常竹筒に入っているからな。」
しの「そう、ここの出入り口で竹林に繋がっているところは無い?」
名無し「今持っている竹筒を見せてもらえるか?」
しの「これ?」
しのが竹筒を名無しに渡すと名無しは竹筒を地面に置いて杖で叩くとしのに返した。
しの「これは?」
竹筒を覗くと別空間に繋がっているようだ。
名無し「前に見つけた空間に繋げた。少し狭い場所だがそいつらには丁度いいだろう。」
管狐達は少し怖がっていたが好奇心旺盛な9号が入ると他の管狐達も入って行った。
しの「気に入ったみたいだ。ありがとう。」
名無し「良いってことよ。その肩の管狐はいいのか?」
しの「確かに。12号、お前の両親も入ったがいいのか?」
4号「すみません。ご主人。その子そこが気に入ったみたいで。邪魔ならすぐにどかします。」
12号は4号と6号の子供だ。
母親である4号が竹筒から顔を出して謝ってきた。
しの「大丈夫。気に入ったのならここに置いておくよ。」
4号「ありがとうございます。」
しの「それと中は大丈夫?どんな感じ?」
4号「はい。少し広いですが落ち着く空間です。」
名無し「広いのであれば何か物を入れておくのも良いかもしれんな。」
しの「そんなこともできるの?」
名無し「ああ。」
しの「それなら。」
しのは刀などを入れてみる。
竹筒に入る幅でないと入らないのと、出し入れは管狐達に任せないといけないがそこそこ入り、身軽になる。
しの「狭くない?」
4号「大丈夫ですよ。もう少し入れてもいいくらい。」
しの「それならよかった。」
名無し「だが、人間でも式神を使えば入れるのか。もう少し出入り口の出し方を考えないといけないな。」
しの「私の式神は許してくれませんか?」
名無し「、、考えておこう。」
しのは不安に思いながらも妖ノ郷から出ると竹筒から管狐を1匹ずつ出して特性を確認する。
1号は妖力の扱いが上手く1番年上ということもあり他の管狐達をまとめてくれ、2号は幻を見せる事ができ、3号は炎の扱いが上手く、4号は薬の調合ができ、5号は他の妖怪の気配に敏感で、6号は音を操り無音にしたり他の場所の音を聞けたりできた。
7号は影に溶け込んだり隠密行動ができて、8号は自身や他人の姿を変える事ができ、9号は管狐の中で1番速く飛ぶ事ができ、10号は風を操る事ができた。
11号、12号は何かするのは苦手みたいだったが、11号は炎を出そうと練習していると偶然煙を出して周りが見えなくなる。
それから炎を出すのは苦手だが煙を出すのは得意になったようだ。
12号は生まれたてなのもあって得意な事は無さそうだがしのにべったりでこれはこれで可愛いのでよしとした。
柚子は名無しがする妖ノ郷の発展の補佐をする為、黒根は現場へ直ぐに迎えるように妖ノ郷に住む事になった。
ノラとシロも2人について行き、しのも誘われたが人間嫌いの妖怪もいるので断った。
代わりに鬼渡の屋敷の近くに妖ノ郷への出入り口を作ってもらい、何か事件が起こればシロかノラがしのを呼びに来るようになった。
管狐達のおかげで、戦いの幅も広がりより多くの妖怪を助けたり退治したり、たまにやり過ぎな人間に鉄槌を落とす事もあった。
より破魔凪の名前は広まり、黒根も黒い根の鬼と呼ばれ、この2人組には敵うものはいないと言われてきた。
時間が流れ、鬼渡は歳を取り、別れの日がやって来た。
しのは屋敷を譲り受けたが、広い屋敷に1人でいる事は寂しさがあり、修行が終わり出て行く時に鬼渡が寂しそうな顔をしていた理由がわかった気がする。
寂しそうなしのを見て柚子は人間の生活に馴染むため寺子屋で友達を作るよう提案されたがしのは断った。
自分の秘密は周りに言えることでは無いし、秘密を話せない人と仲良くなるのには危険があるからだ。
それに最低限の人にしか素顔を見せてはいないとはいえ、破魔凪として有名になりすぎたので知り合いを作る事はできない。
8号の能力を使えば良いと言われたが危険を犯す事はできないと断る。
柚子はしのの事を心配はするが、妖ノ郷の事で手が離せない。
しのもそれを知っているので弱い姿は見せないようにしていた。
昔は目的が無く、やる気が起きなかったが今は仲間もいて目的もある。
暇な時は関わってこなかった空間を操る術を研究して今までは隠していただけの屋敷を別空間に移動させたり、空間の時間を弄って屋敷のみ時間の流れを遅くする事に成功する。
ただそれに失敗して空間の時間を遅くして中は10分なのに外では1日経っていた時は柚子に心配させてしまった。
それでも名無しに成果を見せると認めてもらえ、妖ノ郷の空間の安定に一役買う事もできた。
大きな戦闘も無く、妖ノ郷も順調に大きくなっていく。
平和な日々が続けば良いと思っていた。
ある日無害な妖怪を見世物として酷い扱いをしている見世物小屋とそれに加担した陰陽師を懲らしめた後、しのは声を掛けられる。
???「すみません。陰陽師さん。」
しの「何でしょう?」
声を掛けてきたのは気の弱そうな女性だった。
女性「ここの見世物小屋で少し前まで働いていた者です。」
しの「そんな人が私に何の用だ?」
女性「私はここで可哀想な妖怪達を見るのが嫌で辞めたんです。助けられなくて後悔もしています。」
しの「それで?」
女性「あの人達は一部の妖怪を別の場所で保管しているのです。」
しの「なぜそんな事を?」
女性「私にはわかりませんが、働いていた時に助けられなかった分今助けたくて。」
しの「わかった。案内しろ。」
黒根は見世物小屋にいる妖怪達を助けるのに手が離せそうに無いのでしの1人で女性について行く。
女性「ここです。」
女性に案内されたのは見世物小屋から少し離れ細い道を進んだ場所にある長屋の中の一軒だった。
中からは嫌な妖気が漂うが妖怪の気配は無い。
しの「ここに妖怪はいないみたいだが?」
女性「いいえ。前はいたんですよ。」
その言葉と共に1人の男性が長屋から出てくる。
手には刀を持っていて嫌な妖気はその刀から出ている。
狭い通路で後の方向に避ける事はできず、横に避けても追撃があるだろう。
しのは足元に結界を作り足場にして上へ逃げる。
女性「逃げて良いんですか?」
しの「刺されるとうるさい奴がいるんでな。」
女性「この刀、どうやってできたと思います?」
真っ赤に染まった剣先と禍々しい妖気の刀。
しのはそれに心当たりがあった。
女性「あなたが逃げればまたこの刀を使う事になりますよ。」
それは妖怪を斬りその妖気を纏う事で赤く成長する妖刀である赫妖という刀だ。
しかも斬られた妖怪の負の感情が大きければより成長する。
長屋の中を見たところ捕まえた妖怪を必要以上に恐怖を与えてから斬っている事が予想できる酷い状態だった。
女性「この刀がある限り犠牲は増えますよ。どうします?」
しの「、、9号、打刀を。」
竹筒に仕舞っている武器は管狐の中で1番速い9号に運んでもらう事にしている。
打刀を取り出し刀の男に対して振り下ろすと刀の男は妖刀で受け止めるがパキンと音を立てて妖刀はあっさりと折れてしまった。
しのは驚くが次の瞬間脳裏に知らない記憶が浮かぶ。
それは小さな檻に入れられ暗い場所で痛めつけられ、最後に刀で斬られる。
赫妖で斬られた妖怪達の記憶だった。
一つが終わっても次の記憶が見える。
痛みも恐怖心も共有されてしのは動けなくなってしまった。
女性「この刀を壊した者は刀の記憶を共有する。本当だったみたいね。」
しの「こんな事して、、何を、」
強気を見せるが立つ事もできない。
刀の記憶は呪いとしてしのの精神を蝕んでいく。
女性「私達は妖怪を集めているの。ねえ、あなた達が妖ノ郷って呼んでいる場所に案内してくれない?」
しの「すると思うか?」
女性「まあ、あなたに求めるのはそっちじゃないけど。」
しの「ならなんだ?」
女性「人魚の情報。」
しの「随分前の事だから、、正確な情報は無い。」
女性「だけどあなたは今も不死なんでしょ?ならあなたの中にあるかもしれないじゃない。」
だが体内に残っているわけがない。
女性が何を言いたいのか分からずぽかんとしていると黒根がやってくる。
黒根「おい、こっち終わったから手伝いに来たぞ。」
黒根の方に女性と男性の2人の意識がいく。
しのは震える手で自身の胸に手を当てると油断している女性の隙を見てもう一度結界を使って空中へ逃げて長屋の屋根に飛び乗る。
懐に入れていた封呪符を使い一時的だが呪いを抑えて動けるようになったのだ。
しの「黒丸。そいつらの狙いは妖ノ郷の妖怪達だ。」
黒根「それなら。逃がせないな。」
しの「気を付けろ。こいつら妖怪に関して良く知っている。まだ何か隠しているかもしれない。」
これまで数々の妖怪を捕らえてきた奴らだ。
弱い妖怪だけを狙っていたのかもしれないが、さっきの赫妖みたいに何か隠しているかもしれない。
黒根は長屋に使われている木材から木を生やして通路を塞ぐが、赫妖を持っていた男性は腰につけていた太刀を抜いて力ずくでその木を叩き切り、その勢いのまま黒根に斬りかかる。
周りにある木は長屋に使われている板材くらいで黒根は本気を出せない。
しのは9号に結界符を持たせてその太刀を結界で防御する。
だがその隙に女性は反対方向に走って行き、その後を男性も追う。
黒根「おい!逃げるぞ!」
黒根がしのの方を見るとしのが倒れている。
封呪符の効果が切れたのと黒根が来たことに安心してしまったのだろう。
うなされているしのを放っておけずに黒根はしのを連れて妖ノ郷を通って屋敷に帰り、布団に寝かせる。
一晩うなされた後、目が覚めたしのの周りには柚子達が心配そうな顔をして座っていた。
しの「ここは。屋敷?」
柚子「大丈夫?」
上半身を起こすと封呪符が周りに置いてあるのが見える。
霊力を込めないと効果が無い物だが、それほど心配させていたことに罪悪感を覚える。
名無し「すまない。呪いに関して詳しいものがいなくてな。お前が起きるのを待つしかなかった。」
しの「ありがとう。後は自分でできる。」
しのは封呪符を1枚取って使うと一時的に動けるようになったので解呪の準備を始める。
柚子「手伝うよ。」
しの「いや、皆は帰ってくれ。これは呪いの妖力を払うためのものだから巻き込むかもしれない。」
柚子「準備くらいは手伝えるよ?」
しの「終わったらすぐに行くから。」
柚子「でも。」
黒根「本人がこう言っているんだ。俺たちは邪魔しないようにしよう。」
しの「それなら柚子、この子達の事お願いしても良い?」
そう言ってしのは管狐の竹筒を渡す。
しのを心配して離れなかった12号は4号と6号を呼んで入れた。
柚子「わかった。」
しのは皆を見送ると1人で解呪の準備を始める。
その途中に誤って短刀で手を切ってしまい傷がついてしまう。
いつもならこのくらいすぐ治るはずだが今回は治るのに少し時間がかかっていた。
その時、しのは一つの仮説が頭に思い浮かんだ。
呪いの効果を無くすには大きく2つある。
1つ目は解呪して呪い自体を無くすこと。
2つ目は他の呪いで上書きしてしまうこと。
人魚の効果は呪いの一種で解呪の方法は分からないが他の呪いで上書きしてしまえば消えてしまうのではないかと。
だが今の呪いは殺された妖怪の最期を永遠と体感するものなうえ、これがある限り妖怪達も呪いに縛られたままなので解呪の準備を進める。
解呪を始めると煙が1つ、2つと上がって行く。
呪いに縛られた妖怪達を1体ずつ解放していっているのでこれは赫妖に斬られた数だけ続くことになる。
108個目の煙が上がって解呪が完了して体も軽くなる。
しのは気になって短刀で自分の手を切ってみるとすぐに治った。
仮説の信憑性は上がるが、人魚の呪いを上回る呪いはあるんだろうか。
そしてそんな呪いをかけても普通の人間にそれが耐えられるのだろうか。
疑問に思ったしのは時間のある時に呪いについて調べる事を決める。
しのは元気になると妖ノ郷にいる柚子の所へ顔を出す。
すると柚子はしのを抱きしめ、竹筒からは12号が飛び出ししのに巻き付いて離れようとしない。
他の管狐達も心配そうに竹筒から出てくる。
しの「心配かけてごめん。もう大丈夫だから。」
柚子「もう。無茶しないでって言ったじゃん。」
しの「あれは、無茶というより油断たのが悪くて、、ごめん。」
泣いていたであろう赤くなった顔で抱きしめる柚子の頭をポンポン叩きながらなだめる。
しの「他のみんなもごめん。特に黒丸。」
黒根「俺はそんなに心配していないぞ。」
しの「いや、私のせいであいつら取り逃がしただろ?」
黒根「ああ、知っていたのか。」
しの「あの時かすかだけど意識はあったから。」
黒根「そうか、それで俺が行く前に何があったんだ。」
しの「それは、、」
しのはあの時いた2人組の事と赫妖の事を話した。
柚子「何それ酷い。」
しの「だからここも狙ってくる可能性もある。」
黒根「正体が分かれば良いが、前に邪魔してきた斎守家の可能性は?」
しの「あると思う。そう言えばあの女、私が人魚を食べたこと知ってた。」
不老不死の事、ましてや人魚の事を知っていて今生きているのはここに居る柚子達とあの時襲ってきた住職だけだ。
他の人は破魔凪は代替わりしていると思っている。
黒根「もしかしてこの事件お前が原因なのか?」
柚子「違うでしょ。悪いのは斎守家でしょ。」
名無し「それにこの妖ノ郷の事は言っていないのに知っていたんだろう?ここが標的になるのも時間の問題だったと思うぞ。」
黒根「まぁ、移動で普通に使っていたからな。」
しの「いや、私が余計な事を言って標的にならなければ知られなかったかもしれない。」
柚子「どちらにしろ邪魔者として狙われていたんでしょ?同じことよ。」
名無し「まあ、敵が来るっていうのであれば警戒するに越したことは無い。防衛を強化しよう。」
しの「あちらはほとんどが人間だから人が完全には入れないようにするのが良いのか?」
名無し「いや、ここは移動にも使っている。それに妖怪を利用する手段が無いとは言えない。それで安全になるとは言い切れない今、戦力が減るのは危ないからお前は気にせずこれまで通り出入りしてくれ。」
しの「わかった。」
名無し「人間が妖怪になる事もあるからな。」
名無しの言い方に違和感を覚えるが深入りはしない方が良いだろう。
しの「私は外で斎守家や他に怪しい家が無いか調べてみる。」
柚子「私も動物達に異変が無いか聞いてみるね。」
ノラ「なら俺も柚子に付いて行く。」
柚子「ノラとシロは名無しの手伝いをしてくれる?」
ノラ「何で?」
黒根「俺が柚子に付くからお前らはここで仕事してくれ。」
ノラ「わかった。」
ノラはもちろんシロも不服そうだ。
柚子「しのは1人で大丈夫?」
しの「私にはこいつらがいるから。」
そう言って管狐達を見る。
柚子「何かあったらすぐ連絡してね。」
しの「ああ、今度は油断しない。柚子も連絡忘れないでよ。」
そう言って別れた後、しのは鬼渡にもらった古い紙を取り出すと旅の準備をする。
柚子達には気づかれたくないので妖ノ郷を使わずに斎守家の本家へ行くためだ。
もしも柚子から連絡が来た時のために9号を屋敷に残して旅に出る。
普通に歩けば3日ほどの距離だが途中で情報収集するために7日ほどかけてたどり着く。
道中では特に事件は無かったが、斎守家の本家に近づくにつれて不自然なほどに妖怪の気配が無くなっていく。
斎守家の本家は山の中腹にある大きな屋敷でその山のふもとにある町でも情報を集めるために聞いて回ると誰もが斎守家が妖怪を退治して平和になって町も大きくなった、感謝していると言っている。
その町の茶屋で一服していると9号の声が聞こえる。
9号「急いで来て!」
町の人に見られないように町の外から9号に呼ばれる。
急いで9号の所に行くと黒根も一緒に来ていた。
しの「黒丸?柚子と一緒じゃ?」
黒根「そうだったんだが柚子が攫われたんだ。」
しの「どういうこと?」
黒根「どうもこうも変な奴らが俺達がいる山に侵入してきてそれを追い返してたら他の奴に柚子が連れていかれたんだ。」
しの「なら何でここに?」
黒根「それはこっちも聞きたい。ノラ達にお前への伝言を頼んだら屋敷には管狐1匹しかいないと言うし、柚子を攫った奴を追った所に俺よりも先にお前がいる。お前、何か知っていたな。」
しの「いや、怪しいことは知っていたが確定してなくて、分かったら共有しようとしていた。」
怪しむ黒根に焦って答えるが余計に怪しく見えるだけだった。
黒根「まあいい。今は柚子が先だ。何か知っていることがあるならさっさと話せ。」
しの「この先に、、」
黒根「この先に何があるんだ?」
しの「この先に斎守家の本家の屋敷があります。」
黒根「そんな重要な事1人で探ろうとしていたのか?」
しの「だってまだ斎守家の仕業だとは確定してなかったから。」
黒根「そう言えばお前が呪いにかかった時、心配して管狐達が出てきていたが1匹いなかったな。」
しの「出てきてなかっただけでは?」
黒根「たしか出てきていないのは7号だった。」
しの「そうだったんだ。」
黒根「7号は追跡が得意だったよな。」
しの「そうだっけ?」
黒根「あの2人追わせていたんじゃないのか?」
しの「...。」
黒根「図星か。それで何で1人で来ているんだ?」
しの「...。」
黒根「責任感じているのか?」
しの「...。」
黒根「俺の言い方も悪かったが仲間だろ?相談くらいはしてくれ。」
しの「ごめん。」
黒根「あ、いや、俺も柚子を守れなかった。すまない。」
しの「いや、本当にごめん。」
そして黒根に霊縛符を貼り動きを封じる。
黒根「何するんだ。おい!」
しの「本家に張ってある結界には妖力を吸い取るものもある。」
真顔のまま竹筒から縄を取り出して黒根を拘束していく。
黒根「だからなんだ。お前が解いて俺が突入すればいい。」
しの「結界はあの建物自体が媒介となっているからそれは建物を壊せと言っているんだぞ。」
黒根「そのくらいできるだろ?」
しの「柚子がいるのに?」
黒根「だがそれなら管狐達も使えない。お前ひとりで何するつもりだ?」
しの「たしかこっちだったよな。」
黒根「聞いているのか?おい!」
しのは黙って妖ノ郷に繋がる入口を開きそこに黒根を投げ入れて閉じる。
入口が完全に閉じる前に黒根に言う。
しの?「だましてごめん。」
黒根「お前、、、」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




