1話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
ここは翠嶺町、近くに山が見える自然豊かな町だ。
この町にある翠嶺高等学校の入学式が1週間前に終わり、しばらく6限の時間は部活の見学の時間に使われていて、新入生達は部活の話や噂話で盛り上がっている。
そんな中、浜名瀬 志乃は1人机で本を読んでいると気になる話を聞いた。
女子1「この学校の敷地、無駄に広いでしょう?」
女子2「そのおかげで色んな部活があるんだよね。どこに入ろうか悩んでるんだ。」
女子3「私も。これから一緒に部活見て回らない?」
女子1「それも良いけど、私先輩から噂を聞いたんだ。」
女子2「噂?」
女子1「この学校出るらしいよ。」
女子3「出るって、おばけ?そんな小学生じゃあるまいし。」
女子1「それを先輩が直接見たらしいの。校舎から離れた場所で黒い影を。」
女子2「それって不審者?」
女子1「それがピクリとも動かなくて、看板か何かだと思って近づいたらフッて消えたんだって。」
女子3「えーやっぱり誰か居たんじゃないの?」
女子1「だけどそこは草が生えてるけど見通しの良い場所らしいんだよ。それに昔そこで事故もあったらしくてさ。」
女子3「だけどありがちな話じゃない?何かの見間違いかもしれないしさ。」
女子1「そうなのかな?」
女子2「ねえ。もう怖い系はやめて部活見に行こうよ。」
女子1「そうだね。」
女子3「行こう、行こう。」
生徒達が皆部活を見に行く中、志乃は噂の場所へ移動していた。
途中持っている鞄の中の竹筒から細長くフワフワ浮いている狐が出てきて志乃の周りを飛ぶが誰も気にしてはいない。
そのまま校舎を離れ、その場所へ着くと黒い影がある。
その影は人の形をしているもののピクリとも動かない。
志乃が近づくと噂通りスッと消えてしまった。
志乃「影法師だな。」
そう呟くと影がいた場所の草をかき分けてみるが何も無い。
志乃「手掛かりは無いか。」
次の日、志乃は例の場所で起こった事故の聞き込みをしていた。
噂好きな新入生が面白半分に聞きに来ていると思われているのだろう、事件を知っていそうな人は怪訝な顔をして話してはくれない。
志乃「仕方ない、直接聞くか。」
志乃は呟く。
放課後、同じ場所にまた黒い影がいる。
そして近づくと消えてしまった。
志乃は鞄から竹筒を取り出して軽く2回叩いく。
志乃「7号、あれを追って。」
そう言うと竹筒から細長い狐が出て来て消える。
しばらく待つと狐が戻って来た。
志乃「どうだった?」
そう聞くと狐は志乃の周りを一回まわって、どこかへ案内する。
ついていくと1人の男性がいた。
パッとしない外見の男性は部活のチラシを配っている。
制服を見るに三年生だろう。
男性「一緒にこの翠嶺町の歴史を調べてみませんか?」
チラシには大きく歴史研究部の文字が見える。
志乃「なぁ、話を聞きたいんだが。」
志乃が声をかける。
男性「あ、興味ある?よかったら展示を見に来てよ。」
見向きされていなかったのもあるんだろう、声をかけた志乃にニコニコで対応してくれる。
志乃「興味無いな。」
志乃は無表情だ。
男性「えっと、なんで声かけたの?」
志乃「校舎から離れた空き地であった事故の話を聞きたいんたが。」
男性「え、あ、あれは事故だよ?何で僕に聞くの?」
挙動不審になる男性の周りを回る狐に気が付かない男性は妖怪が見えないと分かり、影の事を言っても分かってもらえないだろうと志乃は答える。
志乃「なんとなく?」
男性「なんとなくってなんだよ。あれは事故だった。僕は無関係だ!」
そう声を荒げると周りの人達がこちらに注目する。
男性「場所を変える。」
視線に耐えられなかった男性は志乃の腕を掴み、人気の無い場所へと移動しようとするが、所々で部活の勧誘をしており静かな場所は中々無い。
仕方なく影の出た空き地の近くにあるベンチで話すことにした。
志乃がベンチへ座り話し出す。
志乃「この辺は本当に人がいないな。」
男性「当たり前だろう。あんな事があったんだ。」
志乃「どんな事があったんだ?」
男性「知らないのか?」
志乃「知らないから聞きに来た。」
男性「じゃあ何で僕に聞きに来た?」
志乃「あんたの名前も知らない。」
男性「はあ?ますます僕に聞きにくる意味がわからない。」
志乃「私は浜名瀬 志乃。」
男性「ああ、そうかい。僕は田中大輝だ。」
大輝は不機嫌そうに志乃の隣へどかっと座る。
大輝「それで?何聞きたいの?」
志乃「お前はあそこで出る影の噂は知っているのか?」
大輝「はあ?そんな噂を信じているのか?僕はそんなの見た事もない。」
志乃「見に来たことはあったのか?」
大輝「うるさいな。」
志乃「その影がお前のものだと言ったら?」
大輝「君は不思議ちゃんか?イタいぞ、そのキャラは。」
志乃「キャラとか知らんが影がお前のものだと言うのは本当だ。」
大輝「僕の影はここにあるだろ!」
そう言って大輝が立ち上がり日向に行くが、その足元に影は無い。
代わりに広場には人の影がある。
志乃は立ち上がり影を見ている大輝の前に立つ。
志乃「あれは影法師、人の強い感情から生まれる妖怪だ。」
大輝「妖怪?」
大輝がそう聞こうと志乃の方を向く。
大輝「うわぁ、き、君の後ろに何かいる!」
志乃の後ろには3匹の狐がふわふわと浮いている。
志乃「こいつらは 管狐、私の式神だ。」
大輝「なんで?さっきまでは何もいなかったじゃ無いか。」
志乃「お前は影法師を生んだ。そしてそれを認識した事で妖怪との繋がりができた。」
大輝「だけど影の妖怪は見えたぞ。」
志乃「妖怪は自ら姿を見せる事もあるが殆どは妖怪との繋がりが薄ければ見る事は無い。今回は影法師が生まれた経緯を聞きたくてわざと繋がりを作ったんだ。」
大輝「君は何者で何がしたいんだよ。」
志乃「影法師は生まれた時の感情の種類で善にも悪にもなる。もしあれが悪なら人に危害が及ぶ前に消さないといけない。」
大輝「妖怪なんて大体悪だろう?直ぐにでも消してくれよ。」
志乃「そしたらあんたの影も消えるが良いのか?」
大輝「それってどういうことだよ。」
志乃「一言で言えば光を浴びる事が出来なくなる。」
大輝「はぁ?どういうことだよ。さっき太陽の所で影がない事を確認しただろ?」
志乃「さっきは影法師は出て来ていない。」
大輝「はぁ?」
志乃はめんどくさそうな顔をした 管狐を撫でる。
志乃「こいつは2号。人に幻を見せるのが得意。お前に影法師の幻を見させてもらった。」
大輝「じゃあ、全部嘘だったのか?」
志乃「影法師がお前が生んだものだというのは本当だ。7号に追跡してもらったからな。」
そう言って志乃はすましている 管狐を撫でる。
大輝「じゃあ、もう1匹も何かしていたのか?」
志乃「ああ、こいつは12号、癒し枠だ。」
そう言われた 管狐は志乃に甘えている。
大輝「?魅了するとかか?」
志乃「いや、こいつはただ私の周りを回るだけだ。」
大輝は納得いっていなさそうだが志乃は話を続ける。
志乃「話を戻すぞ。ここであった事故の事を話してくれ。」
大輝「そうしたら僕の影が消えずに妖怪は消えるのか?」
志乃「消さなくてはいけなければそうする。」
大輝「もしも影が消えたらその人はどうなるんだ?」
志乃「影のない人間が光に当たるとその人も消える事になる。」
大輝「暗闇で暮らさないといけないのか?」
志乃「そうでも無いぞ。何かの影に入っていれば大丈夫だ。」
大輝「そうか。」
志乃「まぁ、弱い光でも影ができる状況であれば少しずつ薄くなって消えるがな。」
大輝「何でそんな不安を煽るんだ?」
志乃「それが嫌ならここであった事を話せ。」
大輝「わかったよ。妖怪が本当にいるって事は君の話も嘘では無いんだろう?」
大輝は志乃の周りにいる 管狐を見ながら言う。
志乃「そうだ。」
大輝「ここは事故がある前からあまり人が来なかった。校舎から離れているし、何も無いからな。だから僕はここでイジメにあっていたんだ。奴は優等生を演じていてその為に色々溜まった鬱憤を僕で発散していたんだ。」
志乃「その事は誰かに話したのか?」
大輝「あいつはそうできないように僕の悪評を広めていたんだ。僕は嘘つきだって。」
志乃「それは、酷いな。」
大輝「初めはこんな地味な僕にも優しくしてくれる良い奴だと思っていたのに。」
大輝は今にも泣き出しそうだ。
志乃「裏切られれば誰だって辛いさ。」
大輝「ごめん。話が脱線した。それで半年くらい前か、雨が降った次の日にここに呼び出されたんだ。」
志乃「無視すれば良いのに。」
大輝「無視すればどんな悪評をばら撒かれるかわからなかったからね。イジメの事は今はいいよ。」
志乃「それでどうなったんだ?」
大輝「あいつが倒れていたんだよ。」
志乃「影法師がいた所か?」
大輝「いや、もう少し奥のあの大きめの石がある所だ。濡れた草で滑って石に頭を打って今もまだ入院している。」
志乃「お前はその時どうしたんだ?」
大輝「その時は頭が真っ白になって、、、」
大輝はしばらくの沈黙の後話を続ける。
大輝「逃げた。だってそうだろ?こんなの僕があいつに何かしたって、犯人にされるって思ったんだ。その後巡回していた先生が見つけて救急車を呼んだ。結果的にあいつは助かったんだ。」
志乃「まぁ、わざわざ自分を裏切った人間を助ける事なんてしないよな。」
大輝「そう。僕は悪く無いんだ。」
志乃「それでもう一つ聞きたいんだが。」
大輝「何だよ。」
志乃「影法師が立っていた場所に心当たりはあるか?」
大輝「あそこ?あそこは僕が虐められていた場所だよ。」
志乃「それだと影法師が生まれた理由は恨みの可能性が高いな。」
大輝「それって、何かマズイの?」
志乃「誰かに危害を加える可能性があるな。特にお前を虐めていた優等生って奴だ。」
大輝「もしかしてあの事故ってその妖怪のせい?」
志乃「可能性はある。だが、半年も経っているのにここに現れる理由がわからない。」
大輝「僕はあの事故以来ここには来てないぞ。」
志乃「ああ。」
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが鳴る。
大輝「まずい。早く戻らないと。」
2人は走って各々の教室へと戻ります。
放課後、志乃は気になって空き地へもう一度戻ると影法師が居た。
相変わらずピクリとも動かずにその場に居る。
そこに大輝がやって来る。
大輝は志乃を見つけると声をかける。
大輝「やあ、浜名瀬さんだっけ?あれは幻じゃなくて本物?」
志乃「そうだ。何を伝えたいのかわからなくて。」
そう言いながら、志乃が大輝の方へ振り返ると異変に気がつく。
大輝に影があるのだ。
通常は影法師を作り出した人間の影は影法師が出ている間は無いはずなのに。
そして志乃はこの状況で自分が間違っていた事に気がつく。
影法師を作り出したのは大輝ではなく、影法師が大輝の元に行ったのは元に戻るためではなく、大輝を呪うためだったのだ。
そして影法師が強く出ている場所に呪われている本人が来てしまった。
志乃「ここから離れろ!」
志乃はそう大輝に叫ぶが既に影法師は動き出していた。
影法師に口のような物がニヤリと笑った様に見えたかと思うと風の様に移動し、大輝に取り憑く。
大輝の視界は真っ暗になり、声が聞こえる。
大輝を虐めていた優等生の声で「許さない。」「こうなったのもお前のせいだ。」など恨みの声が聞こえる。
志乃「逆恨みもいいところだな。」
志乃はそう言うと鞄から呪滅符を取り出して影法師に投げ付け、張り付いた呪滅符から電撃の様なものが放出され、影法師を苦しめる。
影法師は大輝から離れてどこかへ行こうとするが志乃はそれを許さない。
志乃「3号!」
そう叫ぶと竹筒から 管狐が現れ炎を放つ。
炎は影法師の上空で強くなると、影法師を照らし小さくする。
小さくなった影法師はふらふらと地面に落ちた。
志乃はそれを鞄から取り出した壺に入れ、蓋をして霊縛符を貼って封印する。
大輝「それ、どうするんだ?」
続けてその鞄には何が入っているんだ?と聞きたかったがその言葉は飲み込んだ。
志乃「手遅れかもしれないが元の人間へ返せないか試してみる。」
大輝「僕の影じゃなかったのか?」
志乃「初めはそう思っていたがお前を呪う為にずっと憑いていたみたいだ。お前も誰のものかわかっているんじゃないか?」
大輝「じゃあ、あいつがずっと入院している理由って…。」
志乃「半年間、影が無い状態ならどれだけ薄くなっているかわからないがこいつを返せば元に戻るだろう。」
大輝「…。」
志乃「いじめっ子が戻るのは嫌か?私はそれでも返すぞ。妖怪で死者は出したく無いからな。」
大輝「…そうだな。」
それから大輝とは別れ、暗くなってから志乃は町にある病院へと向かった。
志乃「7号お願い。」
いじめっ子の名前を聞いていなかった志乃は7号に偵察を頼む。
7号に窓の鍵も開けてもらい静かに忍び込む。
いじめっ子の病室へ着くと壺の封印を解き、影法師を取り出すと志乃はそれに説教をする。
それが終わるといじめっ子へ力づくに押し込む。
すると影が戻り薄くなった体も元に戻った。
布団をかけていたお陰で、光もあまり当たってなかったようですぐに回復する。
数日後、事故から意識が戻らなかった先輩が起きた事が噂になっていた。
意識が戻る前に変な女性に怒られる夢を見て、これまで自分がやってきた事を反省し、いじめの事を告白したんだとか。
休み時間に本を読む志乃の元に大輝がやって来た。
大輝「あいつ、家で勉強漬けで学校の成績とか親に見張られてストレス溜めていたんだってさ。」
志乃「それで、許したのか?」
大輝「いや、僕にした事は別だって言った。」
志乃「それでだけか?」
大輝「お前のことは一生許さないとも言ってやったよ。」
志乃「いや、3年生がわざわざ1年の教室に来た理由はそれを言う為だけか?」
大輝「そ、それと、そういえば妖怪、僕から生まれてないのに何で妖怪が見える様になったんだろうなって。」
志乃「呪っていた妖怪を認識したから繋がりができて見える様になったんだろうな。」
大輝「そうか、それで歴史研究部に入らない?」
志乃「入らない。」
大輝「この町には妖怪関係の歴史もあるんだよ。」
志乃「知ってる。」
大輝「じゃあ、歴史には興味あるんだよね?」
志乃「過去には興味ない。」
キーンコーンカーンコーン
休み時間が終わるチャイムが聞こえる。
志乃の早く戻れという無言の圧もあり、大輝は渋々自分の教室へ戻る。
この後、大輝の頭には?が浮かぶことになる。
なぜならチャイムが聞こえたのに授業が始まる時間ではないからだ。
志乃は1匹の 管狐を出していた。
6号は幻聴を聞かせることができるので聞いたチャイムは偽物だったのだ。
そしてその6号は大輝の目には映っていなかった。
事件が解決し、妖怪との繋がりがなくなったからだろう。
こうしてこの事件は終わったのだった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。