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漫画くん

作者: 雉白書屋

 おお、マキくん、ミキちゃん。ようきた、ようきた。じいじは嬉しいぞお。おうちからここまで遠かっただろう? おいしいスイカを冷やしてあるから、あとでみんなで食べような。

 ん? お話? じいじのお話を聞きたいのか。ほう、夏休みの作文に使うんだな。そーか、そーか、いくらでも話してやるぞお。

 えっと、そうだなあ……じゃあ、『漫画くん』の話でもしようか。そう、まるで漫画のキャラクターが現実に飛び出してきたみたいな子だったから、クラスのみんなから漫画くんと呼ばれていたんだよ。え? いやいや、アニメじゃないぞ。もちろん、現実にいた男の子さ。二人もどこかで見たことがあるかもしれない、ごく普通の男の子なんだよ。

 で、漫画のキャラクターみたいな子ってどういうことかというと、その子は何かと大げさなリアクションをするんだ。

 たとえば、面白いことがあると大きく口を開けて笑ったり、笑いながら床を転げまわったりしてな。給食の時間だと、プーッと口に入っているものを吹き出して、え? ああ、はははっ、そうだな。汚いよな。座っていた前の子なんか、牛乳やら米粒まみれになってなあ。はははは! みんな「漫画のやつがまたやったぞー!」「おいおい、漫画ぁ!」って小突いてな。漫画くんはペロッと舌を出して「いっけねっ、へへへっ」という調子だったよ。

 え? 漫画くんは嫌われなかったのかって? はははっ、まあ……でも、いたら二人ともきっと好きになっていたと思うぞ。明るくて、熱血で、お調子者でちょっとスケベで、え? なんか古臭い? まあ、昔の話だからな、漫画も昔のものを想像しておくれ。

 他にも、朝は「遅刻! 遅刻!」と食パンをくわえて教室に飛び込んできたり、昼休みには一番に校庭へ駆け出したり、勉強は苦手だし、女子のスカートをめくったり、先生に黒板消しの悪戯を仕掛けたり、そうそう、ドアの上のほうに黒板消しを挟むやつな。それから、何をさせられたかなあ……。

 え? どうしてその子は『漫画くん』になったのかって? うーん、まあ、単純に考えて少年漫画の主人公みたいになりたかったんじゃないかな。みんなに好かれて、友達がたくさんいて、ん? その漫画くんはどうなったか? ふふふ、それがな、ある日、漫画の神様が彼の役作りに感心して、漫画の国に呼んだんだよ。漫画の国はそれはそれはとても楽しいところで、ずっと遊んでいても怒られないんだ。漫画くんは今でもそこで幸せに暮らしているよ。

 ……え? そういうのはいいからって? ははは、いや、別に嘘をついたわけじゃないんだ。彼はきっと漫画の国にいるよ。まあ……つまり、そう、事故に遭ったんだ。自転車の手放し運転で猛スピードを出して、角を曲がったところで車に撥ねられてな……。そして、この話が広まり、飛び出し注意の看板ができたんだ。

 そう、それが『飛び出し坊や』ってわけだ。だから、だから、マキくんもミキちゃんも、くれぐれも車には気をつけて、それから無理にみんなから注目を集めようとせずに、え? 本当の話だとも。まあ、諸説あるかもしれないがな。はははは! 

 え? いやいや、『ほら吹きおじいちゃん』なんて呼ばないでくれよお。おーい、はははははは! ああ……孫たちに昔話をするなんて、漫画によくいるおじいちゃんみたいになったなあ……よかった、よかった……。

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