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2、私は貴女を知らない《視点…板田裕樹》
「岩槻先生、」
私は教頭である岩槻先生に声をかけた。
「何事ですかね?板田先生。」
「何か、幽霊の様な者が体育館前の廊下に立っていて、」
「あぁ、リリィさんの事かね。……あぁ、そうか、君は今年この学校に赴任してきたばかりだから知らないんじゃな。」
「えっと‥‥そのリリィさんっていうのは、」
「この学校に住み着いている守護霊じゃよ。彼女は悪い霊じゃないんじゃ。ましてやこの学校の一部の生徒の心の拠り所になっているから大事な霊じゃよ。」
「そっ、そうなんですね、」
「あぁ、だから大事にしてやっておくれ。」
「わかりました。」
私は職員室を出た後、小走りで先ほどの場所に行ったが、もうそこには彼女の姿は無かった。