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エレナside:オフィーリア


 翌朝、「砂浜を歩かないと、海に来たとは言えませんわ」と我が儘を言い出したのは、目当ての人物のところにたどり着くのを少しでも遅らせたかったからだ。


 あの後、オフィーリアについてフランシスから幾つか情報を得た。本来なら同級生だったはずの、私と同じ年の、男爵家の令嬢。


 ……クラスメートだった? あの二人組や、私に「イヤ」を突きつけた女生徒たちの内の一人だった? 私を嫌うの? 私は、また誰かに嫌われるためにわざわざ遠くまで来たの? 


 胸が、じくじくと痛む。

 敏いフランシスの目を誤魔化すために、はしゃいで、砂浜を散策して、貝殻を拾う。必死に「今まで通り」をやりながら、少しでも到着を遅れさせようとしていた。

 オフィーリアに会いたくないとは言えなかった。フランシスに、逃げ腰だと思われたくなかった。


 結局、やり残すこともなくなって、大人しく馬車に乗る。田舎に疎い私に、フランシスが街の成り立ちやそこでの生活など、あれこれ説明してくれる。その横顔に、見入る。


 どうしてフランシスが私を連れ出してくれたのか、本当は少し分かっている。クラスで居場所を失くし、自棄になって八方塞がりになりかけていた私を、あの場から引き剥がしてくれたのだ。たぶん、下心も野心もなく、ただの親切心で。


 昨夜だって、泊まった宿の部屋はベッドルームがドア一枚で隔たれた二つつながりの一部屋だったのに、ドアが叩かれることはなかった。

 心配していたわけでは無いけれど、これまで、男性からは好意的な目で見られることが多かったと思う。少なくとも、外見に関しては。でも、フランシスからは、そういう視線を受けたことが無い。たぶん、本当に、フランシスは私を何とも思っていないのだ。


 だからだろうか。フランシスと居ると、時々、マリウスと一緒にいるような錯覚に陥る。

 いやたぶん、それだけじゃない。実際、似ているのだ。顔ではなく、この国では珍しい瞳の色や、背格好が。


「そんなに見られると恥ずかしいんですけど」

「! ごめんなさい」


 ぱっと目を逸らす。つい見入った横顔が、頬を赤らめてこちらを向くから、そんなつもりはなかったけれど、つい焦った。


「遠くから見ているだけの時は知らなかったけど、あなたって、人の目を見て話しますよね。物凄く。じいっと」

「そうだったかしら。あまり意識したことが無いわ」

「見透かされているようで、怖いです」

「怖いの?」

「はい。私は嘘つきだし虚勢も張るので、本当の自分を見透かされるのは怖いです」

「ああ…… それは私も怖いわね」

「オフィーリアは、」


 突然出てきたその名にどきりとする。あまり聞きたくない。


「あなたとは違う意味で、見透かすのが上手いんです」

「? どういう意味?」

「オフィーリアは、地方の小さな領地を治める男爵家の生まれながら、沢山の信者を抱える土着信仰の巫女でもあるんです」

「巫女?」

「最近では『聖女』と名乗っているようですけどね」

「聖女……?」

「予言の力を持っていて、様々なことを言い当てる。それと、一晩で森を切り開いたとか、川をせき止めたとか、色々と奇跡を起こして信者を増やしているようで…… 小さい頃は普通の、ちょっと聡いただの子供だったのにな……」

「子供の頃から知っているの?」

「幼馴染です。うちの治める町は、隣なんです。そのオフィーリアが、大人になるにつけ、おかしなことになって、心配していたんですが。私が学園に入学して少し経った頃、あなたの話を始めた」

「私? どうして?」

「自分の同い年のヒューズ侯爵の娘を見守ってほしいと言い出しました。『彼女は、私よりずっと厄介な力を持っているから、助けになってあげて、私のところに連れてきて』って言っていました」

「凄い。彼女、本当になんでも見通せるの?」

「なんでも、ではないようですが。国の大きな動きや、周辺諸国の動き、戦乱、災害の類はぴたりと当てます」

「へえ……」


 その話を聞いて、俄然興味が湧いた。なんだか気が楽になって、フランシスとお喋りに興じている間に、馬車はオフィーリアが待つという小さな海辺の町に到着した。




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