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エレナside:空虚で新しくて清々しいもの


 フランシスが御者に何か指示を出すと、見慣れた風景がどんどん遠ざかっていった。自分の生活圏の狭さ、自分の知る世界の狭さを思い知って、胸に穴が開いたような気持ちになる。


 心細い。


 けれど、慣れなければならない。だって、私にはもう、自分を支える柱が無いんだもの。私を構成する大きな二つの柱は、折られてしまった。これから、どうやって立て直したら良いのか分からなくて迷っていたところで、おかしな力を解放してしまって、増々迷子になった。


「あなたのクラスメイトたちを見ましたよ。屋敷の人たちも、この御者も。あなたがやったの?」

「フランシス先輩はどこまで知っているんでしょうね」

「大したことは知らないし、勘違いしていた。だから、謝らなくちゃと思って」

「知らなかったの……? 意味深長に『何とでもできるんでしょう?』なんて言うから、知られているのだと思って、心の中でフランシス先輩に責任を半分擦り付けて、好き勝手してしまったわ。騙された」

「良いですよ。全部擦り付けて。言葉が足りなかった私のせいですから」

「今も言葉が足りないと思いますわよ。私、一体どこへ連れて行かれるのですか?」

「ずっと、あなたに会わせたかった人の所へ」

「私に会わせたかった? ずっと?」

「私はその人からの依頼で、あなたが学園に入学してきた時から、ずっと見ていたから」

「見ていた? 私を? どういうこと?」

「直接本人に聞くと良い。それと、移動で丸一日潰れますが馬車酔いしないほうですか?」

「今それを言うの? 馬車酔いはしないけど、そんなに遠くに行くなんて聞いていないわ」

「言ったら来なかったでしょう?」

「まあね」


 そこまで言って、笑い出す。飄々として、食わせ者感があって、なかなか面白い人物だ。


「その人って、どんな人?」

「んー…… 女」


 そんな説明ってあるの? と思うし、女、の一言に表情が固まったのが自分でも分かった。同性に嫌われまくっていたと知って、すっかり、同性不信というか、苦手意識が芽生えてしまったらしい。

 いや、もともと苦手だったのだ。母親がいないせいか、年上の女性には緊張するし、クラスメートたちには劣等感があった。クリスタやアリアナに対してもだ。


「なんだか胃が痛くなってきたわ」

「会えば、なんともなくなる。そういうんじゃないから」

「わけがわからない。……その人はどうして私を知っているのよ?」

「さあ。変な人だから、なにかあるんじゃないですか? 海は見たことあります?」

「無いわ。いきなり話題が変わるのね。海に行くの?」

「いや。海の宿に泊まろうかなと思っただけです」

「宿?」

「馬も休ませてやらないと」

「……そうね。フランシス先輩は旅慣れているのね」

「フランシスで良いよ。うちはこの国の端っこだから。寮に入ってるけど、学期末に家に帰るのはなかなかの大旅行ですね。もう帰らなくて良いんじゃないかと思っています」

「え? 家に帰らなくて良いの?」

「そうですね。もうあと少しで卒業ですし、その時に一度帰ったら、後は帰らないでしょうね。帰るとしたら、兄の結婚式か、誰かの葬式かな?」

「嘘でしょ? 家族は? 何も言わないの? 会いたくならないの?」

「家族も承知でしょう? 元気でやってるなら、頻繁に行き来できないくらいの距離があったほうが、お互い楽じゃないですか? 困っていれば助けるけど」

「なかなかに衝撃的な考え方だわ」

「長子じゃない男なんてそんなもんですよ?」


 呆れて、窓の外に目をやる。既に見慣れぬ景色。けれど、もう心細さは無かった。


「そうか。私、自由になったのね」


 私の呟きに、フランシスがふっと笑った。




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