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プロローグ


 チュンチュンと囀る小鳥の声、レースのカーテンを通して差す柔らかい朝の光、ふんわり軽い上質のお布団と、身体に残る心地良い倦怠感。そして、隣に転がる裸の男。


 ……裸の男?!


 目が覚めて早数分、私、クリスタ・ウォーターハウスは絶望の淵にいた。しかし、いつまでもこうしているわけにはいかない。


 お腹の上に力無く載せられた男の腕をそっと除けて、上体を起こす。分かってはいたが、やっぱり自分も裸だった。もしかしたらワンチャン何か着てるんじゃないかと期待したが、んなことはなかった。それどころか、起き上がった拍子に、下腹部から股の間へ、身体の中を何かが滑り落ちる感覚があった。生理の二日目あたりによくあるあれだ。


 脚の間を汚すドロリとした感覚に背中がぞくりとそそけ立ち、「きゃ」と小さく悲鳴を漏らす。


 慌てて口を閉じ、隣を見たが、男はまだ寝息を立てている。とりあえず一安心。……している場合ではない。

 確認せずとも、分かる。今、自分の脚の間を汚したものは、きっと、赤くない。白濁しているはずだ。だって、匂いが明らかに()()だもの。


 「うわあ、この匂い久しぶりい★」などとこの人生では初めてのそれを、前世での経験と照らし合わせて結論を出せる自分が憎い。かなり乏しい経験だが。


 前の生理いつだったっけ? 排卵日っていつ?

 今日はたぶん生理直前のはずで、二十八日周期なら今は排卵日から一番遠い、妊娠しにくい時期? よしっ! 


 全然良くはないのだが。不安を掻き消すために、無理矢理楽観視して拳を握る。

 そしてそのまま、幸せそうに惰眠を貪る男…… この国の王太子の隣からそっと抜け出し、適当にドレスを身に着け、クセの無い薄めの金髪を手櫛で整えると、見慣れぬその部屋から逃げ出した。


 なんで? どうしてこんなことになったんだっけ!?


 逃げながら、私は頭の中で散らかった昨夜の記憶を、必死で掻き集めていた。





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