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CASE3 13 STAIRS

一話完結式にすると一話が長くなりますね

俺の名は 藤堂 春人。


友人にはハルなんて呼ばれてる。どこにでもいる高校一年生だ。


気怠い午後の授業に午睡を決め込むとすぐに教師に起こされ、教室中に一時の笑いを提供するようなお調子者だと自覚している。


授業が終わり帰り支度をする。


面倒で部活には入っていなかった。

だが昨日の一件で部活に入ることになったのだった。

その名はオカルト部、胡乱な部活だが一応しっかりと部活一覧に登録されているらしい。

部長の鳳凰院 エリカ先輩に強引に勧誘された形だが、確かに二度とあんな体験はごめんだとなし崩し的に入部することになったのだった。

けっしてきれいな先輩に釣られた訳ではない。自衛のためだ。これだけは言っておく。


部室は理科準備室にあるとのことだった。科学部や生物部が日替わりで理科室は使っているそうだが、オカルト部は毎日理科準備室を占有しているらしい。


ワイワイと何やら実験をしてる科学部を横に俺は理科室からつながる理科準備室に入っていく。

特に科学部の面々は俺の存在に疑問を持たないようだ。


理科準備室に何故ソファーやテーブルや、奇怪な月刊誌が置いてあるのか疑問であったがその理由が今氷塊した。

それは、ソファーの上にエリカ先輩が寝転がりながら、その奇怪な雑誌を読み。ポテチを食べている姿が見えたからだ。


「ふぇ? あぁ、おはよー! えっと……後輩君! よろしく~」


「はい。 おはようございます。 あと僕の名前は春人です」


「はは、やだなー!忘れてないって! ハル君、そうハル君だよね!」


そういうと先輩は上体を起こし座りなおした。

ブラウスははだけてピンクのブラが少し見えていた。

俺は咄嗟に眼をそらすが、彼女は気にしてない様子だ。

こういうところが俺は少し苦手に感じている。

俺は恥ずかさを隠すように、話を切り出した。


「というかですね。 俺別に入部する必要なくないですか? 先輩がその呪文教えてくれたら解決じゃないですか?」


「理由は三つ。ひとーつ! 真言とか呪文って言ったって素人がちょっと習っただけじゃ効果はあんまない! ふたーつ! あーしが近くに居ればすぐに助けてあげられる! みっつ! これが一番大事、我がオカルト部は一年生がいないから来年には廃部になっちゃう! ご理解いただけたかな?」


「いや、要は廃部の危機だから入れってことじゃないですか! 別にこんな部活なくなってもいいじゃないですか!」


そんな口論をしてると、理科準備室の戸がきぃっと開いた。

その音に続けて、姦しい女性の声が聞こえてくる。


「おいっす~エリカ~いる~?」


「え? 何痴話げんか中? やば、年下じゃん!」


「いやーなくなるのは一応困るんですけど~」


俺たちのやり取りが聞こえていたらしく、三者三様の感想をこぼしていた。

順番にツインテールの背の低い先輩A 

すこし背の高い先輩B

ギャルっぽい先輩C

入ってきた女性たちは、スクールカーストが高そうな人たちだった。

全員二年生の制服を着ている。


「痴話げんかなんかじゃねーし。 新しく入ったオカ研の後輩、えーとケン君?」


「ハルです!」


「わはは! 間違えた、ウケる!」


俺はだんだんと頭痛がしてきた。

気分が悪くなり帰ろうとしたが、まぁまぁと宥められとりあえず横にあったパイプ椅子に座る。

先ほど入ってきた三人は手慣れたようにソファーに腰掛け思い思いのお菓子や飲み物を拡げていった。


四人はちょくちょく俺を弄りつつ、雑談を始める。正直居心地が悪い。

終わらない話に、尻の座りがわるくなったころ俺は何となく気になったことを質問する。


「ところで皆さんがオカ研のメンバーなんですか?」


「「「「違うけど?」」」」


四人の声がハモった。


「え? じゃあなんでいるんですか?」


「あっそうだった! エリカ13階段の呪いって知ってる?」


A先輩が何かを思い出したように話始めた。


「うん。 まぁ。 学校の怪談を数えながら歩くと、本当は13段じゃないのに13段になって、登りきると死ぬってやつでしょ?」


「そうそう! なんかね三年の先輩がやったらしくてさ。そして怪我しちゃったんだって! なんか怖いし、れーしだっけ? とりまお祓いしてって頼まれたんだよね」


A先輩は頭を下げてエリカ先輩に頼み込む。

しかしエリカ先輩は渋い顔を浮かべる。


「うーん。 そんなんたまたまだよ。そう簡単に人が死んだりしないって」


「えーエリカつめたくなーい?」


B先輩が文句を言うが、エリカ先輩はやはり気が進まないようだ。

確かにそんなよくある都市伝説にいちいち付き合っても居られないのだろう。


「ってかやば。 合コンの時間きたんじゃね?」


C先輩がスマホを取り出し時間を確認すると、三人は慌てだす。


「とりま。エリカ一応見るだけ見てよ! 東側の一階のとこね」


A先輩は部屋を出るときに念押ししている。よっぽど先輩に言い含められているのかもしれない。


「はいはい。 気が向いたらねー。 合コンいくんでしょ? はよいけし」


しかしエリカ先輩は適当な相槌で返すと、俺の方に向き直り話始める。


「一応なくなると困る人はいるんだよ。 こういうどうでもいいようなオカルト話の相談所と化してるんだこの部。もう30年以上続いてる。 だから一応あーしも後継者をさがさなきゃいけないってわけ」


「でもそれ俺じゃなくてもよくないすか?」


「いやこの流れで断んのかよ! ウケる」


けらけらと笑う先輩は心底愉快そうだった。

このテンションの乱高下についていけそうにはない。

面倒になってきた。もうあきらめて帰ろう。そう思った。


俺が帰り支度を始めると、先輩が腕をつかんで止めてくる。

その動きに振りかえるとはだけたブラウスには谷間が見えている。

俺はまたしても気恥ずかしくなり、眼を背けた。

今回はそれが不味かった。


「もし……」


「もし?」


「もし入ってくれるなら、ハル君が気になってるここもっとよく見ていいよ?」


そういいながら、エリカ先輩はにやにやと見上げてくる。

完全に遊んでやがる!

思春期の高校生を弄びやがって!

俺は頭にくると、勢いよく理科準備室を飛び出した。


何事かと科学部の面々がこちらを伺っているが無視して理科室も飛び出した。


沸騰した頭で下駄箱を開けたときだった。


(うわ……カバン忘れた。 弁当箱忘れるとかーさんうるさいよなぁ)


なんだか急にむなしくなる。

すぐに戻るのもかっこがつかないし、俺は自販機に買い物に行くことにした。

いつも買うヨーグルトドリンクを買うと、蓋を開けて飲み干す。

少し、ほんの少しだが落ち着いた。

余り遅くなると、先輩が帰ってしまうかもしれない。俺は階段下の自販機に備え付けられたごみ箱に空き缶を捨て階段を上ろうとした。


「そういや、ここA先輩が言っていた。東階段だよな……」


何の気なしに言っていたことを思い出す。

エリカ先輩も気にし過ぎだと言っていたし、特に心配はないのだろう。

だが俺は好奇心に負けてしまった。

魔が差したととはこういうことを言うのだろう。

階段を一歩ずつ歩く。


(1,2,3,……10、11)


そこまで気づいて俺は気づく。踊り場までに13段あることにだ。


「いやいや、もともと13段とかそんなオチだろ? はは……くだらねぇ! ほら、12!」


その一歩を進んだ時だった。

首筋に生暖かい息がかかるのを感じた。

目線の横に赤い布がちらちらと見える。

なにかいる。

それだけはわかる。


それは急に動きを止めた俺をせかすように、ぐいぐいと押していた。

その感触はゴムのようで生暖かい。

呟くような声も聞こえてきた。


「もう一段、もう一段、もう一段。早く早く早く早く早く早く!」


その声はだんだんと大きくなり、俺を責めさいなむような金切声に変っていった。

汗がじっとりと浮かぶ。

後ろに下がれば……、そう考えたが、ゴムのような塊がそれを許さない。

俺はそのまま硬直した。


(やっちまった……。なにやってんだよ俺!)


怖い目にあったばかりなのに自分から地雷を踏んで何をやっているのだろう。

今日は自分のあほさ加減に取り乱すことはなかった。

ただあるのは後悔の念だけだ。

そして、もうあきらめなよう。自業自得だ。

そうして一歩踏み出そうとしたとしたその時だった。


「ノウマクサンマンダ バザラダンカン!」


聞き覚えのある呪文がまた響くと、背中の不快感が取り払われる。

階段の上から、先ほど別れた時と同じニヤついた笑みを浮かべながらエリカ先輩が降りてきた。


「うわ! まったくこりてなくてウケる! てか、別れて10分で襲われてやんの超うけるんですけど」


そういうと俺のカバンを投げてよこしてくれた。

カバンには見覚えのない数珠がついていた。


「よしよし。今日は泣いてないな! まぁ帰ってやすみなよ。 その数珠はずっとつけといてね。 それで当分は大丈夫だからさ。 部活も気が向いたらでいいよ。 からかってごめんね」


そういうとエリカ先輩は階段を上って消えていく。

俺はその後ろ姿に、


「ありがとうございます! あと明日もいきます!」


そういうと、「おけまる!」

と返してくれるのだった。



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