表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/31

将棋のプロって、ぜったい地球外知的生命体だと思う!

「は、はじめてなの。優しくしてね?」


 上目づかいで恥ずかしそうにつぶやく彼女に、僕の心は高鳴った。

 誰もいない密室。

 時刻は午後4時。

 僕らは畳の上で向かい合って座っている。

 彼女は緊張してるのか、目の前でモジモジしていた。


 僕はなるべく優しい口調で語りかけた。


「大丈夫だよ、僕の言う通りに動いてくれたらいいから」

「……でも、ちょっと怖い」


 そう言って恥ずかしそうにうつむく彼女。

 若干顔を赤らめているところがまた可愛らしい。


 しかしながら、ちょっと怖いという気持ちはよくわかる。

 僕だって初めての時はすごく緊張したし。

 こうして向かい合って座ってるだけでも、彼女の心臓の音が聞こえてきそうだ。


「ごめんね、私からお願いしておきながら、いまさら怖気づいてるなんて」

「何言ってるんだよ。君が誘ってきた時はすごく嬉しかったよ」

「……だって、宇治原くん、この学校で教えるの一番うまいって言うから」

「バカだな」


 学園のアイドルを独り占めしているという優越感と、そんな僕を選んでくれたという幸福感が僕を包み込む。

 おそらく、今の僕は世界で一番幸せかもしれない。


「じ、じゃあ……お願いします」

「うん。お願いします」



「王手」

「ぐああああああ! また負けた! なぜだ、なぜ負けるんだ!」

「うふふふ、宇治原くんの負けね。やっぱり教え方がうまいっていうのは本当ね!」

「いやいやいや、ないないない! 教え方どうこうって問題じゃない! 何この強さ」

「やっぱり将棋って面白いね。ねえ、もう一局やりましょ、もう一局♪」

「まだやるの……?」

 

 その後、僕らは10局やり続けたが、将棋初心者の彼女には一度も勝てませんでした。




     ※※※



 のっけからヤベーにおいをぷんぷんさせたSSをごめんなさい。

 将棋検定100級(自称)のたこすです。



 突然ですが将棋が強い人って、ハンパなく強いですよね。



 僕は大学時代に寮に住んでいたんですが、そこでよく寮の人と将棋を指してまして。

 自慢じゃありませんが、寮内で「名人」の座についたこともあるんです。



 と言っても、指し手が僕含めて二人しかいませんでしたけど(オイ)



 で、寮の外で大学で知り合った将棋部の方とたまたま将棋をする機会がありまして。



「こっちは六枚落ち(めちゃくちゃなハンデ)でいいよ」



 その方はそう言って、自分の持ち駒を大幅に減らしてくれました。

 当時、名人だった僕はこう言いました。



「え、いいんですか? こう見えて自分、寮では名人ですよ?」(←マジで言った!)



 今思えば、全力で穴を掘って中に入って蓋をしてそのまま冬眠したい気分です。


 でもその方は

「いいよいいよ」

 と言って譲りません。


「じゃあ、遠慮なく」


 と、意気揚々と指し始めたのですが……。



 結果はボロ負け。

 いやボロ負けという表現すら生ぬるい大敗。

 ボロカス負け。

 体感時間、約30秒。



 気づいたら詰まされてました。



 な、なに? この強さ……。

 異常でしょ。

 地球人?



 当時の思い出の中で、強烈に脳裏に焼き付いた一局でした。


 でもその方もその強さで奨励会に入ってないんだから(入り方知らないけど)、世の中のプロ棋士って地球外知的生命体かもしれませんね。



 ちなみにその日から僕は名人を名乗らなくなりました。

 トホホのホー。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ