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第5話 学校が終わっても

 放課後も義姉さんは似たような調子だった。


 ホームルームが終わって、ふと視線を感じて見たら、当然のようにドアから義姉さんが顔を覗かせていた。


「おい、来てるぞ」

「知ってるよ」


 お昼に義姉さんが突入してきた出来事を見ているので、皆すぐ俺に目を向けてくる。何か怨念の籠った目だ。そんな目を俺に向けないでほしい。


「陸、一緒に帰ろ?」


 荷物を纏めて教室を出ると義姉さんに声をかけられる。当然断れないので、こくりと頷く。


 とはいえ、色々言っているが、別に義姉さんと帰るのが嫌なわけじゃない。

 義姉さんとは仲良くしたい。

 そのために一緒にいる時間が増える事は歓迎だ。登下校とか、それくらいは全く問題ない。


「手も繋ぐ?」

「そ、それはちょっと」

「うん……わかった。家でならいいんだよね」


 でも、もうちょーっとだけ距離を取ってほしいだけなのだ。


 義姉さんも残念そうな顔をしないでほしい。

 手を繋ぐのはまずいのだ。

 あと家でならいいとは言ったけど、こんなに人がいる所で言わないでほしい。


 廊下がちょっとざわついている。「家でならだって……」「あの二人仲いいんだ」「おうちで何してるんだろ……」とか聞こえる。


 絶対、怪しい関係だと思われてる。


 さっきも友人に言われたが、義姉さんと俺の距離感は姉弟のものじゃない。

 これはなんというか、もっと違う関係では……?


 お母さんと赤ちゃんみたいな……?


「陸、今日は帰ったら何するの?」

「勉強ですかね……?」

「偉いね。あとでよしよししてあげる」


 そう言って目を細める義姉さんは、ちょっと母性が見えるような気もする。

 やっぱり母かもしれない。すると俺が赤ちゃんか。赤ちゃんではないと思いたいな……。


 いずれにしても、距離感はもう少し考えた方がいいと思う。


 そんな事を思いながら、義姉さんと帰り道を歩いた。



 ◇



「りーく、何してるの?」

「おわ!」


 夜。


 自分の部屋の机でゲームをしていたら、後ろから義姉さんに抱き着かれた。


「ね、義姉さん!」

「どうしたのそんなにびっくりして……もしかして私が見たらまずいやつだった?」

「まずくはないですけど……!」


 まずいのは義姉さんの距離感だ。

 義姉さんはお風呂あがりで、上は薄いシャツ一枚、下はおみ足がしっかり見えるホットパンツのようなものだけという格好だった。

 目に毒だし、そうでなくてもいきなり首の後ろから手を回されたらびっくりする。


「何してるの? ……お姉ちゃんに教えて?」


 耳元に髪をすくいながら、義姉さんが俺の顔を覗き込んでくる。


 どきどきしてしまう。なんでもないのに。


「も、モケモンですよ」

「へー! 私も昔ちょっとやってたな」

「そうなんですか?」

「うん。もしかしたらまだ部屋に残ってるかも。待ってて」


 そう言い残して部屋を出ていき、少ししてから戻ってきた。


「あった! 一緒にできるかな?」

「……たぶん無理ですね」

「えー!」


 義姉さんが持ってきたのは一世代前のハードだ。俺がやっているものと互換性が無いタイプである。


「陸のは新しいやつなの?」

「たぶん義姉さんが持ってるやつの次に出たやつです」

「ほんとだ。画面すごい綺麗だね」


 俺の手元のゲーム画面を見て目を見張る。


「これって、二人でできる?」

「基本は一人プレイですね……」

「じゃあ陸がやってるの見てようかな」

「義姉さん、勉強は?」

「今日の分は終わったよ」


 早い。

 俺はまだ夜ご飯とお風呂を済ませたばかりだというのに。


「陸、もしかしてまだやってないの?」

「えー、ちょっと数学の難しい奴なので、明日友達とやろうかなと思って……」

「なら私が教えてあげるわ」


 え、と声を出す間もなく義姉さんがくるりとまた部屋を出ていった。

 そして戻ってきた義姉さんはなぜか伊達の丸メガネをかけていた。

 すごい似合ってる。じゃなくて。


「なんでメガネ?」

「先生っぽいでしょ?」


 先生には見えない。

 普通に薄着でメガネをかけてるスタイルのいい人に見える。


「じゃあ教えてあげるから、宿題やろっか」

「え!? いやそんな、義姉さんの手を煩わせるのは悪いというか」

「もしかして、やらないつもりじゃないよね?」

「も、もちろんです」

「なら今やっちゃいましょう? 大丈夫、すぐにできるから」


 義姉さんに諦める様子はない。

 今の短い間でモケモンはどこかへ行ってしまったようだ。


 俺は観念して数学の宿題を取り出して義姉さんに渡した。


「これです」

「へー、なるほど……結構難しそうだね」


 問題を眺めてふんふんと頷いている。数学の宿題は毎回大変なのだ。いつも時間がかかってしまう。


「大変そうだから、終わったらご褒美あげる」

「え」


 義姉さんが宿題を机に置くと、目を細めて体を寄せてきた。


「何かしてほしい事ある?」


 瞬時に脳裏に浮かんだいくつかの妄想を打ち消す。


「……無いです」

「今なにか考えたでしょ」

「何も」

「嘘だぁ」


 くすくすと笑われる。


「じゃあやってる間に考えとく。わかんない所は聞いてね」

「……はい」


 その後俺はかつてない速度で宿題を終えた。

 目の前に餌を吊るされると、意識してないはずなのにパワーがみなぎってしまうようらしい。義姉さんも褒めてくれた。


 ご褒美は添い寝でぎゅーだった。


 ぎゅーが凄かった。


 そのまま朝まで一緒に寝た。

お読みいただき、ありがとうございました!


もしよろしければ、

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作者のモチベーションに繋がりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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