第六話
シュリッセリブルク馬車に揺られること三日、後少しでタリンに着くらしい。最短ルートで行けば二日と少しで行けたが、最短ルートはサンクトペテルブルクを通る為避ける事にした。
そんな事を考えている内にタリンが見えて来た。
「陛下、タリンの美しい街並みが見えて来ましたね。」
「ああ、綺麗だな。」
そのまま、何事もなくタリンに入り伯爵邸に向かった。
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伯爵邸に着いた。
豪華な作りだ。
「陛下、お初にお目にかかります。ブルクハルト・クリストフ・フォン・ミュンニヒと申します。」
「伯爵、丁寧にありがとう。知っているとは思うが、俺はイヴァン・アントノヴィチだ。」
「ご丁寧にありがとうございます。長旅の疲れも残っているでしょう。中へどうぞ。」
そう言って伯爵は屋敷へ案内した。屋敷の中には、絵画やアンティーク品と思われる物が沢山置いてある。流石、貴族だな。
暫く歩いていると、伯爵がある部屋の前で立ち止まった。
「暫くの間はこの部屋をお使いください。」
そう言って、部屋のドアを開けた。中もまた、アンティーク品や絵画が置いてあった。客室にしては豪華すぎる。
こんな部屋がいくつもあるのだろうか。
だとしたら、貴族はどれだけの金を持っているのだろうか。
「ありがとう、伯爵。」
「いえいえ、貴方様のお母様に当たるアンナ・レオポルドヴナ大公様に貴方様を頼まれておりますから。」
その言葉を聞いて俺は驚いた。母上と伯爵は余り仲が良くなかったはずだ。その母上が伯爵に頼っただと⁉︎…だが、伯爵が嘘を言っているとは思えない。
もしかしてだが…
「そうか、…伯爵後で時間が空いていたら二人で話がしたい。」
「夜には時間が空くと思いますので、夜にお話をしましょう。ですので、それまでお休み下さい。」
「分かった。夜までゆっくり休んでおくよ。」
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夜になって伯爵が部屋を尋ねてきた。
「陛下、防音に優れている部屋が御座いますのでご案内いたします。」
「ああ、ありがとう。」
伯爵について行く。そのまま歩いて行くと、一番端にある部屋に着いた。
「中はどうぞ。」
伯爵がドアを開けて言った。
「ありがとう。」
中へ入って行く。中は本棚とテーブル、ソファだけの質素な部屋だった。
「好きな所にお座りください。」
そう言われたので適当に近くのソファに座った。
俺が座ると、その対面にあるソファに伯爵は座った。
「…陛下は今後についてお話したいのですよね。」
伯爵から切り出した。
「ああ、それもある。…だが、まず最初に聞きたいのだが、伯爵と母上はそりが合わなかったと聞いたぞ。なぜ、母上はそりの合わなかった伯爵に俺のことを頼んだのだ?」
「どこでその話を?」
「牢屋にいた時に看守に世間話で聞いた。」
「…」
「ああ、他にも伯爵がエリザヴェータ帝に死刑にされたが、断頭台から引き摺り下ろされて、シベリアへの追放処分になったが、ピョートル3世に罪を許されバルト海沿岸地域の行政長官になったとな。
…だが、その話には裏があるのだろう。しかも、その話は母上と俺が関わっていると思われる。」
「…なるほど。確かにそれは表向きの話で裏が御座います。そして、陛下のご明察の通り陛下と大公様が深く関わっております。」
「教えてはくれないか?」
「…いずれ話そうと思っておりました。喜んでお教えしましょう。」
そう言って、重い口を開いた。
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