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第五話

俺は俺を助けてくれた男を見た。外見は二十歳を超えたあたりで、筋肉がある男だ。この男がヴァシリー・ミロヴィチなのだろうか。黙って考え事をしていると男が話しかけて来た。


「…陛下、時間が御座いません。どうか、私を信頼して付いて来ては貰えないでしょうか?」


「…ああ、分かった。だが、一つだけ教えてくれ。名をなんと申す?」


「…名乗り遅れて失礼しました。私の名はヴァシリー・ミロヴィチであります。陸軍中尉です。」


「いろいろ聞きたい事があるが、まあ良い。…俺を助けてくれ。」


「勿論でございます。」


そう言って、ヴァシリー・ミロヴィチは俺を先導しながら走り出した。何人かの看守をやり過ごしながら出口に近づいて行く。


…ん?出口に看守が立っている。


…クソッ、後少しだったのに…。


まて、…前世で読んだ本でエカチェリーナ2世が看守に俺を殺させる為、エカチェリーナ2世に恨みがあったヴァシリーを唆したと書いてあった。

…もしかしてだが、エカチェリーナ2世はこうなると読んでいたのか?


「ヴァシリー、出口に看守がいるがどうするのだ?」


そう聞くと、安心した顔で俺の問いに答えた。


「安心して下さい。彼らは私の協力者です。ついでに言うと、彼らのお陰でこの監獄に侵入出来たのですよ。」


「そうなのか、よかった。…もしかしてだが、他にもこの監獄に協力者がいるのか?」


「なぜそう思われたのですか?」


「看守に会うことが少なかったからだ。」


「流石でございます。他にも何人か我々の脱出経路に他の看守が余り来ないよう、誘導している者がおります。」


「そうか、その者達にも感謝せねば。」


そう話しながら、看守達の横を通った。辺りは真っ暗だ。逃げるにはちょうど良いだろう。船に乗り込んだ。船内には船員らしき人がいた。彼らが俺を運んでくれるのだろう。彼らは俺たちが船に乗ったのを確認するとすぐに出港した。


「お気をつけて。」


看守はそう言って、俺たちを見送った。


「ヴァシリー、改めて礼をする。ありがとう。」


「いえ、私は貴方を牢に閉じ込めているエカチェリーナ2世に恨みがありましたし、彼女の政治に私は疑問を持っておりますから。」


「俺がエカチェリーナ2世と似たような政治をするとは思わなかったのか?」


「ええ、なんとなく勘ですがね。ですが、今日直接会って確信に変わりました。貴方は偉大な皇帝になるでしょう。」


「何故、そう思う?」


「産まれてからずっと監獄に居たにも関わらず貴方の目が死んでいないのと勘です。」


「フッ。…勘か。」


「何笑っているですか、私の勘はよく当たるんですよ。」


その後、暫く会話をしていると陸が見えて来た。


「シュリッセリブルクの郊外でこの船を降りて、ブルクハルト・クリストフ・フォン・ミュンニヒ伯爵邸に馬車で向かいます。とは言え伯爵邸があるのはタリンです。元々距離が有る上に警戒が強いと思われるサンクト・ペテルブルクを通れないので遠回りで向かう事になり、余計時間が掛かりますがご容赦ください。伯爵様が直接此処に来れたら良かったのですが、伯爵様も陛下が復権する為の準備で忙しい上に、ご高齢の為陛下に伯爵邸に向かっていただく事になりました。申し訳ございません。」


ブルクハルト・クリストフ・フォン・ミュンニヒ伯爵は確か母上とそりが合わなかったと聞いたぞ。


だが、そのブルクハルト・クリストフ・フォン・ミュンニヒ伯爵は俺にかなりの支援をしている…。


何か裏があるのだろうか。


…いや、疑うのはやめよう。なにせ数少ない味方だ。


信用しよう。


「いや、ここまでしてくれたのだ。感謝こそすれど伯爵を恨むなど誰が出来よう。ブルクハルト・クリストフ・フォン・ミュンニヒ伯爵には礼を申さねば。」


そんなこんなしている内に陸に着こうとしている。夜も明けて来て朝焼けが綺麗だ。

なんと言うか、イヴァン6世として初めて見た朝焼けが天の祝福だと思ってしまった。



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