天下泰平
「かっけー!幸村様かっけー」
シンプルに興奮する素直な男の子の曾孫に俺は少し安堵する。
兄上、子供ってこういうもんだよ?
ニヒルな裏の顔は子供には要らないよ?
「そうじゃな。あやつは大阪で自らの、いやさ真田の名を大いにあげた」
冬の陣で真田丸という出城を考案した頃は、まだ勝つ気があったのだろうけれど。
裸城となった大阪で、後詰めの期待できない籠城で、
あやつは何を思ったのだろう。
「そして、死んだんじゃ」
うつむく俺。
曾孫は悲しそうに侍女に連れていかれた。
…
「ということになってるんじゃが」
俺はニタニタと庭師に話しかける。
我が家自慢のガタイのいい庭師は、今日もせっせと松を刈っている。
まっすぐ伸びた背筋で、口元で微笑みながら。
「よく聞こえなかったでござる」
「庭師はござるいわんわ。ぬしゃ本当に隠す気がないじゃろ」
「旦那様はなかなかお迎えが来ませんな」
「冥土で兄上がてぐすね引いていると思うとなぁ、旅の準備も鈍るわい」
庭師は汗を拭って笑う。
おそらく、秀忠様は全て知っている。
なんで許されているのかは想像がつかない。
なんとなく、権現様の命令な気がしているが。
まぁ、俺は一応墓まで持っていこうか。
もう一度、こいつが挙兵しないともかぎらんからな。
まっかな夕焼け。
庭師と俺は静かに落ちて行く日を眺め。