第3話 怜悧高生の本気
これまでのあらすじ
名門怜悧高校に入学した小谷は、入学早々提出物を忘れた隣の女子を「どこにでも馬鹿はいる」と見下す。そんな小谷にも齋藤という話し相手が出来るも、中間テストも近いのに危機感がない齋藤含めた怜悧高生に失望する。
ついに中間テストがやってきた。
小谷は自信満々だった、1日目1科目目は国語。
こんなものは授業でやったものがテストで出るので、小谷にとって100点以外はあり得なかった。問題用紙、解答用紙が配られる。
チャイムが鳴り、初めてのテストが始まる。
教室に響き渡るのはただ筆記音、それ以外は何もないある種の神聖なる静寂が1年2組を包み込む。小谷もそれを感じ取りながら、着実に解き進めていく。
だが問いを5問ほど解いた頃、小谷のペン先が止まった。小谷にとっては初めての感覚と言って良いだろう「わからない」という事実を突きつけられた。
周りにはいまだ筆記音が響き続けている。
つい2週間前にも休み時間にひたすら喋っていたクラスメイトのペンは止まらない。だが、自分は止まっている。学年1位を死守し続けてきた小谷のプライドにとって、「負け」を認識することは「絶望」を与えるのに十分だった。
その問いを飛ばし、次の問いを解き始める。だが、今の小谷は小谷であって小谷でない。自信を喪失した小谷に与えられる問いは全て記述式である。国語の記述式の問題を解く以上、自信を失い「間違っているのではないか」と疑うのはかえってマイナスに働く。なぜならば、字数制限をされている以上完璧ではないからだ。
こうなれば、小谷は間違いに怯えながら書いていく。だが思い出してみて欲しい、ここはただの高校ではなく、県下随一の名門高校である。そのペースでは到底時間は足りない。
チャイムが鳴り響く。小谷にとってそれは恨みたくなるような音色だった。結局有効解答は8割程度、これでは1位の座は不可能である。半ば放心状態の中、小谷の空白が目立つ解答用紙は回収された。
「思ったより簡単だったよな」
無心の小谷を呼び起こしたのは齋藤だった。時間はきついけど云々などと話しているが、小谷はほとんど聞いていなかった。齋藤が話し終わった頃
「そうだな」
そう一言呟くのみだった。
2科目目は化学だ。こちらも解答は記述式。だが国語の記述式とはわけが違う。分からなければ空白必至、推測さえも難しいのが理系科目である。小谷ももちろんそのことは理解しているので、しっかり準備してきた「はず」だった、教科書や問題集の問題は完璧にした、解けないはずがない。と小谷は思っていた。
だが忘れてはいけない。ここは名門高校であり、中学校ではないのだ。2科目目も国語よりはマシではあるものの、1位や100点とは程遠いと言わざるを得ない解答用紙となった。
3科目目の数学Iも化学と変わらないほどの出来だった。まず教科書レベルの問題が中学校とは比較にならないほど少ないのだ、これでは教科書レベルは完璧でも、上位の問題を解く工夫は閃きになってしまう。そうなると時間が足りないのだ。
試験1日目が終わった。小谷には明日、明後日まで続くこの試験が途方もなく長いもののように思えた。
中間テスト1日目です!2,3日目は次話でまとめて書きます。流石にテスト長くしても面白くないだけですからね笑、この後はテスト1話で終わっていくと思うので、長々と書いてるこの話も悪くないと思っていただければ幸いです。