6 明日へと(最終話)
『迷ひ家の村』、ライオスの家…
「ただいまー。すっげぇ結婚式だったぜぇ。」
ナイン村長が入って来た。
「…こっちは特に何も無かったぜ。」
「お疲れ様です。村長さん。」
ライオスが素っ気なく、エミリーが洗い物の手を止めて挨拶する。
「いやー、ウララも良い所に片付いたぜ。これで俺も師匠と親戚かぁ~~~ハッハッハ…」
それから突然、両目からボロボロ涙をこぼし出し、
「ううう~~~…ウララが嫁に行っちまった~~~ぁ~
む、娘なんて作るんじゃなか…グヘっ!!」
イナ夫人に背中をしこたま叩かれてうずくまるナイン。実は共和国からここまでの道中、ずっとこのやり取りを繰り返していたのだ。
「ご…ゴホン。お前達にスティーブから、預かってきたものがある。」
「え…!?」
ライオスとエミリーは、結婚式に招待されていなかった。流刑された罪人であるライオスは『迷ひ家の村』を動く訳にはいかず、エミリーも彼に従うと思われたからだ。
「結構な大荷物になるけど、出してくぜ。」
まず取り出したのは、タキシードと、ウェディングドレス。
「………っ!!」
「何故…こんな物を…!?」
「二人とも、体型はあの新郎新婦と同じくらいだよな!?それからこれ…」
次に取り出したのは、1枚の『スクリーンショット』。向かって左側にはタキシードのスティーブが立っており、右側にはウエディングドレス姿のウララが椅子に腰かけている。
「そして最後に…これ。」
『カメラ』と、フィルムと、撮影と現像のための道具一式。そしてその取扱説明書。
「ふざけやがって!!施しのつもりか、あいつ!!!」
『カメラ』を掴んで地面に叩きつけようとするライオス。
「止めろよ。これ、高いんだろ!?」
ナインが止めに入る。
「ライオス…これ見て。」
エミリーがSSの裏を見せる。
そこにはこう書かれていた。
『スクリーンショットを撮って行こう、これからもずっと。
辛かった昨日を過去へ押し流し、
幸せな今日を永遠に記録に留め、
明日へと、歩いて行ける様に。』
「ライオス…」
エミリーは自身の良人の顔を見つめた。
「あの人の言いたい事…分かるわよね!?」
「ああ…」
ライオスは地の底から沸き上がる様な低い声で言った。
「だから俺は、お前の事が大っ嫌いなんだよぉぉぉぉ!!!」
※ ※ ※
1週間後、『ライトニングカンパニー』工房長室…
「工房長、ライオス様からお便りです。」
スティーブの妻となったウララだが、仕事の時は変わらず彼を『工房長』と呼ぶ。
ちなみにタキシードとウエディングドレスは、別途送り返された。
スティーブは封筒を開けて、中に1枚だけ入っていた『SS』を取り出し、
「………やりゃ出来るじゃねぇか。」
『SS』に写っていたのは、タキシードを着たライオスと、ウエディングドレスを着て、お腹の辺りにブーケを持ったエミリー。スティーブとウララの『SS』とは反対に、ライオスが右に立ち、エミリーが左に座っている。
「ブーケは生花だし、ウララが次の花嫁に投げてしまったけど、あの村でも花を植えてたみたいだな。」
「これ、もしかして…」
「ん!?」
「いえ…何でもありません。」
スティーブのデスクの上には、彼が結婚式で撮影し、ライオス達の元へと送ったのと同じ『SS』が、小型額縁に納められていた。
スティーブは鍵のかかる引き出しから、かつて3人の『SS』を納めていた小型額縁を取り出し、送られて来たライオスとエミリーの『SS』を納めると、自分達の『SS』の右隣、ちょうど、スティーブが左、ライオスが右に立ち、ウララとエミリーがその間に並んで座る形に並べた。
スクリーンショットを撮っていこう。たとえ遠く離れていても、
辛く当った昨日を赦し合い、
幸せな今日を分かち合い、
明日へと、歩いて行ける様に…
※ ※ ※
それから半年後…
「工房長、ライオス様からお荷物です。」
ウララが言った。
「荷物…!?手紙じゃなく!?」
「はい…この通り…」
ウララが差し出したのは、大きな固い筒。スティーブの工房でも、図面を輸送するのに使っている。
「これ…ものすごく大きく引き伸ばされた『SS』だ。」
筒の中身を取り出しながらスティーブは言った。引き伸ばし機は…撮影、現像に使う道具一式を送ったはずだよな。こんな大きな『SS』を撮らなきゃならない、一体何があったのか…
デスクの上に、丸められた『SS』を注意深く広げていくと…
「おい…」
スティーブの耳が、困惑で半ばから下へ折れた。写っていたのは…
ベッドの上で半身を起こし、産まれたばかりの、少し耳の尖った赤ん坊を抱き抱えたエミリー。
遠雷 ~The End of "LightningS"~




