表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/68

14 豆台風の恵み 

10分後、『酒場』…


「………困ったことになった。どうやら太古の技術書は、相当に難しい物らしい…」

腕組みしたライオスが言った。

「…あの本は、読者が科学に関する様々な基礎知識を、『当たり前の事』として知っている事を前提として書かれているらしい。

でも僕らはそれを持ってないから、あの本に書かれている内容が、理解出来ないらしい…」

スティーブが言うと、

「「うーーーーーん………」」

2人は揃って途方にくれた。


と、そこへ…


「兄っちゃーーーーーーーーーーーん」「ぐあ!」


ギルドの扉がバタン!と開いて、テレサがスティーブに飛びついて来た。

彼女はあれ以降も、時々こうしてギルドにやって来ては、一しきり喚いて去って行っていた。


「兄ちゃん元気ー!?元気ーーーー!?冒険してるのー!?冒険やってるのーーー!?私も冒険者になりたいなーーーいいーー!?いいでしょーーー!?いいねーーーー!?やったーーーーーー!!!どーーーしたのーーー!?何か元気無いみたいだね――どーーーしたのーーーー!?」


「テレサ…」

スティーブはテレサを引きはがしながら言った。

「僕は難しい話をしてるんだ。静かにしてくれないか!?」

「ちぇーーー…」


「そう言えばスティーブ…」

ライオスはかなり長い時間考えた末、言った。

「何!?」

「お前が昔、言ってた、『遠くの雷が遅れて聞こえる』という話。」

「うん…」

「あれをお前に話してくれたのは、誰だ!?

その人は科学に関する素養があるみたいだから、その人から科学の基礎知識を勉強してから、あの本を読めば…」


「それは無理だよ。」

スティーブは顔を伏せて答えた。

「だってその人………僕の父さんだもん…」


「あー………」

ライオスは納得した。

スティーブは父の反対を押し切って冒険者となった。

母とも『夢を叶えるまで家へ帰らない』と誓っている。

「そう言えば、僕の父さんは、ツァウベラッドの開発のために、若い頃から様々な科学書を蒐集してて、その中の1冊を教科書代わりに、僕に色々教えてくれてたな…」

「そ…その本は何て名前だ…!?今、どこにある…!?」


「”Science”って本…在り処は多分、父さんの書斎………」

「…だめじゃないか………」

ライオスは頭を押さえた。

これまで数々のダンジョンを攻略して来た自分たちにとって今更、父親の部屋が最難度のダンジョンになるなんて…


バタン!表の方でドアが閉まる音がした。

テレサが帰って行ったのだ。

全く…何しに来たのか…!?


「あ…あのー…」


すると、これまで話に加われないでいたエミリーが手を上げた。

「その”Science”って本…私、知ってるかも…」

「「え……!?」」

「この間、遺跡から取って来た教科書の中に、そういうのがあったわよ………古書店に売っちゃったけど…」


スティーブとライオスはガタン!と椅子から立ち上がった。

「「それだーーーーーーーっ!!」」


     ※     ※     ※


10分後、古書店…


「良かった…まだ売れてなかったな…」

ライオスは”Science”を買い戻した。

スティーブもエミリーが売った本の中から、”Chemistry”を買い取った。

題名が錬金術(Alchemy)に似てるから、何か使い道があるかも知れなかった。


「しかし…1冊しか無いのか…」

”Science”はスティーブにとってもライオスにとっても、バイブルとなるに違いなかった。

「交互に読むしか無いのか…」

時間がかかり、効率は悪くなるが…


3人がギルドへ戻って来ると…


「兄っちゃーーーーーーーーーーーーーん!!!」「ぐえ!?」


テレサ、再来襲。


「痛ってぇなぁお前は…いっつもいつも何しに…」

面倒そうなスティーブに、テレサは、


「はいこれ。」


表紙に”Science”と書かれた古い本を取り出した。

ライオスが持っているのと同じ…いや、あちこちの傷や折り目には見覚えがある。


「これ…父さんの………!?どうして…!?」

これは、父の書斎にあるはずの”Science”だ。


「これが必要なんでしょ!?兄ちゃん!!」

あっけらかんとテレサは言った。

取って来てくれたと言うのか…!?


「う………うん………ありがと…」

状況が呑み込めなくもスティーブは妹に礼を言った。

こいつ…わぁわぁ喚き散らしながら僕たちの話を聞いて、理解してたのか………!?


「それじゃあ、がんばってねーーー!!」

そう言ってテレサはギルドから出ていった。


「テレサちゃんもあなたの事、応援してくれてるみたいね…」

エミリーが言い、スティーブは”Science”をじっと見つめた。

これで、ライオスと2人一緒に、この本を読んで行ける。だが…ちょっと待てよ…


ペラペラペラ…!!スティーブはものすごい勢いでページをめくり始める。

「お…おい、スティーブ!!」

「どうしたの…!?」

「これ…見た事あるぞ………!!」

更にペラペラとページをめくり…

「あった、これだ!!」

あるページで指が止まる。


そこに描かれていたのは、箱と木の絵。

箱の、木の側の一面に小さな穴が開いており、

木の両端から伸びた線がその穴で交差し、

反対側の壁の逆さ映しの木の両端まで伸びている。


「これって…」

「あの猟師小屋の………」


「あの小屋…どこかで見た事があると思ってたけど………これだったんだ…。」


父さんに読んでもらった、この本…皮肉にも、僕が夢を叶えるのを反対した父さんが教えてくれた事が、僕の夢を叶える助けになった。


スティーブはその絵に添えられていた一文を読んだ。


「ピンホール…レンズ……ピンホール・カメラ………


…『カメラ』!?」


それが、彼が目指す物の、名前………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ