逃亡中です
何時間走っただろう。もう日が登り始めた。川を見つけたので、そこで一休みする。
「だいぶ走ったね」
「約80から120キロメートルぐらい走ったかな。獣人たちの国まではあと同じぐらい走れば着くはずだよ。さっきまでいた城が、かなり王国内でも南の方の土地だから」
情報収集に関して、霞原は抜かりない。
「これからの道のりは?」
「しばらく進むと、街があったと思う。街から国境までは大体50キロメートルかな」
「次に日が沈むまでには国境に着けそう?」
「もちろん」
「街で馬車とかに乗るのは?」
「出来なくはないけど、俺らは金持ってないし、自分で走った方が多分早く国境に行ける」
しばらく休んだので、もう一度走る。
今度は、さっきよりもペースを落とす。これから人が多いところに行くため、多少の戦闘があるかもしれない。そのための体力は残しておきたい。
街に着いた。もう昼に近くなってきたため、かなり賑わっている。早速汗を流そうと思い、風呂に入る。街の入り口でゴブリンの群れを殺し、それを売ってできた金で銭湯に入る。
「この後国境を超えてからどうする?」
霞原に予定を聞いてみる。
「確か1番人間の国に近いところには、猫人族の里があったと思うんだよ。とりあえずそこで過ごすってのがいいと思うんだけど……俺は普通に旅をしたい」
猫人族。とても興味が湧く名前だ。
「モフモフしてるのかな……」
「お前とんでもないこと考えてないか? 常人よりかは遥かに上の身体能力を持つ獣人たちの中でも、特に近接戦に長けてるんだぞ? それをモフモフとか……まあ俺らの実力がどうかによって変わると思うけどな……」
「それで霞原、お前はどうするんだ?」
「俺は獣人の国のあちこちを旅してみるよ。せっかく自由に行動出来るんだから、あちこち旅してみるのもいいかなって」
「なるほどね。じゃあ、国境を越えるまでは一緒に行動するけど、その後は適当に別行動にするってことでいい?」
「もちろん」
風呂から上がり、着替えてからさっさと街を出る。途中、余った金で少量の食料を買っておく。
しばらく歩くと、巨大な壁が見えてきた。高さは約5メートル程度なのだが、恐ろしく長い。端っこは見えないほどだ。
「……万里の長城みたいだね……」
霞原も驚いているらしい。一応門はあるのだが、無視して壁を飛び越える。
壁の向こうには、平原と森が広がっていた。
「じゃあ、これ地図だからあげるね。俺は適当にどっか行ってくる。何かあったら、猫人族の里に行くから、よろしく伝えといて」
「はーい」
霞原と別れ、受け取った地図を頼りに進む。今度は歩いて行くことにする。
霞原の背中が小さくなり、やがて見えなくなった。
「ここから南へ約5キロメートル、東へ3キロメートル進んだあたりか……ちょっと走るか」
さっき歩いて行こうと決めたのだが、日没までに里に辿り着けないリスクを考えて走ることにした。
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一方その頃、王国では……
「召喚した勇者のうち2人が、強姦をして追放になったらしいぞ!」
「あらまぁ、最低な屑ね」
根も葉もない、そしてとんでもない噂が流れていた。そして、王から正式に、霞原翔と瀬戸桐谷を国外追放にするという命令が出されていた。
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桐谷たちが召喚された城の訓練場では……
「あの2人は何者なのだ? 対して筋力も無さそうなのに、俺より遥かに強いとわかる……」
訓練の喧騒を完全に無視した騎士団長が、考え事に耽っていた。
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