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異世界で最強の剣士だった俺は、魔術師が支配する元の世界でも最強のようです  作者: 八又ナガト
第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
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08 結果発表と大切な存在

「た、確かに、マタシウト鉱石の納品を確認いたしました……」


 ロックドラゴン討伐から二日後、無事に王都の第二学園に戻ってきた俺とユナは、さっそく依頼の達成を報告しにきていた。

 素材袋から出てくる大量のマタシウト鉱石を前に、職員が目を丸くしている。


「ま、まあ、あくまで採掘依頼ですからね。うまく魔物との戦闘を避けることができたようで良かったです」


 どうやら職員は、俺たちがグレイド鉱山の魔物と戦わなかったと思っているみたいだ。

 それは当然だろう。第二学園の生徒がたった二人で真正面からあそこに挑み、無事だと考える者などいるはずがない。

 職員には悪いけど、この勘違いは正す必要がある。


「それで納品分はこれで全てでしょうか?」

「いや実はあと二つあって」

「二つ?」

「ユナ、感謝状を頼む」

「うん!」


 首を傾げる職員の前で、俺は素材袋からロックドラゴンの鱗を、ユナは一枚の紙を取り出す。

 紙にはグレイド鉱山付近で出没が確認されていた、Bランク相当とされる犯罪者パーティを捕えたことに対する感謝の言葉が書かれていた。


「えっ? えっ? つまりどういう……えっ?」


 想定外の出来事に動揺する職員に、ここ数日の出来事を丁寧に説明していく。

 しかし途中で脳の処理が追い付かなくなったのか、頭からぷしゅ~と蒸気を発しながら勢いよく立ち上がる。


「と、とにかく! 依頼は達成ということですね! それ以外については上の者に報告してくるので、この場での回答は控えさせていただきます! そ、それでは失礼します!」


 現実から逃げるように颯爽と駆けていく職員。

 俺とユナは顔を合わせ小さく笑い合う。


「ねっ、言った通りでしょ。すごく驚かれちゃったよ」

「だな。けど達成は達成だ。これで問題なく第一学園の転入試験が受けられる」

「そうだったね、まだ転入試験が残ってるんだった。頑張らなくちゃね、ルーク!」

「ああ」


 俺たちはそうして、お互いの意思を確かめ合った。



 それから数日後、進級試験の結果発表の日が訪れる。

 俺が第二学園に辿り着いた時には既に張り出されていたようで、賑わいを見せていた。

 けれど、どこか様子がおかしい。

 賑わいというよりはむしろ、ざわつきに近い。

 何かおかしなことがあったんだろうか?


「おい、きたぞ」

「嘘だろ、こんな結果。あのクズルークが」

「てことは、やっぱりヌーイの言う通り不正なのかな?」


 周りの会話を聞くに俺に何か関係していそうだが、ひとまずは無視だ。

 なぜか人垣が割れて道ができたため、前に進め張り出しを見る。

 三年生と四年生の張り出しには、それぞれこう書かれてあった。


 三年

 主席 ルーク・アートアルド 130点

 四年

 主席 ユナ・ミアレルト   150点


 ユナは全く魔法が使えないわけではないので、実技でも点数を稼いだみたいだ。

 問題なく、二人とも主席になっていた。


「よしっ」


 分かっていた結果だが、嬉しいことには変わらない。

 喜んでいると、背後から耳障りな叫び声が聞こえている。


「こんなもの、不正に決まっている! クズルークがAランク依頼を達成できるはずなんてない! そうだろう!」


 俺を含め、人々の注目が声の発信源――ヌーイに向けられる。

 彼は怒りの表情で、周囲に対し必死にそう主張していた。

 というよりむしろ、俺がこの場に来る以前からそう訴えていたのだろう。

 相変わらず暇な奴だ。自分は嫌がらせで受けた依頼を失敗したせいでいつもより順位が下がっているくせに。

 そう反論しようかと思ったが、その機会は訪れなかった。


「黙りなさい、貴方。学園の評価基準に文句があるのならば、学園に直接言うことです」

「なっ、なんだテメェ――ッ」


 ヌーイは反論の言葉を失っていた。

 その少女の服装を見たからだろう。

 美しい青色の長髪を靡かせるその少女は、第二学園の黒色の制服ではなく純白の制服に身を包んでいた。

 すなわち、第一学園の学生であることの証明。

 さらに胸元に下げられた金色のブローチから、第一学園の中でもトップの存在、絢爛学生会ブルームの一員であることが分かった。

 ブルームとは各学年の成績上位三名しか所属することが許されない、全生徒憧れの集団である。

 そんな少女に口答えすることなど、第二学園の者に許されるはずがない。

 それどころか、その美しい佇まいの前には誰もが見惚れるばかりで、反抗的な感情を抱くことさえないようだった。


 ……もっとも、俺は皆とは少し違った感情を抱いていたが。

 コツコツと足音を鳴らしながら、少女はこちらに近づいてくる。

 その整えられた口からどんな言葉が発せられるのかと皆が注目する中――彼女は、全力で俺に飛びついてきた。


「お久しぶりです、お兄様! 私、ずっとこの瞬間をお待ちしておりました!」

「おい、ティナ! 急に抱きついてくるな! 周りがドン引いてる!」

「そう恥ずかしがらないでくださいませ! 私はお兄様が主席で試験を突破されたと聞いた時から、もういても経ってもいられなくなってしまって、やっと共に同じ学園で学べますね!」

「いや、その前に転入試験が――」

「そんなものお兄様の敵ではありません! それに、その程度の障害、私たちの愛の前には薄っぺらい紙も同然ですわ! そうですよね、お兄様」

「……そうだな」

「ですよね!」


 返答に困ったためとりあえず頷いたのだが、ティナは心から嬉しそうに笑う。

 この少女の名はティナ・アートアルド。

 俺の世界で一番大切な妹にして、ブラコンだった。

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