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エピローグ

 魔王討伐後。

 俺たちはかねてからの依頼であった魔硬石を回収した後、帰路についていた。

 しかし、馬車の空気はそれほど明るくなかった。


 魔王を討伐できたとはいえ、全てが解決したわけではない。

 あの後、クレアスは魔王が倒されたことに絶望しながら、静かに息を引き取った。

 問題はもう一人の残された魔族のアルマだ。

 魔王討伐直後に確かめると、彼女はいつの間にかその場から消えていた。

 まさか聖剣の一撃に巻き込まれたわけではないだろう。

 彼女を逃したことで再度魔族が何かを仕掛けてくる可能性があるが、もうこうなってしまっては、その時のことはその時に考えるしかない。


「ああ、そうだ。今不安に思ったって仕方がないな」

「ルーク?」


 俺はこの重々しい馬車の空気を換えると決断する。

 これからの心配事はあるが、きっと俺たちなら何とかできると信じているからだ。


「いや、だってそうだろ? 魔族の一部は逃したとはいえ、魔王を倒して人間界に迫っていた危機を遠ざけることができたんだ。俺たちは十分に頑張ったって思ってさ」

「……うん、そうだな。ルーク師匠の言う通りだ。何度も戦いの場を経験すれば、満足いかない結果に終わることは多々ある。その時ただ悔いるのか、良かった点を把握したうえで反省点を次に活かすかでは成長度合いは全く異なる。自分たちの成果とも、向き合う必要があるんだ」


 ある意味、この場で最も戦闘経験のあるレオノーラの言葉を聞き、ティナとユナの二人もようやく表情を綻ばせた。


「そうだね。ここにいる誰一人として死なずに済んだんだもん。それだけでも喜ばなくちゃ!」

「そうですね。それに私は今回の戦いで、とある覚悟ができました。確かに得たものがあるのだと、強く理解しておく必要があります」


 それぞれが今回の戦いを何を得て、何を失ったのかは異なる。

 それでも間違いなく共通の認識が一つある。

 それは出発時と同じメンバーが、今ここにそろっていることへの歓喜だ。


 これからきっと、想像を超えるような困難が俺たちを待ち受けているだろう。

 魔族の襲撃や、それ以外のことも含めて、何が起きるのか分からないのが現実だ。

 その時に備えて、俺たちは強さを求め続けなくてはならない。


 ふと、腰元にある鞘に手を置く。

 今回の戦いで得た、この聖剣。

 そして何より、共に戦ってくれた仲間たちが俺の力になってくれるはずだ。


 異世界においても、この世界においても、俺は最高の仲間に恵まれた。

 彼女たちと一緒なら、俺はどこまでも強くなれるはずだ。


「ありがとうな、皆」


 どうしても、感謝の気持ちを伝えたくなった。

 突然の言葉だったが、三人は優しく笑う。


「うん、こちらこそ、ありがとうねルーク」

「私は常にお兄様の味方ですから。頼ってくださいね」

「ああ、ルーク師匠、これからも共に高め合おう!」


 優しい空気と、暖かな笑い声に包まれながら馬車は進んでいく。

 これからもずっとこの関係が続いていくのだと、不思議とそう確信できた。


 俺たちの旅は、まだ始まったばかりなのだから。



 FIN

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