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異世界で最強の剣士だった俺は、魔術師が支配する元の世界でも最強のようです  作者: 八又ナガト
第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
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04 規格外の筋力

 私、ユナ・ミアレルトは辺境の男爵家の長女として生まれた。

 次期領主としての箔をつけるため、王都の第一学園を卒業するべく領地の皆から送り出されたが、実力が足りず第二学園に通うことになる。

 私の魔術は他の人とは違い、限られたことしかできない。

 入学当初はそれこそ自分を守ることにしか魔心を利用できず、敵を倒す術を持っていなかった。


 そして四年生から五年生の進級試験、最後のチャンスだと勇気を振り絞り加点依頼を受けようとするも、不運なことに全ての依頼が受けられた後だという。

 途方にくれているところに声をかけてくれたのがルークだ。

 実をいうと、私は彼のことを知っていた。


 一つ下の学年に、魔術の才能がない男の子がいるという噂を聞いたことがあり、姿を見たこともあった。

 だからこそ彼が成績上位者を目指し、さらに加点依頼を受けようとしていることには心から驚いた。

 共に依頼を受けようと依頼された時は、Aランク依頼だったこともありさらにすごく驚いた。

 けど彼の眼には確固とした自信が込められており、その眼を見れば何故だか大丈夫だと思えた。

 そんな経緯もあり、共にマタシウト鉱石採掘という依頼を受けたのだが……


(まさか魔術を全く使えないだなんて思ってなかったな)


 彼の武器は、調理に使うようなナイフだけだという。

 そんなもので、どうやって魔物を倒せるというのだろうか。

 彼の言葉を疑っているわけではないが、単純に不思議に思う。

 それと同時に僅かに期待してしまう。

 いったい彼は、私にどんな世界を見せてくれるのだろう。

 そして、その機会はそれからすぐやってきた。


「ユナ、止まろう。魔物がいる」

「えっ?」


 私が魔力感知するよりも早く、ルークは魔物の接近に気付いたらしい。

 黒色の眼を、鋭く前方に向ける。

 指示通り馬を止め周囲に注意すると、すぐにそれは現れた。

 黒い毛並みを携え鋭い牙が目立つ狼型の魔物、ブラックウルフ。

 それがなんと五体近く。


 一体一体はDランク程度で大した強さではないが、群れでかかってこられたらなかなか厄介だ。

 優れた魔術師なら、この段階で魔術を使い近づくことなく討伐するのだろう。

 けれど私たちではその手段は使えない。

 接近して倒すしかなかった。

 私はすぐに魔心を発動し、自分の体を薄い膜で覆う。

 これで攻撃を受けることはないはずだ。

 けど、ルークは本当に大丈夫なのだろうか。

 生身で、あの素早い動きに対応できるとは思えない。


「ルークも、結界の中に入る?」

「いや、大丈夫だ。俺はブラックウルフの背後に回って攻撃を仕掛ける。挟み撃ちにして倒そう」

「背後に回るって、いったいどうやって――え?」


 その瞬間、不思議なことが起きた。

 ルークが馬から降りたかと思うと、一瞬でその姿が風に攫われるようにして消えた。

 何が起きたのかと動揺していると、すぐにブラックウルフの叫びが聞こえる。


「グルゥゥゥ!」

「え? ルーク!?」


 なんとルークは宣言通り、ブラックウルフの背後に回り攻撃を仕掛けていた。

 ブラックウルフにしてみてもほとんど不意打ちだったようで、瞬く間に二体がルークのナイフによって倒される。

 夢みたいな光景だった。

 強力な魔物に接近して、あんなに簡単に討伐するだなんて。


「――って、違う。私も動かないと!」


 挟み撃ちのためには、私も動かなければならない。

 私は結界を纏ったまま、ブラックウルフの群れに突撃する。

 この状態では下手に攻撃せずとも、ブラックウルフの意識をこちらに向けるだけでも十分だろう。

 その証拠に、ルークは瞬く間に残り三体も討伐してみせた。


「……すごい」


 こんな常識外れな戦い方、これまで見たことがない。

 ルークと一緒になら、本当にAランク依頼でも達成できるかもしれない。


「安心するのはまだだ、ユナ」


 興奮する私に対し、ルークは落ち着くようにと言う。

 どういうことだろうか。


「あっちを見ろ、もう一体、とんでもないのがいる」

「……キングブラックウルフ?」


 200メートル程離れた場所で木々に隠れるようにしてこちらを窺っているのは、ブラックウルフの上位種であるキングブラックウルフだった。

 よくこの距離で見つけることができたと、ルークの感知能力に驚愕する。


「どうするの?」

「接近して倒してもいいんだが、せっかくだからこの距離から倒すか」

「え? でも私たちじゃ遠距離の攻撃手段がないよ」

「それなんだが、ユナ、魔心は自分の近くでしかうまく操れないっていってたけど、離れたら消えるようなものなのか?」

「魔力を供給しなくなっても、数分は形が保ってるよ」

「なら大丈夫だ。手のひらに収まるサイズで最大まで硬質化したものを一つ作ってくれないか?」

「う、うん」


 意図は分からなかったが、頼まれた通りの魔心を生み出す。

 ルークはそれを握り満足気に頷いた後、なんと腕を振りかぶり。


「喰らえ!」

「ええっ!?」


 なんと、それをキングブラックウルフに向けて投げた。

 雷魔法の使い手も目を丸くするような速度で飛翔する魔心は、見事にキングブラックウルフの胴体を捉えた。

 いつこちらに攻撃するかを窺っていたキングブラックウルフですらそれに反応することはできず、いとも簡単に討伐に成功した。


「こんなものか」


 隣にいる私の驚きに気付いているのか気付いていないのか、ルークは当たり前のことをしただけだと言わんばかりに頷いている。

 けど、私としては訊きたいことばかりだ。


「る、ルーク。今なにしたの?」

「魔心を投げたんだよ」

「でもルークは魔術を使えないって言ってたよね? どうやったらあんなに勢いよく投げれるの?」

「うーん、筋力かな」

「きん、りょく……」


 何を言っているのか全く分からなかった。

 ただ分かるのは、目の前にいる存在がとんでもない常識外れの実力を持っているということだけだ。

 魔術の才能がないなんて全く影響しないくらいに。

 もしかしたら私は、とんでもない才能の持ち主と出会ってしまったのかもしれない。

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