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38 化物が一人

 七色の光が俺に向けて放たれる。

 音速を遥かに超え、俺が視認できる限界に至る速度で飛翔するそれらを横に跳ぶことで躱す。

 だが――


「追尾性か!」


 あろうことか、七色の光は後方に線を残しながら軽やかに曲がり、俺を追ってくる。

 躱しきれない。

 真正面から打ち破るしかない!


「グラディウス・アーツ流、四の型――十六夜」


 波打つように振るった剣が、次々と魔術の核を捉え破壊していく。

 しかし、一つ斬るごとに手にかかる反発から、一つ一つが最上級魔術に匹敵する威力を誇ることを悟る。


 ――同時に七つの最上級魔術を、それも無詠唱で。


 尋常ではない。

 ティナやレーニスどころか、異世界で出会ったどんな魔術師にも劣らない実力。

 ――化物だ。


「ふふっ、やはり防いでみせたね! けど、その程度で苦戦するようじゃ、これからの攻撃に耐えきれるかな!?」

「――――ッ」


 直後、信じられないような光景が目の前に広がる。

 レオノーラの周囲を浮遊する七色の光が、脈動と共に変形していく。

 炎の怪鳥、水の大蛇、雷の猛獣などが、まるで彼女を守護するように君臨する。

 それらから感じる圧倒的な魔力。

 もはやあれらは最上級魔術を超え――神級魔術にも匹敵する。


「さあ、これを防げるかな!?」


 襲い掛かってくる七つの神級魔術。

 これはさすがに十六夜では防ぎきれない。

 ならば攻撃を浴びるより先に、術者本人を叩く!


「いくぞ」


 身体強化を最大限まで高め、魔術の隙間を縫うようにしてレオノーラに接近する。

 途中、躱しきれない魔術は断ち切るのではなく、僅かに軌道を逸らすのみで速度を落とさないように努める。

 高速で接近する俺を見て、レオノーラは驚愕に目を見開く。


「速い!」


 どうやら彼女の予想を上回ることはできたようだが、油断はできない。

 俺は勢いそのままに力強く剣を振り下ろす。


「喰らえ」


 だが、これまで数千数万の強敵を斬ってきたその攻撃は、ガキン! という甲高い音によって止められた。


「なんだと?」


 俺とレオノーラの間に、透明の壁があるみたいだ。

 いったいいつの間に発動したのか。

 俺がその存在に気付けなかっただけでも驚きだが、まさか俺の剣を防ぐことができるほどの硬度だとは。そちらに驚愕する。


 ――レオノーラほどの強敵に対し、思考にとられたわずかな時間は致命的な隙となった。


「残念だ。もう少し粘ってくれると思ってたんだけど――これで終わりだね」

「ッ!?」


 しまった。

 この僅かな間にレオノーラは後方に下がり、さらに俺の周囲を七つの神級魔術が取り囲んでいた。

 完全に退路を塞がれている。

 逃げ場は一切ない。


「さあ、いけ!」


 同時に襲い掛かってくる、俺の命を奪いかねない強力な攻撃の数々。

 もはや剣技の発動も間に合わず、ただ蹂躙されるしかない。

 そんな絶望的な状況の中で。



 ドクンと、俺の心臓は跳ねた。



 かつてない危機的状況の前に、俺が抱いたのは恐怖でも諦観でもなく。

 歓喜だった。


 さあ、いこう。

 最強のその先へ。


 瞬間、世界はスローモーションに変わった。

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