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33 ソロプレイ

「本日は王都から少し離れた場所にあるエピゾの森で実践演習を行います。各自パーティに分かれてください」


 転入翌日。

 俺たちはCランク以下の魔物が生息するというエピゾの森に向かうことになった。


 去年からある程度パーティが固定化されていたのだろう、それぞれの学生が集まっていく中で、俺は一人残された。

 周りが最低でも四人以上になっているなか、俺だけは一人で戦う必要がある。

 そう思っていると、六人パーティのリーダーらしき男が近づいてくる。


「おい、アートアルド、このセルパン様がお前を使ってやろうか?」


 あまり良い言葉づかいではない。

 俺は目を細めてセルパンと名乗ったその男を見る。


「使うと言ったか?」

「ああ、魔術を使えない足手まといとはいえ、囮くらいにはなるだろ? 頭を下げて懇願するならパーティに入れてやってもいいぜ」

「……断る。あまり戦力にならなさそうだしな」

「なっ、戦力ならないだと!? お前が俺様を評価してんじゃねぇ! くそ、だったら勝手に一人で死にやがれ!」


 そんな言葉を残した後、セルパンは仲間を引き連れて退散していく。

 変な奴に絡まれたなと思っていると、担任が大きな声で追加条件を叫ぶ。


「ちなみにこの演習は非常事態に対応するためのものですので、武器の使用は禁止しています。各自、杖などは置いて向かってくださいね」

「――む」


 ということは剣を使用することはできないということだろう。

 普通なら俺にとって圧倒的に不利な条件だが、Cランク以下の魔物しか出現しないならば特に問題はないだろう。


「まあ、素手で事足りるか」


 そうして俺たちはエピゾの森に向かった。



 鬱蒼と木々が生え茂る中を、俺は一人で歩いていく。

 思えばこれまで魔物などと戦う際、ユナやティナと一緒だった。

 こうして一人で討伐に向かうのは初めてだ。


「十分に注意しなくちゃな」


 Cランク程度に苦戦するとは思わないが、それでも念には念を入れておく。

 身体強化を使用し、感知を行うことによって周囲の状況を把握する。

 今回の実践演習では、倒した魔物のランクと数によって加点されることになっている。

 手っ取り早くAランクに入るためには、この機会を活かすのが一番だ。


「っと、話をすればさっそくか」


 150メートル程前方にリーフウルフの群れがいる。

 一見しただけでは木々の色と同化して見つけにくいが、俺には通用しない。

 普通の魔術師ならここで幾つかの組に分かれ、遠距離から魔術を発動するが、もちろん俺の場合は――


「いくぞ」


 ぐっと地面を踏みしめ、駆け出した。

 一番手前にいたリーフウルフの胴に拳を浴びせる。

 既にこちらの存在に気付いていたはずのリーフウルフも、この速さには対応できなかったようで、抵抗することなく吹き飛ぶ。


「グルゥウウ!」

「バウッ!」


 味方がやられたことで危機感を感じたらしいリーフウルフたちが、体を纏う鋭利な葉を次々と放つリーフショットを使用する。

 が、身体強化を使用した俺の体には傷一つ付けることはできず弾かれていく。


「ガルッ!?」


 自身の必殺技が通用しないことに驚いたのか、リーフウルフは急いで俺から逃げようと背中を見せて駆け出す。

 だが、そう簡単に逃がす俺ではない。

 俺はリーフウルフの進路方向に回り込むと、さらに攻撃を浴びせて無力化した。


「ふー、こんなもんか」


 やはりというべきか、これまで戦ってきた相手に比べれば雑魚も同然だ。

 この調子なら簡単に点数を稼げるだろう。

 魔術演習では稼げなかった分を、ここで補填しなければ。


 それからも現れる魔物たちを順調に討伐し、加点を重ねていく。

 これがどのくらいのペースなのかは分からないが、一人で戦っていくことを考慮すればそう悪いペースではないはずだ。


「た、助けてくれぇッ!」


 そんなことを考えていると、突如として誰かの叫び声が響いた。


「なんだ?」


 ただごとではないと思った俺は、すぐさま声のした方向に向け駆けだした。

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