表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で最強の剣士だった俺は、魔術師が支配する元の世界でも最強のようです  作者: 八又ナガト
第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
28/55

28 到着

「さすがはお兄様です」


 私――ティナ・アートアルドは瞬時に30人近くの魔族を倒したお兄様に称賛の言葉を漏らす。

 私にとっては至極当然の光景だったが、他の者にとっては違ったらしい。

 ミアレルト領の騎士たちは、各々に驚愕と歓喜を口にする。


「す、すげぇ、いま何が起きたのか全く見えなかった」

「ああ。でも敵の半数以上がやられてる。ユナ様の友人が倒してくれたんだろう」

「守り切れるぞ、俺たちの町を!」


 おおぉ! と、彼らの士気が上がる。

 この人数相手の魔術なら防ぎきれると考えているのだろう。

 けど、そうする必要はない。

 せっかくお兄様が整えてくれた舞台だ。私も尽力しなくてはならない。


「いいえ、貴方たちは休んでいてください。残りの敵は私一人で無力化できます」

「えっ? し、しかし敵はいま一ヵ所に集って結界で身を守っていますよ? こちらからの攻撃も通じません」

「問題ありません。いえ、むしろ好都合ですわ!」


 結界に守られていると安心している魔族たちの隙をつく。

 魔族たちとの距離はおよそ80メートル。

 つまりは私の魔力操作範囲(コントロールレンジ)だ。


 詠唱と共に練り上げられた魔力の起点を、敵の結界の内側に指定する。

 そして高らかに叫んだ。


「――氷嶽(イスベルグ)!」


 結界の内側から生じた氷の山が、一瞬で20人の体を凍らせる。

 予想外の攻撃に敵は為す術がなかったようだ。


「そんな……こんな簡単に倒すだなんて」

「すごすぎる、さすがはユナ様の友人だ」

「ありがとうございます! おかげで、私たちも救われました!」


 危機を脱したことを察し、感謝を告げる彼らに頷く。

 そうしている最中も、思考を埋め尽くすのは愛すべきお兄様だった。


(ユナ様のことをよろしくお願いします、お兄様)



 ◇◆◇



 私――ユナ・ミアレルトは眼前に迫る脅威に唇を噛み締めた。

 空に浮かびながらこちらに攻撃を仕掛けてくる、二本の角と黒色の羽が特徴的な女性――魔族。

 私の力では、彼女の攻撃を必死に防ぐのが精いっぱいだった。


「ふふふ、いつまで持つかしら!」


 その魔族の女性は攻撃を仕掛けながら、楽しそうにそう叫ぶ。


 隣国の騎士団を携えて、突如として領地に現れた彼女は真っ先に私とお父様を狙った。

 対応が遅れ、私たちはこうして人気のない荒野に連れてこられた。

 その最中にできたのは、なんとかティナに伝達魔術を送ることだけ。

 後はずっと、敵の攻撃を防ぐことばかりだった。


 途中、攻撃の間が空いたタイミングで私は問う。


「ねえ、貴女はどうして私たちを狙うの!?」

「あら、まだそうして叫べるだけの元気はあるのね。いいわ、それでこそ襲いがいがあるもの!」

「くっ……!」


 一際威力の大きい魔術を、魔心ましんで防ぐ。

 お父様は連れ去られる際に攻撃を受け気絶しているため、二人を守れるだけの大きさの魔心を張らなければならなかった。

 魔力消費が激しい。魔心が使えなくなるのも時間の問題だ。


「今のをよく耐えられたわね。いいわ、少しだけ答えてあげる。私が貴女を狙う理由はただ一つ、貴女の力を欲しているからよ」

「私の力……この魔心のこと?」

「ええ、その通り。貴方はそれを結界代わりに使っているようだけど、本当はもっと優れた使い方があるのよ」

「優れた使い方……?」


 そこまで答えてくれる気はないらしい。

 話しながらも溜め込んだ大量の魔力が、巨大な雷の猛獣を生み出す。

 炎黙の顎が発動していた最上級魔術に似ているが、そこに込められた魔力量が何十倍も違う。

 これはさすがに耐えられないかもしれない。


「さあ、耐えられるものなら耐えてみなさい! ――天雷獣てんらいじゅう


 そうして放たれた魔術を前に、私は全ての魔力を魔心に注いで衝撃に備える。

 ――だが、衝撃が訪れることはなかった。


 私と魔術の間に、一人の男性が舞い降りたからだ。


「――ルーク!」


 思わず私はその者の名を全力で呼ぶ。

 するとルークはこくりと頷き、


「後は任せろ」


 そう呟き、体を半身にして剣を構えた後、突きを放った。


「グラディウス・アーツ流、三の型――神威」


 彼の剣から放たれた渦巻く暴風と、天雷獣が衝突する。

 轟音と激震を生み出したのち、パアンッとその二つが消滅する。

 互角の威力だった。


「……ありえないわ」


 まさか自分の魔術が防がれると思っていなかったらしい魔族は、これまでの笑みを消し、真剣な眼差しでルークを見る。

 そんな彼女に対して、ルークは一言。


「お前が敵だな」


 そう告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【作者からお願い】



↑の「☆☆☆☆☆」評価欄↑をワンタップして


「★★★★★」にして応援していただけると、とても励みになります!



どうぞよろしくお願いいたします!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ