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運命?



妹とゲームとか、隼人にとっては愚痴でも、俺にとっては何だか羨ましい話だ。

「楽しそうだな。つくづく羨ましいわ。」

「どこが!?」


「そこ!お喋りしてないで話聞きなさいよ!」

ババアに注意されて、授業に引き戻された。去年までは関わりが無かった。でも今年はババアの授業がある。

「じゃ、班に別れてみんなで協力してこの英文の訳を話し合ってみてね~!」


机を移動させていると、生徒の1人が手をあげた。梨理?

「先生~!」

「はーい!何?」

「先生は彼氏いますか~!」

はぁ?梨理の奴何を質問してるんだよ!!梨理は意地の悪い顔でこっちを見た。


「いませーん!彼氏募集中でーす!」

いい歳こいて何言ってんだよ!!

「でも、好きな人はいま~す!」

こっちを見るんじゃねぇ!ババア!!


「おお~!マジで?誰?どんな人?」

「つい最近まで蒙古斑があったくせに、一丁前に反抗期って奴~!」

教室は少し笑いが起こった。一番梨理の笑い声が大きかった。


「何だよそれ~!子供かよ~!」

「え~!先生子供いるの~?」

「いるよ~!」

みんなは口々にババアに質問した。


「年は?いくつ?」

「みんなと同じくらいだよ~?」

同じどころか、ジャストだよ!!


「え、ニッシーってヤンママなの?」

「それ、ヤンキーの方?ヤングの方?」

「どっちもじゃない?」


ババアはため息をつくと言った。お、ここは一喝か?いつものあれか?

「みんな、悪い事は言わない。絶対避妊しなさいね。」

えぇえええええ!!そっちか!!いやいやいや、みんな引いてる!引いてるから!!


「先生って、でき婚なの~?」

「そうだよ~!学生結婚。別に相手は働いてたし、後悔はしてないけどね~!」

いや、それ教室で聞かされるこっちの身にもなれよ!!この複雑な気持ちどうしてくれんの?


「先生~!結婚して~!」

バカやめろ!梨理は俺の顔を見て、不敵な笑みを浮かべていた。俺が何も言えないからって腹立つな~!


「え?水野さん!?水野さんは女じゃん!」

ババアがそう突っ込むと、男子生徒が言った。

「男ならアリ~?」

「あ~ハイハイ!そうゆうのは稼いでから言ってね~!先生は先生より稼ぎのある人としか結婚しません!」

自分より稼ぎがあったらすんのかい!そもそも既婚者だろうが!!


「お金は大事だよ?いい?みんな、先生みたいな可愛くて有能なお嫁さんと結婚したかったら…………」

それ、自分で言う?言っちゃう?痛いよ!痛すぎるよ!


「高額納税者になろうか?」

そこ真顔で言うな!!

「そのためには…………勉強しよう!!じゃ、英文の訳発表して~!」


隣を見ると、梨理が笑いをこらえるのに必死だった。

「何だよ?笑いたきゃ笑えよ。」

「廉のその、笑えない顔がウケる……く……くくく……。」


こいつ、絶対俺が何も言えないと知っていての仕業だ。くっそ!いっその事こいつの本性を全部、隼人やここにいる全員にバラしてやりたい!!


だから嫌だったんだよ!この性悪女と同じ高校なんて!!


でも、このイライラは思いの外、早急に解消される事になった。


次の日のホームルーム、あの勝ち誇った意地の悪い梨理の顔から、笑顔が消えた。


奇跡なんて、そうあるもんじゃない。だけど…………偶然が重なれば、それは偶然ではなく奇跡になる。


「先週に言っておいた通り、今日から教育実習生の受け入れを初めます。」


偶然が奇跡になって、もしその相手が、会いたいと願っていた人なら…………運命?そう思っても仕方がない。


隼人は里梨 凜が挨拶している姿を、まるでツチノコでも見たような顔で、呆然としていた。呆然とした後、自分の顔を何度も叩いていた。夢じゃねーよ。あれ、多分本物。


「今日からお世話になります。里梨 凜です。短い間ですが、よろしくお願いいたします。」


梨理は里梨 凜が現れた瞬間、前の席の隼人を呼ぼうとしていた手を……途中で力なく下げた。そして、その手を握りしめて下を向いた。


さすがの肉食女も、運命には逆らえないか…………?


多分、黒板の前のあの里梨 凜を見て、梨理はこう思ったはず。


だから嫌だった……この高校に来るのは。


それでも、この高校に来なければ、隼人の側にはいられない。そりゃ、そうだ。そんなに人生甘くはないって事だよな。こう言う時、ざまあ!とか言うんだろうけど…………


あまりに梨理が凹んでいて、言えなかった。



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